概要
『Gibbous – A Cthulhu Adventure』は、ルーマニアのトランシルヴァニア地方ターグ・ムレシュ出身の3人組スタジオStuck In Atticが開発・発売した、手描きアニメーションによるポイント&クリック・アドベンチャーです。2019年8月7日にSteamおよびGOGで発売されました。日本語はインターフェース・字幕とも対応しています。Steamレビューは「非常に好評」で89%(2,293件、2026年7月時点)と安定した高評価を維持しています。物語は、禁断の魔導書ネクロノミコンの捜索を依頼された探偵ドン・R・ケタイプが怪しいカルト教団に誘拐されるところから始まります。同じ書物を発見した図書館員バズ・カーワンは、誤って呪文を唱えてしまい、愛猫を喋らせてしまいます。皮肉屋の猫キテを加えた三者三様の主人公たちが、各地を巡りながら謎を解き明かしていくコメディ色の強い作品です。
クトゥルフ神話との関係
物語の中心にあるのは、H・P・ラヴクラフトが生んだ悪魔的な魔導書ネクロノミコンそのものであり、舞台にはダークハムにあるミスカトニック大学の図書館や、『インスマウスを覆う影』の港町インスマウスを下敷きにした「フィッシュマウス」という町など、原典の地名・固有名詞を下敷きにした場所が数多く登場します。カルト教団の暗躍や禁断の書物を巡る陰謀という筋立て自体は、コズミックホラーの王道的なプロットに沿っていますが、全編を通じて重苦しさよりも軽妙さを前面に出した演出が選ばれています。
独自の要素・原典との違い
最大の独自性は、原典の陰鬱なトーンを大胆に転換し、皮肉屋の喋る猫を含む三人の主人公による軽快な掛け合いを軸にしたコメディとして再構成した点にあります。手描きのHDアニメーションと70人以上のキャラクターによるフルボイス、4時間を超えるオーケストラ楽曲など、映像・音楽面の作り込みも厚く、レビューでは「近年屈指のポイント&クリック作品」と評されています。ラヴクラフトが徹底して恐怖と絶望を描いたのに対し、本作は同じ固有名詞群を用いながら「ティム・バートン風」と称される親しみやすいダークファンタジーへと翻案しており、初めてクトゥルフ神話に触れる層への入口としても機能する作品です。

