編集部注(拡張神話): 本記事が扱うイダ=ヤーは、H・P・ラヴクラフト存命期のパブリックドメイン原典には登場しません。リン・カーターが1975年に発表した「Out of the Ages」(アンソロジー『Nameless Places』収録)で創造した、後年の拡張神話に属する存在です。同作は現時点でパブリックドメインではないため、本記事は原文からの引用を行わず、公知の設定情報の要約のみで構成しています。
概要
イダ=ヤーは「強大なる母(The Mighty Mother)」「クム=ヤー」とも呼ばれる存在で、クトゥルフの配偶神として位置づけられている。ただしこれはラヴクラフト自身の作品には一切登場しない、後世の作家リン・カーターによる完全な創作であり、「ゾス神話群(Xothic legend cycle)」と呼ばれる一連の連作短編の中で造形された。
基本プロフィール
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 分類 | 大いなる旧支配者(リン・カーター設定) |
| 欧文表記 | IDH-YAA(異表記: Quum-yaa) |
| 初出 | 「Out of the Ages」(1975年、アンソロジー『Nameless Places』収録) |
| 象徴するテーマ | 母性、外宇宙の双子星、封印された血統 |
| 信仰圏 | 地球上には存在せず、ゾス星系の土着知性体のみが崇拝するとされる |
別名/呼称
「強大なる母(The Mighty Mother)」「クム=ヤー(Quum-yaa)」の異名を持つ。
区分
リン・カーターのゾス神話群において、大いなる旧支配者(Great Old One)ないし「準女性的存在」として設定されている。この分類自体が後世の体系化であり、原典に相当する記述はラヴクラフトの作品中には存在しない。
象徴・モチーフ
外宇宙の双子星ゾス、母性と多産、封印された巨大な血統。
性質・権能
- リン・カーターの設定では、双子星ゾス付近の惑星でクトゥルフと交わり、「悪魔の三位一体」と呼ばれるガタノトーア・イソグタ・ゾス=オムモグ、および娘クティーラを産んだとされる
- クトゥルフ神話TRPG関連の資料では、ゾスの二重星そのものに結びついた(あるいは同一視される)存在として、絶えず脈動し身をよじり、近くを漂うものを次々に飲み込むブラックホールにも似た性質を持つと描写される。いつか圧倒的な力を持つ存在を産み落とすという預言も語られる
- 日本語圏のファンサイトでは、ゾス星系の緑色の惑星の地下に棲む、青白い巨大な蛆(うじ)状の姿として描写されることがある。同じ情報源によれば、クトゥルフとその子らが地球へ旅立った後も、イダ=ヤーはゾス星系に留まり続けたという
関係図
クトゥルフの配偶神とされ、ガタノトーア・イソグタ・ゾス=オムモグの三柱、および娘クティーラの母とされる。ファンの間ではシュブ=ニグラスと「怪物じみた子らの母」という役割を共有する存在として比較されることがあるが、これはあくまで類似性の指摘であり、両者を同一視する確立した設定ではない。また日本語圏のファンサイトには、クトゥルフには「カソグサ」と呼ばれる別の配偶神が存在するという言及もあるが、この情報の一次的な典拠は今回の収集範囲では確認できなかった。
主要登場作と読みどころ
- 「Out of the Ages」(1975年): イソグタの起源譚であり、イダ=ヤーが最も色濃く関わるとされる作品。1975年のアーカムハウス版アンソロジー『Nameless Places』に収録された
- リン・カーターのゾス神話群は、「The Dweller in the Tomb」(1971年)・「Out of the Ages」(1975年)・「The Horror in the Gallery」(1976年、後に「Zoth-Ommog」の題で再録)・「The Thing in the Pit」(1980年)・「The Winfield Heritance」(1981年)の5編で構成される連作であり、架空の「サンボーン太平洋古物研究所」や失われた大陸ムーを中心に展開する
よくある誤解
Q. イダ=ヤーはラヴクラフトの原典に登場する神格ですか?
A. いいえ。ラヴクラフト自身の作品には一度も登場せず、後世の作家リン・カーターが1970年代のゾス神話群で創造した完全な後付け設定です。
Q. クトゥルフの配偶神はイダ=ヤーで確定していますか?
A. リン・カーター設定ではそう位置づけられていますが、これはあくまで一系譜にすぎません。日本語圏のファン資料には「カソグサ」という別の配偶神への言及もありますが、確たる典拠は確認できていません。





