現実の出版物 — THE ENCYCLOPEDIA CTHULHIANA

エンサイクロペディア・クトゥルヒアナ

ダーレス以降

ダニエル・ハームズが著した、クトゥルフ神話の神格・種族・書物・地名を網羅する現実の事典。TRPG『クトゥルフの呼び声』の副読本としても知られる。

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編集部注: 本記事が扱う『エンサイクロペディア・クトゥルヒアナ』は、架空の禁書ではなく、研究者ダニエル・ハームズが実際に著した現実の事典です。ラヴクラフト存命期のパブリックドメイン原典には登場しません。同書は現時点でパブリックドメインではないため、本記事は本文からの引用を行わず、版元の公式資料と書誌情報で構成しています。

概要

『エンサイクロペディア・クトゥルヒアナ(The Encyclopedia Cthulhiana)』は、ダニエル・ハームズ(Daniel Harms)が著した実在の事典である。クトゥルフ神話に登場する神格・種族・魔道書・地名・人物などをアルファベット順に整理し、それぞれの初出と主な出典を記している。

架空の禁書ではない。神話の中に出てくる書物ではなく、神話を外から整理した現実の参考書である。

基本プロフィール

  • 分類: 現実の出版物(事典)
  • 欧文表記: THE ENCYCLOPEDIA CTHULHIANA / 副題は *A Guide to Lovecraftian Horror*[1]
  • 著者: ダニエル・ハームズ
  • 初版: 1994年、ケイオシアム(Chaosium)刊[1]
  • 受賞: 初版の翌年、オリジンズ賞(Origins Award)の特別功労賞を受賞[1]
  • 日本語版: 新紀元社『エンサイクロペディア・クトゥルフ』(2007年2月26日、坂本雅之訳)[2]

初出作品での描かれ方

この項目は、架空の書物であれば「初出作品」にあたる部分である。現実の出版物であるため、ここでは版の歴史を記す。

ケイオシアムの公式発表によれば、版の系譜は次のとおりである[1]。

版 刊行 版元
初版 1994年 Chaosium
— 1995年(初版の翌年) オリジンズ賞 特別功労賞 受賞[1]
第2版 1998年 Chaosium
第3版 2008年 Elder Signs Press
第4版 準備中 Chaosium

第4版については、ケイオシアムが2023年11月10日付(ミシガン州アナーバー)で刊行を発表している[1]。全面カラーのハードカバーで、本文を更新し、挿絵を入れるという内容で、同社のフィクション部門編集者スーザン・オブライエンが進行を担当する[1]。当サイトが2026年9月15日に確認した時点では、同社の告知ページの題は「Releasing in October(10月刊行)」となっていた[3]。

ハームズ本人の言葉も公式発表に引かれている。前の版から15年のあいだに神話の人気が爆発的に広がったこと、その資料の井戸にもう一度潜って本をさらに拡張できるのが喜ばしい、という趣旨である[1]。

第4版の内容として、同社は次を挙げている[3]。

  • 神格・クリーチャー・魔道書・道具の詳細な項目。それぞれが小説や大衆文化のどこに現れたかを含む
  • ハームズによる書き下ろし論考「What is the Cthulhu Mythos?(クトゥルフ神話とは何か)」
  • ニャルラトテップ、ハスター、クトゥルフら主要存在の図版
  • 『ネクロノミコン』の年表と、クトゥルフ神話の年表

ラヴクラフト作品での言及

言及は当然ない。 ラヴクラフト(1890-1937)の没後57年に出た現実の本である。

ただし、この事典が扱う範囲はラヴクラフト原典を大きく越える。ケイオシアムの発表は、本書がラヴクラフトの作品に加えて、この100年のあいだに神話を発展・拡張させた多くの作家——ラムジー・キャンベル、ロバート・ブロック、スティーヴン・キングらを含む——の仕事から材料を取っていると説明する[1]。TRPG『クトゥルフの呼び声』のシナリオやサプリメントも広範に参照されている[1]。

原典・後続作家・TRPGの三つを同じ事典に収める。これは当サイトが神話の三層で層を分けて記録しているのと、対象範囲が重なる。違いは、層を分けて示すか、五十音/アルファベット順に並べて示すかである。

性質と影響

日本語版——新紀元社『エンサイクロペディア・クトゥルフ』

日本語版は書名が少し変わる。新紀元社が2007年2月26日に刊行した 『エンサイクロペディア・クトゥルフ』 がそれで、A5判344ページ、本体1,800円、ISBN 978-4-7753-0531-7[2]。訳は坂本雅之である[4]。

版元の内容紹介から、本書の作りが分かる[2]。

  • 項目数は数百。神格(グレート・オールド・ワン、外なる神、旧き神、異形の神)、アーティファクト、人物、魔道書、異界の種族、都市、惑星など
  • ハームズがあらゆる神話作品やラヴクラフトの書簡などを調べあげ、用語を整理・分析した成果である
  • 項目名は日本語と英語、そしてハームズの提案する発音を併記
  • 該当用語の初出と主な出典が挙げられている
  • 補遺として『ネクロノミコン』の歴史、クトゥルフ神話年表、参考文献が付く。版元は「従来日本ではまとめられていなかった資料」と説明する[2]

「初出と主な出典が挙げられている」——この一点が、本書がファン向けの設定集と違うところである。どの神がどの作品で初めて現れたかを追える構造になっている。当サイトが記事ごとに初出と層を書いているのも、同じ考え方に立つ。

日本語の参考書のなかでの位置

日本語で神話を調べるときの本は、この事典だけではない。同じ新紀元社から、性格の違う本が何冊も出ている[5][6]。

書名 刊行 判型・ページ 性格
図解 クトゥルフ神話(森瀬繚) 2005年11月21日 B6・240ページ 100を超えるキーワードを見開きの図解で説明[5]
エンサイクロペディア・クトゥルフ(ダニエル・ハームズ) 2007年2月26日 A5・344ページ 数百項目を初出・出典つきで並べた事典[2]
クトゥルフ神話 超入門 2012年12月26日 四六・128ページ 会話形式の入門書[6]

『図解 クトゥルフ神話』の目次は、第1章「暗黒の神統記」で神格と種族を、第2章「禁断の書物」で魔道書を扱う構成になっている[5]。神格から入って魔道書へ進むという並べ方である。

これに対してハームズの事典は、五十音/アルファベット順にすべてを並べる。調べたい語が既に手元にあるときに引く本と、全体像を順に追う本という違いがある。当サイトの記事も前者に近く、1項目を1本の記事として独立させている。

なお『クトゥルフ神話 超入門』の版元ページには「関連書籍」として『エンサイクロペディア・クトゥルフ』『図解 クトゥルフ神話』が並ぶ[6]。版元自身が、入門書から事典への導線を引いている。

書名の揺れ

原題は *The Encyclopedia Cthulhiana* だが、日本語版の書名は『エンサイクロペディア・クトゥルフ』である[2]。Cthulhiana という造語をそのまま写さず、日本で通っている「クトゥルフ」に寄せた形になっている。

当サイトは記事名を原題に近い「エンサイクロペディア・クトゥルヒアナ」としているが、書店で探すときは新紀元社の『エンサイクロペディア・クトゥルフ』である点に注意してほしい。

なぜ事典が必要になったのか

クトゥルフ神話は、一人の作家の作品世界ではない。ラヴクラフトが書き、文通仲間が書き足し、没後の作家が広げ、1981年からはTRPGがさらに増やしてきた。同じ神に複数の綴りがあり、同じ書物に複数の来歴があり、ある設定がどこから来たのか誰も即答できない——という状態が、長い時間をかけて出来上がった。

ハームズの事典は、この錯綜を項目ごとに解きほぐす仕事である。ケイオシアムの『クトゥルフの呼び声』クリエイティブ・ディレクター、マイク・メイソンは公式発表の中で、本書が書き手・シナリオ制作者として自分にとって長く不可欠な参考書だったと述べ、神話の怪物・旧支配者・魔道書・信者・地名についての洞察と細部が1冊にまとまっている点を挙げている[1]。初版の版元がケイオシアムだったことにも触れ、第4版で「本が家に帰ってくる」と表現した[1]。

関連する用語

出典

  • [1] Chaosium公式ブログ「Chaosium announces new edition of Daniel Harms’ Encyclopedia Cthulhiana」(ミシガン州アナーバー、2023年11月10日付、該当ページ)。「First published by Chaosium in 1994, the Encyclopedia Cthulhiana won an Origins Award for a Special Achievement the following year. Chaosium published an updated second edition in 1998, and a third edition was published by Elder Signs Press in 2008.」および第4版が全面カラーのハードカバーで本文を更新し挿絵を入れること、フィクション部門編集者 Susan O’Brien が進行を担当すること、ラムジー・キャンベル/ロバート・ブロック/スティーヴン・キングら多数の作家の仕事とTRPGのシナリオ・サプリメントを広く参照していること、Mike Mason と Dan Harms のコメントを確認した(2026年9月15日確認)。 ↩
  • [2] 新紀元社の商品ページ『エンサイクロペディア・クトゥルフ』(該当ページ)。著者ダニエル・ハームズ、A5判344ページ、本体1,800円(税別)、ISBN 978-4-7753-0531-7、発行年月日2007年2月26日。内容紹介の「本書はそのクトゥルフ神話の研究者ダニエル・ハームズ氏があらゆる神話作品やラヴクラフトの書簡などを調べあげ、神話に登場するさまざまな用語を整理・分析した成果である」「項目名は日本語と英語、そしてハームズ氏の提案する発音を併記。また、該当用語の初出と、主な出典が挙げられており」「『ネクロノミコン』の歴史、クトゥルフ神話年表、参考文献など、従来日本ではまとめられていなかった資料が付属」を確認した(2026年9月15日確認)。 ↩
  • [3] Chaosium公式ブログ「Releasing in October – The Encyclopedia Cthulhiana, the definitive guide to the Cthulhu Mythos」(該当ページ)。副題 *A Guide to Lovecraftian Horror*、第4版の内容として神格・クリーチャー・魔道書・道具の詳細な項目(小説と大衆文化での登場を含む)、ダン・ハームズによる論考「What is the Cthulhu Mythos?」、ニャルラトテップ・ハスター・クトゥルフら主要存在の図版、『ネクロノミコン』とクトゥルフ神話の年表が挙げられていることを確認した。当サイトの確認時点(2026年9月15日)で、同ページの題は「Releasing in October」である。 ↩
  • [4] 国立国会図書館サーチ 書誌『エンサイクロペディア・クトゥルフ』(該当ページ)。新紀元社、ISBN 978-4-7753-0531-7、責任表示「ダニエル・ハームズ 著,坂本雅之 訳」(2026年9月15日確認)。刊行月は同サーチが2007年3月、版元の商品ページが2007年2月26日としており、版元の表記を採った。 ↩
  • [5] 新紀元社の商品ページ『図解 クトゥルフ神話』(該当ページ)。著者 森瀬繚、シリーズ名 F-Files No.002、B6判240ページ、本体1,500円(税別)、ISBN 978-4-7753-0422-8、発行年月日2005年11月21日。「100を超えるキーワードの解説+図解」であること、目次が第1章「暗黒の神統記」・第2章「禁断の書物」と続くことを確認した(2026年9月15日確認)。 ↩
  • [6] 新紀元社の商品ページ『クトゥルフ神話 超入門』(該当ページ)。四六判128ページ、本体1,000円(税別)、ISBN 978-4-7753-1077-9、発行年月日2012年12月26日、在庫は品切れ。会話形式の入門書であること、関連書籍として『エンサイクロペディア・クトゥルフ』『図解 クトゥルフ神話』等が挙げられていることを確認した(2026年9月15日確認)。 ↩
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