※本記事は2026年7月26日時点の発売前情報に基づく紹介です。『Penguin Colony』は2026年リリース予定で、内容は今後変更される可能性があります(Steamで体験版が配信中です)。
概要
『Penguin Colony(ペンギン・コロニー)』は、フォトグラフィーゲーム『ウムランギ ジェネレーション』で2020年のIGF Awards大賞を受賞したOrigame Digitalが開発し、『1000xRESIST』などを手がけたFellow Travellerがパブリッシングを務める探索アドベンチャーです。舞台は1939年の南極。古の存在の呼び声に応えて南極の奥地を目指すナチスの科学者たちと、何世代にもわたり受け継がれた役目を果たすべく南極へ向かう原住民の守護者カイティアキ――その両者の姿を、プレイヤーは「ペンギン」の視点から見届けることになります。いずれかのペンギンとなって凍てつく大地を歩き回り、不可思議な行動を取る人間たちを追い、精神的な重圧に押し潰されて壊れていく人々を観察するという、他に類を見ない構成です。ナレーションはLenval Brown氏が担当し、日本語インターフェイス・字幕にも対応予定。リリースは2026年を予定しています。
クトゥルフ神話との関係
公式ページは本作を「H.P.ラヴクラフトの神話を基に脚色と再解釈を行い、忠実に世界観を発展させた作品」と説明しており、着想元として『狂気の山脈にて』と『時間からの影』の名が明示されています。南極の氷の下に眠る太古の脅威、それを掘り起こしてしまう人間の探検隊という骨格は『狂気の山脈にて』そのものであり、作中の時代設定がラヴクラフトの死からわずか2年後の1939年に置かれている点にも、遺された作品世界を「その後の歴史」として引き継ぐ意識がうかがえます。パブリッシャーは本作を「ラヴクラフト神話の誠実な拡張」と位置づけており、単なる怪物の借用ではなく、原典の時代背景――第二次大戦前夜のオカルトと科学が交錯する空気――ごと再構成しようとする姿勢が特徴です。古の存在を封じ数百年の眠りに還そうとするカイティアキの存在は、原典には無かった先住民の視点から神話的脅威との関係を描き直す試みといえます。
独自の要素・原典との違い
最大の独自性は、いうまでもなく「ペンギンの視点」です。『狂気の山脈にて』では地下の深淵に棲む白色の盲目のペンギンが印象的な脇役として登場しましたが、本作はその発想を反転させ、人類の営みを理解しない生き物の目から人間の狂気を観察させます。恐怖の当事者ではなく傍観者として物語を追うこの距離感は、正気を削られていく人間たちの姿をかえって克明に浮かび上がらせる仕掛けであり、一人称の恐怖体験を旨とする原典との最も大きな違いです。「かなりのストレスを感じながら、これを書いている」という記録者の一文をストアページに掲げる演出も、手記形式で語られる原典の文法への目配せといえます。発売前のため完成形は未知数ですが、体験版が既にSteamで配信されており、海外メディアでも話題を集めています。『狂気の山脈にて』を読んでから触れると、ペンギンという選択の妙が最もよく味わえるはずです。


