概要
ケジア・メイスンは、H・P・ラヴクラフト「魔女の家の夢」(1932年執筆/1933年発表)に登場する魔女である[1]。作中設定では1692年のセイラム魔女裁判で告発され、牢から説明のつかない形で姿を消したとされる17世紀の人物であり、物語の現在時である1930年代のアーカムでは、彼女がかつて閉じ込められていたとされる下宿屋「魔女の家」で、下宿人ウォルター・ギルマンの夢に繰り返し現れる存在として描かれる[2]。使い魔ブラウン・ジェンキンを従え、「黒い男」ことナイアーラトテップとも結びつく[3][4]。
基本プロフィール
- 分類: 人物(魔女)
- 欧文表記: KEZIAH MASON
- 初出: 「魔女の家の夢」(1932年1月-2月執筆/1933年7月『ウィアード・テイルズ』誌発表)[5]
- 登場作品: 「魔女の家の夢」1作のみが原典における直接の登場作である(後続作家による類似人物については「他の人物・存在との関係」を参照)
原典での描写
1692年の裁判記録と失踪
物語の冒頭で語られるのは、ケジア・メイスンがかつて監禁されていたセイラムの牢からの失踪である。看守は正気を失い、独房から「白く鋭い牙を持つ毛むくじゃらの小さな生物」が這い出したと譫言のように語り、独房の石壁に赤く粘つく液体で描かれた曲線と角度の図形は、コットン・マザーにも説明がつかなかったという[15]。
エセックス郡の記録には、オイヤー・アンド・ターミナー裁判所での尋問の内容も残されている。ケジアは判事ジョン・ハソーンに「壁を越えて他の空間へ通じる線と曲線」について語り、それらが牧場の丘の先の暗い谷や川の中の無人島での深夜の集会に使われていたと仄めかした。「黒い男」のこと、自らの誓い、「ナハブ」という新しい秘密の名についても証言したとされ、独房の壁に同じ図形を描いた後に姿を消した、と記録は伝える[16]。
ギルマンの夢に現れる老婆
老婆は、ウォルター・ギルマンの夢の中で回を重ねるごとに輪郭を鮮明にしていく存在として描かれる。当初は腰の曲がった老婆に似た漠然とした影に過ぎなかったものが、やがて「腰の曲がった背中、長い鼻、萎びた顎」まではっきりと像を結び、顔には凶悪な満足と悪意の表情が浮かび、目覚めた後には説き伏せ脅すようなしわがれ声の記憶だけが残ったという。夢の中で老婆はいつも、勾配した壁面が交わる天井近くの空中に忽然と現れ、夜を追うごとに少しずつ近づいてきたと記される[17]。
目覚めた後の記憶では、この老婆が彼に「アザトースの書」へ血で署名し新しい秘密の名を名乗るよう迫り、宇宙の中心にあるアザトースの玉座へ黒い男や一同と共に赴くよう説いていたという。ギルマンを押しとどめていたのは、ネクロノミコンで「アザトース」の名を目にし、それが名状しがたい原初の悪を指すと知っていたことだった、と記される[18]。
夢の外でも、その姿はギルマンの前に現れている。ミスカトニック川の中州(古い立石が並ぶ無人島)に佇む老婆を橋の上から目撃したギルマンは、老婆が振り向きかけた瞬間に橋を逃げ出したという一幕もある[19]。
使い魔ブラウン・ジェンキンとの関係
ブラウン・ジェンキンは「良い大きさの鼠ほどの大きさで、町の人々から面白がって『ブラウン・ジェンキン』と呼ばれていた」存在として紹介される。1692年当時には11人がこれを目撃したと証言しており、長い毛並みと鼠の形をしているが鋭い牙を持つ髭面は邪悪なまでに人間的で、前肢は小さな人間の手のようだったと伝えられる。ケジアと悪魔との間でメッセージを運び、魔女の血で養われ——吸血鬼のようにそれを吸っていたともされ、その声は忌まわしい忍び笑いのようで、あらゆる言語を話すことができたという[20]。
物語終盤の夢でも、ブラウン・ジェンキンは「黒い男」の足元に愛情のこもったふざけた様子ですり寄る姿で描かれ、ケジアの傍らに寄り添う存在として一貫して現れる[21]。
ワルプルギスの夜の儀式と最期
物語は4月30日、すなわちワルプルギスの夜(メイ・イブ)を、地獄の安息日が訪れる夜として描く。同居人ジョー・マズレヴィッチはこの夜に備えてギルマンへ十字架を持たせ、ギルマンはそれを胸元に下げたまま眠りについた[22]。
その夜の夢でギルマンは、勾配した床を持つ三角の部屋へ引き戻される。卓上には裸の幼児が横たわり、傍らには柄の凝ったナイフを右手に、文様を彫った金属の鉢を左手に持つ老婆が立ち、理解できない言葉で呪文を唱えながら鉢をギルマンへ差し出して持たせた。ナイフが振り下ろされる瞬間、ギルマンは鉢を取り落として老婆の手からナイフを奪い、三角の淵へ投げ捨てるが、今度は老婆の爪が彼の喉に食い込む。ギルマンは十字架の鎖を彼女の首に巻きつけて締め上げ、加勢に来たブラウン・ジェンキンを蹴って淵の下へ落とした。「老いた魔女を殺したのかどうか、彼にはわからなかった」とされ、目を離した隙にブラウン・ジェンキンが幼児の手首に牙を立て、鉢を血で満たしていたという[23]。紫の光が消える間際、地の文は「魔女——老いたケジア——ナハブ——それは彼女の死を意味していたに違いない」と記しており、原典はここで彼女の最期を示唆するにとどめている[24]。
壁の中から出たもの
「魔女の家」は1931年3月の嵐で屋根と煙突が崩れ、同年12月の取り壊し作業で屋根裏の瓦礫が撤去された際、警察・検死官・大学教授までが呼ばれる事態となった。瓦礫からは打ち砕かれてはいるが人間のものとわかる骨が見つかり、検死官の医師は一部を幼い子どものもの、他を高齢で痩せた腰の曲がった女性のものと判断したという[25]。
寝室の斜めの壁を取り払うと、その奥の三角形の空間からは無数の小さな子どもの骨からなる納骨層が現れ、その上には大きさ・古さ・異国風の装飾を備えたナイフが一振り残されていた。同じ瓦礫からは、長い茶色の毛を伴う巨大で病的な鼠の骨格も見つかり、前肢の骨は鼠よりも小さな猿に近い物を掴める特徴を示し、頭骨は人間の頭骨を矮小かつ怪異にもじったような形をしていたと伝えられる。これらの遺物とケジアやブラウン・ジェンキンとの関係を明言する記述は本文になく、原典はそれを未解決の謎として語るにとどめている[26]。
別名・呼称
セイラムでの尋問記録として、「ナハブ(Nahab)」という秘密の名を持っていたと伝えられる[6]。作中で他に別名は与えられていない。
人物像・性格
原典本文にケジア個人の人となりを直接描写する記述は少なく、多くは伝聞・記録の形で断片的に伝えられる。セイラムでの尋問記録では、判事ジョン・ハソーンに対し「壁を越えて他の空間へと通じる方向を示す線と曲線」について語り、それが深夜の集会で用いられていたことを仄めかし、「黒い男」のことや自らの誓い、新しい秘密の名「ナハブ」についても証言したと伝えられており[6]、非ユークリッド的な幾何学の知識を持つ人物として設定されている。1930年代の物語本編では、ギルマンの夢の中で使い魔ブラウン・ジェンキンおよびナイアーラトテップと共に現れ、彼を魔女の儀式へ引き込もうとする存在として一貫して描かれる[7]。
生涯・経歴
1692年、ケジア・メイスンは魔女として告発され、セイラムの牢に囚われたが、説明のつかない形で独房から姿を消したとされる。当時の看守は正気を失い、独房から白く鋭い牙を持つ毛むくじゃらの小さな生物が這い出したと譫言のように語り、独房の石壁には赤く粘つく液体で曲線と角度の図形が描き残されており、コットン・マザーですらこれを説明できなかったと伝えられる[1]。
時代は下って1930年代、ミスカトニック大学で数学と民俗学を学ぶ学生ウォルター・ギルマンは、アーカムの「魔女の家」と呼ばれる下宿の屋根裏部屋を借り、非ユークリッド計算と量子物理学を太古の魔術の伝説と結びつけて研究していた[8]。ギルマンはやがてケジア、ブラウン・ジェンキン、ナイアーラトテップ、そして抽象的な高次元についての夢を見るようになり、夢遊病を発症する[7]。4月30日の夜には、夢の中でケジアと使い魔に襲われるが、下宿人ジョー・マズレヴィッチから貰った十字架でこれを撃退する[9]。
物語の終盤、ワルプルギスの夜の夢でギルマンは、誘拐された乳児を前にした儀式の場に引き込まれる。ケジアの手からナイフを奪って抵抗するが、彼女に喉を絞められ、ギルマンは十字架の鎖で反撃してケジアを絞め上げ、加勢に来たブラウン・ジェンキンを蹴り落とす。その隙にブラウン・ジェンキンが乳児の手首に噛みつき、乳児は死亡した。ケジアを殺したかどうかはギルマン自身にもわからなかったとされるが、直後に光が消え、「それは彼女の死を意味していたに違いない」と地の文は記す。ギルマン自身も、後日就寝中に何かに心臓を食い破られて死亡し、その正体は大きな鼠状の生き物だったと示唆される[10]。
物語の後日談として、1931年3月に嵐で「魔女の家」が崩落し、同年12月の撤去作業中には幼児や老婆の骨、何かにかじられた鼠の骨、黒魔術の本、破損した怪物の像が発見されたと伝えられる[11]。物語には、ギルマンの下宿の大家ドンブロフスキ、1階に住む織機修理人で迷信深い性格のジョー・マズレヴィッチ、数学教授アパムが脇役として登場し、物語は聖スタニスラウス教会周辺のポーランド系移民コミュニティを背景にしている[12]。
他の人物・存在との関係
使い魔ブラウン・ジェンキンは、ケジアと「黒い男」の間の伝令役を務め、ケジアは自らの血で彼を養っていたとされる。ブラウン・ジェンキン自体の詳細な形態・性質・実在性をめぐる原典の両義性については既存記事を参照されたい[3]。「黒い男」は、魔女信仰における「黒い男」とネクロノミコンにおける「ナイアーラトテップ」とが地の文で同一視される形で登場する[4]。夢の主要な相手役であるウォルター・ギルマンとは、夢を通じた加害・被害の関係にあり、最終的に両者は互いの手で命を落とす[10]。
後続作家では、ヘンリー・カットナーの短編「セイラムの恐怖」(1937年)に魔女アビゲイル・プリン(Abigail Prinn)が登場し、本作と似た筋立てだと言われるが、当サイトでは同作の本文を確認していない[13]。
主要登場作と読みどころ
- 「魔女の家の夢」(1932年執筆/1933年発表): ケジア・メイスンの唯一の直接登場作。セイラム魔女裁判からの失踪という17世紀の因縁と、1930年代のアーカムでの夢を介した侵食とが交錯する構成が読みどころ[1][8]
- ヘンリー・カットナー「セイラムの恐怖」(1937年): 魔女アビゲイル・プリンが出る後続作家の短編。本作との関係は言われているだけで、当サイトでは本文を確認していない[13]
よくある誤解
Q. アビゲイル・プリンはケジア・メイスンの別名・変名ですか?A. 別の名の魔女です。アビゲイル・プリンはヘンリー・カットナーの短編「セイラムの恐怖」(1937年)に登場します。当サイトでは同作の本文を確認していないため、ケジア・メイスンとの設定上の異同はここでは述べません[13]。
Q. ブラウン・ジェンキンはケジアの血縁(子)なのですか?A. 原典本文にはブラウン・ジェンキンとケジアの血縁関係を明示する記述はありません。両者が近しい関係にあることは描かれますが、血縁関係を示す説はファンの間の考察にとどまり、確定した設定ではありません。
出典
- [1] 1692年のセイラム脱獄の経緯(看守の錯乱、白く鋭い牙を持つ生物、独房壁の曲線と角度の図形)についての要約 — H. P. Lovecraft, “The Dreams in the Witch House”(1932年執筆/1933年発表). The H. P. Lovecraft Archive. https://www.hplovecraft.com/writings/texts/fiction/dwh.aspx ↩
- [2] ギルマンの下宿とケジアの夢への出現についての要約 — H. P. Lovecraft, “The Dreams in the Witch House”(1932年執筆/1933年発表). The H. P. Lovecraft Archive. https://www.hplovecraft.com/writings/texts/fiction/dwh.aspx ↩
- [3] ブラウン・ジェンキンが悪魔とケジアの間の伝令を務め、その血を吸って養われていたという記述についての要約 — H. P. Lovecraft, “The Dreams in the Witch House”(1932年執筆/1933年発表). The H. P. Lovecraft Archive. https://www.hplovecraft.com/writings/texts/fiction/dwh.aspx ↩
- [4] 魔女信仰の「黒い男」とネクロノミコンの「ナイアーラトテップ」が地の文で同一視されていることについての要約 — H. P. Lovecraft, “The Dreams in the Witch House”(1932年執筆/1933年発表). The H. P. Lovecraft Archive. https://www.hplovecraft.com/writings/texts/fiction/dwh.aspx ↩
- [5] 執筆時期・発表誌についての書誌情報 — H. P. Lovecraft, “The Dreams in the Witch House”, Lovecraft’s Fiction(年譜). The H. P. Lovecraft Archive. https://www.hplovecraft.com/writings/fiction/ ↩
- [6] セイラム尋問での証言(壁を越えて他の空間へ通じる線と曲線、深夜の集会での使用、「黒い男」・自らの誓い・秘密の名「ナハブ」)についての要約 — H. P. Lovecraft, “The Dreams in the Witch House”(1932年執筆/1933年発表). The H. P. Lovecraft Archive. https://www.hplovecraft.com/writings/texts/fiction/dwh.aspx ↩
- [7] ギルマンが見る夢の内容と夢遊病の発症、同居人フランク・エルウッドへの告白についての要約 — H. P. Lovecraft, “The Dreams in the Witch House”(1932年執筆/1933年発表). The H. P. Lovecraft Archive. https://www.hplovecraft.com/writings/texts/fiction/dwh.aspx ↩
- [8] ギルマンの経歴(非ユークリッド計算・量子物理学の研究、魔女の家の部屋の賃借)についての要約 — H. P. Lovecraft, “The Dreams in the Witch House”(1932年執筆/1933年発表). The H. P. Lovecraft Archive. https://www.hplovecraft.com/writings/texts/fiction/dwh.aspx ↩
- [9] 4月30日夜の襲撃と十字架による撃退についての要約 — H. P. Lovecraft, “The Dreams in the Witch House”(1932年執筆/1933年発表). The H. P. Lovecraft Archive. https://www.hplovecraft.com/writings/texts/fiction/dwh.aspx ↩
- [10] 物語終盤の乳児誘拐・生贄の儀式、ケジアとの格闘とその死、ブラウン・ジェンキンによるギルマンの死についての要約 — H. P. Lovecraft, “The Dreams in the Witch House”(1932年執筆/1933年発表). The H. P. Lovecraft Archive. https://www.hplovecraft.com/writings/texts/fiction/dwh.aspx ↩
- [11] 1931年の「魔女の家」崩落・撤去作業についての要約 — H. P. Lovecraft, “The Dreams in the Witch House”(1932年執筆/1933年発表). The H. P. Lovecraft Archive. https://www.hplovecraft.com/writings/texts/fiction/dwh.aspx ↩
- [12] 脇役(ドンブロフスキ、ジョー・マズレヴィッチ、アパム教授)と作品の舞台背景についての要約 — H. P. Lovecraft, “The Dreams in the Witch House”(1932年執筆/1933年発表). The H. P. Lovecraft Archive. https://www.hplovecraft.com/writings/texts/fiction/dwh.aspx ↩
- [13] ヘンリー・カットナー “The Salem Horror”(Weird Tales 1937年5月号)の本文は、当サイトでは確認していない。 ↩
- [14] (欠番。個人ブログに基づく記述を削除した) ↩
- [15] “the gaoler had gone mad and babbled of a small, white-fanged furry thing which scuttled out of Keziah’s cell, and not even Cotton Mather could explain the curves and angles smeared on the grey stone walls with some red, sticky fluid.”(訳:「牢番は正気を失い、ケジアの独房から白く鋭い牙を持つ毛むくじゃらの小さな生物が這い出したと譫言のように語り、灰色の石壁に赤く粘つく液体で塗りつけられた曲線と角度は、コットン・マザーにさえ説明できなかった」) — H. P. Lovecraft, “The Dreams in the Witch House”(1932年執筆/1933年発表). The H. P. Lovecraft Archive. https://www.hplovecraft.com/writings/texts/fiction/dwh.aspx ↩
- [16] “She had told Judge Hathorne of lines and curves that could be made to point out directions leading through the walls of space to other spaces beyond, and had implied that such lines and curves were frequently used at certain midnight meetings in the dark valley of the white stone beyond Meadow Hill and on the unpeopled island in the river. She had spoken also of the Black Man, of her oath, and of her new secret name of Nahab.”(訳:「彼女は判事ハソーンに、空間の壁を越えて他の空間へ通じる方向を示すことのできる線と曲線について語り、そうした線と曲線が、牧場の丘の先の暗い谷にある白い石のもとや、川の中の無人島で行われる深夜の集会でしばしば使われていたと仄めかしていた。彼女はまた黒い男のこと、自らの誓い、そして『ナハブ』という新しい秘密の名についても語った」) — H. P. Lovecraft, “The Dreams in the Witch House”(1932年執筆/1933年発表). The H. P. Lovecraft Archive. https://www.hplovecraft.com/writings/texts/fiction/dwh.aspx ↩
- [17] “the nightmare shape of Brown Jenkin began to be companioned by the nebulous blur which grew more and more to resemble a bent old woman. … Her bent back, long nose, and shrivelled chin were unmistakable, and her shapeless brown garments were like those he remembered.”(訳:「ブラウン・ジェンキンの悪夢めいた姿に、次第に腰の曲がった老婆に似ていく漠然とした影が寄り添うようになった。……腰の曲がった背中、長い鼻、萎びた顎は紛れもなく、形の崩れた茶色の衣服も彼が覚えているものと同じだった」) — H. P. Lovecraft, “The Dreams in the Witch House”(1932年執筆/1933年発表). The H. P. Lovecraft Archive. https://www.hplovecraft.com/writings/texts/fiction/dwh.aspx ↩
- [18] “He must sign in his own blood the book of Azathoth and take a new secret name now that his independent delvings had gone so far. What kept him from going with her and Brown Jenkin and the other to the throne of Chaos where the thin flutes pipe mindlessly was the fact that he had seen the name “Azathoth” in the Necronomicon, and knew it stood for a primal evil too horrible for description.”(訳:「彼女は、彼の独自の探究がこれほど進んだ今、自らの血でアザトースの書に署名し、新しい秘密の名を名乗らねばならないと言った。彼が彼女やブラウン・ジェンキン、そしてもう一人と共に、か細い笛が無心に鳴り響く混沌の玉座へ赴くのを押しとどめていたのは、彼がネクロノミコンで『アザトース』という名を目にしており、それが名状しがたいほど恐ろしい原初の悪を意味すると知っていたという事実だった」) — H. P. Lovecraft, “The Dreams in the Witch House”(1932年執筆/1933年発表). The H. P. Lovecraft Archive. https://www.hplovecraft.com/writings/texts/fiction/dwh.aspx ↩
- [19] “For there was a clearly visible living figure on that desolate island, and a second glance told him it was certainly the strange old woman whose sinister aspect had worked itself so disastrously into his dreams.”(訳:「その荒涼とした島の上に、はっきりと見える生きた人影があった。もう一度見ると、それは間違いなく、その不吉な姿が彼の夢の中に凶々しく入り込んでいたあの奇妙な老婆だった」) — H. P. Lovecraft, “The Dreams in the Witch House”(1932年執筆/1933年発表). The H. P. Lovecraft Archive. https://www.hplovecraft.com/writings/texts/fiction/dwh.aspx ↩
- [20] “no larger than a good-sized rat and quaintly called by the townspeople “Brown Jenkin”. … Witnesses said it had long hair and the shape of a rat, but that its sharp-toothed, bearded face was evilly human while its paws were like tiny human hands.”(訳:「良い大きさの鼠ほどの大きさで、町の人々からは面白半分に『ブラウン・ジェンキン』と呼ばれていた。……目撃者たちは、それが長い毛並みと鼠の形をしているが、鋭い牙を持つ髭面は邪悪なまでに人間的で、前肢は小さな人間の手のようだったと語った」) — H. P. Lovecraft, “The Dreams in the Witch House”(1932年執筆/1933年発表). The H. P. Lovecraft Archive. https://www.hplovecraft.com/writings/texts/fiction/dwh.aspx ↩
- [21] “Brown Jenkin was rubbing itself with a kind of affectionate playfulness around the ankles of the black man, which the deep mud largely concealed.”(訳:「ブラウン・ジェンキンは、深い泥にほとんど隠れた黒い男の足首のまわりに、愛情のこもったふざけた様子で身をすり寄せていた」) — H. P. Lovecraft, “The Dreams in the Witch House”(1932年執筆/1933年発表). The H. P. Lovecraft Archive. https://www.hplovecraft.com/writings/texts/fiction/dwh.aspx ↩
- [22] “This was April 30th, and with the dusk would come the hellish Sabbat-time which all the foreigners and the superstitious old folk feared. Joe insisted that the poor young gentleman wear his nickel-chained crucifix, and Gilman put it on and dropped it inside his shirt to humour the fellow.”(訳:「その日は4月30日で、夕暮れとともに、外国人たちや迷信深い老人たちが恐れる地獄の安息日の時刻がやって来ようとしていた。ジョーは哀れな若い紳士に、ニッケルの鎖のついた十字架を身につけるよう言い張り、ギルマンは彼の気を悪くさせないよう、それを身につけてシャツの内側へ落とし込んだ」) — H. P. Lovecraft, “The Dreams in the Witch House”(1932年執筆/1933年発表). The H. P. Lovecraft Archive. https://www.hplovecraft.com/writings/texts/fiction/dwh.aspx ↩
- [23] “Whether he had killed the ancient crone he did not know, but he let her rest on the floor where she had fallen. What he had prevented the knife from doing to the victim’s chest, the yellow fangs of the furry blasphemy had done to a wrist—and the bowl so lately on the floor stood full beside the small lifeless body.”(訳:「老いた魔女を殺したのかどうか、彼にはわからなかったが、彼女が倒れた床にそのまま横たえておいた。ナイフが被害者の胸にしようとしたことを、あの毛むくじゃらの冒涜的な生き物の黄色い牙は手首にやってのけていた——つい先ほどまで床にあった鉢は、いまや小さな亡骸の傍らで満たされて置かれていた」) — H. P. Lovecraft, “The Dreams in the Witch House”(1932年執筆/1933年発表). The H. P. Lovecraft Archive. https://www.hplovecraft.com/writings/texts/fiction/dwh.aspx ↩
- [24] “Just before he made the plunge the violet light went out and left him in utter blackness. The witch—old Keziah—Nahab—that must have meant her death.”(訳:「彼が飛び込む直前、紫の光が消え、彼を完全な暗闇の中に置き去りにした。魔女——老いたケジア——ナハブ——それは彼女の死を意味していたに違いない」) — H. P. Lovecraft, “The Dreams in the Witch House”(1932年執筆/1933年発表). The H. P. Lovecraft Archive. https://www.hplovecraft.com/writings/texts/fiction/dwh.aspx ↩
- [25] “There were bones—badly crushed and splintered, but clearly recognisable as human—whose manifestly modern date conflicted puzzlingly with the remote period at which their only possible lurking-place, the low, slant-floored loft overhead, had supposedly been sealed from all human access. The coroner’s physician decided that some belonged to a small child, while certain others—found mixed with shreds of rotten brownish cloth—belonged to a rather undersized, bent female of advanced years.”(訳:「そこには骨があった——ひどく砕け割れてはいたが、明らかに人間のものとわかるもので、その明白に近代的な年代は、それが潜んでいた唯一可能な場所である、頭上の低い勾配天井の屋根裏部屋が、あらゆる人間の立ち入りから封じられていたはずの遠い時代と、当惑するほど食い違っていた。検死官付きの医師は、一部は幼い子どものものであり、他方、腐った茶色い布の切れ端に混じって見つかったものは、かなり小柄で腰の曲がった高齢の女性のものだと判断した」) — H. P. Lovecraft, “The Dreams in the Witch House”(1932年執筆/1933年発表). The H. P. Lovecraft Archive. https://www.hplovecraft.com/writings/texts/fiction/dwh.aspx ↩
- [26] “In brief, the floor was a veritable ossuary of the bones of small children—some fairly modern, but others extending back in infinite gradations to a period so remote that crumbling was almost complete. … This object was the partly crushed skeleton of a huge, diseased rat, whose abnormalities of form are still a topic of debate and source of singular reticence among the members of Miskatonic’s department of comparative anatomy.”(訳:「つまるところ、その床はまさしく小さな子どもたちの骨の納骨堂であった——かなり新しいものもあれば、崩壊がほぼ完全に進むほど遠い時代にまでさかのぼるものまで、無限の段階を成していた。……この物体は、一頭の巨大で病的な鼠の、一部が押し潰された骨格であり、その形態の異常さは、ミスカトニック大学比較解剖学教室の面々の間で、いまなお議論と奇妙な沈黙の種になっている」) — H. P. Lovecraft, “The Dreams in the Witch House”(1932年執筆/1933年発表). The H. P. Lovecraft Archive. https://www.hplovecraft.com/writings/texts/fiction/dwh.aspx ↩





