概要
マサチューセッツ州ダニッチの退廃した旧家ウェイトリー家に生まれた青年。母はアルビノで精神を病んだラヴィニア・ウェイトリー、父は人知を超えた存在ヨグ=ソトースとされ、生後まもなく異常な速さで成長し、10代半ばには既に成人男性の体格に達していた[1]。禁書『ネクロノミコン』の完全なラテン語版を求めてミスカトニック大学へ通い詰めるが、その企ては司書ヘンリー・アーミテージによって阻まれる。
基本プロフィール
- 分類: 人物
- 欧文表記: WILBUR WHATELEY
- 初出・出典: 「ダニッチの怪」(1928年執筆/1929年『ウィアード・テイルズ』4月号発表)
- 出自: 母ラヴィニア・ウェイトリー(ダニッチの旧家、アルビノ)、父はヨグ=ソトースとされる
- 没年(作中): 1928年8月、ミスカトニック大学付属図書館侵入時に死亡
人物像・性格
祖父オールド・ウェイトリーの手ほどきで、幼少期から禁断の知識に親しんだ早熟な青年として描かれる。生後3か月で「満1歳にも満たない乳児には通常見られない大きさと筋力に達していた」[1]、生後7か月で「助けなしに歩き始め、さらに1か月でその足取りのおぼつかなさも消えた」[2]、1年7か月の時点(1914年9月)で「4歳児ほどの大きさに育ち、流暢かつ驚くほど知的に話す子供だった」[3]という異常な成長速度が特徴。生後11か月の時点で既に「厚い唇、毛穴の粗い黄色がかった肌、粗くちぢれた髪、奇妙に伸びた耳など、どこかヤギじみた、あるいは動物めいた何かがあった」[4]と評される風貌を持ち、4歳半(1917年)には「唇と頬は粗い黒っぽいうぶ毛で覆われ、声変わりが始まっていた」[5]という、年齢に見合わぬ早熟した外見だった。
生涯・経歴
祖父オールド・ウェイトリーの手ほどきで、幼少期から禁断の知識に親しみ、『ネクロノミコン』の完全なラテン語版を読み解くため、ミスカトニック大学付属図書館へ足しげく通うようになる。図書館所蔵の版を借り出そうとするも司書ヘンリー・アーミテージに拒まれ、他大学への借用も阻まれた末、夜間に図書館へ不法侵入するが、番犬に襲われ落命する。その死体は人間としての要素がごくわずかしか残っておらず、「疑いなく部分的には人間であり、手や頭部は極めて人間的だった——だが胴体から下の部分は分類学上不可能なほど奇怪だった」[6]、「腰から上は半人半獣的だったが……鰐に似た革質の網状の皮膚を持っていた」「腰から下では、赤い吸盤の口を持つ二十本ほどの触手が力なく垂れ下がっていた」と記される衝撃的な姿だったとされる。検死官が到着した頃には、床の上には粘つく白い塊が残るのみであったという[7]。
彼の死後、彼と対を成す「双子の片割れ」——ラヴィニアが実は二子を産んでいたことが示唆される、姿を持たぬまま巨大化した存在——がダニッチの村を襲い、最終的にセンティネル・ヒルの頂でアーミテージらの呪文によって消滅し、末期に父の名「ヨグ=ソトース」を叫ぶ[8]。
他の人物・存在との関係
母ラヴィニア・ウェイトリー、祖父オールド・ウェイトリーとは血縁関係にあり、父は人知を超えた存在ヨグ=ソトースとされる。姿なき「双子の片割れ」とは、同じ母胎から生まれた兄弟という関係にある。ヘンリー・アーミテージとは、禁書の借用を巡って対立し、彼の死後もその暗号日記がアーミテージによって解読されるという間接的な関わりが続く。
主要登場作と読みどころ
- 「ダニッチの怪」(1928年執筆/1929年発表): ウィルバーの唯一の登場作。異常な成長速度の記述に始まり、禁書を求める執念、そして図書館侵入時の死とその衝撃的な正体の露見までを描く
よくある誤解
Q. ウィルバー・ウェイトリーとダニッチの怪物は同一人物ですか?
A. いいえ。ウィルバーとダニッチの怪物(姿を持たぬ双子の片割れ)は、ラヴィニア・ウェイトリーが産んだ双子の別個体とされる。ウィルバーは人間に近い外見を保っていたが、怪物の方はほぼ完全に姿を持たない存在として描かれる。
Q. ウィルバーの成長速度の異常さは、物語中で医学的に説明されていますか?
A. 明確な医学的説明はない。父が人知を超えた存在ヨグ=ソトースであることが、この異常な成長速度・外見の根本的な原因として示唆されるのみである。
出典
- [1] “Within three months of his birth he had attained a size and muscular power not usually found in infants under a full year of age.”(訳: 「生後3か月以内に、彼は満1歳にも満たない乳児には通常見られない大きさと筋力に達していた」) — H. P. Lovecraft, “The Dunwich Horror”(1928年執筆/1929年発表), 公式アーカイブ ↩
- [2] “At seven months, he began to walk unassisted, with falterings which another month was sufficient to remove.”(訳: 「生後7か月で、彼は助けなしに歩き始め、さらに1か月でその足取りのおぼつかなさも消えた」) — 同上 ↩
- [3] “He had grown as large as a child of four, and was a fluent and incredibly intelligent talker.”(訳: 「彼は4歳児ほどの大きさに育ち、流暢かつ驚くほど知的に話す子供だった」) — 同上 ↩
- [4] “There being something almost goatish or animalistic about his thick lips, large-pored, yellowish skin, coarse crinkly hair, and oddly elongated ears.”(訳: 「厚い唇、毛穴の粗い黄色がかった肌、粗くちぢれた髪、奇妙に伸びた耳など、どこかヤギじみた、あるいは動物めいた何かがあった」) — 同上 ↩
- [5] “His lips and cheeks were fuzzy with a coarse dark down, and his voice had begun to break.”(訳: 「唇と頬は粗い黒っぽいうぶ毛で覆われ、声変わりが始まっていた」) — 同上 ↩
- [6] “It was partly human, beyond a doubt, with very man-like hands and head…the torso and lower parts of the body were teratologically fabulous.”(訳: 「それは疑いなく部分的には人間であり、手や頭部は極めて人間的だった——だが胴体から下の部分は分類学上不可能なほど奇怪だった」) — 同上 ↩
- [7] “When the medical examiner came, there was only a sticky whitish mass on the painted boards.”(訳: 「検死官が到着した頃には、塗装された床板の上には粘つく白い塊が残るのみだった」) — 同上 ↩
- [8] “N’gai, n’gha’ghaa, bugg-shoggog, y’hah; Yog-Sothoth, Yog-Sothoth…”(訳: 「ンガイ、ンガー・ガー、バグ=ショゴグ、イ・ハー。ヨグ=ソトース、ヨグ=ソトース……」、双子の怪物が消滅する際に発した末期の叫び) — 同上 ↩





