外なる神 — GHROTH

グロス

ダーレス以降

ラムジー・キャンベルが「The Tugging」で創造した、球体状の姿で宇宙を漂う破滅の歌い手。惑星に接近するたび、眠る旧支配者を目覚めさせ大量絶滅をもたらすとされる。

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グロス

「巨大な赤い一つ目を持つ、小惑星あるいは小衛星のような姿」

— ラムジー・キャンベル「The Tugging」(1976年)
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編集部注(層の区分と裏づけの範囲): グロスは、H・P・ラヴクラフト本人の作品には登場しない。ラヴクラフト公式サイトが公開する作品一覧にも、この名は見当たらない[3]。当サイトの三層区分はラヴクラフトの死(1937年)より前の発表か後かで分けており、初出は1976年なので、本記事は拡張神話(ダーレス以降)として扱う[1]。

裏づけの範囲を先に書く。キャンベル作品の本文を当サイトは照合していない。著作権の存続する作品で、公開されたスキャンも見つからなかった。誰がいつどこに発表したかという書誌事実は書誌データベースの記録で確認して断定的に記し[1][2]、姿・権能・異名といった設定は「とされる」と断って区別する。原文からの引用は行わない。

概要

グロスは、ラムジー・キャンベルが中編「The Tugging」で生み出した外なる神である。赤みがかった小惑星あるいは小衛星のような姿を取り、宇宙を漂いながら「天球の音楽」と呼ばれる歌を響かせるとされる[4]。

この神格が危険なのは、自ら手を下さないからである。通りかかるだけで、その惑星に眠る旧支配者や外なる神が目を覚ましてしまう——きっかけであって、下手人ではない[4]。キャンベルの他の神格が個人の前に現れるのに対し、グロスは惑星ごと相手にする点でも毛色が違う。

項目 内容
分類 外なる神(当サイトの神格分類による整理)[4]
欧文表記 GHROTH
初出 「The Tugging」(ラムジー・キャンベル、中編、1976年10月)[1]
初出書 『The Disciples of Cthulhu』(Edward P. Berglund編、DAW Books、DAW Collectors #213)[1][2]
三層区分 拡張神話(ダーレス以降)。基準は1937年より後の発表であること
主な異名 天球の音楽の歌い手、ネメシス、死の星[4]
象徴 巨大な赤い一つ目、小惑星のような姿、「天球の音楽」、大量絶滅

初出作品

初出は中編「The Tugging」で、発表は1976年10月。収録は『The Disciples of Cthulhu』(編エドワード・P・バーグランド、DAW Books、DAW Collectors叢書第213番、ISBN 0-87997-258-0、定価1ドル50セント、288ページ)である[1][2]。

この収録書は、当サイトの他の記事とも重なる。イドラーの初出「Where Yidhra Walks」(ウォルター・C・デビル・ジュニア)も同じ巻に収められており、目次上はキャンベルの中編のすぐ後、101ページから始まる[2]。1976年のこの一冊が、二柱の神格を同時に世へ出したことになる。

それだけではない。この1冊の目次は、当サイトがこの数日で出典を付け直してきた神格が三つも並ぶ構成になっている[2]。

ページ 作品 作者 当サイトの関連記事
15 The Fairground Horror ブライアン・ラムレイ —
50 The Silence of Erika Zann ジェイムズ・ウェイド —
61 All-Eye ボブ・ファン・ラーホーフェン —
74 The Tugging ラムジー・キャンベル 本記事(グロス)
101 Where Yidhra Walks ウォルター・C・デビル・ジュニア イドラー
130 The Feaster from Afar ジョゼフ・ペイン・ブレナン —
194 Zoth-Ommog リン・カーター ゾス=オムモグ・イソグタ

巻頭には編者バーグランドの前書きと、ロバート・ブロックによる序文が置かれている[2]。ラヴクラフトと文通した世代の書き手が、次の世代の作品集に序を寄せた形である。なお194ページから始まるカーターの中編の題が「Zoth-Ommog」である点は、イソグタの記事で扱った改題の順序——1976年の題がこちらで、「The Horror in the Gallery」は後年の収録時の題——を裏づけている[2]。

再録も追える。作品集『Cold Print』(Scream/Press、1985年3月)に収められ、ドイツ語訳「Der Wanderer」(1980年)、イタリア語訳(1986年3月、『L’orrore di Cthulhu』編Gianni Pilo、Fanucci Editore、I Miti di Cthulhu叢書第3番)も出ている[1]。イタリア語版の題は「Ghroth」——神格名がそのまま作品名に据えられた[1]。

ラヴクラフト公式サイトの作品一覧に、グロスの名も本作も含まれない[3]。

原典での描写

原典に、グロスの記述は存在しない。ラヴクラフト本人の作品にこの名が登場したことはなく、姿・権能のいずれについても、ラヴクラフトが書き残したものはない[3]。1976年の発表は、ラヴクラフトの没後39年にあたる[1]。

ダーレス以降の変化

創造したのはオーガスト・ダーレスではなく、ラムジー・キャンベルである。以下の設定は、いずれも当サイトが本文を照合していない[4]。

  • 姿。巨大な赤い一つ目を持つ、小惑星あるいは小衛星のような姿で描かれるとされる
  • 目を閉じる。探知を逃れるために、この目を閉じることもできるという
  • 天球の音楽。惑星のそばを通り過ぎる際に、サイレンのような歌を響かせるとされる
  • 結果としての破滅。その歌は惑星上で眠る旧支配者や外なる神を目覚めさせ、結果として多くの場合、その惑星の生命が絶滅するか、惑星そのものが破壊されるという

「ネメシス」「死の星」という異名について。地球で周期的に起きてきたとされる大量絶滅——白亜紀末の恐竜絶滅を含む——の背後にグロスがいるとする説から、天文学の「ネメシス仮説」(周期的大量絶滅の原因を太陽の伴星に求める仮説)になぞらえて付けられたとされる[4]。当サイトはこの由来を一次資料で確認していない。科学上の仮説を怪奇小説の設定へ引き寄せた読み方であり、キャンベル自身がそう述べた資料には行き着けていない。

昆虫的な種族シャンの故郷である惑星シャッガイの破壊にも関与したとする説もあるが、これも未照合である[4]。

キャンベルの創造した神格の中での位置も見ておきたい。グラーキ(1964年)・ダオロス(1964年)・イゴロナク(1969年)がいずれもセヴァーン・ヴァレー連作に属し、イングランドの一地方を舞台にしていたのに対し、1976年のグロスは土地から離れて宇宙規模へ出た[1]。書誌データベース上も、本作は連作ではなく「Cthulhu Mythos short fiction」の括りで登録されている[1]。

TRPGでの扱い

クトゥルフ神話TRPGの公式資料におけるグロス個別の扱いは、当サイトでは確認していない。他の外なる神・旧支配者との体系上の位置づけを詳しく論じた記述も見当たらない。

登場作品一覧

作品 年 作者 確認の状態
The Tugging 1976年10月 ラムジー・キャンベル 初出。書誌は確認済み、本文は未照合[1]
The Disciples of Cthulhu 1976年10月 エドワード・P・バーグランド編 初出書。イドラーの初出も同じ巻[2]
Cold Print(作品集) 1985年3月 ラムジー・キャンベル 再録。Scream/Press刊[1]
L’orrore di Cthulhu 1986年3月 ジャンニ・ピロ編 イタリア語訳。題は「Ghroth」[1]

関連神格・地域・書物

神格・種族

  • グラーキ・ダオロス・イゴロナク — いずれも同じキャンベルによる神格。舞台はセヴァーン谷で、グロスだけが宇宙規模に出ている[1]
  • イドラー — 初出書が同じ『The Disciples of Cthulhu』[2]
  • シャン — 惑星シャッガイの昆虫的種族。グロスの関与を伝える説があるが未照合[4]

地域

  • シャッガイ — 破壊に関与したとする説がある惑星。未照合

人物

参考文献

  • [1] 書誌データベースISFDB「The Tugging」Title Record #65122(該当ページ)。著者ラムジー・キャンベル、1976年10月、中編、「Cthulhu Mythos short fiction」の括り。同記録の収録一覧で、初出書『The Disciples of Cthulhu』(編Edward P. Berglund、DAW Books、DAW Collectors #213、1976年10月)とそのNew American Library of Canada版、『Cold Print』(Scream/Press、1985年3月)、ドイツ語訳「Der Wanderer」(1980年)、イタリア語訳「Ghroth」(1986年3月、『L’orrore di Cthulhu』編Gianni Pilo、Fanucci Editore、I Miti di Cthulhu #3)を確認した。ISFDBは利用者が編集する書誌データベースであり、当サイトでは刊行年・版元といった書誌事実に限って用いる。作中の描写の裏づけには使っていない。
  • [2] 書誌データベースISFDB『The Disciples of Cthulhu』Publication Record #38483(該当ページ)。編者Edward P. Berglund、1976年10月、発行DAW Books、叢書DAW Collectors第213番、ISBN 0-87997-258-0、定価1ドル50セント、288ページ。目次は、Jack Gaughanの口絵(ii)、編者Edward P. Berglundの前書き(vii)、Robert Blochの序文(9)に続き、The Fairground Horror(15、Brian Lumley)/The Silence of Erika Zann(50、James Wade)/All-Eye(61、Bob van Laerhoven)/The Tugging(74、Ramsey Campbell)/Where Yidhra Walks(101、Walter C. DeBill, Jr.)/The Feaster from Afar(130、Joseph Payne Brennan)/Zoth-Ommog(194、Lin Carter)の順に並ぶ。
  • [3] ラヴクラフト公式サイト hplovecraft.com の作品一覧(該当ページ)。グロスの名も本作も含まれないことを確認した(2026年9月15日確認)。
  • [4] 姿・権能・異名の由来・シャッガイとの関係についての記述は、当サイトが収集した二次的な要約に基づく。キャンベル作品の本文は照合していない。著作権の存続する作品で、公開されたスキャンは見つからなかった。とくに「ネメシス仮説」になぞらえた異名の由来は、作者自身の言明を確認できていない。本文を照合できる資料が得られた時点で書き直す。

FAQ

Q. グロスはラヴクラフトが生み出した神格ですか。 A. いいえ。ラムジー・キャンベルが1976年10月の中編「The Tugging」で登場させた存在です[1]。ラヴクラフト公式サイトの作品一覧にも、神格名・作品名とも含まれていません[3]。

Q. グロスは惑星を滅ぼすのですか。 A. 直接手を下すというより、きっかけになるとされます[4]。通りかかった惑星に「天球の音楽」を響かせ、そこで眠っていた神々を目覚めさせる——その結果として生命が絶滅する、という筋立てです。当サイトは本文でこれを確認していません。

Q. 「ネメシス」という異名は天文学から来ているのですか。 A. そう説明されることが多いのですが、当サイトは裏づけを取れていません[4]。周期的大量絶滅の原因を太陽の伴星に求める仮説になぞらえた呼び方だとされます。キャンベル自身がそう述べた資料には行き着けていないため、通説として紹介するにとどめています。

Q. 初出書にはどんな作品が入っているのですか。 A. 1976年の『The Disciples of Cthulhu』には、本作のほかにイドラーの初出「Where Yidhra Walks」、リン・カーターの中編「Zoth-Ommog」などが並びます[2]。序文はロバート・ブロックです。ラヴクラフトと文通した世代が、次の世代の作品集に序を寄せた1冊になっています。

Q. キャンベルの他の神格とはどう違いますか。 A. 規模と舞台が違います。グラーキ・ダオロス・イゴロナクはいずれもイングランドのセヴァーン谷を舞台にした連作の神格ですが、グロスは宇宙を漂い惑星規模で作用します。書誌上も、本作だけは連作の枠に入っていません[1]。

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