編集部注(拡張神話): 本記事が扱うイソグタは、H・P・ラヴクラフト存命期のパブリックドメイン原典には登場しません。リン・カーターが1970年代の連作「ゾス神話群(The Xothic Legend Cycle)」で創造した、後年の拡張神話に属する存在です。同作群は現時点でパブリックドメインではないため、本記事は原文からの引用を行わず、公知の設定情報の要約のみで構成しています。
概要
イソグタ(Ythogtha)は、リン・カーターが1970年代の連作「ゾス神話群(The Xothic Legend Cycle)」で創造した旧支配者である。ラヴクラフト自身の作品には一度も登場せず、ラヴクラフトの「クトゥルフの呼び声」およびヘイゼル・ヒールドの代作として知られる「永劫より」を下敷きに、カーターが独自に体系化した後世の神格である。
基本プロフィール
- 分類: 旧支配者(カーターによる後付けの体系化)
- 欧文表記: YTHOGTHA
- 初出: The Xothic Legend Cycle 所収の諸作(1971〜1981年、リン・カーター)
- 位置づけ: クトゥルフと准女性的存在イダ=ヤーの間に、二重星ゾス付近の惑星で生まれたとされる「魔王三神」の第二子
- 典拠資料: ザンスゥ石板(Zanthu Tablets)にその伝説が記されているとされる(カーター作品内の設定)
別名/呼称
日本語圏のファン資料では「イソグタ」「イソグダ」「ユトグタ」など複数の表記ゆれが見られる。兄弟であるガタノトーア・ゾス=オムモグとあわせて「ゾス三神」と呼ばれることがある(いずれもファンサイトでの整理表記であり、公式な統一名称ではない)。
区分
旧支配者。ただし、カーターが創造した「魔王三神(Demon Trinity)」の一柱という位置づけ自体が、ラヴクラフトの原典にはない後世の体系化である点に注意が必要である。研究者の間では、イソグタの兄とされるガタノトーア(ヘイゼル・ヒールド代作「永劫より」初出)について、ラヴクラフト自身はクトゥルフの単なる別名として意図した可能性があるとの指摘もあり、これが正しければ、カーターがそこから「クトゥルフの息子たち」という独立した複数の神格へと拡張したことになる。
象徴・モチーフ
幽閉、深淵、忘却の淵に沈む太古の神性。カーターの設定では、イェーの深淵(Abyss of Yhe)に封じられた存在として描かれる。
性質・権能
- カーターの作品では明確な容姿描写は行われていないが、巨大な人型または深きものどもに似た蛙状の姿とされ、額の中央にキュクロプスのような単眼を持ち、うごめく触手のたてがみ(または髭)を蓄えているとされる
- その巨大さは、幽閉からの解放を試みた魔術僧ザンスゥが、神の爪を持つ粘液質の指先を山のような頭部と見間違えたという逸話によって示唆される
- 蠕虫状の眷属ユッグ(yuggs)とその長ウッブ(「蠕虫の父」)に仕えられているとされる
- ある種のファン考察では、クトゥルフがルルイエで夢を見るのと同様に、イソグタもイェーの深淵から世界へ夢を投影し、自らを象った偶像を媒介にするという説があるが、これはカーターの原作を超えた個人の想像による補完であり、一次資料に基づくものではない
関係図
カーターの設定では、クトゥルフと准女性的存在イダ=ヤーとの間に、二重星ゾス付近の惑星で生まれた「魔王三神」の第二子とされ、兄弟にガタノトーア・ゾス=オムモグを持つ。ただし前述の通り、ガタノトーアをクトゥルフ自身の異名とみなす批評的読解も存在し、その場合カーターの「息子たち」という系譜設定そのものが、単一の存在を複数の神格へ分割した後付けの拡張だったことになる。
主要登場作と読みどころ
- The Xothic Legend Cycle(1971〜1981年): 「墓に潜みしもの」(1971)、「永劫の彼方より」(1975)、「回廊の恐怖」(1976、のち一部の版で「ゾス=オムモグ」と改題)、「坑の中のもの」(1980)、「ウィンフィールドの遺産」(1981)の5編からなる連作。ザンスゥ石板・ポナペ経典・ウッブとユッグ族、そしてラヴクラフトのミスカトニック大学に対するカーター版の答えというべき架空の「サンボーン太平洋古代遺物研究所」が登場する。
- 1997年、ケイオシアム社から研究者ロバート・M・プライスの編纂・批評解説付きで『The Xothic Legend Cycle: The Complete Mythos Fiction of Lin Carter』として決定版が刊行され、イソグタ関連作品も批評的な整理の対象となった。
よくある誤解
Q. イソグタはラヴクラフトが創造した神格ですか?
A. いいえ。イソグタはラヴクラフトの作品には一度も登場せず、1970年代にリン・カーターが「ゾス神話群」で創造した、完全に後世の存在です。
Q. 「クトゥルフの息子」という設定は原典に基づいていますか?
A. カーターの独自設定です。一部の批評家は、そもそもイソグタの兄弟とされるガタノトーアがラヴクラフトの原典では単なるクトゥルフの別名だった可能性を指摘しており、その場合「複数の息子たち」という体系自体がカーターによる後付けの拡張ということになります。





