旧支配者 — RLIM SHAIKORTH

リム・シャイコース

原典

巨大な氷山ユイキルスに乗って南下し、行く手のすべてを死の寒冷で凍らせる、白く肥大した蟲の姿の旧支配者。偽りの神格化を約束して魔道士たちの魂を喰らう。

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リム・シャイコース

「太った白い蟲を思わせるが、その体躯は海象をも凌ぐ巨大さ。前部は円盤状に立ち上がり、唇のない口が絶え間なく開閉する」

— クラーク・アシュトン・スミス「白蛆の襲来」(1941年)

概要

白蛆の襲来」はスミス自身によって『エイボンの書』第九章──ガスパール・デュ・ノールによる古フランス語写本からの翻訳という体裁を取る一篇であり、リム・シャイコースはその中心に据えられた旧支配者である。北の海に浮かぶ怪異な氷山ユイキルスに宿り、この氷山を意のままに操って南方の陸地・港市を次々と凍死させながら進む、極めて破壊的な存在として描かれる。

基本プロフィール

  • 分類: 旧支配者
  • 欧文表記: RLIM SHAIKORTH
  • 初出: クラーク・アシュトン・スミス「白蛆の襲来」(1941年、Weird Tales誌)
  • 象徴するテーマ: 偽りの神格化、魂の収奪、氷と死、欺瞞的な信仰契約

性質と権能

リム・シャイコースは氷山ユイキルスを自在に操り、風や潮流に逆らってでも南へ進ませる力を持つ。この氷山が通過する先では、陸地は極地の冬に覆われ、船は乗員もろとも凍りつき、都市の通りは死の静寂に包まれる。原文では、花咲く都市ケルンゴスや賑わう港市レックワンが、この「蒼白い光」の通過によって次々と凍結させられていく様が描かれる。

リム・シャイコースは選ばれた魔道士たちに「地上を超えた叡智と支配権」を約束し、彼らを従僕として招き寄せる。しかし実際には、眠っている魔道士たちの家を夜ごと訪れ、一人また一人と肉体ごと喰らっていく。喰われた魂は消滅するのではなく、リム・シャイコースの体内に閉じ込められたまま意識を保ち続けるが、それは彼が目覚めている間のみ「彼自身の一部」として溶け込み、新月ごとに訪れる眠りの間だけ、束の間の別個の意識として目覚める。

原文によれば、リム・シャイコースには一つだけ弱点がある——彼が眠っている間に限り、剣で刺し貫くことで殺すことができる。ただし、彼を殺す者もまた、その行為と同時に命を落とす運命にあるとされる。

身体的特徴と形態

リム・シャイコースの姿は、太った白い蟲(ワーム)を思わせるが、その体躯は海象をも凌ぐ巨大さである。半ば渦を巻いた尾は胴の中央部と同じ太さを持ち、前部は円盤状に立ち上がり、獣とも海洋生物ともつかぬ顔の輪郭をぼんやりと象っている。その顔の中央には唇のない口が絶え間なく開閉し、両の眼窩は虚ろでありながら、時折そこに血の色をした涙のような球体が浮かんでは滴り落ち、台座の下に紫がかった鍾乳石状の凍結物を築き上げていく。

主要登場作品と役割

「白蛆の襲来」の主人公である魔道士エヴァーは、ムー・スーランの地でリム・シャイコースの使者に見出され、他の魔道士たちとともにユイキルスへ招かれる。仲間の魔道士たちが一人ずつ姿を消していくことに不審を抱いたエヴァーは、新月の晩、リム・シャイコースが眠りに就いた隙に単身その塔へ赴く。そこで彼は、既に喰われた魔道士たちの声(彼らの魂はリム・シャイコースの眠りの間だけ目覚める)から真実を聞かされ、剣を抜いてその肥大した体を貫く。傷口からは黒い液体が奔流のように溢れ出し、エヴァーもまた氷の階段から転落して命を落とす。物語は、リム・シャイコースの死によってユイキルスの南下が止んだことを示唆して幕を閉じる。

より深い考察

リム・シャイコースの恐怖の核心は、単なる怪物性ではなく、「信仰」という関係そのものへの裏切りにある。彼は選ばれし者に叡智と支配権を約束し、忠実な奉仕を求める——これは通常の神格崇拝の構図そのものだが、その裏では約束など最初から存在せず、信奉者は単なる糧に過ぎない。喰われた魂が「彼自身の一部」として溶け込みながらも、眠りの間だけ痛切な自意識を取り戻すという設定は、搾取的な関係に絡め取られた者が、自らの隷属状態を束の間だけ自覚する瞬間の寓意として読むこともできる。

また、氷という現象そのものを、意志を持つ捕食者として描く点も特徴的である。単なる自然災害ではなく、人格を持った「欺きの神」として気候的破局を語ることで、スミスは冷たさ・沈黙・死という抽象的な恐怖に、具体的な悪意の輪郭を与えている。

他の存在との関係

原文では『エイボンの書』第九章としての体裁が明示されており、この書物(mythos-termsの「エイボンの書」を参照)を通じてハイパーボレア圏の伝承に組み込まれている。ツァトゥグァアブホースら同じくスミスのハイパーボレア・サイクルに属する存在たちとの直接的な関係は原文中に記述されていないが、いずれも「エイボンの書」に連なる伝承体系の中に位置づけられる点で共通している。

この存在に出会うために

リム・シャイコースを知るには、「白蛆の襲来」そのものを読むのが最も確実である。氷山ユイキルスが港市を次々と凍らせながら南下していく描写と、偽りの神格化の代償として魂を喰らわれていく魔道士たちの運命が、スミス独特の装飾的な文体で語られる。『エイボンの書』の一章という設定を意識しながら読むと、ハイパーボレア・サイクル全体との繋がりもより深く味わえるだろう。

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