概要
ニューイングランドの小村ペック・ヴァレーの葬儀屋ジョージ・バーチにまつわる怪異を、彼の主治医であった語り手が回想する一篇。粗雑な仕事で知られたバーチが、ある事故をきっかけに一変した理由が明かされる。
作品情報
- 執筆・発表年: 1925年9月執筆/1932年11月号「ウィアード・テイルズ」誌発表(あまりに凄惨だとして掲載を7年近く見送られたことで知られる)
- 主題タグ: 手抜き仕事への報い、生者への死者の復讐、棺という装置、田舎町の因習
登場神格・用語
(なし)
あらすじ
粗雑で吝嗇な葬儀屋ジョージ・バーチは、凍結した地面のため冬の間だけ遺体安置所に仮安置していた棺を、春になって順に墓地へ移す作業をしていた。生前バーチを親身に助けてくれた小柄な老人マシュー・フェナーには上等な棺を、意地悪で恨みがましいことで知られたアセイフ・ソイヤーには粗末な棺を、あろうことか取り違えて割り当てていた。作業中、うっかり安置所に閉じ込められたバーチは、脱出のため床に積まれた棺を足場に組み上げ、天窓へと這い上がろうとする。ようやく脱出に成功しかけたその時、何かが彼の両足首を掴んで離さない。凄まじい痛みとともに脱出したバーチは、両足のアキレス腱を深くえぐられていた。駆けつけた医師デイヴィスが安置所を検分すると、崩れた棺の中身は取り違えられたままの姿で――そしてバーチの傷は、まるで小柄なフェナー用の棺に合わせるように、几帳面に切り揃えられていた。
読みどころと注目テーマ
超自然の存在を一切登場させず、因果応報という一点のみで恐怖を成立させる構成の巧みさが際立つ。ラヴクラフト自身が「あまりに露骨で下品」と自己評価しつつも、その直接的な恐怖ゆえに繰り返し高く評価されてきた一篇。
執筆背景と影響
編集者ファーンズワース・ライトはあまりの凄惨さを理由に本作の掲載を長らく見送り、実に7年後の1932年までウィアード・テイルズ誌への掲載が持ち越された。ラヴクラフトの怪奇小説の中でも特に直接的な身体的恐怖を扱う異色作として知られる。




