短編小説 — THE CURSE OF YIG

イグの呪い

1925年、蛇の伝承を調べにオクラホマへ入った民族学者の語り手は、ガスリーの精神病院の地下室B116で「イグの呪いの、生きた犠牲者」を見せられる。院長マクニール医師が語るのは1889年の話。アーカンソーから入植したウォーカーとオードリーのデイヴィス夫妻。夫は蛇を病的に恐れ、妻は旅の途中でガラガラ蛇の巣を叩き潰す。土地の者は言う、イグは子らを傷つけた者を「斑の蛇に変える」と。秋の収穫が終わり、太鼓が鳴りやまない中、ハロウィーンの夜が来る。ゼリア・ビショップのための代作。1928年執筆、1929年11月『ウィアード・テイルズ』発表。約6,900語。

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イグの呪い

「一九二五年、私は蛇にまつわる伝承を求めてオクラホマへ赴いたが、そこから持ち帰ったのは、生涯消えることのない蛇への恐怖だった。見聞きしたことすべてに自然な説明がつくのだから、これは愚かしいことだと自分でも認めるが、それでもなお、この恐怖は私を支配し続けている。」

— H・P・ラヴクラフト(ゼリア・ビショップ名義の代作)「イグの呪い」(1929年発表)冒頭部
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概要

公式アーカイブの本文には「H・P・ラヴクラフト、ゼリア・ビショップのために」と署名があります[1]。雑誌ではビショップの名で出た代作で、イグという蛇の神が初めて名を持って登場した作品です。1928年の作[2]、初出は1929年11月の『ウィアード・テイルズ』[3]。約6,900語。

語り手はアメリカ先住民を研究する民族学者で、1925年、「蛇の伝承を探しに」オクラホマへ入ります。メキシコの蛇神ケツァルコアトルに「より古く暗い原型」があるという仮説を、グアテマラからオクラホマ平原まで追ってきた。ところが「国境の北では蛇の崇拝は恐れと隠蔽に囲まれて」いて、先住民も白人も口を閉ざす。囁き声で教えられたのが、ガスリーの精神病院のマクニール医師でした。医師はまず語り手を地下室の扉B116へ連れていき、覗き窓から中を見せてから、自室で「1889年の話」を語ります[1]。

医師は最初に断ります。「超自然的なものとは考えることを拒む」「悪魔的に悲しい話だが、魔法とは呼ばない」「信仰がある種の人々に持つ力を示しているだけだ」。以下の物語は、その医師の語りとして進みます。最後の一行が、地下室にいたものの正体を告げます[1]。

作品情報

  • 原題: The Curse of Yig
  • 署名: 公式アーカイブ本文は「By H. P. Lovecraft for Zealia Bishop」[1]
  • 執筆: 1928年[2]
  • 初出: 『ウィアード・テイルズ』第14巻第5号、1929年11月、625–636ページ[3]
  • 分量: 約6,900語(公式アーカイブ本文を機械集計)
  • 語り: 一人称の民族学者が枠を語り、中はマクニール医師の語り
  • 時: 枠は1925年。中の物語は1889年春から10月31日の夜、翌日の午後まで
  • 舞台: オクラホマ、ガスリーの精神病院。1889年の物語はウィチタ族の土地、現在のカドー郡(「いまはビンガーという小さな村がある」)

登場神格・用語

  • イグ: 「蛇の半ば人間の父」。中央平原の部族の蛇神で、医師によれば「より南のケツァルコアトルやククルカンの原初の源と推定される」。「完全に悪ではなく」、自分と子である蛇を敬う者にはおおむね好意的だが、秋には「異常に貪欲」になり、儀式で追い払わねばならない。「子らへの容赦ない献身」が最大の特徴で、子を害した者への復讐は「しかるべき拷問ののち、斑の蛇に変える」こと
  • ティラワ: ウィチタの老人たちが「イグに対して呼ぶ」神。「人はその子であり、蛇はイグの子」
  • 秋の儀式: ポーニー、ウィチタ、カドーの土地で8月から10月まで「週また週、絶え間なく」鳴るタムタム(太鼓)。呪医は「アステカやマヤのものに妙に似た」がらがらと笛で音を立てる
  • 登場人物: 語り手(若い民族学者)、マクニール医師(ガスリー精神病院の院長。小柄で髭のない老学者)、ウォーカー・デイヴィス(アーカンソー、フランクリン郡出身。背が高く砂色の髪、灰色の目。「ほとんど癲癇のような」蛇への恐怖)、オードリー・デイヴィス(小柄で浅黒く、黒い直毛は「わずかな先住民の血」を思わせる)、老犬ウルフ、ジョーとサリーのコンプトン夫妻(サリーは「いまも生きていてコンプトン婆さんと呼ばれ」、息子クライドは「州の指導的人物の一人」)、グレイ・イーグル酋長、フィドル弾きのラファイエット・スミス

あらすじ

ガスリーの地下室

語り手の仮説は、ケツァルコアトルの原型が北にある、というものでした。しかしオクラホマでは「6、7人」しか精神病院のことを口にせず、それも囁き声。マクニール医師は語り手の紹介状を読み、「あなたはイグの伝説を研究しているのか」と言います。「私がここに持っているものは、イグの呪いの犠牲者と呼べるものだ──物理的に生きている犠牲者だ」。看護人の大半には見せない。餌をやり部屋を掃除するのは「二人の年配の男」だけ。「それは年を取りも変わりもしないようで、われわれ老人は永遠には続かない」[1]。

二人は地下へ降り、B116の扉の前で医師は覗き窓を開け、金属の扉を叩きます。「かすかな悪臭」と「低い、シューシューという応答」。語り手が覗くと、藁を敷いた床を「這い、身をよじり、時折弱く空虚な音を立てる」ものがいます。人間の大きさで、服を着ておらず、無毛で、「黄褐色の背は薄暗い光の中で微妙に鱗状」、肩は斑点のある茶色、頭は「非常に奇妙に平たい」。それが顔を上げて音を立てたとき、「小さな黒い目は忌々しいほど人間のもの」でした。「な、なんてことだ、あれは何です?」[1]

イグ

医師は自室で語ります。イグは「奇妙な、半ば人の姿をした、きわめて気まぐれな悪魔」で、敬う者には好意的だが秋には貪欲になる。それが8月から10月の太鼓の理由。最大の特徴は子である蛇への献身で、「先住民はこの地方にひしめく毒蛇から身を守ることさえほとんど恐れた」。復讐の方法は、拷問ののち「斑の蛇に変える」こと。インディアン準州の昔はそれほど秘密ではなく、平原の部族は最初の管理官たちに伝説と儀式を自由に語りました。「大きな恐れ」が来たのは1889年の土地開放のときで、「新しい白人はイグとの付き合い方を知らない」と先住民は言い、やがて入植者もそれを額面どおりに受け取るようになった。それでも、と医師は「ほとんど不要な強調」で付け加えます。「唯一、真に確証された恐怖は、魔法ではなく哀れな悲劇だった。すべては物質的で残酷だった──あの、あれほど議論を呼んだ最後の局面さえも」[1]。

1889年、アーカンソーから

ウォーカーとオードリーのデイヴィス夫妻は、1889年春、幌馬車と二頭の騾馬と「年老いて役に立たない」犬ウルフとともに、オザークのフランクリン郡から新しく開放された公有地へ向かいます。「典型的な山の民」で、少し野心があり、アーカンソーより報われる暮らしを望んでいました。ほかの何千もの開拓者と違うのは一つだけ。ウォーカーの「ほとんど癲癇のような」蛇への恐怖です。出生前の原因だという者も、幼いころ年老いた先住民の女が「彼の最期についての暗い予言」で脅したせいだという者もいた。蛇と聞くだけで青ざめ、小さな一匹を見ただけで「痙攣発作に近い」衝撃を受けます[1]。

旅は遅く、季節柄、蛇は少なかった。イグの話を最初に聞かせたのは、クリーク族の土地オクマルギーの白人でした。それが「妙に魅了する効果」を持ち、ウォーカーは以後、質問を重ね、魅了は「ひどい怯え」に変わります。野営地の草を刈り、岩場を避け、「明らかに入植地や移民の列の一部でない人影はすべて、近づいて違うと分かるまで蛇神の可能性があった」[1]。

巣

22日目の夕方、強風で騾馬のために風よけが要り、オードリーはカナディアン川の旧支流の涸れ川床の上に高くそびえる崖を勧めます。ウォーカーは岩場を嫌いながら従い、動物を繋ぎに行きました。オードリーは老犬の妙な嗅ぎ方に気づいてライフルを取り、二つの岩のあいだに「生まれたばかりのガラガラ蛇の一腹」を見つけます。「三、四匹の、のろのろと身をよじる塊」。夫に見せまいと、彼女はためらわず銃床を何度も打ち下ろしました。「嫌悪は大きかったが、本当の恐怖ではなかった」。血を拭って巣を隠す前に、ウルフが主人を呼びに行ったらしく、足音がして、ウォーカーはすべてを見ます[1]。

彼は気絶しかけ、それから「畏れと怒りの混ざったもの」で妻を責めます。「なんてことをしたんだ、オード。この蛇の悪魔イグの話を聞いてなかったのか。子を傷つけたら仕返しする悪魔の神がいるんだぞ。先住民が秋に踊って太鼓を叩くのは何のためだと思う。この土地は呪われてる、話した奴はみんな同じことを言った。イグがここを治めてて、秋になると犠牲を取って蛇に変えに出てくる。カナディアン川の向こうの先住民は、金を積まれても蛇を殺さない」。「イグの子を一腹まるごと踏み潰して、お前は自分に何をしたか。必ず捕まる、遅かれ早かれ。呪医から護符を買えなけりゃ。夜の中から出てきて、お前を這う斑の蛇に変えるぞ」[1]。

以後、旅のあいだじゅうウォーカーは怯えた叱責と予言を続けます。ニューカッスル近くでカナディアン川を渡り、初めて本物の平原の先住民、毛布をまとったウィチタの一団に会い、その頭がウイスキー一クォートと引き換えに、イグに対する「長々しい守りの呪文」を教えました[1]。

ウィチタの土地

選んだ土地は平らで、風が強く、植生はまばら、しかし「耕せば大いに肥沃」。花崗岩の露頭と、「人が作った床のように」地表に広がる大きな平らな岩。蛇の巣になりそうな場所が少ないので、オードリーは夫を説得して、「広く滑らかな露出した石の板」の上に一部屋の小屋を建てさせます。丸太はウィチタ山地に向かう何マイルも先の林から運び、近隣の入植者と助け合って小屋と納屋を建てた。一番近い隣人は1マイル以上先、町らしい町は30マイル北東のエル・リノ。それでも数週間で人々は結束します。同じアーカンソーから来たジョーとサリーのコンプトン夫妻が一番親しくなりました[1]。

サリーは蛇の話が「並外れて豊富」で、その「傑作」は、スコット郡で一度に大群のガラガラ蛇に噛まれた男が毒で膨れ上がり、「ついに体がポンと音を立てて破裂した」という話でした。オードリーはこれを夫には伝えず、コンプトン夫妻にも広めないよう頼み、二人はそれを守ります[1]。

ウォーカーは早めに種を蒔き、井戸を掘り、時々ウィチタの村の円錐形の藁の小屋へ馬で行って、老人と呪医に蛇神とその怒りを鎮める方法を尋ねます。護符はウイスキーと引き換えにいつでも手に入りましたが、聞いた話は安心させるものではなかった。「イグは大きな神だ。悪い薬だ。物事を忘れない。秋には子らが飢えて荒れ、イグも飢えて荒れる。すべての部族は収穫のときイグに対して薬を作る。トウモロコシを少し与え、笛とがらがらと太鼓に合わせて正装で踊る。太鼓を叩き続けてイグを追い払い、ティラワの助けを呼ぶ──人はその子であり、蛇はイグの子。デイヴィスの女がイグの子を殺したのは悪い。収穫のとき、デイヴィスは何度も呪文を唱えろ。イグはイグだ。イグは大きな神だ」[1]。

太鼓

収穫のころには、ウォーカーは妻を「嘆かわしいほど神経質な状態」にしていました。彼の祈りと借り物の呪文は迷惑になり、先住民の秋の儀式が始まると、遠くの風に乗った太鼓が「不吉な背景」を添えます。「なぜ止まないのか」。昼も夜も、週また週、「赤い埃の風と同じくらい執拗に」。オードリーは夫以上にそれを嫌いましたが、夫はそこに「悪に対する強大な、目に見えない防壁」を見ていました。秋は異常に暖かく、「熱い砂埃の雲の不自然さ」が入植者全員の、とりわけ二人の神経を蝕みます[1]。

それでも収穫祭は開かれ、南ミズーリから来たラファイエット・スミスのフィドルが「遠いタムタムの単調な音を忘れさせた」。ハロウィーンが近づき、次の集まりはデイヴィスの小屋で、と決まります。「知る由もなかったが、農耕よりさらに古い血統の、原初のアーリア人以前の恐るべき魔女の安息日」。10月31日、暖かさが破れ、朝は鉛色、昼には風が「焼けつく」から「肌を刺す」に変わりました[1]。

ハロウィーンの夜

午後4時から馬車が着き、バーベキューのあと、スミスのフィドルで一部屋の小屋が踊りで埋まります。老犬ウルフは炉のそばで、時折フィドルの「とりわけ幽霊じみた調べ」に陰気に吠えながら、たいてい眠っていました。リグビー夫妻のコリー犬ジークは「何かに奇妙に落ち着かず」、一晩じゅう嗅ぎ回ります。オードリーとウォーカーは「立派な一組」で、「コンプトン婆さんはいまもあの夜の二人の踊りの印象を思い出すのを好む」。10時、客は家族ごとに帰り、ジークは馬車まで「不気味に吠え」続けました。夜は「刺すように寒く」、ウォーカーは初めて炉に大きな薪を入れ、灰をかぶせて朝まで燻らせます。二人は呪文も呪いも考えられないほど疲れて松の寝台に倒れ込み、炉棚の安物の目覚まし時計が3分刻まぬうちに眠りました。「遠くから、あの地獄のタムタムの律動的な音が、冷たい夜風に脈打ち続けていた」[1]。

医師はここで眼鏡を外し、「客が帰ったあとに何が起きたかを継ぎ合わせるのには大変な困難があった」と断ります。「もっとも、初めのうちは──試みることができた時期もあった」[1]。

床の上のもの

オードリーはイグの恐ろしい夢を見ます。安い版画のサタンの姿で。悪夢の絶頂で目を覚ますと、ウォーカーが起き上がって何かに耳を澄ましていました。「聞け、オード。何か歌って、唸って、擦れるような音がしないか。秋のコオロギか」。たしかに小屋の中にそんな音がある。オードリーは「恐ろしくて、しかも聞き覚えのある何か」を感じ、その向こうでは、雲のかかった半月が沈んだ黒い平原を渡って太鼓が鳴り続けています。「ウォーカー──もしかして──イグの呪い?」。「いや、あいつはそんなふうには来ない。近くで見なけりゃ人の形だ、グレイ・イーグル酋長がそう言ってる。これは寒さで入ってきた害虫だ。コオロギじゃないが似たようなもんだ。起きて踏み潰しとかなきゃ、戸棚をやられる」[1]。

彼は提灯を取り、壁に打ちつけた錫のマッチ箱を鳴らします。マッチの炎が提灯の光になり、二人の目が部屋全体を捉えたとき、「粗い垂木が、二人の同時の悲鳴の狂乱に震えた」。平らな岩の床は、「炎に向かって滑り、いままさに頭をもたげて提灯を持つ者を威嚇する、茶色の斑点のガラガラ蛇の、煮え立つ一面の塊」でした。あらゆる大きさ、数えきれない数。二、三匹がウォーカーに向かって頭を上げる。オードリーは気を失いませんでした。「ウォーカーが床に崩れ落ちて提灯が消え、彼女は闇に投げ込まれた」。彼は二度目の悲鳴を上げず、「人ならぬ者の弓から放たれた無音の矢に射られたように」倒れました[1]。

暗闇の中の時計

意志も現実感も失って、オードリーは枕に倒れます。やがて自分が本当に目覚めていると分かり始め、恐慌と悲嘆が高まりますが、声は出ない。ウォーカーは死んだ。「幼いころ老いた魔女が予言したとおり、蛇で死んだ」。ウルフも助けられなかった、老いの昏睡から目覚めもしなかっただろう。そして今、這うものたちが自分を目指して、闇の中を寝台の柱に絡みつき、毛布の上へ滲み出てくるに違いない。「イグの呪いに違いない。万聖節の夜に怪物の子らを送り、まずウォーカーを取った。なぜ──彼は無実ではなかったか。なぜまっすぐ自分に来ないのか──子蛇を殺したのは自分ひとりなのに」。そして先住民の言う呪いの形を思い出します。殺されるのではない、斑の蛇に変えられる。「床でちらりと見たあのものたちのように──イグが自分を仲間に加えるために送ってきたあのものたちのように」[1]。

目覚まし時計の音が太鼓の上に響きます。蛇は長くかかりすぎる。毛布の上の圧力を感じた気がするたび、それは神経の痙攣でした。時計は刻み、考えが変わっていきます。「あの蛇たちがこんなに長くかかるはずがない」。イグの使者ではなく、岩の下に巣くっていて火に引かれたただのガラガラ蛇ではないか。自分を目指していないのかもしれない、哀れなウォーカーで満ち足りたのかもしれない。それらは今どこに──去ったのか、炉のそばに巻いているのか、まだ死体の上を這っているのか。そこでサリー・コンプトンの話がよみがえります。大群に噛まれた男の毒が肉を腐らせ、死体を膨れさせ、最後に「忌まわしいポンという音を立てて」破裂した。「岩の床の上のウォーカーに、いま起きているのはそれか」。彼女は「自分にさえ名づけられないほど恐ろしい何か」に、耳を澄まし始めていました[1]。

時計は太鼓と「嘲るような、皮肉な拍子」を合わせて刻みます。彼女は気絶させてくれない自分の「繊維の丈夫さ」を呪います。そして、意志の限りを尽くして確かめなければ信じられないことに気づきます。遠い太鼓が止んでいた。いつも彼女を苛立たせてきたが、ウォーカーはそれを「宇宙の外からの名もない悪に対する防壁」と見ていたのではなかったか。この新しい沈黙は好ましくない。「大きな音で刻む時計が、新しい孤独の中で異常に思えた」。ようやく動けるようになった彼女は、顔から毛布を払い、星を背に窓の四角を見ます[1]。

破裂音と、窓の影

「そのとき、警告なく、あの衝撃的な、言いようのない音が来た──裂けた皮膚と逃げる毒の、鈍い腐った破裂音が、闇の中で」。サリーの話、悪臭、そして「噛みつき、引っ掻くような沈黙」。沈黙の縛りが切れ、黒い夜はオードリーの「純然たる、抑えのない狂乱の叫び」に鳴り響きます。意識は去りません。「去ってくれたら、どれほど慈悲深かったか」。叫びの残響の中で、彼女は窓の四角を見続けます。あの窓はまだ完全な四角か。「いや──完全な四角ではなかった。何かが下の縁を侵していた」。時計以外の音がある。「自分のものでも哀れなウルフのものでもない、重い呼吸」。ウルフはとても静かに眠り、起きていれば喘鳴がする。そして星々を背に、「人の形をした黒い悪魔的な影──巨大な頭と肩の波打つ塊が、ゆっくり彼女のほうへ手探りで近づいてくる」のが見えました[1]。

「あっちへ行け、蛇の悪魔! 行け、イグ! 殺すつもりじゃなかった──あの人が怖がると思って。やめて、イグ、やめて! あんたの子を傷つけるつもりじゃなかった──近づかないで──斑の蛇なんかに変えないで!」。半ば形のない頭と肩は、「とても静かに」寝台へ向かってよろめき続けます。「オードリーの頭の中で、すべてが一度に切れた」。縮こまる子どもから「荒れ狂う狂女」へ。斧の場所は知っていた──提灯のそばの壁の掛け釘。闇でも見つけられる。気づいたときには手にしていて、寝台の足元へ、刻々と近づく怪物の頭と肩へ、這い寄っていました。「光があったら、その顔つきは見て気持ちのよいものではなかっただろう」。「これでもか!これでも、これでも、これでも!」。彼女は甲高く笑い、窓の向こうの星明かりが「来たるべき夜明けの、薄い予言的な青白さ」に変わっていくのを見て、笑い声はさらに高くなりました[1]。

サリー・コンプトンの発見

医師は額の汗を拭い、眼鏡をかけ直します。「彼女は生きたのですか。見つかったのですか。説明はついたのですか」。「ええ──生きました、ある意味では。そして説明はついた。魔法はないと言ったでしょう──残酷で哀れな、物質的な恐怖だけです」[1]。

翌日の午後、サリー・コンプトンがパーティの話をしにデイヴィスの小屋へ馬で来ました。煙突から煙が出ていない。また暖かくなっていたのに。納屋で騾馬が腹を空かせた声を出し、戸口で日向ぼっこをするウルフの姿がない。ノックに返事はなく、丸太の扉は施錠されておらず、彼女は押し開けます。「ひどい臭いが溢れ出たが、彼女を打ちのめしたのはそれではなかった。見たものだった」[1]。

床には三つのものが残っていました。燃え尽きた炉のそばに、大きな犬──「疥癬と老いで剥き出しになった皮膚の紫の腐敗、そして毒の膨張で破裂した死骸。まさに一個軍団の蛇に噛まれたに違いない」。扉の右に、「かつて人であったものの、斧で切り刻まれた残骸」──寝間着を着て、割れた提灯を片手に握ったまま。「蛇に噛まれた跡は一切なかった」。そのそばに血まみれの斧。そして床に平たく這う、「かつて女だったが、いまは物言わぬ狂った戯画にすぎない、忌まわしい、うつろな目のもの」。それにできるのは、「シューッ、シューッ、シューッと音を立てることだけだった」[1]。

「あれは何だったのです」

医師も語り手も額の冷たい汗を拭っています。語り手は「震えながら、愚かしく」言います。「では、ウォーカーは最初に気絶しただけで──叫びで目を覚まし、あとは斧が?」。「ええ」と医師は低く言います。「だが彼はやはり蛇で死んだ。彼の恐怖が二方向に働いたのです──彼を気絶させ、妻を荒唐無稽な話で満たして、蛇の悪魔を見たと思ったときに打ちかからせた」。語り手は考えます。「オードリーには、イグの呪いが妙に成就したようですね。蛇のシューという音の印象が、彼女にかなり刻み込まれていたのでしょう」。「ええ。初めは明晰な時期もあったが、次第に減った。髪は根元から白くなって伸び、やがて抜け始めた。皮膚は斑になり、死んだときには──」[1]

語り手は遮ります。「死んだ? では地下のあれは──あれは何だったのです?」。医師は重々しく言います。「あれは、その四分の三年後に彼女に生まれたものです。ほかに三ついた──二つはさらにひどかった──だが、生きたのはこれだけです」。本文はこの一行で終わります[1]。

読みどころと注目テーマ

「魔法はない」と言い続ける医師

マクニールは冒頭で「超自然的なものとは考えない」「魔法とは呼ばない」と断り、語りの途中でも「唯一確証された恐怖は哀れな悲劇」と念を押し、結末近くでも「魔法はない、残酷で物質的な恐怖だけ」と繰り返します。彼の説明は筋が通っています。岩の下に巣くう蛇、火に引かれた夜の移動、気絶した夫、恐怖で切れた妻、斧。地下室のものについても、彼は「生まれたもの」としか言いません。医師が最後まで自然な説明の側に立っているために、読者は自分で反対側の説明を組み立てることになります。語り手が冒頭で言う「見聞きしたことすべてに自然な説明がつくのだから愚かしいと認めるが、それでも恐怖は私を支配する」は、この構造そのものです。

破裂音の位置

物語のもっとも恐ろしい音は、蛇でも斧でもなく、暗闇の中の「鈍い腐った破裂音」です。本文はそのために、サリー・コンプトンの「傑作」──膨れて破裂した男の話──を、何ページも前に、しかもオードリーが夫に伝えず隣人に口止めした逸話として置いておきます。夫が知らないその話を、暗闇で妻だけが思い出す。翌日サリーが見つけた「破裂した」死骸は犬のものです。オードリーが聞いた音の主が誰(何)だったかは、そこで初めて分かります。

ウォーカーは蛇に殺されたのか

「彼はやはり蛇で死んだ」と医師は言います。噛み跡は一つもなく、殺したのは妻の斧。幼いころの予言(蛇で死ぬ)は、恐怖が二方向に働くという形で「成就」した。この作品の呪いは、蛇神が直接手を下すことなく、恐れる者の恐れそのものを通して働く。一方、オードリーの側では、「斑の蛇に変えられる」という呪いの形が、髪の脱落と皮膚の斑と「シューッ」という声とに──そして最後の一行のものに──重なります。医師の説明は彼女についても「信仰の力」で通しますが、最後の一行だけは、彼の説明の枠からはみ出したまま置かれています。

先住民の描かれ方

本作は先住民の伝承を素材にしていて、語り手は「先住民の研究者」を名乗りますが、本文には当時の白人の目線そのままの語(先住民への蔑称、「哀れな」「無害な」といった評語)と、ウイスキーと引き換えに呪文を売る、という描写が繰り返し出てきます。イグの伝承も、「ケツァルコアトルの原型」という語り手の仮説も、本文の中の設定であって、実在の部族の信仰の記録ではありません。

執筆背景と影響

公式アーカイブの年譜は本作を「ゼリア・ビショップと、1928年」と記し[2]、本文の署名は「H・P・ラヴクラフト、ゼリア・ビショップのために」です[1]。初出は1929年11月の『ウィアード・テイルズ』第14巻第5号、625ページから636ページでした[3]。ビショップとの分担や執筆の経緯について、公式アーカイブの本文と作品情報ページに記載はなく、当サイトでは確認していません。

イグの名はその後、同じくビショップのための代作墳丘(1929〜30年)に再び現れます。あちらもオクラホマが舞台で、本作のウィチタ族の土地からそれほど離れていません。

「ある恐怖を病的に持つ人物が、その恐怖の形そのままに死ぬ」という骨格は、本作のウォーカーが最初の例です。恐怖の対象が実在するかどうかを最後まで宙吊りにし、医師や学者に「自然な説明」を語らせる枠は、名状しがたきもの(1923年)や墓地にて(1925年)にもあります。本作では、その枠の外側に「生まれたもの」が一つ残されています。

出典

[1] H. P. Lovecraft [for Zealia Bishop], “The Curse of Yig” (本文). The H. P. Lovecraft Archive.https://www.hplovecraft.com/writings/texts/fiction/cy.aspx本記事の引用・要約はすべてこの本文に基づきます。訳文は当サイトによる試訳です。

[2] “Lovecraft’s Fiction” (作品年譜). The H. P. Lovecraft Archive.https://www.hplovecraft.com/writings/fiction/執筆時期(ビショップと、1928年)、および「墳丘」1929年12月〜30年初め・「名状しがたきもの」1923年9月・「墓地にて」1925年9月18日の出典。

[3] “Data Page for ‘The Curse of Yig'” (作品情報・出版履歴). The H. P. Lovecraft Archive.https://www.hplovecraft.com/writings/fiction/cy.aspx初出『ウィアード・テイルズ』第14巻第5号(1929年11月)625–636ページの出典。

関連作品ガイド ── どれから楽しむか

  • イグ — 本作で初めて名の出た蛇神の項。神格の側から本作を読み直せます。
  • 墳丘 — 同じビショップのための代作で、同じオクラホマ。本作の1889年の開拓地から、あちらの塚の下の地下世界へ、土地の記憶がつながります。
  • 墓地にて — 医師が最後に真相を語る短編。本作のマクニールとあちらのデイヴィスは、どちらも「自然な説明」を言い張る側の人物です。
  • ゼリア・ビショップ — 本作の名義人の項。
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