短編小説 — THE CURSE OF YIG

イグの呪い

開拓時代のオクラホマに移り住んだ夫婦のうち、蛇を病的に恐れる夫が惨劇の夜に落命し、蛇神イグの呪いを恐れた妻の運命が精神病院での恐るべき真実へとつながる。

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イグの呪い

「一九二五年、私は蛇にまつわる伝承を求めてオクラホマへ赴いたが、そこから持ち帰ったのは、生涯消えることのない蛇への恐怖だった。見聞きしたことすべてに自然な説明がつくのだから、これは愚かしいことだと自分でも認めるが、それでもなお、この恐怖は私を支配し続けている。」

— H・P・ラヴクラフト(ゼリア・ビショップ名義の代作)「イグの呪い」(1929年発表)冒頭部

概要

1889年、オクラホマの新開地に移り住んだ開拓者夫婦を襲った惨劇を、精神病院の医師の回想として語る一篇。蛇神イグ——「蛇の父」への根深い恐怖が、ある夫婦の運命をどのように狂わせていったかを描く。

作品情報

登場神格・用語

  • イグ(初出典)

あらすじ

アーカンソーからオクラホマの新開地へと移住した開拓者ウォーカー・デイヴィスとその妻オードリーの物語。ウォーカーは幼い頃から異常なまでの蛇への恐怖症を抱えていたが、道中でインディアンに伝わる蛇神イグの伝承に触れ、その恐怖はますます強まっていく。定住後、ハロウィーンの夜、家の中に蛇の大群が現れる幻覚に襲われたウォーカーは恐怖のあまり気絶し、目を覚ましたオードリーは暗闇の中で夫が「蛇の魔物」に変えられたと錯覚し、斧で滅多打ちにしてしまう。実際には蛇はおらず、全ては恐怖が生んだ妄想だった。翌日、隣人が発見したのは、斧で切り刻まれた夫の亡骸と、正気を失い蛇のようにただ「シーッ、シーッ」と声を漏らし続ける変わり果てたオードリーの姿だった。物語の語り手である青年医師は、精神病院で余生を送るオードリーが、事件から九ヶ月後に生んだという「もの」――蛇と人間の特徴を併せ持つ生きた子――と対面し、イグの呪いが単なる迷信ではなかったことを悟る。

読みどころと注目テーマ

超自然の脅威と人間の恐怖が生み出す妄想とを巧みに絡ませ、最後の一文でその境界を覆す構成。ゼリア・ビショップの依頼をもとにラヴクラフトが代筆した「代作三部作」の第一作であり、蛇神イグはこの作品で初めて神話大系に加わった。

執筆背景と影響

作家志望のゼリア・ビショップから依頼を受けたラヴクラフトが、幼少期に聞いた恐怖体験を膨らませて書き上げた代作作品。以後「ザ・マウンド」「メデューサの巻き毛」と続くビショップ名義三部作の最初の一篇であり、イグという固有の蛇神を神話体系に導入した点で重要な位置を占める。

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