地名 — YUGGOTH

ユゴス

原典

太陽系の縁、海王星のさらに先を巡るとされる未知の暗黒惑星。黒石で築かれた層状の塔からなる巨大都市を擁し、外宇宙から飛来した菌類状生物ミ=ゴの拠点として描かれる。ラヴクラフト自身は冥王星との同一視を「たぶん」と留保付きで語った。

公開更新作成AI支援で作成

誤りの指摘・訂正依頼と編集方針は運営者情報へ。

ユゴス

「ユゴスには巨大な都市がある――お前に送ろうとした標本のような黒石で築かれた、幾層にも重なる段状の塔々だ。かの地では太陽は星ほどの明るさでしか輝かないが、あの存在たちには光は要らない」

— H・P・ラヴクラフト「闇に囁くもの」(1931年発表)

概要

太陽系の縁、海王星のさらに先を巡るとされる未知の暗黒惑星[1]。黒石で築かれた層状の塔からなる巨大都市を擁し、外宇宙から飛来した菌類状生物ミ=ゴの拠点として描かれる。

基本プロフィール

  • 分類: 天体(惑星)
  • 欧文表記: YUGGOTH
  • 初出: 「闇に囁くもの」(1930年執筆/1931年発表)。同時期の詩篇「ユゴスよりのもの(Fungi from Yuggoth)」(1929〜1930年執筆の36篇のソネット連作)にもその名が刻まれる
  • 位置づけ: 太陽から数えて9番目、海王星のさらに先を巡る惑星[1]

由来・モデル

ラヴクラフトは幼少期から天文学の熱心な愛好家だった。1930年1月、ローウェル天文台が第9惑星(後の冥王星)らしき天体を発見し、3月13日に正式発表すると、同月15日付の友人モートン宛書簡でラヴクラフトは「新惑星をどう思う?すごいぞ!!!それはたぶんユゴスだ」と書き記した。ただし本人はこの同一視を「たぶん(probably)」という留保付きでしか語っておらず、断定はしていない。後続の作家たちは、冥王星が発見当初のセンセーショナルな印象を失ったことなどから、ユゴスを冥王星とは別の天体とする解釈を採るようになり、2006年に冥王星が惑星の定義から外れたことで、この「ユゴス≠冥王星」説はより成立しやすくなったとされる。

設定自体もラヴクラフト自身の手で作品ごとに揺れている。詩篇「ユゴスよりのもの」ではユゴスという場所から菌類が芽吹くと詠われる一方、続く一文ではその衛星とされる天体ニトン(Nithon)が、実は秘された衛星ではなく豊かな大陸を持つ世界として描かれるなど、単一の確定した天体像には整理できない。

歴史・年表

闇に囁くもの」の中で、人里離れたヴァーモントの山中で異星の菌類生物ミ=ゴと接触したヘンリー・エイクリーは、彼らの正体と故郷について徐々に真実を知らされていく。彼らの「直接の主な住処は、太陽系の最も外縁にある、まだ発見されていないほとんど光の届かない惑星——太陽からの距離で9番目にあたる、海王星のさらに先」[1]であるとされ、これがユゴスと呼ばれる。エイクリーは最終的に、自らの脳を金属の筒に収められた状態でユゴスへ運ばれるという体験の一端を語る手記を残す。

性質・特徴

恒星のような弱い光しか届かない暗黒の惑星であり、名も知れず滅んだ古き種族が太古に築いた、キュクロプス的な大理石の橋の下を瀝青の黒い川が流れる[2]。この光景を目にしてなお正気を保ち語れる者がいれば、その者はダンテかエドガー・アラン・ポーになれるだろうと形容されるほどの、想像を絶する景観として描かれる[2]。ミ=ゴ以外にも「ユゴス星人」と呼ばれる存在への言及がラヴクラフト代作(ゴーストライティング)作品「永劫より」にあり、彼らはユゴスから太古のムー大陸へ邪神ガタノトーアを連れてきたとされる。研究者ダニエル・ハームズは事典『エンサイクロペディア・クトゥルフ』のガタノトーアの項で「ユゴスの菌類が置き去りにしていった」と記し、ユゴス星人とミ=ゴを同一視する説を示しているが、両者が同一かどうかは原典でも明言されていない。

後続作家リチャード・A・ルポフは1977年の作品でユゴスに複数の衛星(光を遮る雲に覆われたニトン、ユゴスの月ザマン、ピッチ状の黒い海に覆われた双子の衛星ソグ・ソク〈ショゴスが住むとされる〉)を設定するなど、独自に体系を拡張する後続設定も存在する。ファン考察の中には、ユゴスはミ=ゴの真の故郷ではなく、はるかに広大な域外文明の最寄りの前哨基地に過ぎないという説もあるが、いずれも一次典拠のない後年の解釈にとどまる。

関連する人物・存在・出来事

菌類状の異星生物ミ=ゴの拠点であり、彼らはユゴスと地球との間を往来しながら鉱物資源の採掘等を行っているとされる。ラヴクラフト代作作品「永劫より」を介して、邪神ガタノトーアともユゴス星人という形で間接的に結びつけられている。

主要登場作と読みどころ

  • 「闇に囁くもの」(1930年執筆/1931年発表): 唯一の散文の原典。ヴァーモントの山中を舞台に、ミ=ゴとの接触からユゴスの実像が徐々に明かされていく
  • 詩篇「ユゴスよりのもの(Fungi from Yuggoth)」(1929〜1930年執筆、36篇のソネット連作): 散文とは異なる断片的・幻視的なイメージでユゴスと関連する恐怖を詠う連作詩

よくある誤解

Q. ユゴスは冥王星のことだと断定されているのですか?

A. いいえ。ラヴクラフト自身は友人宛の書簡で「たぶん(probably)」という留保付きで冥王星との同一視を語ったのみで、断定はしていません。後続作家の多くはむしろ両者を別の天体として扱う解釈を採っています。

Q. ユゴスの天体としての設定は一貫していますか?

A. いいえ。詩篇「ユゴスよりのもの」の中だけでも、ユゴス自体の描写や衛星ニトンの扱いに矛盾が見られ、ラヴクラフト自身が単一の確定した天体像を最後まで詰めていなかったことがうかがえます。

出典

  • [1] “Their main immediate abode is a still undiscovered and almost lightless planet at the very edge of our solar system—beyond Neptune, and the ninth in distance from the sun.”(訳: 「彼らの直接の主な住処は、太陽系の最も外縁にある、まだ発見されていないほとんど光の届かない惑星——太陽からの距離で9番目にあたる、海王星のさらに先である」) — H. P. Lovecraft, “The Whisperer in Darkness”(1930年執筆/1931年発表), 公式アーカイブ
  • [2] “The black rivers of pitch that flow under those mysterious cyclopean bridges—things built by some elder race extinct and forgotten before the beings came to Yuggoth from the ultimate voids—ought to be enough to make any man a Dante or Poe if he can keep sane long enough to tell what he has seen.”(訳: 「かの神秘的なキュクロプス的な橋——存在たちが窮極の虚空からユゴスへやって来るより前に絶滅し忘れ去られた、名も知れぬ古き種族が築いたもの——の下を流れる瀝青の黒い川は、目にした者が正気を保って語れさえすれば、誰であれダンテかエドガー・アラン・ポーたらしめるに十分なものであろう」) — 同上, 公式アーカイブ
この記事だけでは物足りない方へ
初めての方への紹介書籍 表紙
初めての方へ

固有名詞を覚えるのがまだ大変なら、神格・怪物をイラストと生息地図でやさしく紹介するこちらから。

『クトゥルフ神話生物解剖図鑑』をAmazonで見る ↗
もっと詳しく知りたい方への紹介書籍 表紙
もっと詳しく知りたい方へ

神格・用語を横断的に調べたいなら、東雅夫による定番の事典が一冊で頼りになります。

『クトゥルー神話大事典』をAmazonで見る ↗

※上記は広告リンク(アフィリエイト)です。

続きを辿る

記事URLをコピーしました