知的種族 — BYAKHEE

バイアクヘー

原典

星間宇宙を飛翔する、翼ある混成生物。儀式によって召喚され、魔術師の乗騎となる奉仕種族。

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バイアクヘー

バイアクヘーは、クトゥルフ神話TRPGなどで広く知られる、星々の間を飛翔してカルト信徒を運ぶ奉仕種族です。ただし原型となったH・P・ラヴクラフトの短編「魔宴」(1923年執筆/1925年発表)には、この生物の固有名は一切登場しません。「バイアクヘー」という名は後年になって与えられたものであり、原典と拡張設定の間に断層がある存在です。

概要

「魔宴」は、語り手が先祖の血に導かれて古い港町キングスポートを訪れ、百年に一度の冬至祭に参列させられる物語です。地下深くの祭壇で語り手が目撃するのは、名も知れぬ有翼の生物の群れであり、原典は終始これを名指しすることなく、正体不明の「もの」として描き続けます。後年、この生物にTRPGや後続作家が「バイアクヘー」の名と、ハスターに仕える奉仕種族としての詳細設定を与えました。

基本プロフィール

  • 初出作品(年): 「魔宴」(1923年執筆/1925年発表) ※原典中に「バイアクヘー」の名称は登場しない
  • 命名・詳細設定: 後年の拡張作家およびクトゥルフ神話TRPGによる(原典のラヴクラフトによる命名ではない)
  • 区分: 奉仕種族(拡張設定ではハスターに仕えるとされる)
  • 主な居住域: 恒星間・次元間の虚空
  • canon層: 原典(「魔宴」に無名の存在として登場)+拡張(命名・設定の精緻化はダーレス以降およびTRPG)

別名・呼称

英名 Byakhee。繰り返しになりますが、この呼称はラヴクラフトの原典には存在しません。「魔宴」の地の文では単に「有翼の生物」「hybrid winged things(雑種めいた有翼のもの)」としか呼ばれておらず、固有名詞としての「バイアクヘー」は後年の拡張神話・TRPG設定の産物です。

形態と特徴

「魔宴」で語り手が目撃する有翼の生物は、次のように描写されます。「その冷たい火焔の腐臭漂う輝きの彼方、想像もつかぬ暗黒のかなたから、飼い慣らされ調教された雑種の有翼の一団が、律動的に羽ばたきながら現れた。それはいかなる正気の目にも捉えきれず、いかなる正気の脳にもとうてい記憶し得ぬものであった」[1]。続けて「それらはまったくの鴉でも、モグラでも、鵟(ノスリ)でも、蟻でも、吸血コウモリでも、腐乱した人間の死体でもなかった。だが、それが何であったかは、私には思い出すことも、思い出してはならぬこともできない」と述べられ[2]、あらゆる既知の生物のイメージを歪に混ぜ合わせたような、説明を拒む姿として描かれています。

性質・生態

原典では、祭壇に集った信徒たちがこの生物にまたがり、地下を流れる油じみた川の彼方へと連れ去られていく様子が描かれます。「群衆が近づくと、フードを被った人影たちはそれに飛び乗り、一人また一人と、その光の届かぬ川筋を、恐怖に満ちた竪坑と回廊の奥へと乗り去っていった」とあり[3]、人間を騎乗させて運ぶ移動手段としての役割は、この時点ですでに与えられています。後年の拡張設定では、この移動能力が恒星間・次元間規模にまで拡張され、TRPGでは「黄金の蜂蜜酒」と呼ばれる特殊な薬剤を服用することで、人間の術者が宇宙の真空や絶対零度に耐えながらバイアクヘーに騎乗できるとされます。

他の存在との関係

「魔宴」の祭儀では、老いた案内人が忌まわしい『ネクロノミコン』を掲げて有翼の生物を呼び出す場面があり、この生物と『ネクロノミコン』に記された太古の魔術との結びつきは原典の時点で示されています。一方、この生物を「ハスターに仕える奉仕種族バイアクヘー」として位置づけたのは、オーガスト・ダーレス以降の拡張神話およびクトゥルフ神話TRPGであり、ラヴクラフト自身がハスターとの主従関係を書いたわけではありません。

主要登場作と読みどころ

  • 「魔宴」(1923年執筆/1925年発表): 唯一の原型となる原典。ケルト系の冬至(ユール)信仰と、語り手の血脈に刻まれた太古の秘儀が結びつく構成で知られ、後年のバイアクヘー像の土台となった有翼生物の騎乗シーンは物語終盤のクライマックスに置かれています
  • 命名の経緯: 「バイアクヘー」という名がいつ・誰によって与えられたかは資料によって揺れがありますが、少なくともラヴクラフト自身の生前の公開作品にこの名は登場せず、オーガスト・ダーレス以降の拡張神話の時代に定着した呼称である点は一致しています。この経緯を知った上で「魔宴」を読み直すと、名指しを避け続ける原典の文体そのものが恐怖を演出していたことに気づかされます

よくある誤解

Q. 「バイアクヘー」という名前はラヴクラフトの原典に出てくるのですか?

A. いいえ。原典「魔宴」に登場するのは名を持たない「有翼の生物」であり、「バイアクヘー」という固有名詞は一切使われていません。この名称は後年、ダーレス以降の拡張神話やクトゥルフ神話TRPGによって与えられたものです。

出典

  • [1] “Out of the unimaginable blackness beyond the gangrenous glare of that cold flame…there flopped rhythmically a horde of tame, trained, hybrid winged things that no sound eye could ever wholly grasp, or sound brain ever wholly remember.”(訳: 「その冷たい火焔の腐臭漂う輝きの彼方、想像もつかぬ暗黒のかなたから……飼い慣らされ調教された雑種の有翼の一団が、律動的に羽ばたきながら現れた。それはいかなる正気の目にも捉えきれず、いかなる正気の脳にもとうてい記憶し得ぬものであった」) — H. P. Lovecraft, “The Festival”(1923年執筆/1925年発表), 公式アーカイブ
  • [2] “They were not altogether crows, nor moles, nor buzzards, nor ants, nor vampire bats, nor decomposed human beings; but something I cannot and must not recall.”(訳: 「それらはまったくの鴉でも、モグラでも、鵟でも、蟻でも、吸血コウモリでも、腐乱した人間の死体でもなかった。だが、それが何であったかは、私には思い出すことも、思い出してはならぬこともできない」) — 同上, 公式アーカイブ
  • [3] “as they reached the throng of celebrants the cowled figures seized and mounted them, and rode off one by one along the reaches of that unlighted river, into pits and galleries of panic where poison springs feed frightful and undiscoverable cataracts.”(訳: 「群衆が近づくと、フードを被った人影たちはそれに飛び乗り、一人また一人と、その光の届かぬ川筋を、恐怖に満ちた竪坑と回廊の奥へと乗り去っていった」) — 同上, 公式アーカイブ

用語集にもバイアクヘー(概略)として簡潔な解説があります。

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