概要
森瀬繚(もりせ りょう)は、ライター・編集者として書籍や雑誌の企画・執筆、ゲームや小説の設定協力・考証を手がけるかたわら、「クトゥルー神話研究家」の肩書きで知られる人物です[1]。2005年の解説書『図解クトゥルフ神話』を皮切りに、2013年の『ゲームシナリオのためのクトゥルー神話事典』まで、クトゥルー神話に関する著書を多数刊行してきました[1]。2017年からは星海社で H・P・ラヴクラフトの新訳シリーズ「新訳クトゥルー神話コレクション」を手がけ、2023年にはグループSNE・新紀元社刊行の『暗黒神話TRPG トレイル・オブ・クトゥルー改訂版』の監修も務めています[8]。テレビアニメ『がっこうぐらし!』『ダンガンロンパ3 -The End of 希望ヶ峰学園-』では脚本の一員としても参加しました[3][4]。
基本プロフィール
- 肩書き: ライター、編集者、翻訳者。「クトゥルー神話研究家」を称する[1][4]。
- 学歴: 早稲田大学第一文学部出身[4]。
- 活動分野: 書籍・雑誌の企画/編集/執筆、ゲームや小説の設定協力・考証、翻訳、小説執筆、TVアニメ脚本[1][4]。
- 主な所属・関わり先: SBクリエイティブ、新紀元社、ぶんか社、星海社、エンターブレイン(著書刊行元)[1][2][5]。グループSNE・新紀元社(『トレイル・オブ・クトゥルー』改訂版の監修)[8]。
- 本名・生年月日: 当サイトでは調べていません(下記「よくある誤解」を参照)。
別名・呼称
確認できた出典(4Gamer・電ファミニコゲーマーの記事、SBクリエイティブ・新紀元社・星海社・グループSNEの公式書誌情報)の範囲では、「森瀬繚」以外の筆名・別名にあたる情報は見つかりませんでした。SNS上のアカウント名を紹介する記事はありましたが、当サイトはX(旧Twitter)・個人ブログを出典として採用しない方針のため、ここには記載していません。
人物像・性格
「クトゥルー神話研究家」という肩書きは、本人が名乗って始まったものではありません。2018年のインタビューで森瀬氏はこう振り返っています。
そのうち最初の3冊の解説を僕が担当したときに、編集担当さんが僕の肩書を「クトゥルー神話研究家」と書いてくださいまして。
これは、H・P・ラヴクラフト作品をコミカライズしたPHP研究所「クラシックCOMIC」シリーズの解説を担当した際のエピソードとして語られたものです[4]。当時、自身の収入の75%がクトゥルー神話関係の仕事によるものだったことから「これはもうプロと名乗っていいんじゃないか」と考えるようになったといい、本人は「そんなにアカデミックな立場として研究しているわけでもない」と、この肩書きに一定の留保を付けています[4]。
初期の著書についても率直な自己評価を残しています。2005年の『図解クトゥルフ神話』を振り返って、「正直、振り返って見ますと少なからぬ原作の誤読もありましたし、いま現在の僕のクトゥルー神話観ともだいぶ違っているので、ぶっちゃけ全部書き直したい」と語っており、10年余りのあいだに自身の理解が更新され続けてきたことを認めています[4]。
翻訳の方針についても、一字一句を大切にする姿勢が語られています。「新訳クトゥルー神話コレクション」シリーズでの抄訳(部分的な省略・要約)の有無を問われた際には、「僕は一字一句省略しないようにしています。どちらかというと直訳に近いぐらいのものになっていまして、ちょっとでも解りにくい言葉があった場合は、解説や注釈を入れています」と述べています[4]。
クトゥルー神話というジャンルそのものの捉え方についても、独自の姿勢を示しています。神話を「シェアード・ワールド(世界の共有)」ではなく「シェアード・ワード(言葉の共有)」と呼ぶべきだと述べ、「クトゥルー神話のワールドというのはひとりひとりの頭の中にしかない」という立場を取ります[3]。「あなたの感じたものがクトゥルー神話だ」でいいのではないか、という言葉に、解釈の違いをめぐる対立を望まない姿勢が表れています[3]。
生涯・経歴
1986年前後 – クトゥルー神話との出会い本人の回想によれば、栗本薫の小説を読み進めるなかで『魔界水滸伝』という作品を通じてクトゥルー神話の存在に導かれたといいます。以後、ハードカバー版の作品集を読み込みながら理解を深めていきました[3]。同時期には、グループSNEとハミングバードソフトによるホラーRPG『ラプラスの魔』(1987年発売)がクトゥルー神話ものであることが明言されるなど、日本国内でクトゥルー神話に触れる機会が増えていった時期でもあったと語っています[3]。
2005年 – 『図解クトゥルフ神話』刊行新紀元社の図解シリーズ「F-Files」の第2弾として、『図解クトゥルフ神話』(F-Files No.002)を刊行しました。100を超えるキーワードの解説と図解でクトゥルー神話の世界観を紹介する内容で、発行年月日は2005年11月21日です[5]。この本の企画は、当時ライターの朱鷺田祐介氏が新紀元社で別のガイドブックを準備しており枠が埋まっていたため、立ち上げ準備中だった「F-Files」の方でクトゥルー神話を担当することになった、という経緯で実現したと語っています[4]。
2007年 – 『クトゥルー神話 ダークナビゲーション』刊行ぶんか社から、コミックやライトノベル層を主な読者に想定したガイドブック『クトゥルー神話 ダークナビゲーション』を刊行しました[4]。
2008年 – ニューイングランド訪問とジョン・ヘイ図書館への寄贈 SBクリエイティブの公式著者紹介によれば、2008年にニューイングランド地方に滞在してH・P・ラヴクラフトとその作品にまつわる土地を巡り、ブラウン大学のジョン・ヘイ図書館に自著を寄贈したとされています[1]。
2012年 – 『H・P・ラヴクラフト大事典』日本語版監修エンターブレインより刊行された『H・P・ラヴクラフト大事典』の日本語版監修を務めました[1][4]。
2013年 – 『ゲームシナリオのためのクトゥルー神話事典』刊行 SBクリエイティブから『ゲームシナリオのためのクトゥルー神話事典 知っておきたい邪神・禁書・お約束110』を刊行しました。発売日は2013年6月27日です[1]。この本では、クトゥルー神話の設定群を作品ごとに分解し、どの設定が原典小説に由来し、どの設定がクトゥルフ神話TRPGの関連製品で独自に作られたものかを整理しています。一例として、ニャルラトホテプの化身のひとつ「月に吠えるもの」を三本脚の姿で描く図像は、「『クトゥルフ神話TRPG』の関連製品のイラストが発祥」であり、ラヴクラフトやダーレスらの原作小説にはその描写がないと説明しています[4]。同様に、ハスターが黄色いボロを纏う姿も、原作にはない『クトゥルフ神話TRPG』のシナリオに由来する図像だと述べています[4]。この作業を通じて見えてきた点として、「日本で翻訳されているのは全体の7割ぐらい」であり、TRPGの設定を通じて知られていながら日本語訳の存在しない原作が相当数残っている、という見立ても語っています[4]。
アニメ脚本への参加テレビアニメ『がっこうぐらし!』、『ダンガンロンパ3 -The End of 希望ヶ峰学園-』では、脚本の一員として参加しています[3]。
2017年 – 「新訳クトゥルー神話コレクション」開始星海社から、H・P・ラヴクラフトの新訳シリーズ「新訳クトゥルー神話コレクション」の刊行を開始しました。第1弾『クトゥルーの呼び声』は2017年11月15日発売で、「ダゴン」「クトゥルーの呼び声」「インスマスを覆う影」など、”海の恐怖”を扱うラヴクラフト作品を執筆順に並べた構成で、傑作7+1編を完全新訳で収録しています[6]。第2弾は禁断の書物『ネクロノミコン』関連作品を収録したと語られています[4]。
2018年 – 電ファミニコゲーマーのインタビュークトゥルー神話誕生100周年にあたる2018年、電ファミニコゲーマーのインタビューに応じ、日本におけるクトゥルー神話受容史やクトゥルフ神話TRPGの影響について詳しく語りました[3][4]。
2020年 – 「新訳クトゥルー神話コレクション」第5巻刊行シリーズ第5巻『宇宙の彼方の色』を刊行(発売日2020年6月17日)。「怪奇に遭遇し、時に怪奇に身を侵す碩学たちの根城・ミスカトニック大学編」と銘打たれ、表題作(「宇宙からの色」の新訳)のほか、「彼方より」「ハーバート・ウェスト──死体蘇生者」「魔女の家で見た夢」など、ミスカトニック大学を舞台とする11篇を収録しています[7]。
2021年 – NHK文化センターのオンライン講座 NHK文化センター青山教室主催のオンライン講座「クトゥルー神話を探る──H・P・ラヴクラフトの世界」の講師を務めました。全3回の講座で、2021年10月14日・11月11日・12月9日に開催されました[2]。
2023年 – 『トレイル・オブ・クトゥルー』改訂版監修グループSNE発行・新紀元社発売の『暗黒神話TRPG トレイル・オブ・クトゥルー改訂版』(2023年8月29日発売)で、安田均氏との共同監修を務めています。原著者はケネス・ハイト、翻訳はトレイル・オブ・クトゥルー翻訳チームとクレジットされています[8]。
他の人物・存在との関係
朱鷺田祐介: 朱鷺田祐介氏とは、新紀元社での企画が競合した間柄として2018年のインタビューで語られているほか、阿佐ヶ谷ロフトAで毎年開催される「H・P・ラヴクラフト聖誕祭」に、森瀬氏とともに毎回出演していると紹介されています[3]。
安田均: グループSNE・新紀元社刊行『トレイル・オブ・クトゥルー改訂版』(2023年)で、共同監修者としてクレジットされています[8]。
サンディ・ピーターセン: クトゥルフ神話TRPGのデザイナーとして言及されており、森瀬氏は「ラヴクラフト作品のファンだったが、第2世代以降の作品はそれほど読み込んでいなかった」という分析を語っています。版を重ねるなかでリン・カーターやラムジー・キャンベル、ブライアン・ラムレイら第2世代作家の設定が取り込まれていった、という見立てです[3]。
ラムジー・キャンベル、ブライアン・ラムレイ: アーカム・ハウスの刊行物が「公式設定」だったという通説を検証するため、この2人のホラー作家に直接取材したと語っています。ラムレイへの取材では、作中の地名「G’harne」の発音を尋ねたところ「ゲイハーニィ」という、日本語表記(「グハーン」「ガールン」)とは異なる答えが返ってきたというエピソードも紹介しています[3]。
グループSNE・新紀元社: 『トレイル・オブ・クトゥルー改訂版』の発行・発売元であり、2005年の『図解クトゥルフ神話』の刊行元でもあります[5][8]。
星海社: 「新訳クトゥルー神話コレクション」シリーズの版元です[6][7]。
主要登場作と読みどころ
『図解クトゥルフ神話』(新紀元社「F-Files」No.002、2005年) 100を超えるキーワードを図解で紹介する入門書。ダゴンやネクロノミコンといった項目立てで、クトゥルー神話の全体像を一望できる構成です[5]。著者自身は後年、内容の一部に「原作の誤読」があったと振り返っています[4]。
『ゲームシナリオのためのクトゥルー神話事典』(SBクリエイティブ、2013年)神々・クリーチャー・物品・地域に分類しながら、それぞれの設定が「どの作品に由来するか」を解体する構成が特色です。クトゥルフ神話TRPG由来のビジュアル・イメージと原作小説の設定を切り分ける記述は、ニャルラトホテプやハスターを扱う記事を読む際の参照先としても有用です[1][4]。
「新訳クトゥルー神話コレクション」(星海社、2017年-)第1弾『クトゥルーの呼び声』は、ラヴクラフト作品を執筆順に並べることで、独立した短編群を連作のように読める構成にしているのが読みどころです。巻末の年表・注釈もあわせ、インスマスの影に至る”海の恐怖”の系譜を追える一冊になっています[6]。「墳丘」「永劫より出でて」のように、他作家の代作としてラヴクラフトが実質的に全文を執筆した作品も、本シリーズでは「ラヴクラフトの作品」として収録し直している点が特徴です[4]。第5巻『宇宙の彼方の色』は、ミスカトニック大学を舞台とする11篇を集めた構成です[7]。
『暗黒神話TRPG トレイル・オブ・クトゥルー改訂版』(グループSNE/新紀元社、2023年)ケネス・ハイト著、安田均・森瀬繚監修。GUMSHOEシステムを用いたトレイル・オブ・クトゥルーの日本語版改訂版で、2020年に書苑新社から刊行されていたものを発売元を変えて再刊したとされています[8]。
よくある誤解
Q. 「クトゥルフ」と「クトゥルー」、どちらの表記が正しいのですか?森瀬氏自身は「クトゥルー」の表記を使っています。2018年の電ファミニコゲーマーのインタビューでは、本人の方針として、クトゥルフ神話TRPGの影響で「クトゥルフ」という発音が日本国内で広まった一方、小説では「クトゥルー」が主流であり、国際的な標準発音も2017年時点で「クトゥルー」になっているという説明のもとで表記が統一されています[3]。どちらが「正しい」かという単純な優劣の問題ではなく、由来の異なる複数の表記が併存している、という状況として理解するのが実情に近いといえます。
Q. 「クトゥルー神話研究家」は学術的な肩書きなのですか?本人は「そんなにアカデミックな立場として研究しているわけでもない」と述べています。前述のとおり、この肩書きは自称ではなく、雑誌の編集担当者による命名がきっかけでした[4]。
Q. 森瀬氏の著書は最初から現在と同じ内容・見解なのですか?いいえ。2005年の『図解クトゥルフ神話』について、本人は「少なからぬ原作の誤読」があったと述べ、当時と現在とではクトゥルー神話観が変化していると認めています[4]。刊行時期の異なる著書を参照する際は、その時点での理解を反映したものである点に留意が必要です。
Q. 本名や生年月日、詳しい経歴はわからないのですか?当サイトでは調べていません。存命の個人を扱う際の方針として、公表された活動の事実(著書・監修・翻訳・出演・受賞など)のみを、公式資料か編集体制のあるメディアの記事で確認できた範囲に限って記載しています。本名・年齢・生年月日・住所・家族・健康・交友関係については調査の対象にしていません。同様に、朱鷺田祐介氏との詳しい交友関係や、H・P・ラヴクラフト聖誕祭以外での私的な活動についても、確認できた出典がなく、この記事には含めていません。
出典
- [1] “ライター/編集者。書籍や雑誌の企画・編集・執筆、ゲームや小説の設定協力や考証、小説執筆まで幅広く手がける。” — SBクリエイティブ公式サイト「ゲームシナリオのためのクトゥルー神話事典」著者紹介, SBクリエイティブ(取得日 2026-09-13) ↩
- [2] “ライター、翻訳家。TVアニメやゲームのシナリオ・小説の執筆の他、各種媒体の作品で神話・歴史考証に携わる。” — 4Gamer.net「森瀬 繚さんがクトゥルー神話の成り立ちから現在までを語る,NHKカルチャーのオンライン講座が10月14日から3回に分けて開催」(2021年9月28日), 4Gamer.net(取得日 2026-09-13) ↩
- [3] “我々は『クトゥルフ神話TRPG』が作り上げたクトゥルー神話像の中に生きている” — 電ファミニコゲーマー「クトゥルー神話って日本でどう広まったの?【インタビュー:森瀬繚】」(2018年8月16日), 電ファミニコゲーマー(取得日 2026-09-13) ↩
- [4] “編集担当さんが僕の肩書を「クトゥルー神話研究家」と書いてくださいまして。” — 電ファミニコゲーマー「クトゥルー神話って日本でどう広まったの?【インタビュー:森瀬繚】」2ページ目(2018年8月16日), 電ファミニコゲーマー(取得日 2026-09-13) ↩
- [5] “その後多くの作家たちによって綴られてきた、「クトゥルフ神話」の世界を、100を超えるキーワードの解説+図解でわかりやすく紹介します。” — 新紀元社公式サイト「図解 クトゥルフ神話」書籍ページ, Shinkigensha Web(取得日 2026-09-13) ↩
- [6] “人類史以前に地球へと飛来した邪神たちが齎す宇宙的恐怖を描いた架空の神話大系” — 星海社公式サイト「クトゥルーの呼び声」書籍ページ, 星海社(取得日 2026-09-13) ↩
- [7] “怪奇に遭遇し、時に怪奇に身を侵す碩学たちの根城・ミスカトニック大学編が開幕” — 星海社公式サイト「宇宙の彼方の色 新訳クトゥルー神話コレクション5」お知らせページ, 星海社(取得日 2026-09-13) ↩
- [8] “監修:安田均・森瀬繚” — グループSNE公式サイト「暗黒神話TRPG トレイル・オブ・クトゥルー改訂版」製品情報ページ, Group SNE(取得日 2026-09-13) ↩


