概要
第一次世界大戦下、Uボート「U-29」の艦長カール・ハインリヒ・グラーフ・フォン・アルトベルク=エーレンシュタインが遺した手記という体裁を取る一篇。撃沈した英国船から回収された奇怪な象牙の彫像をきっかけに、艦は次第に破滅へと向かう。
作品情報
- 執筆・発表年: 1920年執筆/1925年9月号「ウィアード・テイルズ」誌発表
- 主題タグ: 太古の海底都市、狂気に蝕まれる乗組員、プロイセン軍人の傲慢、沈んだ文明の神殿
登場神格・用語
(なし)
あらすじ
Uボート艦長フォン・アルトベルク=エーレンシュタインは、撃沈した英国商船の生存者の死体から、若い神の顔を刻んだ奇怪な象牙の彫像を回収する。以後、艦には次々と不吉な出来事が起こる——原因不明の機関故障、乗組員の失踪、そして誰もいない甲板からの歌声。副官クレンツェをはじめ乗組員は次々と正気を失い、艦長自身も彫像への異様な執着に囚われていく。反乱を鎮圧し、最後にはクレンツェも自ら海に身を投げて死ぬ。ただ一人残った艦長は、身動きの取れなくなった潜水艦とともに海底へ沈んでいくが、そこで信じがたい光景を目にする——廃墟と化した太古の都市、ローマ風でありながらそれよりも遥かに古い神殿、そして回収した彫像と瓜二つの巨大な彫刻。酸素も尽きかけた艦長は潜水服を纏い、光を放つその神殿の中へと足を踏み入れることを決意したところで手記は途絶える。
読みどころと注目テーマ
海底に沈んだ太古の文明という着想は、後の「クトゥルフの呼び声」に連なる海洋的恐怖の先駆けとして位置づけられる。同時に、傲慢なプロイセン軍人の一人称という語り口が、自らの理性への過信が崩れていく過程を際立たせている。
執筆背景と影響
1920年、第一次大戦の記憶が生々しい時期に書かれた作品で、当時のドイツ軍将校への反感がにじむ人物造形が特徴。ラヴクラフトの海洋的恐怖・太古の文明というモチーフの初期の実験作として、後年の海底都市ものの原型の一つに数えられる。





