コラム

ラヴクラフトの誕生日は、いま何の日になっているか

2026年8月20日、DMM GAMESの『邪神戦記ルルイエ少女隊』が「ラヴクラフト生誕キャンペーン」を実施し、誕生日にちなんで原石を820個配布した。同じ月にはプロヴィデンスの学会も、ハンブルクの野外劇も動いている。ただし三つのうち、誕生日そのものを日付として使ったのは一つだけだった。

公開出典最終確認作成AI支援で作成

誤りの指摘・訂正依頼と編集方針は運営者情報へ。

記事内に商品プロモーションを含む場合があります

概要

『邪神戦記ルルイエ少女隊 ~クトゥルフ神話TD~』が、2026年8月20日に「原石×820」を配りました。H・P・ラヴクラフトの誕生日にちなんだ配布だと、DMM GAMESの運営元である合同会社EXNOAが同日18時のプレスリリースで告知しています[1]。8月20日に、820個です。

配布の名目は「ラヴクラフト生誕キャンペーン」。公式Xによれば、キャンペーン自体は8月14日(金)のメンテナンス後に始まっており[3]、誕生日当日はその期間の中の一日にあたります。

H・P・ラヴクラフトが生まれたのは1890年8月20日の午前9時、ロードアイランド州プロヴィデンスのエンジェル街454番地(当時の番地は194番)でした[2]。1937年3月15日に46歳で亡くなっています[2]。その136年後の同じ日付に、彼の名前を冠したログインボーナスが配られた、という話です。

ゲームそのものの紹介は別の記事にあります(公式サイトは[4])。ここで見たいのは、作品ではなく誕生日という日付が、いま何に使われているかのほうです。

キャンペーンの中身

プレスリリースによれば、内容は次のとおりです[1]。

  • 8月14日(金)メンテナンス後 「ラヴクラフト生誕キャンペーン」開始[3]
  • 期間中のログイン 「ラヴクラフト生誕記念CPログインボーナス」で、7日間のログインにより合計「原石1,500個」「スタンダード10連召喚券×2」など
  • ビンゴ 「ラヴクラフト生誕キャンペーンビンゴ」を揃えると★2ヴァイス「メアリー」が仲間になる
  • 8月20日(木) 「H・P・ラヴクラフトの誕生日にちなんで『原石×820』をプレゼントいたしました」
  • 8月21日(金)メンテナンス後 新しいビンゴカードが解放され「選択☆3潜在結晶BOX」などが得られる。あわせて新★3ヴァイス「ネフェスティス」のピックアップ召喚を開催予定(2026年8月21日時点の告知に基づく)

なお「原石×820」については、プレスリリースが誕生日当日の配布として過去形で書いているだけで、受け取りの期限は公表されていません[1]。この記事の時点で、まだ受け取れる状態なのかどうかは確認できていません。

「ヴァイス」は本作でキャラクターを指す語です。ネフェスティスはケイオス勢力で初の★3ヒーラーにあたる、と説明されています[1]。原石も召喚券もビンゴも、この種の運営型ゲームでは見慣れた仕組みで、そこに神話的な要素はありません。

「820個」という数

あらためて、配布数は820個でした。

プレスリリースが書いているのは「誕生日にちなんで」までで、この数がどこから来たのかは説明していません[1]。ただ8月20日に820個を配る以上、日付をそのまま個数にしたと読むのが自然でしょう(リリース自身がそう述べているわけではないので、断定はできません)。

もしそうだとすれば、ここで起きているのは日付の翻訳です。1890年8月20日という伝記上の一点が、まず「8/20」という表記になり、それが「820」という数量になって、ゲーム内通貨の単位で配られている。記念日が、そのゲームの経済で表現できる形に置き換えられたわけです。

祝い方としては即物的ですが、無関係ではありません。むしろ、誕生日を口実にせず日付そのものを数として使っている点で、かなり直接的な参照だと言えます。

2026年8月に動いたラヴクラフトは三つ。誕生日を指したのは一つ

同じ2026年8月には、ラヴクラフトの名前で動いたものが他にもありました。並べてみると、性格がはっきり分かれます(会期と根拠はいずれも当サイトの個別記事にまとめてあります[5])。

  • NecronomiCon Providence 2026 8月13日〜16日、プロヴィデンス。公式サイトは同大会を隔年(biennial)開催と説明しており、誕生日を基準に組まれた日程ではありません。
  • Cthulhu im Park 8月21日〜23日、ハンブルク。こちらは「クトゥルフの呼び声」執筆から100年と、会場であるハールブルク市立公園の開園から100年という、二つの100周年に合わせた企画です。
  • ラヴクラフト生誕キャンペーン 8月20日。誕生日そのものを名指ししています。

つまり「8月のラヴクラフト」は一枚岩ではありません。学会は自分の周期で回り、舞台は作品と会場の周年に合わせ、ソーシャルゲームだけが人物の誕生日を日付として使いました。8月に集まっているのは偶然に近く、理由はそれぞれ別です。

この三つの中で、誕生日を記念日として直接扱ったのがゲームだったこと自体は、皮肉でも堕落でもありません。学会や劇団が作品の周年を数えるのに対し、キャラクター収集型のゲームは人物のほうを単位に取れる、という違いが出ているだけです。作品の周年は数十年に一度しか来ませんが、誕生日は毎年来ます。毎日接触することを前提にした運営型ゲームにとって、扱いやすいのは後者です。

誕生日を祝う理由は、生前には無かった

念のため確認しておくと、ラヴクラフトの誕生日が祝われる理由は、彼の生前にはほとんど存在しませんでした。

彼はパルプ誌『ウィアード・テイルズ』を主な発表媒体とする一寄稿者で、単著の商業出版を見ないまま1937年に世を去っています[2]。いま世界中で読まれている神話の大半は、死後に育ったものです。作家の誕生日が記念日として機能するには、その作家を記念したい人がまとまった数だけ必要で、それが揃ったのは彼が死んだ後でした。

だから「生誕136周年」という言い方には、二重の時間が入っています。136年前に人が生まれたという事実と、その誕生日を数える習慣がいつからあるのかという、別の歴史です。後者のほうがずっと新しく、そしていまも形を変えています。

この記事が「神話の三層」に入らない理由

このサイトは、クトゥルフ神話を原典・ダーレス系拡張・TRPG設定という三つの層に分けて記録しています。今回の出来事は、そのどれにも属しません。

キャンペーンは神話の設定を1文字も足していないからです。新しい神格も、新しい書物も、新しい年代も生まれていない。増えたのは配布アイテムとビンゴカードで、それは神話の内容ではなくゲームの運営です。

それでも記録しておく価値があるのは、増えているものが別にあるからです。読まれ方のほうが増えています。1890年生まれの怪奇作家の誕生日が、2026年にはブラウザゲームのログインボーナスの日付として使われている——これは設定の話ではなく、受容の話です。三層は「誰が何を書いたか」を分けるための枠組みで、「誰がどう受け取ったか」はその外側にあります。

外側にあるものを、外側にあると分かる形で書き留めておく。この記事の役目はそれだけです。

出典

  • [1] 合同会社EXNOA プレスリリース「DMM GAMES『邪神戦記ルルイエ少女隊 〜クトゥルフ神話TD〜』H・P・ラヴクラフト生誕を記念した豪華キャンペーンを開催中!」(PR TIMES、2026年8月20日18時00分配信、2026年8月21日確認) — 「本日8月20日(木)にはH・P・ラヴクラフトの誕生日にちなんで『原石×820』をプレゼントいたしました」、7日間ログインで「原石1,500個」「スタンダード10連召喚券×2」など、「8月21日(金)メンテナンス後からは、新たなビンゴカードが解放され」「選択☆3潜在結晶BOX」、「8月21日(金)メンテナンス後より、新★3ヴァイス『ネフェスティス』のピックアップ召喚を開催予定」およびケイオス勢力初の★3ヒーラーである旨の記述を含む PR TIMES ↩
  • [2] The H. P. Lovecraft Archive「A Short Biography of H. P. Lovecraft」 — 「Howard Phillips Lovecraft was born at 9 a.m. on August 20, 1890, at his family home at 454 (then numbered 194) Angell Street in Providence, Rhode Island.」および1937年3月15日の逝去に関する記述 The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [3] 『邪神戦記ルルイエ少女隊』公式X(@rlyehshoujotai)、2026年8月14日投稿 — 「8月14日(金)メンテナンス後より「ラヴクラフト生誕キャンペーン」を開催中ですぅ…! ログインボーナスでは合計で「原石×1500」や「スタンダード10連召喚券×2」など豪華報酬を獲得できますよぉ…すやぁ。」 公式X ↩
  • [4] 『邪神戦記ルルイエ少女隊 ~クトゥルフ神話TD~』公式サイト(2026年8月21日確認) 公式サイト ↩
  • [5] NecronomiCon Providence 2026 の会期と隔年開催である旨は当サイトのNecronomiCon Providence 2026、Cthulhu im Park の会期と二つの100周年についてはCthulhu im Parkに、それぞれ一次資料つきでまとめている。 ↩
この記事だけでは物足りない方へ
この記事だけでは物足りない方へ
初めての方への紹介書籍 表紙
初めての方へ

固有名詞を覚えるのがまだ大変なら、神格・怪物をイラストと生息地図でやさしく紹介するこちらから。

『クトゥルフ神話生物解剖図鑑』をAmazonで見る ↗
もっと詳しく知りたい方への紹介書籍 表紙
もっと詳しく知りたい方へ

神格・用語を横断的に調べたいなら、東雅夫による定番の事典が一冊で頼りになります。

『クトゥルー神話大事典』をAmazonで見る ↗

※上記は広告リンク(アフィリエイト)です。

続きを辿る

隣の棚

記事URLをコピーしました