概要
『ランドルフ・カーターの陳述』は、H・P・ラヴクラフトが1919年に執筆し、1920年にアマチュア雑誌『The Vagrant』第13号に発表した短編です。後の長編群にも繰り返し登場する探索者ランドルフ・カーターの、記念すべき初登場作でもあります。物語は、警察の尋問に答える形でカーター自身が語る一人称の「陳述」という体裁を取っています。
登場神格・用語
本作には深淵書架収録の固有の神格・用語は登場しません。
あらすじと構成
カーターは友人ハーリー・ウォーレンと共に、古い墓地の地下に眠るという「何か」を探しに出かけます。地下への潜入を単独で行うウォーレンと、地上で電話線を通じて彼の声だけを聞き続けるカーターという構図が、視覚描写を排した独特の緊張感を生み出しています。やがて地下から届く声は次第に異様なものへと変わっていき、最後に発せられる一言が、読者に強烈な余韻を残します。
作品としての位置づけ
視覚的な怪物描写に頼らず、電話越しの「声」だけで恐怖を構築する手法は、ラヴクラフト作品の中でも実験的な部類に入ります。友人ウォーレンの実在モデルとされるサミュエル・ラヴマンとの交流や、当時ラヴクラフトが影響を受けていたアンブローズ・ビアスの怪奇小説の作法も色濃く感じられる一編です。原文は1920年の初出から100年以上が経過しており、米国・日本双方で著作権が満了したパブリックドメイン作品として、複数の電子アーカイブで読むことができます。




