短編小説 — THE HORROR IN THE BURYING-GROUND

墓地の恐怖

寂れたニューイングランドの村で、乱暴な兄と彼を嫌う怪しげな葬儀屋が同じ日に埋葬された後、村に語り継がれる因果応報の噂話を、居酒屋の常連たちの声を通して描く一篇。

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墓地の恐怖

「ラットランドへ向かう州道が閉鎖されると、旅人たちはスワンプ・ホロウを過ぎる旧スティルウォーター街道を通らざるを得なくなる。景色は場所によっては見事なものだが、それでもこの道は長年、なぜか人に好まれてこなかった。」

— H・P・ラヴクラフト(ヘイゼル・ヒールド名義の代作)「墓地の恐怖」(1937年発表)冒頭部

概要

寂れゆくニューイングランドの村スティルウォーターを舞台に、乱暴者の兄トム・スプレイグと、彼を憎み妹ソフィーに言い寄っていた怪しげな葬儀屋ヘンリー・ソーンダイクが同じ日に埋葬されるに至った顛末を、居酒屋に集う村人たちの噂話という枠組みで描く一篇。

作品情報

  • 執筆・発表年: 1937年5月号「ウィアード・テイルズ」誌発表
  • 主題タグ: 早すぎる埋葬への恐怖、村の噂話という語りの形式、因果応報、狂人の予言

登場神格・用語

(なし)

あらすじ

酒浸りで妹ソフィーを支配下に置く乱暴者トム・スプレイグは、動物実験に耽る怪しげな葬儀屋ヘンリー・ソーンダイクを毛嫌いしていた。ある大酒の末、トムは心臓発作で倒れ、老医師プラットにより死亡が宣告される。ソーンダイクは自らの新しい防腐剤処置の腕前を誇示するかのように振る舞うが、遺体に注射をした際、トムの死体が痙攣して起き上がり、注射器がソーンダイク自身に刺さってしまう。数日後の葬儀の最中、参列者の一人がトムの死に顔の異様さに悲鳴を上げて卒倒し、続いてソーンダイク自身も突然倒れ、「自分に打った薬は仮死状態を起こすだけだから、死んだように見えても生きている」と譫言を残して息絶える。葬儀屋を失った村では代わりの手配もままならず、結局ソーンダイクの遺体もトムと同じ日に、同じ墓地に埋葬されてしまう。以来、村の知恵遅れの青年ジョニー・ダウは墓地に入り浸り二人の墓に語りかけるようになり、妹ソフィーは家に閉じこもって二度と外に出なくなる。毎年6月17日の夜更けに墓地の方角から聞こえるというかすかな声——「リヴ」「連れて行け」「いつか戻ってくる」——について、村の語り手たちは今もジョニーの戯言だと言い張りながら、決して確信を持って語ろうとはしない。

読みどころと注目テーマ

村の噂話・伝聞という形式そのものが恐怖を増幅させる語りの技巧が特徴的な一篇。超自然の存在を直接描かず、早すぎる埋葬という現実の恐怖と、村人たちの語りの曖昧さの中に恐怖を漂わせる構成は「墓地にて」とも通じる。

執筆背景と影響

ヒールド代作群の中でも、超自然色よりも人間同士の因縁と村落共同体の陰惨さを前面に出した異色作。方言混じりの聞き書き調の語りは、ラヴクラフトがニューイングランドの田舎町の空気を再現する際に得意とした手法の好例といえる。

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