編集部注(著作権について): 本記事が扱う『夜の末裔』(1931年「ウィアード・テイルズ」誌4-5月合併号掲載)は、同号が著作権更新台帳(Weird Tales誌更新記録)に更新済みとして記載されており、パブリックドメインとは断定できません。本記事は原文からの引用を行わず、あらすじ・論評のみで構成しています。
概要
頭部への打撃をきっかけに太古の前世の記憶を追体験する語り手が、爬虫類的な種族「夜の末裔」を巡る復讐譚を辿る一編。禁断の書『無名祭祀』が初めて登場する記念碑的な作品でもある。
作品情報
- 原題: The Children of the Night
- 執筆・発表年: 1931年発表(「ウィアード・テイルズ」誌4-5月合併号)
- 主題タグ: 前世の記憶の追体験、爬虫類的な先住種族、『無名祭祀』の初出
登場神格・用語
あらすじ
コンラッドの書斎に集った語り手ジョン・オドネルは、誤って頭部に打撃を受け意識を失い、太古のブリテンを生きたアーリア人戦士アーヤラとしての前世の記憶を追体験する。アーヤラは、ピクト人よりもさらに古い時代から潜む爬虫類的な種族「夜の末裔」に仲間を殺され、復讐を果たすが自らも斃れる。目覚めたオドネルは、居合わせた客の一人ケトリックがその「夜の末裔」の血を引く末裔であると確信し、殺意を抱く。作中でコンラッドはフォン・ユンツトの『無名祭祀』を引き合いに出し、クトゥルフ、ヨグ=ソトース、ツァトゥグァといった名を地の文で明示的に列挙する。
読みどころと注目テーマ
頭部への打撃から蘇る太古の前世の記憶、爬虫類的な先住種族への復讐譚、クトゥルフ神話の固有名詞を地の文で列挙する直接性
執筆背景と影響
フォン・ユンツトと『無名祭祀(Unaussprechlichen Kulten)』が初めて登場する記念碑的な作品で、当サイト記事『無名祭祀』の直接の初出典と確認できる。クトゥルフ、ヨグ=ソトース、ネクロノミコンなどラヴクラフト神話の固有名詞を地の文で明示的に列挙する、ハワード作品中でも屈指の直接的クロスオーバー作品。本作は「ウィアード・テイルズ」誌1931年4-5月合併号に掲載され、ハワードはこの原稿料として60ドルを受け取っている[1]。語り手の相手役ジョン・キロワン教授と友人ジョン・コンラッドは本作以降もハワードの怪奇小説群に繰り返し登場する人物で、翌1932年発表の『闇の一族』をはじめとする緩やかな連作(いわゆる「ジョン・キロワン・サイクル」)を形成している[2]。著者ロバート・E・ハワード(1906年1月22日生)は、1930年にラヴクラフトへ送った賞賛の手紙をきっかけに終生続く文通を始め、「ラヴクラフト・サークル」の一員となった。本作発表の翌年にあたる1932年には代表作『英雄コナン』シリーズの執筆を開始し、生涯にわたり主に「ウィアード・テイルズ」誌を中心とする多数のパルプ雑誌へ精力的に作品を送り続けたが、1936年6月11日、末期の病に伏した母が意識を取り戻すことのないまま逝去すると知らされた直後に自ら命を絶ち、30歳でこの世を去っている[3]。
本作の「夜の末裔」は、ハワードが繰り返し描いた「文明に追われ地底へ潜んだ古代種族」というモチーフの系譜に連なる存在で、クル物語『影の王国』に登場する蛇人間や、ブラン・マク・モーン物語『大地の虫』の”ワームズ”と同系統である可能性が指摘されている。作中でコンラッドが言及する「闇の男」への信仰も、ハワードが複数作で扱ったピクト人の王ブラン・マク・モーンを巡る一連の物語群(ピクト人サイクル)と地続きの世界観を示すものである[4]。もっとも評価は割れており、L・スプレイグ・ディ・キャンプらは本作について「ハワードが生前に売り込んだ全作品の中でも、おそらく最も構想の練られていない一編」であり、結末部はラヴクラフトの作風を模倣したにすぎないと厳しく評している[4]。本作は2001年、ローバート・M・プライス編纂によるハワードのクトゥルフ神話作品を集成したアンソロジー『無名祭祀――ロバート・E・ハワードのクトゥルフ神話小説集』(Chaosium社、353ページ)に収録された19編の一つでもある[5]。
出典
本作は米国において著作権が更新登録されており、パブリックドメインであるとは断定できないため、原文からの引用は行っていません。以下は書誌的事実についての出典です。
- [1] 本作は「ウィアード・テイルズ」誌1931年4-5月合併号に掲載され、ハワードは原稿料として60ドル(2025年時点の価値でおよそ1,270ドル相当)を受け取った。— 出典: Wikipedia「The Children of the Night (short story)」, 該当ページ ↩
- [2] 本作に登場するジョン・キロワン教授は、ハワードのより広い怪奇小説群における「ジョン・キロワン・サイクル」の一人として、本作以降も繰り返し登場する。— 出典: Wikipedia「The Children of the Night (short story)」, 該当ページ ↩
- [3] ロバート・E・ハワード(1906年1月22日-1936年6月11日)は、1930年にラヴクラフトへ送った賞賛の手紙をきっかけに終生続く文通を始め、「ラヴクラフト・サークル」の一員となった。1936年6月11日、末期のがんで意識を取り戻すことのなかった母の枕元で自ら命を絶ち、母は翌日死去、二人の合同葬儀が同月14日に営まれた。— 出典: Wikipedia「Robert E. Howard」, 該当ページ ↩
- [4] 本作の「夜の末裔」は、ハワードのクル物語『影の王国』に登場する蛇人間、またはブラン・マク・モーン物語『大地の虫』の”ワームズ”と同系統の存在である可能性が指摘されている。作中で言及される「闇の男」への信仰は、ハワードのピクト人サイクルと地続きの世界観を示す。L・スプレイグ・ディ・キャンプらは本作を「ハワードが生前に売り込んだ全作品の中でも、おそらく最も構想の練られていない一編」と評し、結末部はラヴクラフトの作風を模倣したものだと指摘している。— 出典: Wikipedia「The Children of the Night (short story)」, 該当ページ ↩
- [5] 本作は2001年、ロバート・M・プライス編纂のアンソロジー『Nameless Cults: The Cthulhu Mythos Fiction of Robert E. Howard』(Chaosium社、353ページ、ISBN 1-56882-130-1)に収録された19編のハワード作品の一つである。— 出典: Wikipedia「Nameless Cults (short story collection)」, 該当ページ ↩








