小説 — The Quest of Iranon

流離の王子イラノン

失われた黄金の都市アイラを求めてさすらう永遠の若さを持つ吟遊詩人イラノンが、旅の果てに自らの物語そのものが幻想だったと知らされる物語。

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流離の王子イラノン

「蔦の冠を戴き、没薬の香りに黄金の髪を輝かせ、シドラクの山の茨に紫の衣を裂かれた若者が、花崗岩の都テロスへとさまよい入ってきた」

— H・P・ラヴクラフト「流離の王子イラノン」(1935年発表)冒頭部

概要

失われた黄金の都市アイラを求めてさすらう永遠の若さを持つ吟遊詩人イラノンが、旅の果てに自らの物語そのものが幻想だったと知らされる、痛切な喪失の物語。

作品情報

  • 執筆・発表年: 1921年執筆/1935年発表(アマチュア雑誌「Galleon」誌)
  • 主題タグ: 幻想の喪失、永遠の若さ、報われぬ探求

登場神格・用語

あらすじ

金色の髪をした若者イラノンが、都市テロスに現れ、自らを伝説の都アイラの王子だと名乗る。当局は歌をやめて靴職人に弟子入りするか去るよう迫り、行き場のない少年ロムノドが、二人でオオナイの都に向かおうと提案する——もしかしたらそこがイラノンの探すアイラかもしれないと。長い年月の旅の間、ロムノドは歳を重ねていくが、イラノンは変わらぬ若さを保ち続ける。オオナイに辿り着いたイラノンは、そこがアイラでないと知りながらも、人々に気に入られたためしばらく留まる。しかしやがて人気は衰え、特に砂漠の踊り子たちが現れて以降は顧みられなくなり、ロムノドは酒浸りとなって最期を迎える。イラノンは再びアイラを探す旅に出るが、ある年老いた羊飼いから、若い頃に出会った物乞いの少年がいつも「アイラ」の話をしていたに過ぎないという衝撃の真実を告げられる。アイラは実在せず、イラノン自身の幻想(あるいは物乞いの子供の作り話)だったのだ。真実を知った瞬間、彼の永遠の若さは失われ、イラノンは砂の中へと歩み去り、姿を消す。なお旅の途上、イラノンは「大瀑布の下にあるステセロス」を訪れ、「かつてサルナスが立っていた沼地」を目にしたと語られる場面がある[1]——後に「サルナスに来たりし滅び」で語られる、滅びた都サルナスへの言及である。

読みどころと注目テーマ

自己欺瞞と幻想の崩壊、老いと時間、報われない探求の悲哀

執筆背景と影響

1921年2月28日執筆。ドリームサイクルの中でも特に感傷的な一編とされ、理想と現実の乖離という主題を通じて、ラヴクラフト自身の内面的な葛藤が投影されているとする批評的読解も存在する。

出典

  • [1] “I have seen Stethelos that is below the great cataract, and have gazed on the marsh where Sarnath once stood.”(訳: 「私は大瀑布の下にあるステセロスを見た。そしてサルナスがかつて立っていた沼地を眺めた」) — H. P. Lovecraft, “The Quest of Iranon”, hplovecraft.com(原文)
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