編集部注(層の区分と裏づけの範囲): アイホートは、H・P・ラヴクラフト本人の作品には登場しない。ラヴクラフト公式サイトhplovecraft.comが公開する作品一覧にも、この名は見当たらない[2]。当サイトの三層区分はラヴクラフトの死(1937年)より前の発表か後かで分けており、初出は1973年なので、本記事は拡張神話(ダーレス以降)として扱う[1]。
裏づけの範囲を先に書く。キャンベル作品の本文を当サイトは照合していない。著作権の存続する作品で、公開されたスキャンも見つからなかった。そのため誰がいつどこに発表したかという書誌事実は書誌データベースの記録で確認して断定的に記し[1][3]、姿・権能・取引といった作中の設定は「とされる」と断って区別する。原文からの引用は行わない。
概要
アイホートは、イギリスのモダンホラー作家ラムジー・キャンベルが生み出した存在で、旧支配者に数えられるとされる。「青白き獣」「迷宮の神」とも呼ばれ、地下の迷路に潜み、迷い込んだ人間に死か雛を宿すかの取引を迫る存在として紹介される。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 分類 | 旧支配者(当サイトの神格分類による。公式資料で明言した記述は確認していない) |
| 欧文表記 | EIHORT |
| 創造者 | ラムジー・キャンベル(Ramsey Campbell) |
| 初出 | 「The Franklyn Paragraphs」(1973年、短編集『Demons by Daylight』Arkham House所収)[1] |
| 三層区分 | 拡張神話(ダーレス以降)。基準は1937年より後の発表であること |
| 連作上の位置 | キャンベルの「セヴァーン・ヴァレー」連作[1] |
| 主な異名 | 青白き獣(The Pale Beast)、迷宮の神/迷宮の主(God of the Labyrinth / Master of the Labyrinth) |
| モチーフ | 無数の目、青白いゼラチン状の卵形の巨体、無数の骨ばった脚、地下の迷路、死か雛かを迫る取引 |
初出作品
初出は短編「The Franklyn Paragraphs」で、発表は1973年。書誌データベースの作品記録では、キャンベルが英国セヴァーン川流域を舞台に書き継いだ「セヴァーン・ヴァレー」連作の一篇として登録されている[1]。
初出書は同年の短編集『Demons by Daylight』で、版元はオーガスト・ダーレスが興したアーカム・ハウスである。初版はサウク・シティのアーカム・ハウスから出たハードカバーで、本文vii+153ページ、定価5ドル、表紙はエディ・ジョーンズが描いた。「The Franklyn Paragraphs」は27ページから始まる[1]。ラヴクラフト作品を世に残すために作られた版元から、その神話を書き継ぐ次の世代の本が出た形になる。同書はその後もスター(1975年、1980年)、ジョーヴ/HBJ(1979年5月)、キャロル&グラフの叢書「Masters of Horror」(1990年6月)と版を重ねた[1]。「The Franklyn Paragraphs」自体も、キャンベルの神話作品を集めた短編集『Cold Print』(Headline、1993年)に収められている[1]。なお同じ作品の「初稿(first draft)」が別の記録として登録されており、こちらは2015年8月に世に出ている[1]。
日本語では、サウザンブックス社の『グラーキの黙示2』(2022年2月17日、森瀬繚・尾之上浩司訳、ISBN 978-4-909125-35-4)がキャンベルの神話作品を収めている[3]。同書にアイホートの登場する短編が入っているとされるが、当サイトは収録内容を確認していない。
ラヴクラフト公式サイトの作品一覧に、アイホートの名も「The Franklyn Paragraphs」も含まれない[2]。
原典での描写
アイホートは、H・P・ラヴクラフト存命期(1937年以前)の原典には登場しない。この神格を生み出したラムジー・キャンベルは1946年1月4日、英国リヴァプールの生まれで[6]、初出はラヴクラフトの没後36年にあたる1973年である[1]。原典にこの神格の記述は存在せず、現在流通しているアイホート像はすべて、次の層で作られたものである[1][2]。
ダーレス以降の変化
生み出したのはオーガスト・ダーレスではなくラムジー・キャンベルだが、ラヴクラフト没後に書き足された層に属するので、この項にまとめる。ダーレスの関わりは、自ら興したアーカム・ハウスからキャンベルの短編集を世に出した版元としてのものである[1]。以下の設定は、いずれも当サイトが本文を照合していない[4]。
キャンベルが描くアイホートは、無数の目に覆われた青白く巨大なゼラチン状の卵形の怪物で、無数の骨ばった脚がその身を支えているとされる。遭遇した人間には取引が持ちかけられる。拒めば殺され、受け入れれば未成熟な子(雛)を体内に植え付けられる。雛が孵化するとき、宿主は死に至るという。
どちらを選んでも死は免れない、という説明も広く見られる。ただし取引を受け入れた者がその後どうなるかまで踏み込んだ記述の裏づけを、当サイトは確認していない[4]。植え付けられた雛が小さな蜘蛛のような姿で多数育ち、最後に宿主を食い破るという説明についても同様である。
作中の魔導書『グラーキの黙示(The Revelations of Glaaki)』によれば、人類が滅びたのちアイホートの雛は光の中に生まれ、人類に取って代わるとされる[4]。
TRPGでの扱い
アイホートがクトゥルフ神話TRPGの公式資料でどう扱われているかを、当サイトは確認していない。
以前の版の本記事は、クトゥルフ神話TRPG公式サイト(KADOKAWA)の「アイホート」紹介ページを出典として、この神に目をつけられた者はその場で死ぬか雛を受け入れるかの選択を迫られる、という記述を載せていた。ただし参照先のURLを示せていなかった。今回、同公式サイトを調べたが該当するページを見つけられなかったため、この出典は取り下げ、本文の該当箇所も裏づけのない説明として扱いを改めた。
神格を扱う公式の日本語資料としては『新クトゥルフ神話TRPG マレウス・モンストロルム Vol.2 神格編』(KADOKAWA、2021年10月29日、ISBN 978-4-04-736824-8)がある[5]。同書にアイホートの項目があるかどうかは確認していない。
「旧支配者」という区分も、根拠となる公式の記述を確認したうえで書いているものではない。TRPG層が神話に何をしたのかという全体像は三層で読み解くクトゥルフ神話にまとめてある。
登場作品一覧
| 作品 | 年 | 作者 | 確認の状態 |
|---|---|---|---|
| The Franklyn Paragraphs | 1973 | ラムジー・キャンベル | 初出。書誌は確認済み、本文は未照合[1] |
| The Franklyn Paragraphs(初稿) | 2015 | ラムジー・キャンベル | 別記録として登録されている初稿[1] |
| Before the Storm(邦題:嵐の前に) | 不明 | ラムジー・キャンベル | 『グラーキの黙示2』所収とされるが、収録内容は未確認[3] |
| She Wore a Trench Coat | 不明 | 不明 | アイホートが登場するとされるが、著者・初出とも確認できていない |
関連神格・地域・書物
神格・種族
- グラーキ — 作中の魔導書『グラーキの黙示』はグラーキの物語群に登場する禁書で、その中にアイホートの雛の運命が語られているとされる。両者の具体的な関係(同盟か対立か)を述べた記述は確認できていない
- イゴロナク・ダオロス・グロス — いずれもキャンベルの創作圏に連なる。アイホートとの具体的な関係を述べた記述は確認できていない
地域
- セヴァーン・ヴァレー(英国セヴァーン川流域) — キャンベルが神話作品の舞台として書き継いだ土地。「The Franklyn Paragraphs」もこの連作に属する[1]
書物
- 『グラーキの黙示(The Revelations of Glaaki)』 — 作中の魔導書
分類の考え方
参考文献
- [1] 書誌データベースISFDB「The Franklyn Paragraphs」Title Record #65111(該当ページ)。著者ラムジー・キャンベル、1973年、短編、セヴァーン・ヴァレー連作。同記録の収録一覧で『Demons by Daylight』(Arkham House、1973年)を初出書として確認し、Star(1975年・1980年)、Jove / HBJ(1979年5月)、Carroll & Graf「Masters of Horror」(1990年6月)の各版、および『Cold Print』(Headline、1993年)への収録を確認した。「The Franklyn Paragraphs (first draft)」はTitle Record #2587391(2015年8月)として別に登録されている。初版の書誌(Publication Record #266153、該当ページ)では、発行Arkham House、定価5ドル、vii+153ページ、ハードカバー、表紙エディ・ジョーンズ、目次上「The Franklyn Paragraphs」は27ページから、と記録されている。同記録はarchive.orgの蔵書(demonsbydaylight0000camp)を紐づけているが、これは貸出制限つきの資料で本文を取得できない(当サイトの取得試行はHTTP 401)。ISFDBは利用者が編集する書誌データベースであり、当サイトでは刊行年・版元といった書誌事実に限って用いる。作中の描写の裏づけには使っていない。
- [2] ラヴクラフト公式サイト hplovecraft.com の作品一覧(該当ページ)。アイホートの名も「The Franklyn Paragraphs」も含まれないことを確認した(2026年9月14日確認)。
- [3] 『グラーキの黙示2』(サウザンブックス社、2022年2月17日、ラムジー・キャンベル著、森瀬繚・尾之上浩司訳、ISBN 978-4-909125-35-4)。書誌は日本の出版業界が運営する書誌情報API openBD の記録で確認した(該当レコード)。収録作品の一覧は当サイトで確認していない。
- [4] 姿・取引・雛についての記述は、当サイトが収集した二次的な要約に基づく。キャンベル作品の本文は照合していない。著作権の存続する作品で、公開されたスキャンは見つからなかった。本文を照合できる資料が得られた時点で書き直す。
- [5] 『新クトゥルフ神話TRPG マレウス・モンストロルム Vol.2 神格編』(KADOKAWA、2021年10月29日、ISBN 978-4-04-736824-8)。クトゥルフ神話TRPG公式サイトの書籍情報ページで確認した(該当ページ)。同書の内容は当サイトで確認していない。アイホートの項目があるかどうかも未確認である。
- [6] 書誌データベースISFDB、著者記録「Ramsey Campbell」Author Record #141(該当ページ)。生年月日1946年1月4日、出生地は英国マージーサイド州リヴァプール。
FAQ
Q. アイホートはH・P・ラヴクラフトの創造物ですか。 A. いいえ。ラムジー・キャンベルが1973年の短編「The Franklyn Paragraphs」で登場させた存在です[1]。ラヴクラフト公式サイトの作品一覧にも、神格名・作品名とも含まれていません[2]。
Q. アイホートの雛を受け入れれば助かるのですか。 A. どちらを選んでも死は免れないという説明が広く見られますが、当サイトは本文で確認していません[4]。取引を受け入れた者のその後を述べた記述の裏づけも取れていません。
Q. アイホートとグラーキは同じ神格ですか。 A. いいえ、別の神格です。『グラーキの黙示』は旧支配者グラーキの物語群に登場する禁書で、その中にアイホートの雛についての記述があるとされるにとどまります。両者の具体的な関係を述べた記述は確認できていません。
Q. TRPGでの数値やデータはどこに載っていますか。 A. 当サイトでは確認できていません。神格を扱う公式の日本語資料には『新クトゥルフ神話TRPG マレウス・モンストロルム Vol.2 神格編』がありますが[5]、アイホートの項目があるかどうかも含め、内容は確認していません。





