概要
ボクルグは、H・P・ラヴクラフトの短編「サルナスの滅亡」(1919年執筆/1920年発表)に登場する旧支配者。夢の国(ドリームランド)の先史時代を舞台にした物語で、イブの古代種族から崇拝されていた水蜥蜴状の神格が、イブを滅ぼして神像を奪った人間の都市サルナスへ復讐する。原典での描写は簡潔で、ボクルグ自身が力を振るう場面を直接書いた一節はない。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 分類 | 旧支配者 |
| 欧文表記 | BOKRUG |
| 初出 | サルナスの滅亡(1919年執筆/1920年発表) |
| 別称 | 大いなる水蜥蜴[1]。「湖の帝」(The Keeper of the Lake)と紹介されることもある |
| 象徴 | 湖、イブの神像、静かな復讐 |
初出作品
ボクルグが登場するのは「サルナスの滅亡」(1919年執筆/1920年発表)一作のみである。物語は都市サルナスの繁栄を描く場面から始まり、ボクルグの目覚めを境に一転して都市の消滅が語られるという構成を取る。
原典での描写
イブの緑色の非人類種族は、声を持たず、湖やその上に立つ霧と同じ色をしていたとされ、大いなる水蜥蜴ボクルグを象った海緑色の石像を崇拝していた[1]。
人間の都市サルナスの若い戦士たちはイブへ進軍してその住民をすべて殺し、遺骸を長槍で湖へ押しやった。太古の都市イブに残されたのは、ボクルグを象った海緑色の石像だけであり、戦士たちはこれをサルナスへ持ち帰った[2]。
物語はこの後、サルナスの青銅の門がすべて開け放たれ、狂乱した群衆が溢れ出す場面に転じる。王ナルギス=ヘイの饗宴の間に見えたのは王や貴族・奴隷の姿ではなく、突き出た目と弛んだ唇を持つ、名状しがたい緑色の声なきものどもの群れであったと語られる[3]。原典が示すのは、サルナスという都市そのものが跡形もなく失われ、その地が水蜥蜴だけの棲む沼地と化したという結果である(「サルナスの滅亡」結末部)。一方、ボクルグ自身が何を、どのように行ったかを直接描写する一節は含まれていない。奪われた神像は、その後イラーネクの高き神殿に祀られ、ムナールの地一帯で崇拝され続けたという[4]。
ダーレス以降の変化
現行の情報源に、オーガスト・ダーレスがボクルグを直接取り上げた記録は無く、設定を拡張したことを示す記述も見当たらない。後段「関連神格・地域・書物」で触れるダゴン・深きものどもとの類似の指摘は、後年の一般的な比較として言及されているに留まる。
TRPGでの扱い
後世のTRPGやゲーム作品では、原典より詳細な設定が加えられることが多いとされるが、具体的な資料名や追加された設定の内容は不明である。原典が「復讐」「水」という象徴的な描写にとどめているのに対し、後年の設定では神話的な起源や眷属の存在などが補われているとされるが、この点を裏付ける出典までは確認できなかった。
登場作品一覧
| 作品 | 年 | 作者 | この作品が足したもの |
|---|---|---|---|
| サルナスの滅亡 | 1919年執筆/1920年発表 | H・P・ラヴクラフト | 唯一の原典。イブによる崇拝、サルナス滅亡の経緯[1][2][3][4] |
本記事の情報源で確認できる登場作品は、この1作のみである。後世のTRPG・ゲーム作品での言及について、具体的な作品名を示す資料は本記事の情報源には見当たらない。
関連神格・地域・書物
神格・種族
地域
- イブ — ボクルグを崇拝していた古代種族の都市。サルナスに滅ぼされた
- サルナス — イブを滅ぼしボクルグの神像を奪った人間の都市。のちにボクルグの復讐で一夜のうちに消滅した
- イラーネク — 奪われた神像が祀られたとされる高き神殿の所在地(本サイトのvaultには未収録)
- ムナール — イラーネクの神殿を含む、神像がのちに崇拝され続けたとされる地方一帯
分類の考え方
参考文献
- [1] “the beings of Ib were in hue as green as the lake and the mists that rise above it; that they had bulging eyes, pouting, flabby lips, and curious ears, and were without voice…they worshipped a sea-green stone idol chiselled in the likeness of Bokrug, the great water-lizard”(訳: 「イブの者たちは湖やその上に立ちのぼる霧と同じ緑色をしており、突き出た目、突き出た弛んだ唇、奇妙な耳を持ち、声を持たなかった……彼らは大いなる水蜥蜴ボクルグを象った海緑色の石像を崇拝していた」) — H. P. Lovecraft, “The Doom That Came to Sarnath”(1919年執筆/1920年発表), hplovecraft.com
- [2] “the young warriors, the slingers and the spearmen and the bowmen, marched against Ib and slew all the inhabitants thereof, pushing the queer bodies into the lake with long spears…Thus of the very ancient city of Ib was nothing spared save the sea-green stone idol chiselled in the likeness of Bokrug, the water-lizard. This the young warriors took back with them to Sarnath”(訳: 「若き戦士たち、投石兵、槍兵、弓兵はイブに進軍し、その住民すべてを殺戮し、奇妙な亡骸を長槍で湖へと押しやった……こうして太古の都市イブは、水蜥蜴ボクルグを象った海緑色の石像を除いて、何一つ残されなかった。若き戦士たちはこれをサルナスへと持ち帰った」) — 同上, hplovecraft.com
- [3] “all the bronze gates of Sarnath burst open and emptied forth a frenzied throng…Men whose eyes were wild with fear shrieked aloud of the sight within the king’s banquet-hall, where through the windows were seen no longer the forms of Nargis-Hei and his nobles and slaves, but a horde of indescribable green voiceless things with bulging eyes, pouting, flabby lips, and curious ears”(訳: 「サルナスの青銅の門という門がすべて開け放たれ、狂乱した群衆が溢れ出た……恐怖に目を血走らせた男たちは、王の饗宴の間で見た光景を叫び立てた。窓越しに見えたのはもはやナルギス=ヘイやその貴族・奴隷たちの姿ではなく、突き出た目、突き出た弛んだ唇、奇妙な耳を持つ、名状しがたい緑色の声なきものどもの群れであった」) — 同上, hplovecraft.com
- [4] “That idol, enshrined in the high temple at Ilarnek, was subsequently worshipped beneath the gibbous moon throughout the land of Mnar.”(訳: 「その神像はイラーネクの高き神殿に祀られ、その後ムナールの地一帯で、欠けゆく月の下で崇拝された」) — 同上(結末部), hplovecraft.com
FAQ
Q. ボクルグとはどんな神格ですか。A. 短編「サルナスの滅亡」に登場する旧支配者です。イブの古代種族に崇拝されていた水蜥蜴状の存在で[1]、イブを滅ぼして神像を奪った人間の都市サルナスを、一夜のうちに消滅させたとされます[2][3]。
Q. ボクルグ自身が復讐を実行する場面は、原典に描かれていますか。A. 直接の描写はありません。原典が示すのは、サルナスの門が開いて群衆が溢れ出し、饗宴の間にイブの民に似た緑色の声なきものどもの群れが見えたという場面と、都市が失われたという結果だけです[3]。ボクルグ自身がどのような形で復讐を行ったかを明示する一節はありません。
Q. ボクルグはダゴンや深きものどもと関係がありますか。A. 原典に両者の関係を示す記述はありません。海や水にまつわる旧支配者という共通点から比較して語られることがありますが、ダゴンや深きものどもがラヴクラフトの他作品にも登場するのに対し、ボクルグは「サルナスの滅亡」一作にのみ登場する神格です。
Q. 後世のTRPGやゲーム作品でのボクルグの扱いは、原典と同じですか。A. 原典は「復讐」「水」という象徴的な描写にとどめていますが、後世の作品ではより詳細な設定が加えられることが多いとされます。ただし、具体的な資料名や追加内容を示す出典は、本記事の情報源には見当たりません。





