旧支配者 — AFORGOMON

アフォーゴモン

原典

異星の都カロードに祀られる「分と周期の神」。時間律を犯した神官には、鎖と業火による永劫の断罪を下す。

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アフォーゴモン

「奇妙な炎の閃光が下から立ち上り、幾重にも巻かれた鎖を打って瞬時に白熱した鉄の色にまで熱した。その炎の源と性質は謎に包まれており、多くの者は人為によるものではなく神自身によるものだと考えていた。」

— Clark Ashton Smith, "The Chain of Aforgomon"(Weird Tales、1935年12月号)

概要

クラーク・アシュトン・スミス『アフォーゴモンの鎖』(Weird Tales 1935年12月号)に登場する時間の神。異星の都カロードで神官団に祀られる「分と周期の神」であり、亡き恋人を取り戻すために時間律を犯した元神官に、輪廻を越えて追いすがる断罪の物語の中心に据えられる[1]。舞台は現代のジョン・ミルワープという人物が前世の記憶に憑かれる形で語られ[2]、時間そのものが復讐する神話として描かれる。

基本プロフィール

  • 分類: 旧支配者(後世の整理による位置づけ。原典では「分と周期の神(god of the minutes and the cycles)」)
  • 欧文表記: AFORGOMON
  • 初出: 「アフォーゴモンの鎖」The Chain of Aforgomon(Weird Tales 1935年12月号)[3]
  • 作者: クラーク・アシュトン・スミス
  • : 異星の都カロード(4つの太陽を戴く惑星ヘスタン)の神殿
  • 信仰圏: カロードの神官団による専従の祭祀。冒涜者への刑罰の執行者でもある

別名/呼称

  • 「分と周期の神(god of the minutes and the cycles)」— 神官アトモックスによる呼称[4]
  • 「時間の神(the time-god)」— 語り手による呼称[5]
  • 現代日本語圏での定訳は定まっていないため、本サイトでは「アフォーゴモン」を採用

区分

後世の事典的整理では旧支配者に数えられることが多い。ただし原典単体で見れば、アフォーゴモンは侵略者的な宇宙的恐怖というより、「時間律そのものを体現する審判者」である。過去を改変しようとする者を絶対に赦さないという一点において、この神は倫理的な秩序と分かちがたい。

象徴・モチーフ

  • 円盤形の祭壇: 渦巻き瑪瑙(ゾーン・アゲート)で作られ、天文学的な符号が刻まれている[6]
  • : 冒涜者を縛る、錆びることのない黒金の鎖。永劫の刑罰の象徴[7]
  • 業火: 深淵の底から立ち上り、鎖を白熱させる正体不明の炎。神自身の顕現とも噂される[8]
  • 輪廻と多重の生: 語り手はカロードの神官から現代の「ジョン・ミルワープ」に至るまで、複数の生を貫いて神の裁きを受け続ける[1]

性質・権能

  • 神官に「分と周期」すなわち時間の秩序そのものを司らせ、その侵犯を絶対に許さない
  • 語り手が禁じられた魔道書の指示で祭壇を汚し[9]、対抗する宇宙的な力に生贄を捧げて時間を犯すと、都カロード全体に時間の混乱と狂気が広がった[10]
  • 裁きは高僧を「神の口」として言い渡され[11]、対象は神殿最奥、深淵に臨む石座で錆びぬ黒い鎖に縛められる[7]
  • 刑に処された者は一定の間隔で、深淵の底から昇る正体不明の炎に鎖ごと白熱するまで灼かれる。多くの者はこの炎を神自身の顕現によるものと考えている[8]
  • 罰は一度の生では終わらず、語り手は現代に転生した後もなお神殿の記憶に引き戻され続ける[12]

関係図

原典に他神格との系譜は語られない。関係の中心は語り手(前世のカロード神官、現世のジョン・ミルワープ)とアフォーゴモンそのものであり、両者の間には神官としての献身、裏切りとしての冒涜、そして永劫の追及という一対一の緊張関係がある。語り手を唆す魔道書の存在と、それに記された「アフォーゴモンに敵対する宇宙的な力」も物語上重要だが、原典はその名も正体も明かさない。友人アトモックスは制止する助言者として、高僧ヘルペノールは神意を取り次ぐ司祭として、それぞれ神と語り手の間に立つ。

主要登場作と読みどころ

  • アフォーゴモンの鎖」(1935) — 唯一の原典。現代人ジョン・ミルワープが、麻薬的な薬草の力で異星カロードでの前世の記憶に沈み込んでいく構成が独特で[13]、時間SF的な設定と神話的恐怖が融合している。亡き恋人ベルソリスとの一刻を取り戻そうとした代償が、輪廻を越えた永劫の断罪として返ってくる結末の容赦のなさが読みどころ[1]。「時間を犯した罪は時間そのものに罰される」という円環構造の完成度が高い

よくある誤解

Q. ラヴクラフトの創造した神?

A. クラーク・アシュトン・スミスの創造。ラヴクラフトと書簡で交流した同時代サークルの作家であり、本サイトでは同時代サークル層として扱う。

Q. 侵略者的な宇宙の怪物?

A. 原典のアフォーゴモンは地球や人類を脅かす存在としては描かれない。むしろ自らの秩序(時間律)を守る審判者としての性格が強い。

Q. アフォーゴモン自身が姿を見せる?

A. 原典で神が直接姿を現す場面はない。深淵から昇る炎が神の顕現だと「多くの者が考えている」とされるのみで、確定した記述ではない[8]

Q. 語り手はどうなった?

A. 現代のジョン・ミルワープとして生きる語り手は、前世の記憶と刑罰の残響から逃れられず、手記は未完のまま終わる[14]。原典は救済も明確な破滅も描かない宙吊りの結末を取る。

出典

  • [1] “Thou shalt pass hereafter through other lives in Hestan, and shalt climb midway in the cycles of the world subsequent to Hestan in time and space. But through all thine incarnations the chaos thou hast invoked will attend thee widening ever like a rift.”(訳: 「汝はこの後、ヘスタンにおける他の生を経巡り、ヘスタンに続く世界の周期を半ばまで昇るであろう。だがそのすべての転生を通じて、汝が呼び起こした混沌は絶えず広がる裂け目のごとく汝に付き纏うであろう」) — Clark Ashton Smith, “The Chain of Aforgomon”(Weird Tales, 1935年12月号), Wikisource
  • [2] “It is indeed strange that John Milwarp and his writings should have fallen so speedily into semi-oblivion.”(訳: 「ジョン・ミルワープとその著作が、これほど急速に半ば忘却の中に沈んでしまったのは、まことに奇妙なことである」) — 同上, Wikisource
  • [3] “Weird Tales, Dec. 1935.”(訳: 「ウィアード・テイルズ誌、1935年12月号」) — 同上, Wikisource
  • [4] “Bethink you,” he said with minatory sternness, “that this thing will constitute a breach of the sacred logic of time and a blasphemy against Aforgomon, god of the minutes and the cycles.”(訳: 「『よく考えるがいい』と彼は威嚇するような厳しさで言った。『これは時間の神聖な理法への違反であり、分と周期の神アフォーゴモンへの冒涜となるであろう』」) — 同上, Wikisource
  • [5] “With due reverence and devotion I have worshipped the time-god, and have done in his honor the rites ordained from eternity.”(訳: 「私は然るべき崇敬と献身をもって時間の神を崇拝し、永劫より定められた儀式をその栄誉のために執り行ってきた」) — 同上, Wikisource
  • [6] “Beside me was a dial-shaped altar of zoned agate, carved with the same symbols, which were those of the dreadful omnipotent time-god, Aforgomon, whom I served as a priest.”(訳: 「傍らには渦巻き瑪瑙で作られた円盤形の祭壇があり、同じ符号が刻まれていた。それは私が神官として仕えた、恐るべき全能の時間神アフォーゴモンのものであった」) — 同上, Wikisource
  • [7] “a ponderous chain of black unrusted metal, stapled to the solid rock, was wound about and about me, circling my naked body and separate limbs, from head to foot.”(訳: 「錆びることのない黒い金属でできた重々しい鎖が、固い岩に打ち付けられ、私の裸の体と四肢に幾重にも巻きつけられた、頭から足の先まで」) — 同上, Wikisource
  • [8] “a bolt of strange flame would leap upward, striking the many coiled chain about him and heating it instantly to the whiteness of candescent iron. The source and nature of the flame were mysterious, and many ascribed it to the god himself rather than to mortal agency.”(訳: 「奇妙な炎の閃光が下から立ち上り、幾重にも巻かれた鎖を打って瞬時に白熱した鉄の色にまで熱した。その炎の源と性質は謎に包まれており、多くの者は人為によるものではなく神自身によるものだと考えていた」) — 同上, Wikisource
  • [9] “Then, as the flame-runed volume had bade me do, I defiled the altar of Aforgomon, blotting certain of its prime symbols with dust and spittle.”(訳: 「そして、炎の文字が記された書物が命じた通りに、私はアフォーゴモンの祭壇を冒涜し、その主要な符号のいくつかを塵と唾で汚した」) — 同上, Wikisource
  • [10] “Madness and chaos, they told me, were abroad in Kalood; the divinity of Aforgomon was angered.”(訳: 「狂気と混沌がカロードに広まっていると彼らは私に告げた。アフォーゴモンの神威が怒っているのだと」) — 同上, Wikisource
  • [11] “the aged high-priest Helpenor called aloud upon Aforgomon, offering himself as a mouthpiece to the god, and asking the god to pronounce through him the doom.”(訳: 「老いた大祭司ヘルペノールはアフォーゴモンに向かって声高く呼びかけ、自らを神の口として捧げ、自らを通して裁定を告げるよう神に願った」) — 同上, Wikisource
  • [12] “For two days running, I have not taken the drug souvara: and yet I have returned twice to that oubliette of Aforgomon’s temple, in which the priest Calaspa awaits his doom.”(訳: 「この二日間、薬souvaraを服用していない。それにもかかわらず、私は二度、アフォーゴモンの神殿の土牢に舞い戻った。そこでは神官カラスパが自らの断罪を待ち続けている」) — 同上, Wikisource
  • [13] “This book, unless I have been misinformed concerning the qualities of the drug souvara, will be the record of my former life in a lost cycle.”(訳: 「この書物は、薬souvaraの性質について誤った情報を得ていない限り、失われた周期における私の前世の記録となるだろう」) — 同上, Wikisource
  • [14] “It proved to be a diary, its last entry breaking off abruptly.”(訳: 「それは日記であることが判明した。その最後の記述は唐突に途切れていた」) — 同上, Wikisource
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