概要
『Stygian: Reign of the Old Ones』は、物語重視のホラーCRPGである。Steam公式ストアページによれば、開発は Cultic Games、発売元は Fulqrum Publishing、発売日は 2019年9月26日[1]。
公式紹介文は、本作の出自を明言している[1]。
『Stygian: Reign of the Old Ones』は、ペン&ペーパーRPGの古典『Call of Cthulhu』やH.P.ラヴクラフトの作品に着想を得た、物語重視のホラーCRPGです。
着想元としてTRPGの『クトゥルフの呼び声』を名指ししている。小説だけでなく卓上ゲームの側を出発点に挙げている点が、ほかの神話ゲームと違う。
発売元の表記について
当サイトの旧版はこのゲームの発売元を「1C Entertainment」と書いていたが、現在のSteam公式ストアページの表記は Fulqrum Publishing である[1]。本記事は公式の現行表記に合わせた。
基本情報
Steam公式ストアページの記載による[1]。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 開発 | Cultic Games |
| 発売元 | Fulqrum Publishing |
| 発売日 | 2019年9月26日 |
| ジャンル | インディー / RPG |
| 対応プラットフォーム | Windows / macOS / Linux |
| 対応言語 | 英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、ロシア語、中国語(簡体字)、トルコ語 |
| Steam実績 | 98 |
| 公式サイト | stygianthegame.com |
日本語には対応していない[1]。文章量の多いCRPGであるため、この点は遊びやすさに直結する。
舞台——「黒い日」の後のアーカム
Steamの公式紹介文が語る世界設定は、次のとおりである[1]。
「黒い日」の後、アーカムの街は地上から引き裂かれ、見知らぬ星々の下にある異界へと放り出されました。残されたのは、現実から切り離された街。そこではカルトが公然と台頭し、権力の空白を犯罪が埋め尽くし、住民の多くはすでに正気を失っている。
プレイヤーは数少ない生存者の一人として、「陰鬱な男」と呼ばれる謎の人物の足跡を辿る[1]。
神話ゲームの多くが「これから起きること」を描くのに対し、本作は「すでに起きてしまった後」から始まる。アーカムという、ラヴクラフト作品の中心にある街が、地面ごと別の場所へ移されている。
クトゥルフ神話との関係
引用ではなく土台として使う
公式紹介文は、原典との距離感をこう説明する[1]。
『Stygian』はH.P.ラブクラフトの作品から多大な影響を受けているが、単なる引用にとどまらない。それらを土台として構築されているのだ。馴染み深い概念は拡張され、未解決の疑問は掘り下げられ、同じ土台から新たな物語が生まれてくる。
「拡張し、掘り下げ、新しい物語を生む」——これは、ダーレス以降の作家たちが神話に対してやってきたことと同じ手つきである。当サイトの神話の三層でいえば、本作は2010年代のゲームによる第3層の仕事だが、やっていることは第2層の作家たちに近い。
TRPGの語彙をそのまま持ち込む
本作の設計には、TRPG『クトゥルフの呼び声』由来の考え方が随所に入っている。
8つのキャラクター・アーキタイプ。学者、貴族、犯罪者、オカルティスト、兵士など、選んだ型が出自と初期スキル、そして世界への向き合い方を定義する[1]。これは、TRPGの職業選択がそのままCRPGの枠組みに移されたものである。
信念体系。人道主義、ニヒリズム、合理主義、宗教、秘教——どの信念を持つかで、世界の見え方と世界からの反応が変わる[1]。信念を貫くことは正気の回復を助けるが、背けば代償が伴う[1]。
正気度を、罰則ではなく仕組みにした
本作でもっとも特徴的な設計が、正気度の扱いである。公式は「中核となるゲームプレイシステムとしての正気度」という見出しを立てて、こう書く[1]。
精神状態は、知覚、会話、そして可能な行動に影響を与えます。正気度を失うことは単なるペナルティではなく、新たな選択肢を解き放ち、ゲームの展開を変えることもあります。
狂気が、できることを減らすだけでなく増やす。多くの神話ゲームで正気度は「減ると不利になる数値」だが、本作はそこに分岐を持たせている。
この設計は、力に代償を置く方針全体と対応している。公式によれば、魔法は正気を消耗し、薬物やアルコールは一時的な利益と引き換えに依存症と長期的な悪影響のリスクを伴う[1]。消耗品は強力だが希少で、長期的な弊害を伴うことが多い[1]。
遊びの設計
公式が挙げる要素をまとめると、次のようになる[1]。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 戦闘 | ターン制。位置取りが重要で、計画とリソース管理が鍵。どの戦いにもリスクが伴う |
| 遭遇への対処 | 戦闘だけが解決策ではない。会話・スキル・回避も有効で、時にはより安全 |
| 会話と選択 | 多くの状況に複数の解決策がある。選択によっては道が永久に閉ざされる |
| 仲間 | 孤立した異世界の存在から、過去の恐怖に形作られた人物まで。決断次第で失う・殺される・使えなくなる |
「すべての遭遇に挑む価値があるわけではない」と公式が明記している[1]。戦って勝つことを前提にしない設計は、卓上の『クトゥルフの呼び声』が長年取ってきた立場と同じである。
動作環境の最低要件は、Windows 7 64bit、Intel Core i3相当、メモリ2GB、Nvidia 450 GTS / Radeon HD 5750以上、DirectX 10、ストレージ5GB[1]。非常に軽い。デジタル・アートブックが別売DLC(appid 1160140)として用意されている[1]。
評価
数字は Steam公式のレビュー集計と、ストアページに載るMetacriticスコア による[1][2]。ここに書く以外の点数は当サイトでは扱わない。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| Steamのレビュー評価 | 賛否両論(Mixed) |
| レビュー総数 | 2,524件 |
| 肯定的 | 1,675件 |
| 否定的 | 849件 |
| Metacriticスコア | 81[1] |
この2つの数字が食い違っている点が、本作の受け取られ方を端的に示している。批評媒体の集計であるMetacriticは81と高い一方、Steamの利用者レビューは肯定66%で「賛否両論」に留まる[1][2]。
当サイトが調べた神話系タイトルの中で、批評家評価とプレイヤー評価がこれほど離れているのは本作だけである[3]。
| 作品 | Steam評価 | 肯定率 | Metacritic |
|---|---|---|---|
| Stygian | 賛否両論 | 66% | 81 |
| Sunless Sea | 非常に好評 | 83% | 81 |
| Conarium | やや好評 | 77% | 71 |
| Moons of Madness | やや好評 | 77% | 69 |
| 恐怖の世界 | 非常に好評 | 90% | 77 |
同じMetacritic 81の『Sunless Sea』がSteamで83%の肯定を得ているのに対し、本作は66%である[3]。書かれたものの質と、遊んだときの手触りが一致していない——数字はそう読める。
続く「Stygian」——『Outer Gods』
『Stygian』の名は、その後も別の作品に引き継がれている。Steam公式ストアページによれば、『Stygian: Outer Gods』 は開発が Misterial Games、発売元が Fulqrum Publishing、2025年4月14日に早期アクセスで配信が始まった[4]。
| Stygian: Reign of the Old Ones | Stygian: Outer Gods | |
|---|---|---|
| 開発 | Cultic Games | Misterial Games |
| 発売元 | Fulqrum Publishing | Fulqrum Publishing |
| 配信 | 2019年9月26日 | 2025年4月14日(早期アクセス) |
| ジャンル | インディー / RPG | アクション / RPG / 早期アクセス |
| 日本語 | なし | あり |
開発元が違う。共通しているのは発売元と題名で、ジャンルもターン制CRPGからサバイバルホラーへ移っている[1][4]。公式紹介文は「RPG要素が加わったサバイバルホラー」で、「数千年もの謎を解き明かし、精神をすり減らしながらスキルを駆使して異界の神々に立ち向かえ」と書く[4]。
日本語で『Stygian』の名を冠した作品を遊びたい場合、選べるのはこちらである[4]。ただし本記事が扱う2019年のCRPGとは別の作品なので、購入時は取り違えに注意してほしい。
どんな人に向くか
- 長い英文を読むのが苦にならない人。日本語対応がなく、文章量は多い[1]
- TRPG『クトゥルフの呼び声』の考え方——戦わない選択、正気度、職業による違い——をCRPGで味わいたい人
- 「世界が救われる見込みのない話」を最後まで読みたい人
- 逆に、遊び心地の滑らかさを重視するなら合わない可能性がある。Steamの肯定率66%はその表れである[2]
日本語で遊べる神話ゲームは『恐怖の世界』や『Call of Cthulhu』(Cyanide Studio版)にある。卓上の原典そのものは『クトゥルフの呼び声』TRPGを参照してほしい。
関連記事
- 正気度(SAN) — 本作が中核システムに据えた概念
- アーカム — 本作で地上から引き剥がされる街
- クトゥルフの呼び声(TRPG) — 公式が着想元に挙げる卓上ゲーム
- クトゥルフ神話ゲーム総覧
出典
- [1] Steam公式ストアページ『Stygian: Reign of the Old Ones』(appid 779290、該当ページ)。Steam公式のappdetails API(
store.steampowered.com/api/appdetails?appids=779290&l=japanese&cc=jp)で取得した内容を確認した。開発 Cultic Games、発売元 Fulqrum Publishing、発売日2019年9月26日、ジャンル「インディー/RPG」、対応プラットフォーム Windows・macOS・Linux、Steam実績98、公式サイト stygianthegame.com、対応言語一覧(日本語を含まない)、DLCにデジタル・アートブック(appid 1160140)。紹介文の「ペン&ペーパーRPGの古典『Call of Cthulhu』やH.P.ラヴクラフトの作品に着想を得た」「『黒い日』の後、アーカムの街は地上から引き裂かれ〜」「単なる引用にとどまらない。それらを土台として構築されているのだ」「正気度を失うことは単なるペナルティではなく、新たな選択肢を解き放ち、ゲームの展開を変えることもあります」「すべての遭遇に挑む価値があるわけではない」および8つのアーキタイプ・信念体系・仲間・ターン制戦闘の各節、最低動作環境。Metacriticスコア81(2026年9月15日確認)。 ↩ - [2] Steam公式のレビュー集計API(
store.steampowered.com/appreviews/779290?json=1&language=all&purchase_type=all)。レビュー評価「Mixed」、総数2,524件(肯定1,675件/否定849件)(2026年9月15日確認)。 ↩ - [3] Steam公式ストアページおよびレビュー集計。『Sunless Sea』(appid 304650、Metacritic 81、Very Positive、9,565件・肯定7,941件)、『Conarium』(appid 313780、Metacritic 71、Mostly Positive、2,275件・肯定1,750件)、『Moons of Madness』(appid 1012840、Metacritic 69、Mostly Positive、2,938件・肯定2,277件)、『恐怖の世界/WORLD OF HORROR』(appid 913740、Metacritic 77、Very Positive、9,850件・肯定8,822件)。肯定率は当サイトが肯定件数÷総数で算出した(2026年9月15日確認)。 ↩
- [4] Steam公式ストアページ『Stygian: Outer Gods』(appid 2581410、該当ページ)。開発 Misterial Games、発売元 Fulqrum Publishing、配信開始2025年4月14日、ジャンル「アクション/RPG/早期アクセス」、日本語対応あり。紹介文「RPG要素が加わったサバイバルホラーで、自身の存在を脅かす敵意に満ちた世界に飛び込もう。数千年もの謎を解き明かし、精神をすり減らしながらスキルを駆使して異界の神々に立ち向かえ」を確認した(2026年9月15日確認)。 ↩




