概要
『魔犬 ラヴクラフト傑作集』は、漫画家・田辺剛による初のH・P・ラヴクラフト作品集で、2014年8月25日にKADOKAWA(エンターブレイン)よりビームコミックスとして刊行された。表題作「魔犬」に加え、「神殿」「名もなき都」の全3編を収録する。「神殿」は月刊コミックビームで2009年に発表されており、田辺によるラヴクラフト漫画化はこの作品が起点となっている。
クトゥルフ神話との関係
表題作「魔犬」は1924年発表の同名短編の漫画化で、盗掘者の二人組が墓から奪った護符に呪われ、亡霊の猟犬に追われる顛末を描く。「神殿」(1925年発表)はUボート艦長が漂着した謎の水没都市を、「名もなき都」は無人の砂漠に眠る太古の都市を扱っており、いずれもラヴクラフト初期作品に頻出する「人知を超えた古代の遺構」というモチーフを共有している。
独自の要素・原典との違い
田辺剛の緻密な描き込みによる圧迫感のある画面構成は、後の『狂気の山脈にて』『インスマスの影』など一連のラヴクラフト漫画化シリーズの出発点として位置づけられる。物語の筋立ては原作にほぼ忠実だが、原作が文章でのみ示唆する「見てはいけないもの」を視覚化する手法は本作からすでに確立されている。