概要
ミズーリ州の荒廃した旧農園「リヴァーサイド」に迷い込んだ語り手が、一夜の宿を借りた老人アントワーヌ・ド・リュシーから聞かされる、一族を破滅させた花嫁マーセリーンをめぐる悍ましい因縁を描く一篇。「代作三部作」の最後を飾る作品。
作品情報
- 執筆・発表年: 1930年執筆(ゼリア・ビショップ名義)/没後、1939年1月号「ウィアード・テイルズ」誌発表
- 主題タグ: 意志を持つ髪、破滅をもたらす花嫁、旧家の因縁、封印された肖像画
登場神格・用語
(なし)
あらすじ
嵐の夜、ミズーリの田舎道で道に迷った語り手は、荒れ果てた旧農園の屋敷に宿を求める。そこで出会った老人アントワーヌ・ド・リュシーは、一族にまつわる恐るべき因縁を語り始める――かつて息子デニスが海外から連れ帰った花嫁マーセリーンは類まれな美貌の持ち主だったが、蛇のようにうねる黒髪は決して朽ちることのない異様な生命力を宿していた。屋敷に滞在した画家フランク・マーシュはマーセリーンの肖像画を描くうちに正気を失い、デニスもまた妻への愛憎に引き裂かれていく。惨劇の末にマーセリーンは命を落とし、遺体は屋敷の地下に生石灰とともに葬られたが、屋根裏に隠された未完の肖像画には、彼女の黒髪が今なお意志を持つかのように描かれていた。語り手が半ば強要されてその絵を見せられると、絵の中の髪が実際に蠢き出す幻覚に襲われ、恐怖のあまり拳銃で絵を撃ち抜いてしまう。屋敷は火に包まれ、老人は錯乱して姿を消す。辛くも脱出した語り手は、道で出会った農夫から、その屋敷はすでに何年も前に焼け落ち、老人も行方知れずになっていたという話を聞かされ、自らが体験した一夜の意味を測りかねたまま去っていく。そして最後に、マーセリーンの出自にまつわる衝撃の事実が明かされる。
読みどころと注目テーマ
意志を持つ黒髪という怪異とゴシック的な旧家の没落を絡めた、代作三部作でも屈指の凝った構成を持つ一篇。物語の結末には、当時の人種観に基づく差別的な設定が用いられており、現代の読者・批評家から強く批判されている点も含めて理解する必要がある。
執筆背景と影響
ゼリア・ビショップ名義三部作(「イグの呪い」「ザ・マウンド」に続く)の最終作で、ラヴクラフトが大幅に加筆・改稿したとされる。ギリシア神話のメデューサ(ゴルゴン)を下敷きにした怪異描写は印象的である一方、結末に組み込まれた人種差別的な要素は、ラヴクラフト作品における偏見を批判的に論じる際にしばしば取り上げられる代表例となっている。



