クトーニアンは、イギリスの作家ブライアン・ラムレイが自身のクトゥルフ神話系連作「タイタス・クロウ・サーガ」および中編「地を穿つ魔」(原題 The Burrowers Beneath、1974年)のために創造した、地中に潜む巨大な知的種族です。ラヴクラフト存命期のパブリックドメイン原典には登場しない、後年の拡張神話に属する存在です。
概要
クトーニアンは粘液に覆われた巨大な肉体と、頭部に生えた触手を特徴とする種族です。高温環境に強い耐性を持ち、地中を高速で掘り進むことで地表に局所的な地震を引き起こします。長命かつ極めて高い知能を持ち、個体間で強力な精神感応(テレパシー)による意思疎通を行うとされます。地を這い進むその移動そのものが、地上の人間にとっては原因不明の地震として観測されるという設定が、恐怖の核になっています。
基本プロフィール
- 初出作品(年): ブライアン・ラムレイ「地を穿つ魔」(The Burrowers Beneath、1974年)
- 創造者: ブライアン・ラムレイ
- 区分: 独立種族(旧支配者シュド=メルを長格とする一族)
- 主な居住域: 地球の地殻内部・地下深部
- canon層: 拡張(ラムレイによる1970年代以降の拡張神話。ラヴクラフト自身の作品には登場しない)
別名・呼称
英名 Chthonians / CCD(Cthulhu Cycle Deities、クトゥルフ諸神群)の一員として分類されることもあります。作中では「地を穿つ者ども」といった訳語で呼ばれる場合もあり、日本語表記も資料によって「クトニアン」「クソニアン」など揺れが見られます。
形態と特徴
粘液質の巨体と、頭部から伸びる触手状の器官を持つ姿で設定されています。高熱環境への耐性が高い一方、水を最大の弱点とし、大量の水にさらされると弱体化するとされます。地中を掘り進む際の巨体の移動そのものが地震として地表に伝わる、という物理的な設定が種族像の中心にあります。個体差はあるものの全体として巨大な体躯を持ち、地表の建造物や地盤を容易に崩落させるだけの物理的な破壊力を備えているとされます。
性質・生態
クトーニアンは地球の地殻内部に独自の巨大な社会・精神ネットワークを築いているとされ、長命で非常に高い知能を持ちます。個体間はテレパシーで結びついており、幼体を人間が捕獲したり傷つけたりした場合、群れ全体が地球規模の報復行動に出るという強い同族意識を持つ設定です。旧支配者シュド=メルを長格として仰ぐ一族とされ、ラムレイ作品ではこの種族を封じ込めようとする人間側の秘密組織との攻防が主軸に据えられます。作中では、世界各地で観測される原因不明の地震や地盤沈下の一部が、実はクトーニアンの移動や活動によって引き起こされたものだった、という形で日常の自然現象に不穏な裏の意味を与える構成が繰り返し用いられます。
他の存在との関係
クトーニアンは旧支配者シュド=メルを長とする一族と位置づけられ、ラムレイの「タイタス・クロウ・サーガ」世界観の中では、クトゥルフを王とする邪神群CCD(クトゥルフ諸神群)の一員として、対抗勢力である旧神(エルダー・ゴッズ)側と敵対する構図に組み込まれます。この善悪二元論的な対立構造は、ラムレイが独自に発展させた体系であり、ラヴクラフト自身の作品には見られない後付けの設定です。また、地中や地底に潜む脅威という発想そのものは、ラヴクラフトが「狂気の山脈にて」で描いたショゴスや、その他の地底世界を扱う怪奇小説の系譜とも共通しますが、クトーニアンはあくまでラムレイが独自に設計した一族であり、これら先行作品の設定を直接引き継いだものではありません。
主要登場作と読みどころ
- 「地を穿つ魔」(The Burrowers Beneath、1974年): クトーニアンの初出作であり、超常現象研究家タイタス・クロウを主人公とする連作「タイタス・クロウ・サーガ」の第一作。原因不明の地震群の調査から、地底に潜む巨大種族の存在が明らかになっていく構成は、ラムレイ作品らしい冒険活劇的なクトゥルフ神話として知られます
- タイタス・クロウ・サーガ以後の展開: 続く連作でもクトーニアンとの攻防は繰り返し描かれ、地底からの脅威というモチーフはラムレイ以降の拡張神話作品にも影響を与えました
- ラムレイ流「善悪二元論」の特徴: ラムレイの作品世界は、旧支配者とその眷属を明確な「悪」、旧神とその眷属を明確な「善」として描く、勧善懲悪的な冒険活劇の色合いが強いことで知られます。クトーニアンとの戦いも、謎めいた宇宙的恐怖というよりは、正体の判明した強大な敵との攻防戦として描かれる点が、ラヴクラフト自身の作風との大きな違いとしてしばしば指摘されます
よくある誤解
Q. クトーニアンはラヴクラフトが考案した種族ですか?
A. いいえ。クトーニアンはラヴクラフトの死後、ブライアン・ラムレイが1974年の「地を穿つ魔」で創造した種族です。ラヴクラフト存命期のパブリックドメイン作品には登場せず、後年の拡張神話に属する設定です。
Q. クトーニアンは旧支配者そのものなのですか?
A. いいえ。ラムレイの設定では、クトーニアンはあくまで旧支配者シュド=メルに率いられる一族・眷属という位置づけです。シュド=メル自身が旧支配者格とされる一方、クトーニアンという種族全体を指す呼称と、個別の旧支配者としてのシュド=メルは区別して扱われます。
出典
- [1] クトーニアンはブライアン・ラムレイが「地を穿つ魔」(The Burrowers Beneath、1974年)で創造した種族であり、ラヴクラフト存命期のパブリックドメイン作品には登場しない — Brian Lumley, “The Burrowers Beneath”(1974), Wikipedia: Brian Lumley ↩
用語集にもクトーニアン(概略)として簡潔な解説があります。





