人物 — ZADOK ALLEN

ゼイドック・アレン

「インスマスの影」に登場する96歳の老人。町の救貧院に暮らす酔漢で、語り手にオベド・マーシュと深きものどもの来歴を語る唯一の証言者。少年時代に自宅の物見台から見たものを語り終える前に海を見て絶叫し、走り去ったきり、連邦政府の捜査でも行方は分からなかった。

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ゼイドック・アレン

「赤ら顔でぼさぼさの髭を生やし、目の潤んだ、何とも知れぬぼろをまとった老人。身なりは汚いが異常には見えない二人の消防士と、消防署の前のベンチで話していた。」

— H・P・ラヴクラフト「インスマスの影」(1931年執筆/1936年刊)第2章末、語り手が消防署の前で初めてゼイドックを見かける箇所
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概要(2〜3行)

ゼイドック・アレンは、H・P・ラヴクラフト「インスマスの影」に登場するインスマスの老人。96歳、少し頭がおかしく、町の酔漢とされる[1]。語り手は彼を「この90年間インスマスで起きたことをすべて見てきたはず」の生き証人と踏んで酒で口を開かせ[2]、オベド・マーシュが南洋から持ち帰った契約から1846年の粛清、そして「本当の恐怖は、あの魚の悪魔どもがしたことではなく、これからすることだ」という警告までを聞き出す[3]。ただし語り手自身は「この話に本当に確かな根拠があるとは片時も信じなかった」と断っており[4]、彼の語りは町の裏面史そのものではなく、一人の老人の証言として置かれている。語り終える前に海へ目をやって絶叫し走り去ったきり、連邦政府の捜査でも行方は分からなかった[5]。

基本プロフィール

  • 分類: 人物
  • 欧文表記: ZADOK ALLEN
  • 初出・出典: 「インスマスの影」(1931年11月?-12月3日執筆/1936年、ペンシルベニア州エヴェレットのVisionary Publishing Co.より単行本として発表)[6]
  • 年齢(作中): 96歳[1]
  • 住まい: 町の北端の救貧院。日中は歩き回るか、消防署のあたりでぶらついている[7]
  • 生年: 原典に明示は無い。「96歳」[1]、本人の「15歳のときから見てきた」という言葉[8]、そして語られる事件が1846年であることから逆算すると1830年前後になるが、この逆算は原文が書いていることではない
  • 語り手と会った日: 1927年7月15日(語り手がインスマスを脱出したのが翌16日未明)[9]
  • 結末(作中): 不明。連邦政府の捜査でも発見されなかった[5]
  • [41] “He licked the nose of the bottle and slipped it into his pocket, then beginning to nod and whisper softly to himself.”(訳: 瓶の口を舐めてそれをポケットへ滑り込ませると、うなずきながら、ひとりごとのように小声でつぶやき始めた) — 「インスマスの影」(1936年), The H. P. Lovecraft Archive
  • [42] “Dun’t wait fer nothin’— they know naow — Run fer it—quick— aout o’ this taown —”(訳: 何も待つな——やつらはもう知っている——走れ——急げ——この町から出ろ——) — 「インスマスの影」(1936年), The H. P. Lovecraft Archive
  • [43] “Puerile though the story was, old Zadok’s insane earnestness and horror had communicated to me a mounting unrest which joined with my earlier sense of loathing for the town and its blight of intangible shadow.”(訳: 幼稚な話ではあったが、老ゼイドックの狂気じみた真剣さと恐怖は、募る不安を私に伝え、それがこの町とその形なき影の禍いに対して私が既に抱いていた嫌悪感と結びついた) — 「インスマスの影」(1936年), The H. P. Lovecraft Archive
  • [44] “He began to moan now, and tears were coursing down his channelled cheeks into the depths of his beard.”(訳: うめき声をあげ始め、皺の刻まれた頬を伝う涙が、顎鬚の奥へと流れ落ちていった) — 「インスマスの影」(1936年), The H. P. Lovecraft Archive
  • [45] “them as told things in Arkham or Ipswich or sech places was all called crazy, like you’re a-callin’ me right naow—but God, what I seen—”(訳: アーカムやイプスウィッチやそんな所で話した連中はみんな、あんたが今わしを呼んでいるように、頭がおかしいと言われた——だが神よ、わしが見たものは——) — 「インスマスの影」(1936年), The H. P. Lovecraft Archive
  • [46] “Wal, come abaout ‘thutty-eight—when I was seven year’ old—Obed he faound the island people all wiped aout between v’yages.”(訳: そう、三十八年頃のことだった——わしが7歳のときだ——オベドは航海の合間に、島の住民が皆殺しにされているのを見つけた) — 「インスマスの影」(1936年), The H. P. Lovecraft Archive
  • [47] “Obed an’ the folks was in a dory, but them shapes dove off the far side into the deep water an’ never come up.”(訳: オベドたちはボートに乗っていたが、その人影は向こう側の深い水へ飛び込んで二度と浮かんでこなかった) — 「インスマスの影」(1936年), The H. P. Lovecraft Archive
  • [48] “He laid a gnarled claw on my shoulder, and it seemed to me that its shaking was not altogether that of mirth.”(訳: 彼は節くれ立った爪を私の肩に置いた。その震えは、必ずしも面白がっているだけの震えではないように私には思われた) — 「インスマスの影」(1936年), The H. P. Lovecraft Archive
  • [49] “That awful night . . . I seed ‘em . . . I was up in the cupalo . . . hordes of ‘em . . . swarms of ‘em . . . all over the reef an’ swimmin’ up the harbour into the Manuxet. . . . God, what happened in the streets of Innsmouth that night . . .”(訳: あの恐ろしい夜……わしは見た……物見台に上がっていた……やつらの大群……群れが……礁の上一面に、港を泳いで上ってマナクセット川へ……神よ、あの夜インスマスの通りで何が起きたか……) — 「インスマスの影」(1936年), The H. P. Lovecraft Archive
  • [50] “called it the plague when folks come in an’ faound haff our people missin’ . . . nobody left but them as ud jine in with Obed an’ them things or else keep quiet . . .”(訳: 人が戻ってきて住民の半分が消えているのを見て、みなそれを「疫病」と呼んだ……残ったのはオベドとやつらに加わる者か、さもなくば黙っている者だけ……) — 「インスマスの影」(1936年), The H. P. Lovecraft Archive
  • [51] “The old man was panting, and perspiring profusely. His grip on my shoulder tightened.”(訳: 老人は息を切らし、汗まみれになっていた。肩をつかむ手に力がこもった) — 「インスマスの影」(1936年), The H. P. Lovecraft Archive

原典での描写

インスマスの影(1931年11〜12月執筆)――名前だけが先に届く

読者と語り手がゼイドックを知るのは、本人に会うより前である。町の事情を教えてくれる食料品店の少年は、住民に何を尋ねても無駄だと断ったうえで、「口を開いてくれる唯一の相手は、町の北端の救貧院に住み、歩き回るか消防署のあたりでぶらつくかして過ごしている、たいそう年老いた、しかし見た目は普通の男だった」と教える[7]。続けてその男の素性——96歳、少し頭がおかしい、町の酔漢——が並べられる[1]。

同じ少年の説明は、彼の話の値打ちをあらかじめ下げてもいる。彼の話は「すべて正気でなく、ありえない驚異と恐怖についての不完全な仄めかしばかりで、彼自身の混乱した空想以外に出所がありえない」ものとされ、誰にも信じられていない。それでいて町の者は彼がよそ者と飲んで話すのを嫌い、「彼に質問しているところを見られるのは、いつも安全とは限らなかった」[10]。町に流れるもっとも突飛な囁きの出所も、おそらく彼だろうと付け加えられる[11]。信用できないと言いながら、同時に危険だとも言う——この二重の紹介が、あとに来る長い語りの読み方を先に決めている。

インスマスの影(1931年11〜12月執筆)――消防署の前から廃埠頭まで

姿が本文に出るのは、語り手が町歩きを切り上げて広場へ向かう場面である。「赤ら顔でぼさぼさの髭を生やし、目の潤んだ、何とも知れぬぼろをまとった老人が、その前のベンチに腰かけ、身なりは汚いが異常には見えない二人の消防士と話していた。これがむろん、半ば狂った酒好きの九十代、ゼイドック・アレンに違いなかった」[12]。

ここで語り手は予定を変える。エリオット街の裏通りの薄汚れた雑貨店の奥で、「ウィスキーの1クォート瓶は、安くはなかったが造作なく手に入った」[13]。広場へ戻ると「背が高く、痩せて、ぼろをまとった老ゼイドック・アレンその人の姿が、ほかならぬ目に入った」[14]。瓶を振って合図し、人目の絶えた南部の廃埠頭へ誘い込む。「アーカム行きの8時の乗合に間に合わせるつもりなら、会話に残された時間はおよそ4時間だった」[15]。

最初の2時間は空転する。彼は時事の話題を喋り続け、「新聞に広く通じていることと、村流の説教くさい調子で哲学したがる大きな傾向とをのぞかせた」[16]。語りが転回するきっかけは語り手の質問ではなく、老人の視線が沖のデビル・リーフに落ちたことだった。

インスマスの影(1931年11〜12月執筆)――語りの体裁と、地の文が置く距離

ゼイドックの台詞は、原文では強い方言表記で書かれている。aout(out)、haow(how)、cupalo(cupola)、ye(you)といった綴りが延々と続き、地の文の端正な散文とのあいだに、読んだだけで分かる段差ができる。当サイトの引用も、この綴りを整えずに原文のまま転記している。

地の文は、語りのあいだも距離を保ち続ける。語り手は酒を少しずつしか渡さない。「ゼイドックの酒による饒舌が昏睡へ移ってしまっては困る」からである[17]。瓶を渡しきったあとには「これほどの量のウィスキーに耐えられるのは奇妙だった。高く喘ぐようなその声に、濁りの気配すら出ていなかったからだ」と観察が挟まる[18]。語りが昂ぶれば「潤んだ青い目は今やほとんど凶暴で狂的になり、汚れた白い髭が帯電したように逆立っていた」と外から描かれ[19]、ダゴンの誓いの件にさしかかったところでは「老ゼイドックは急速に完全な譫言へ落ちていき、私は息を詰めた」と要約されて先へ流される[20]。

瓶が空になった直後の仕草も、地の文は見逃していない。「瓶の口を舐めてそれをポケットへ滑り込ませると、うなずきながら、ひとりごとのように小声でつぶやき始めた」[41]。声の張りが崩れないことへの驚きは、この小さな仕草の観察と地続きになっている。

話が終わったところで語り手が下す結論も、同じ距離の上にある。「この話に本当に確かな根拠があるとは、片時も信じなかった。それでもこの語りには、本物の恐怖を思わせるものがあった」[4]。彼の語った内容は、こうして最後まで証言の枠に入れられたまま置かれる。

インスマスの影(1931年11〜12月執筆)――退場

語り終える前に、彼は語り手の背後の海を見て絶叫する。語り手が振り返っても何も見えない。戻ってきた声は震える囁きだった。「ここから出ろ! ここから出ろ! やつらに見られた——命が惜しければ逃げろ!」[21]。「私が散らばった正気をかき集める前に、彼は私の肩をつかんでいた手をゆるめ、内陸の通りへ向かって猛然と駆け出し、崩れた倉庫の壁を回って北へよろめき去った」[22]。「そしてウォーター街へ出て北を見渡したとき、ゼイドック・アレンの痕跡はもうどこにも残っていなかった」[23]。

震える囁きは、そこで終わっていない。原文ではさらに「何も待つな——やつらはもう知っている——走れ——急げ——この町から出ろ——」と続く[42]。この一夜の記憶を、語り手は事件の直後、章が変わった冒頭でこう振り返っている。「幼稚な話ではあったが、老ゼイドックの狂気じみた真剣さと恐怖は、募る不安を私に伝え、それがこの町とその形なき影の禍いに対して私が既に抱いていた嫌悪感と結びついた」[43]。この述懐は事件の直後に置かれたものであり、証言の最中に挟まれる「この話に本当に確かな根拠があるとは片時も信じなかった」[4]とは別の時点の感想である。

彼が本文に現れるのはここまでである。最終章で連邦政府の捜査に触れる箇所に、後日談が一行だけ置かれる。「政府の人間はついに気の毒なゼイドックを見つけられず、彼がどうなったかについて何の推測もできずにいる」[5]。

別名・呼称

作中で固有の別名や通り名は与えられていない。地の文は彼を「老ゼイドック(old Zadok)」と呼び、場面ごとに言い換えを変える。初めて見かける場面では「半ば狂った酒好きの九十代(the half-crazed, liquorish nonagenarian)」[12]、語りの信憑性を測る場面では「年代物の酔漢(this antique toper)」[24]、宿へ戻る道では「老いた酔漢(the aged drunkard)」[25]。物語の終盤、語り手が自分の血統を疑うときに彼を思い出す言い方も「あの年老いた酔漢(the ancient toper)」であり[26]、名前よりも酒と老齢のほうが彼の標識になっている。

人物像・性格

外見は初見の場面に書かれたとおり、赤ら顔・ぼさぼさの髭・潤んだ目・ぼろ着で[12]、背が高く痩せている[14]。ここで目を引くのは、町の住民に広がる「インスマス面」の徴候が彼には無いことである。食料品店の少年も彼を「見た目は普通の男」として語り手に教えていた[7]。96年をこの町で過ごしながら、外見の上では町の変質の外側にいる。

素面のときと酔ったときでは別人になる。「彼は肩越しに絶えず振り返る、何かを恐れているような妙にこそこそした男で、素面のときはよそ者とまったく話そうとしなかった。だが好物の毒の申し出だけはどうしても断りきれず、いったん酔えば、囁き声の回想の、もっとも驚くべき断片を供した」[27]。酒への耐性は異様で、1クォート瓶を最後の一滴まで飲み干しても声に濁りが出ない[18]。

無学な老人という像には収まらない。新聞に広く通じ、村流の説教くさい調子で哲学したがる癖がある[16]。語りのあいだには旧約の句も混じり、「メネ、メネ、テケル、ウパルシン」という『ダニエル書』の一句を二度こぼす[8]。

「メネ、メネ、テケル、ウパルシン」をこぼす直前、彼の様子はすでに只事ではなかった。「うめき声をあげ始め、皺の刻まれた頬を伝う涙が、顎鬚の奥へと流れ落ちていった」[44]。そして15歳から見てきたと語るこの独白には、続けてこう付け加えられている。「アーカムやイプスウィッチやそんな所で話した連中はみんな、あんたが今わしを呼んでいるように、頭がおかしいと言われた——だが神よ、わしが見たものは——」[45]。ゼイドックひとりではなく、同様の話をした者たちが他の町でも一様に「狂人」として片づけられてきた、という一言がここに加わる。

その語りの源を、語り手は酒と憎しみに求めている。「気の毒な老人よ——彼の酒と、身のまわりの衰退・異質さ・病への憎しみとが、あの豊かで想像力に富む頭脳を、なんと哀れな幻覚の深みへ連れていったことか」[28]。町を憎みながら町を離れられなかった老人という像は、地の文からはここで一度だけ与えられる。

生涯・経歴

彼の生年をめぐる手がかりは、1846年の証言だけではない。オベドの航海にまつわる昔語りの中で、ゼイドックは「そう、三十八年頃のことだった——わしが7歳のときだ——オベドは航海の合間に、島の住民が皆殺しにされているのを見つけた」と回想している[46]。1838年に7歳という申告は、1846年に15歳という申告[8]と矛盾せず、いずれも1831年前後の生まれという逆算を裏づける。ただしこれも本人の口から出た数字にとどまり、地の文が生年を確定させているわけではない。

彼が町の秘密に近づいた経路は、船でも教団でもなく、自宅の屋根の物見台(cupola)だった。1846年前後の出来事を語るとき、ゼイドックは自分を「わしはちっぽけな子どもだったが、聞いたものは聞いたし、見たものは見た」と位置づける[29]。そして語り手にこう問いかける。「親父の船用望遠鏡を物見台へ持ち上がって、月が昇るとすぐに飛び込んで消える姿で礁がびっしり埋まっているのを見た夜はどうだ?」[30]。「物見台にたった一人でいる小さな子どもが、人間の形ではない姿を見張っているとしたら、どんな気がするか」[31]。

この夜の記憶には、まだ続きがある。礁に群がる人影を見張っていたとき、「オベドたちはボートに乗っていたが、その人影は向こう側の深い水へ飛び込んで二度と浮かんでこなかった」[47]。オベド自身が海上でその場に居合わせていたことを、ゼイドックは物見台の上から見ていたことになる。そして問わず語りが続くうち、彼は次第に平静を失っていく。「彼は節くれ立った爪を私の肩に置いた。その震えは、必ずしも面白がっているだけの震えではないように私には思われた」[48]。

1846年、町がデビル・リーフをめぐる噂と失踪者の多さに疑いを深めたとき、彼は自分の役割を認めている。「わしがモウリー参事会員に物見台から見たことを話したのも、多少は関わっとるだろう」[32]。その晩オベドの一団を尾行した一団とのあいだで銃撃が起こり、翌日オベドと32人が投獄された。

数週間後、深きものどもが町を襲った夜、彼はふたたび物見台にいた。「やつらはうちの戸を叩いたが親父は開けなかった……それから親父は台所の窓から這い出て、マスケット銃を持って町会議員のモウリーを探しに、何ができるか見に行った」[33]。父はそれきり戻らず、「親父の消息は二度と聞かなかった」と彼は語る[34]。

この夜の光景を、彼はより生々しい言葉でも語っている。「やつらはうちの戸を叩いたが……」と語り出す直前には、「あの恐ろしい夜……わしは見た……物見台に上がっていた……やつらの大群……群れが……礁の上一面に、港を泳いで上ってマナクセット川へ……神よ、あの夜インスマスの通りで何が起きたか……」という独白がある[49]。そして「親父の消息は二度と聞かなかった」と語る直前には、住民の半数が消えたこの出来事についてのくだりが続いている。「人が戻ってきて住民の半分が消えているのを見て、みなそれを『疫病』と呼んだ……残ったのはオベドとやつらに加わる者か、さもなくば黙っている者だけ……」[50]。この記憶を語る老人の様子を、地の文はこう記す。「老人は息を切らし、汗まみれになっていた。肩をつかむ手に力がこもった」[51]。

町全体がダゴンの誓いの下に置かれてからも、彼は生き延びた。本人の説明はこうである。「わしが知っていることのために、やつらはとうの昔にわしを殺していただろう。ただ、わしはオベドから第一と第二のダゴンの誓いを受けていたから、知って故意に喋ったと陪審が認めない限りは護られていた……だが第三の誓いは受けなかった。あれを受けるくらいなら死んだほうがましだった」[35]。教団の内側に半分だけ足を置き、決定的な一歩は踏まない——96歳まで町に残っていられた理由として原典が与える説明は、これだけである。しかもこれは彼自身の申告であって、地の文が裏づけているわけではない。

南北戦争の頃、1846年以降に生まれた子どもたちが育ち始めて事態は悪化した。彼はここで一度町を離れている。「わしは怖くなり、あの恐ろしい夜以降は詮索をやめ、生涯であやつらに間近で出くわしたことは一度もない。純血のやつには、ということだ。わしは戦争へ行った。根性か分別があったなら二度と戻らず、よそへ落ち着いていたのに」[36]。彼が従軍したと語るのは南北戦争であり、オベドの船に乗った経験が語られる場面は原典に無い。戻ってきたことを本人が悔いている点も、同じ一節に書かれている。

1927年7月15日の午後、語り手は密造ウィスキーを1クォート買い[13]、瓶を振って彼を誘い出し、南部の廃埠頭で4時間近くを費やした[15]。オベドの半生をめぐる長い回想のあと、語り終える直前になって、彼は初めて「まだ誰にも言っていないこと」を切り出す。本当の恐怖は「あの魚の悪魔どもがしたこと」ではなく「これからすること」であり[3]、川の北側、ウォーター街とメイン街のあいだの家々は「やつらと、やつらが持ち込んだもの」で満ちている[37]。そして一言、「ショゴスというものを聞いたことがあるか?」と問う[38]。

言い終える前に絶叫が来る。彼は走り去り[21][22]、通りから姿を消した[23]。その後の消息を原典は書かない。連邦政府の捜査に触れる箇所に「政府の人間はついに気の毒なゼイドックを見つけられず、彼がどうなったかについて何の推測もできずにいる」と記されるだけである[5]。

他の人物・存在との関係

オベド・マーシュとは、証言者と証言の対象という関係にある。ゼイドックはオベドを罵りながら、彼が南洋で何を知り、町に何をもたらしたかを最も詳しく語る唯一の人物であり、同時に第一と第二の誓いをオベドから受け取った側でもある[35]。

父親は名を与えられていない。船用望遠鏡の持ち主であり[30]、1846年の襲撃の夜にマスケット銃を持って家を出たまま消息を絶った[33][34]。ゼイドックが「詮索をやめた」と語る転機は、この夜と父の失踪に重なる[36]。

モウリー参事会員(Selectman Mowry)は、彼が物見台から見たものを告げた相手である[32]。その通報が1846年の摘発の一因になったと本人は考えており、父が最後に探しに出たのもこの人物だった[33]。

深きものどもに対しては、遠くから見た者という距離を保っている。物見台からは礁を埋める姿も、港をさかのぼる大群も見たが、「純血のやつには間近で出くわしたことは一度もない」と念を押す[36]。

語り手にとって彼は、町で唯一口を開く相手だった。「町の衰退を見てきたこの老いた証人、船と工場の時代まで遡る記憶を持つ男という思いは、どれほど理屈を重ねても抗いきれない誘惑だった」[39]。語り手はその場では話を信じないが、物語の終盤で自分の血統を疑うとき、「あの年老いた酔漢が、わしの目とオベド船長の目が似ていると呟いていたのは何だったのか」と思い返すことになる[26]。

食料品店の少年は、語り手にゼイドックの存在と居場所を教えた人物である[7]。

主要登場作と読みどころ(3〜5作)

  • 「インスマスの影」(1931年執筆/1936年発表): ゼイドックの唯一の登場作。物語の中盤、廃埠頭での4時間の対話がまるごと彼の独白に充てられ、町の歴史はここで初めて読者に開かれる。方言の強い語り口と、地の文が繰り返す「信じていない」という断りの落差が読みどころ。
  • あわせて読む「オベド・マーシュ」: ゼイドックが語った内容の側から町の歴史をたどる記事。どこまでが彼の証言に依っているかを確かめられる。
  • あわせて読む「インスマス」: 彼が96年を過ごした町そのものを扱う記事。
  • あわせて読む「デビル・リーフ」: 彼が物見台から見張り続けた対象を扱う記事。
  • あわせて読む「インスマスの無名の語り手」: 彼から話を聞き出し、その内容を信じなかった側の人物を扱う記事。

よくある誤解(Q&A)

Q. ゼイドックはオベド船長の船に乗っていた元船員なのですか? A. 原典に彼が船に乗っていたと読める記述は無い。1846年当時の彼は15歳前後の少年で[8][29]、町の秘密に触れた経路は自宅の物見台からの観察と、父の船用望遠鏡だった[30][31]。彼が従軍したと語るのは南北戦争であり、海での勤めではない[36]。オベドの航海に同行した人物として原典が名を挙げるのは一等航海士マット・エリオットであって、ゼイドックではない。

Q. 彼の語った内容は、作中で事実として確定しているのですか? A. していない。語り手は聞いた直後に「この話に本当に確かな根拠があるとは片時も信じなかった。それでもこの語りには、本物の恐怖を思わせるものがあった」と書き[4]、宿へ戻る道でも「あの老いた酔漢から聞いた正気でない与太話は、あまり気持ちのよい夢を約束してはくれなかった」と距離を取る[25]。一方、物語の最後で語り手は自分が見たものについて「老ゼイドックの狂った話をもっとも字義通りに信じていたとして、そこから拾い集められたはずのものでさえ、私が見た悪魔的で冒涜的な現実には比べようもなかった」と述べており[40]、語りの内容が否定されたわけでもない。証言と、地の文が確認したことの境目は、原典の中でも最後まで引かれたままになっている。

Q. なぜ町の人々は彼を殺さなかったのですか? A. 本人の説明は、第一と第二のダゴンの誓いを受けていたため「知って故意に喋ったと陪審が認めない限りは護られていた」というもの[35]。これも彼の証言であって、地の文の裏づけはない。地の文の側が書いているのは、住民が彼とよそ者の会話を嫌っており、彼に質問している場面を見られるのは安全とは限らない、という点までである[10]。

Q. 最後に彼はどうなったのですか? A. 原典は書いていない。走り去ったきり姿は見えず[22][23]、連邦政府の捜査でも見つからなかった[5]。殺された、深きものへ変えられた、逃げおおせた——そのいずれとも書かれていない。

Q. 「ショゴス」への言及は何を指しているのですか? A. 彼は「ショゴスというものを聞いたことがあるか?」と問いかけ、「わしはあれらが何なのか知っている」と言いかけたところで絶叫に移り、説明は途切れる[38]。この語が何を指すのかを「インスマスの影」の本文は説明しない。ショゴスそのものの造形は別作品に属する。

出典

  • [1] “This hoary character, Zadok Allen, was ninety-six years old and somewhat touched in the head, besides being the town drunkard.”(訳: この白髪の人物ゼイドック・アレンは96歳で、少し頭がおかしいうえに、町の酔漢でもあった) — 「インスマスの影」(1936年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [2] “old Zadok must have seen everything which went on around Innsmouth for the last ninety years.”(訳: 老ゼイドックは、この90年間インスマスのまわりで起きたことをすべて見てきたはずだった) — 「インスマスの影」(1936年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [3] “Yew want to know what the reel horror is, hey? Wal, it’s this—it ain’t what them fish devils hez done, but what they’re a-goin’ to do!”(訳: 本当の恐怖が何なのか知りたいのか、え? よし、こうだ——それはあの魚の悪魔どもがしたことじゃない、これからすることだ!) — 「インスマスの影」(1936年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [4] “Not for a moment did I believe that the tale had any really substantial foundation; but none the less the account held a hint of genuine terror”(訳: この話に本当に確かな根拠があるとは、片時も信じなかった。それでもこの語りには、本物の恐怖を思わせるものがあった) — 「インスマスの影」(1936年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [5] “The government men never found poor Zadok, and have no conjectures to make as to what became of him.”(訳: 政府の人間はついに気の毒なゼイドックを見つけられず、彼がどうなったかについて何の推測もできずにいる) — 「インスマスの影」(1936年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [6] “The Shadow over Innsmouth (November?–3 December 1931)”(訳: 『インスマスの影』(1931年11月?-12月3日執筆)) — H. P. Lovecraft 作品一覧, The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [7] “The only one who would talk was a very aged but normal-looking man who lived at the poorhouse on the north rim of the town and spent his time walking about or lounging around the fire station.”(訳: 口を開いてくれる唯一の相手は、町の北端の救貧院に住み、歩き回るか消防署のあたりでぶらつくかして過ごしている、たいそう年老いた、しかし見た目は普通の男だった) — 「インスマスの影」(1936年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [8] “God, what I seen senct I was fifteen year’ old— Mene, mene, tekel, upharsin! —the folks as was missin’, an’ them as kilt theirselves”(訳: 神よ、15歳のときから見てきたものときたら——メネ、メネ、テケル、ウパルシン!——行方知れずになった連中、自ら命を絶った連中) — 「インスマスの影」(1936年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [9] “It was I who fled frantically out of Innsmouth in the early morning hours of July 16, 1927″(訳: 1927年7月16日の未明にインスマスから半狂乱で逃げ出したのは私である) — 「インスマスの影」(1936年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [10] “his stories were all insane, incomplete hints of impossible marvels and horrors which could have no source save in his own disordered fancy. Nobody ever believed him, but the natives did not like him to drink and talk with strangers; and it was not always safe to be seen questioning him.”(訳: 彼の話はすべて正気でなく、ありえない驚異と恐怖についての不完全な仄めかしばかりで、彼自身の混乱した空想以外に出所がありえなかった。誰も彼を信じたことはなかったが、それでも町の者は彼がよそ者と飲んで話すのを嫌っており、彼に質問しているところを見られるのは、いつも安全とは限らなかった) — 「インスマスの影」(1936年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [11] “It was probably from him that some of the wildest popular whispers and delusions were derived.”(訳: 世間に流れるもっとも突飛な囁きや思い込みのいくつかは、おそらく彼に由来していた) — 「インスマスの影」(1936年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [12] “the red-faced, bushy-bearded, watery-eyed old man in nondescript rags who sat on a bench in front of it talking with a pair of unkempt but not abnormal-looking firemen. This, of course, must be Zadok Allen, the half-crazed, liquorish nonagenarian”(訳: 赤ら顔でぼさぼさの髭を生やし、目の潤んだ、何とも知れぬぼろをまとった老人が、その前のベンチに腰かけ、身なりは汚いが異常には見えない二人の消防士と話していた。これがむろん、半ば狂った酒好きの九十代、ゼイドック・アレンに違いなかった) — 「インスマスの影」(1936年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [13] “A quart bottle of whiskey was easily, though not cheaply, obtained in the rear of a dingy variety-store just off the Square in Eliot Street.”(訳: ウィスキーの1クォート瓶は、安くはなかったが、広場からすぐのエリオット街の薄汚れた雑貨店の奥で造作なく手に入った) — 「インスマスの影」(1936年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [14] “I glimpsed nothing less than the tall, lean, tattered form of old Zadok Allen himself.”(訳: 背が高く、痩せて、ぼろをまとった老ゼイドック・アレンその人の姿が、ほかならぬ目に入った) — 「インスマスの影」(1936年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [15] “About four hours remained for conversation if I were to catch the eight o’clock coach for Arkham”(訳: アーカム行きの8時の乗合に間に合わせるつもりなら、会話に残された時間はおよそ4時間だった) — 「インスマスの影」(1936年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [16] “He would babble of current topics, revealing a wide acquaintance with newspapers and a great tendency to philosophise in a sententious village fashion.”(訳: 彼は時事の話題をとりとめもなく喋り、新聞に広く通じていることと、村流の説教くさい調子で哲学したがる大きな傾向とをのぞかせた) — 「インスマスの影」(1936年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [17] “In my donations I was careful not to overshoot the mark, for I did not wish Zadok’s vinous garrulousness to pass into a stupor.”(訳: 酒を分け与えるにあたっては、度を越さないよう気をつけた。ゼイドックの酒による饒舌が昏睡へ移ってしまっては困るからだ) — 「インスマスの影」(1936年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [18] “It was curious how he could stand so much whiskey, for not even a trace of thickness had come into his high, wheezy voice.”(訳: これほどの量のウィスキーに耐えられるのは奇妙だった。高く喘ぐようなその声に、濁りの気配すら出ていなかったからだ) — 「インスマスの影」(1936年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [19] “The watery blue eyes were almost savage and maniacal now, and the dirty white beard bristled electrically.”(訳: 潤んだ青い目は今やほとんど凶暴で狂的になり、汚れた白い髭が帯電したように逆立っていた) — 「インスマスの影」(1936年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [20] “Old Zadok was fast lapsing into stark raving, and I held my breath.”(訳: 老ゼイドックは急速に完全な譫言へ落ちていき、私は息を詰めた) — 「インスマスの影」(1936年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [21] “Git aout o’ here! Git aout o’ here! They seen us —git aout fer your life!”(訳: ここから出ろ! ここから出ろ! やつらに見られた——命が惜しければ逃げろ!) — 「インスマスの影」(1936年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [22] “Before I could recover my scattered wits he had relaxed his clutch on my shoulder and dashed wildly inland toward the street, reeling northward around the ruined warehouse wall.”(訳: 私が散らばった正気をかき集める前に、彼は私の肩をつかんでいた手をゆるめ、内陸の通りへ向かって猛然と駆け出し、崩れた倉庫の壁を回って北へよろめき去った) — 「インスマスの影」(1936年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [23] “And when I reached Water Street and looked along it toward the north there was no remaining trace of Zadok Allen.”(訳: そしてウォーター街へ出て北を見渡したとき、ゼイドック・アレンの痕跡はもうどこにも残っていなかった) — 「インスマスの影」(1936年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [24] “possibly the wild stories were lies of the bygone Obed himself rather than of this antique toper.”(訳: あの突飛な話は、この年代物の酔漢ではなく、とうに世を去ったオベド本人の嘘だったのかもしれない) — 「インスマスの影」(1936年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [25] “The insane yarn I had heard from the aged drunkard did not promise very pleasant dreams”(訳: あの老いた酔漢から聞いた正気でない与太話は、あまり気持ちのよい夢を約束してはくれなかった) — 「インスマスの影」(1936年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [26] “What was it the ancient toper had muttered about the likeness of my eyes to Captain Obed’s?”(訳: あの年老いた酔漢が、わしの目とオベド船長の目が似ていると呟いていたのは何だったのか?) — 「インスマスの影」(1936年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [27] “He was a strange, furtive creature who constantly looked over his shoulder as if afraid of something, and when sober could not be persuaded to talk at all with strangers. He was, however, unable to resist any offer of his favourite poison; and once drunk would furnish the most astonishing fragments of whispered reminiscence.”(訳: 彼は肩越しに絶えず振り返る、何かを恐れているような妙にこそこそした男で、素面のときはよそ者とまったく話そうとしなかった。だが好物の毒の申し出だけはどうしても断りきれず、いったん酔えば、囁き声の回想の、もっとも驚くべき断片を供した) — 「インスマスの影」(1936年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [28] “Poor old soul—to what pitiful depths of hallucination had his liquor, plus his hatred of the decay, alienage, and disease around him, brought that fertile, imaginative brain!”(訳: 気の毒な老人よ——彼の酒と、身のまわりの衰退・異質さ・病への憎しみとが、あの豊かで想像力に富む頭脳を、なんと哀れな幻覚の深みへ連れていったことか) — 「インスマスの影」(1936年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [29] “I was a mighty little critter, but I heerd what I heerd an’ seen what I seen”(訳: わしはちっぽけな子どもだったが、聞いたものは聞いたし、見たものは見た) — 「インスマスの影」(1936年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [30] “Haow abaout the night I took my pa’s ship’s glass up to the cupalo an’ seed the reef a-bristlin’ thick with shapes that dove off quick soon’s the moon riz?”(訳: 親父の船用望遠鏡を物見台へ持ち上がって、月が昇るとすぐに飛び込んで消える姿で礁がびっしり埋まっているのを見た夜はどうだ?) — 「インスマスの影」(1936年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [31] “Haow’d ye like to be a little shaver alone up in a cupalo a-watchin’ shapes as wa’n’t human shapes?”(訳: 物見台にたった一人でいる小さな子どもが、人間の形ではない姿を見張っているとしたら、どんな気がするか) — 「インスマスの影」(1936年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [32] “I guess I done a bit by tellin’ Selectman Mowry what I see from the cupalo.”(訳: わしがモウリー参事会員に物見台から見たことを話したのも、多少は関わっとるだろう) — 「インスマスの影」(1936年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [33] “they rattled our door, but pa wouldn’t open . . . then he clumb aout the kitchen winder with his musket to find Selectman Mowry an’ see what he cud do”(訳: やつらはうちの戸を叩いたが親父は開けなかった……それから親父は台所の窓から這い出て、マスケット銃を持って町会議員のモウリーを探しに、何ができるか見に行った) — 「インスマスの影」(1936年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [34] “never heerd o’ my pa no more”(訳: 親父の消息は二度と聞かなかった) — 「インスマスの影」(1936年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [35] “They’d a kilt me long ago fer what I know, only I’d took the fust an’ secon’ Oaths o’ Dagon offen Obed, so was pertected unlessen a jury of ‘em proved I told things knowin’ an’ delib’rit . . . but I wudn’t take the third Oath—I’d a died ruther’n take that—”(訳: わしが知っていることのために、やつらはとうの昔にわしを殺していただろう。ただ、わしはオベドから第一と第二のダゴンの誓いを受けていたから、知って故意に喋ったと彼らの陪審が証明しない限りは護られていた……だが第三の誓いは受けなかった。あれを受けるくらいなら死んだほうがましだった) — 「インスマスの影」(1936年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [36] “I was afeard—never did no pryin’ arter that awful night, an’ never see one of— them —clost to in all my life. That is, never no full-blooded one. I went to the war, an’ ef I’d a had any guts or sense I’d a never come back, but settled away from here.”(訳: わしは怖くなり、あの恐ろしい夜以降は詮索をやめ、生涯であやつらに間近で出くわしたことは一度もない。純血のやつには、ということだ。わしは戦争へ行った。根性か分別があったなら二度と戻らず、よそへ落ち着いていたのに) — 「インスマスの影」(1936年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [37] “Them haouses north o’ the river betwixt Water an’ Main Streets is full of ‘em—them devils an’ what they brung”(訳: 川の北側、ウォーター街とメイン街のあいだのあの家々は、やつらでいっぱいだ——あの悪魔どもと、やつらが持ち込んだものでな) — 「インスマスの影」(1936年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [38] “ever hear tell of a shoggoth?”(訳: ショゴスというものを聞いたことがあるか?)/ “I tell ye I know what them things be”(訳: 言っとくが、わしはあれらが何なのか知っている) — 「インスマスの影」(1936年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [39] “the thought of this aged witness to the town’s decay, with memories going back to the early days of ships and factories, was a lure that no amount of reason could make me resist”(訳: 町の衰退を見てきたこの老いた証人、船と工場の時代まで遡る記憶を持つ男という思いは、どれほど理屈を重ねても抗いきれない誘惑だった) — 「インスマスの影」(1936年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [40] “Nothing that I could have imagined—nothing, even, that I could have gathered had I credited old Zadok’s crazy tale in the most literal way—would be in any way comparable to the daemoniac, blasphemous reality that I saw”(訳: 私に想像できたはずのどんなものも——老ゼイドックの狂った話をもっとも字義通りに信じていたとして、そこから拾い集められたはずのものでさえ——私が見た悪魔的で冒涜的な現実には、およそ比べようもなかった) — 「インスマスの影」(1936年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
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