知的種族 — NIGHT-GAUNTS

夜鬼

原典

夢の国の深淵に生息する、顔のない黒く滑らかな飛行生物。ノーデンスを主と仰ぐ。

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夜鬼

「全身が黒く、鯨のように滑らかで油を塗ったような質感の体、内側に湾曲した角、羽ばたいても音のしない蝙蝠の翼、器用に物をつかむ爪、鞭のようにしなる棘のある尾を持つ。顔は存在せず、あるべき場所にはただ空白があるのみ」

— H・P・ラヴクラフト「未知なるカダスを夢に求めて」(1943年発表)

黒くゴムのような皮膚、コウモリに似た膜状の翼、頭部の細い角を持つが、顔は完全に平らで目も口もない。声を一切発せず、獲物を掴んで空を飛び、くすぐることで抵抗力を奪うという奇妙な習性を持つ、夢の国と大いなる深淵に仕える知的種族である。

概要

夜鬼(Night-Gaunts)は夢の国のソク山脈や大いなる深淵を根城とする、黒くゴムのような体を持つ知的種族である。話すことも笑うこともなく、笑うための顔さえ持たない――顔があるべき場所にはただ意味深い虚無があるだけである。彼らがすることといえば、掴み、飛び、くすぐることだけであり、それが夜鬼のやり方であった[1]

基本プロフィール

初出作品(年) 未知なるカダスを夢に求めて』(1926〜1927年執筆/1943年発表)。詩「夜鬼(Night-Gaunts)」(連作「ユゴスよりの菌類」第20篇、1929〜1930年執筆/1943年発表)
創造者 H・P・ラヴクラフト
区分 知的種族(ノーデンスに仕える奉仕種族)
主な居住域 夢の国のソク山脈・大いなる深淵
canon層 原典

別名・呼称

英語表記は Night-Gaunts(単数形 Night-Gaunt)。ラヴクラフト自身が幼少期に繰り返し見た悪夢の存在を指して「夜鬼(night-gaunts)」という造語を用いたことがその名の起源とされ、後年これを再利用する形で『未知なるカダスを夢に求めて』および詩「夜鬼」に登場させた。

形態と特徴

黒く、角を持ち、痩身で、膜状の翼を備え、尾には地獄の二又の棘を宿す[2]。皮膚は冷たく湿っており、ゴムのような感触を持つ。羽ばたきはまったく音を立てず、鉤爪状の前肢で獲物を掴む。もっとも際立つ特徴は、顔がまったく存在しないことである。目も口もなく、平らな虚無が顔の位置にあるのみで、この無貌性が夜鬼という存在の不気味さの核心をなしている。

性質・生態

夜鬼は一切声を発さず、感情を示す手段も持たないとされる。獲物を捕えると、殺しはせずに体をくすぐって身をよじらせ、抵抗力を奪ってから運び去るという独特の攻撃方法をとる。詩「夜鬼」の語り手は悪夢の中でこの生物に繰り返し連れ去られる恐怖を歌い、「ああ、せめて彼らが何か音を立ててくれたなら、あるいは顔があるべき場所に顔をつけていてくれたなら」と嘆いている[3]。夜鬼は大いなる深淵と外界とを結ぶ関門を守る番人でもあり、食屍鬼と交わした密約の合言葉を知る者に対しては攻撃を控えるとされる。

他の存在との関係

夜鬼は大いなる深淵の無心の番人であり、偉大なる古きものたちでさえ彼らを恐れる。彼らの主はニャルラトホテプではなく、白髪のノーデンスである[4]。この主従関係により、夜鬼は外なる神々旧支配者の勢力圏から独立した存在として位置づけられている。地底では食屍鬼と密約を結び、その戦の伴侶(騎乗獣であり先鋒)として共闘することもある。

主要登場作と読みどころ

夜鬼が登場する主要作品は『未知なるカダスを夢に求めて』と詩「夜鬼」(連作「ユゴスよりの菌類」第20篇)である。小説では、ンガラネクの山を登るランドルフ・カーターが夜鬼の群れに捕えられ、ソク山脈を越えて夢幻の深淵へ運び去られる場面や、後半で食屍鬼の軍勢と共闘し月獣どもを急襲する空中戦の場面が読みどころである。詩「夜鬼」は、顔のない存在に連れ去られる悪夢そのものを十四行の中に凝縮した作品で、ラヴクラフトの個人的な悪夢体験が色濃く反映されている点でも興味深い。

よくある誤解

夜鬼はしばしば単なる「怪物的な移動手段」としてのみ語られがちだが、原典では偉大なる古きものたちさえ恐れる独自の勢力であり、ニャルラトホテプではなくノーデンスに仕えるという明確な政治的立場を持つ点が見落とされやすい。

出典

  • [1] “they never spoke or laughed, and never smiled because they had no faces at all to smile with, but only a suggestive blankness where a face ought to be. All they ever did was clutch and fly and tickle; that was the way of night-gaunts.”(訳:「彼らは決して話さず笑わず、笑うための顔さえ持たない――顔があるべき場所にはただ意味深い虚無があるだけだった。彼らがすることといえば、掴み、飛び、くすぐることだけ――それが夜鬼のやり方であった」) — H. P. Lovecraft, “The Dream-Quest of Unknown Kadath”(1926–1927年執筆/1943年発表), 公式アーカイブ
  • [2] “Black, horned, and slender, with membraneous wings, / And tails that bear the bifid barb of hell.”(訳:「黒く、角を持ち、痩身で、膜状の翼を備え/尾には地獄の二又の棘を宿す」) — H. P. Lovecraft, “Night-Gaunts”(連作「ユゴスよりの菌類」第20篇、1929–1930年執筆/1943年発表), 公式アーカイブ
  • [3] “But oh! If only they would make some sound, / Or wear a face where faces should be found!”(訳:「ああ、せめて彼らが何か音を立ててくれたなら/あるいは顔があるべき場所に顔をつけていてくれたなら」) — H. P. Lovecraft, “Night-Gaunts”(連作「ユゴスよりの菌類」第20篇、1929–1930年執筆/1943年発表), 公式アーカイブ
  • [4] “those mindless guardians of the Great Abyss whom even the Great Ones fear, and who own not Nyarlathotep but hoary Nodens as their lord.”(訳:「大いなる深淵を守る無心の番人たちであり、偉大なる古きものたちでさえ彼らを恐れる。彼らの主はニャルラトホテプではなく、白髪のノーデンスである」) — H. P. Lovecraft, “The Dream-Quest of Unknown Kadath”(1926–1927年執筆/1943年発表), 公式アーカイブ

用語集にも夜鬼(概略)として簡潔な解説があります。

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