年表 — The Life and Works of Ramsey Campbell

ラムジー・キャンベル——セヴァン渓谷から英国ホラーの頂点へ

10代でダーレスに見出され、英国独自の神話舞台セヴァン渓谷を創造し、後に「英国で最も尊敬される現存のホラー作家」と評されるに至った巨匠の生涯と創作の軌跡

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概要

ラムジー・キャンベル(Ramsey Campbell、1946-)は、リヴァプール生まれのホラー小説家・編集者・批評家です。10代でクトゥルフ神話の書き手としてデビューし、オーガスト・ダーレスの助言を受けて、故郷イギリスに架空の神話舞台「セヴァン渓谷」を創造しました。湖に棲む神グラーキをはじめ独自の神格群を生み出した初期神話作品ののち、疎外感や現実の歪みを主題とする心理的ホラーへと進み、『オックスフォード英文学必携』が「英国で最も尊敬される現存のホラー作家」と評する巨匠となりました。60年以上にわたり執筆を続け、30以上の長編と数百の短編を発表しています。

生涯と創作の年表

1946年

  • 1月4日、イングランドのリヴァプールに生まれます(本名ジョン・ラムジー・キャンベル)。

デビュー前

  • ニューイングランドやアーカムを舞台とするラヴクラフト模倣作を書き、アーカム・ハウスへ原稿を送ってオーガスト・ダーレスに才能を見出されます。
  • 「安易に既成の神話アイテムに頼ってはいけない」というダーレスの助言に従い、舞台を故郷イギリスへ移して書き直し、グロスタシャーの架空都市ブリチェスターを中心とするセヴァン渓谷を創造します。

1962年

  • ダーレス編のアンソロジー『Dark Mind, Dark Heart』(邦題『漆黒の霊魂』)収録の「ハイ・ストリートの教会」で、J・ラムジー・キャンベル名義により10代でデビューします。

1964年

  • 最初の著書となる短編集『The Inhabitant of the Lake and Less Welcome Tenants』(湖畔の住人)がアーカム・ハウスから2009部で刊行されます。
  • 表題作「湖畔の住人」では、湖に棲む旧支配者グラーキと、『ネクロノミコン』に類する魔道書「グラーキの黙示録」が初登場します。棘で刺した犠牲者を不死の従者に変えるグラーキの設定は、ロメロ以前にゾンビ的存在を描いた例とされます。
  • 同作は、クラーク・アシュトン・スミスが創造した神ヴルトゥームを、「グラーキの黙示録」の記述を介して初めてクトゥルフ神話に導入しました。

1960年代

  • セヴァン渓谷を舞台とする作品群で、アイホート、イゴーロナク、ダオロス、グロース、バイアティス、妖虫シャン族などの神格・怪物と、ゴーツウッド、クロットン、テンプヒルといった架空地名を創造していきます。

1980年

  • アンソロジー『New Tales of the Cthulhu Mythos』『New Terrors』を編纂し、アンソロジストとしての仕事を本格化させます。

1985年

  • 初期神話作品を集成した短編集『Cold Print』が刊行されます。神話の模倣を離れ、疎外感や現実の歪みを主題とする心理的ホラーへ作風を深めていった時期の、初期神話時代の総決算でもありました(1993年に増補版)。

1990年-1994年

  • スティーヴン・ジョーンズと共に、年刊傑作選『Best New Horror』の最初の5年分を共同編集します。英国幻想文学協会では終生会長を務めています。

1999年-2015年

  • 1999年に世界ホラー大会グランド・マスター賞とブラム・ストーカー賞生涯功労賞、2006年に国際ホラー・ギルド賞リビング・レジェンド賞、2015年に世界幻想文学大賞生涯功労賞を受賞します。
  • 2015年にはリヴァプール・ジョン・ムーアズ大学から、文学への貢献により名誉フェローを授与されます。世界幻想文学大賞4回、英国幻想文学大賞10回、ブラム・ストーカー賞3回という受賞歴を重ねてきました。

後年

  • ブリチェスターの神話世界に回帰し、ダオロスをめぐる三部作「The Three Births of Daoloth」(The Searching Dead / Born to the Dark / The Way of the Worm)を発表します。

2013年-2022年

  • 日本での紹介は長く散発的で、表題作「湖畔の住人」の邦訳は2013年になってからでした(尾之上浩司訳)。
  • 2010年代以降は翻訳が加速し、2022年に『Cold Print』増補版の邦訳『グラーキの黙示』分冊1・2巻が刊行されたことで、計21の神話作品が邦訳されています。

影響・意義

キャンベルは、ブライアン・ラムレイと並ぶクトゥルフ神話「第二世代」の代表格であり、グラーキやイゴーロナクらの創造物はクトゥルフ神話TRPGをはじめ現代の神話体系に広く取り込まれています。ダーレスの助言から生まれたセヴァン渓谷は、ラヴクラフト以後の神話拡張が米国ニューイングランドの外にも新たな舞台を築けることを示し、各国の神話作品の先例となりました。さらに神話出身でありながら心理的ホラーの巨匠へと成長した歩みは、S・T・ジョシが「後世は彼を我々の世代を代表するホラー作家とみなすだろう」と評するとおり、怪奇小説の系譜がラヴクラフト以後も更新され続けることの証となっています。

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