概要(2〜3行)
イラーネクは、ムナールの地を流れる川アイのほとりに、トラー・カダセロンとともに築かれた都市である[1]。原典「サルナスに到りし禍」では、サルナスと隊商路で結ばれた交易相手として、また都市滅亡後にボクルグの神像を引き取る高き神殿の所在地として、繰り返し名指しで登場する[4][10]。約七年後に書かれた「未知なるカダスを夢に求めて」では一転して、インガノクの瑪瑙を買い、翡翠の杯を売る交易港として、まったく異なる文脈で再び現れる[11][12]。同じ地名が二つの独立した短編にまたがって使われている点自体が、この都市を扱う理由になる。
基本プロフィール(表で可)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 分類 | 地名(幻夢境ムナールの地の交易都市) |
| 欧文表記 | ILARNEK |
| 初出 | 「サルナスに到りし禍」(1919年12月3日執筆[13]/1920年6月、アマチュア誌『The Scot』第44号にて発表[14]) |
| 二度目の登場 | 「未知なるカダスを夢に求めて」(1926年秋?〜1927年1月22日執筆[15]/1943年、アーカム・ハウスの作品集『Beyond the Wall of Sleep』で刊行[16]) |
| 位置 | ムナールの地を流れる川アイのほとり。トラー・カダセロンと並んで建てられた三都市の一つ[1] |
| 建てた者 | 羊の群れを連れた「浅黒い羊飼いの民」。「多くの永劫」を経て人類がムナールの地へ至ったのちの建設で、サルナスの建国より前にあたる[1] |
| サルナスとの関係 | 両都市のあいだに隊商路が通じ、サルナスの貴金属と川アイ沿岸の奢侈品が交換された[4] |
| 記録媒体 | 「イラーネクのパピルス」に、イブの民が火を発見した経緯が記されていたという[2] |
| 特産品(後年) | 翡翠の杯。「未知なるカダスを夢に求めて」でインガノクの商人がシャンタク鳥の卵と交換する品として名指しされる[12] |
| 本文中の言及回数 | “Ilarnek” は「サルナスに到りし禍」に8回、「未知なるカダスを夢に求めて」に2回(当サイトが hplovecraft.com の本文を実測) |
原典での描写
イラーネクが登場する作品は二つある。「サルナスに到りし禍」(1919年執筆)ではトラー・カダセロンと三都市一組の一角として、また単独でも名指しされる形で計8回現れ、「未知なるカダスを夢に求めて」(1926-27年執筆)では、まったく異なる場面で2回だけ言及される。当サイトは hplovecraft.com が公開する両作の本文を実際に取得し、この語が現れる箇所をすべて数えたうえで本記事を書いている。
「サルナスに到りし禍」――川アイの三都市
物語は、ムナールの地の大いなる湖に、サルナスが建つより前からイブという都市があったと語ったのち、イブの民についての記述を「イラーネクのパピルス」に求める。そこには、イブの民がある日火を発見し、以後さまざまな儀式の場で炎を焚くようになったと書かれていたという[2]。
続けて物語は、「多くの永劫」を経て人類がムナールの地へ至った経緯を語る。羊の群れを連れた浅黒い羊飼いの民が、川アイのほとりにトラー、イラーネク、カダセロンを築いた。そして、彼らよりも頑健なある部族が、さらに奥へと進んで湖の岸辺に至り、貴金属の産する場所にサルナスを築いたという[1]。この一文は、イラーネクを含む三都市の建設が、サルナスの建国に先行する出来事として語られていることを示している。
同じ場面で、イブの民の容姿を伝える記述の出典として、今度は「カダセロンの煉瓦の円柱」が挙げられる。イブの者たちは湖やその上に立つ霧と同じ緑色をしており、突き出た目、たるんだ唇、奇妙な耳を持ち、声を持たなかった、という記述である[3]。
つまり原典は、イブについての二つの異なる事実――火の発見という一エピソードと、容姿の描写――を、それぞれ別の記録媒体・別の都市に帰属させている。パピルスに記すイラーネクと、煉瓦の円柱に刻むカダセロン。同じ三都市の一組でありながら、原典が個々に書き分けている数少ない特徴の一つがこれである。
「サルナスに到りし禍」――サルナスとの隊商路
サルナスとイブのあいだで起きた出来事(住人の殺戮とボクルグ神像の奪取)から時代が下ると、物語はサルナスの繁栄を語り始める。そこで最初に名指しされる隣国がイラーネクである。
サルナスとイラーネクのあいだには隊商路が通じ、地中から採れる貴金属が、他の金属や希少な布、宝石、書物、職人の道具、そして川アイの沿岸とその先に住む人々に知られるあらゆる奢侈品と交換された。こうしてサルナスは強大かつ学識高く育っていったという[4]。
この一文で、イラーネクはサルナスの繁栄を支えた交易相手として位置づけられる。トラーやカダセロンには個別の隊商路の記述がなく、隊商路という具体的な経済関係を持つのはイラーネクだけである。
「サルナスに到りし禍」――旅人たちが見たサルナスの都
サルナスの建築を描く場面でも、イラーネクは繰り返し引き合いに出される。ガラス質のレンガとカルセドニーで築かれ、他のどの都市にも似た家がなかったサルナスの家々を、トラーとイラーネクとカダセロンから来た旅人たちは、その輝くドームに驚嘆して眺めたという[5]。
さらに壮麗だったのが宮殿と神殿、そして老王ゾッカルが造らせた庭園だった。もっとも小さな宮殿でさえ、トラーやイラーネクやカダセロンのどの宮殿よりも堂々としていた、と物語は規模を比較する形で語る[6]。ここでもイラーネクは、サルナスの繁栄を測る物差しとして、名前だけで機能している。
「サルナスに到りし禍」――千年祭にやってきた人々
イブ滅亡千周年を祝う祭りが近づくと、ムナールの地とその向こうのあらゆる都市から、馬や駱駝や象に乗った人々がサルナスへ押し寄せた。その筆頭に名指しされるのが、トラー、イラーネク、カダセロンの人々である[7]。
この祭りで供された数々の珍味のなかに、ムタルの真珠をトラーの酢に溶かした一品がある[8]。トラーにだけ与えられたこの具体的な特産物の記述は、三都市がひとまとめに語られがちな原典のなかで、個々の都市に固有色を与える数少ない例の一つである。イラーネク自身の特産物が語られるのは、この物語ではなく、のちに触れる「未知なるカダスを夢に求めて」でのことになる。
「サルナスに到りし禍」――滅びの晩、川アイへ向かった人々
祭りの夜、高祭司ガナイ=カーが湖から立ちのぼる緑の霧と、月から降りる影を目にした直後、恐れが漠然と、しかし急速に広がっていった。そのため、イラーネクの、そして遠くロコルの王侯たちは、なぜそうするのか自分でもほとんど分からないまま、天幕と幔幕をたたんで川アイへ向けて出立したという[9]。
この一節は、イラーネクの側の視点をわずかに垣間見せる、原典で唯一の場面である。サルナス側の視点からは、饗宴の間に人ならぬものの群れが現れ、都市そのものが消え失せる様子が語られるのに対し、イラーネクの王侯たちは、理由の分からない不安に押されて自分たちの土地――川アイの方角――へ帰っていく。原典はこの二つの動きを並べて置くだけで、両者を結びつける説明はしない。
「サルナスに到りし禍」――神像の最後の安置場所
サルナスが一夜にして消え去ったのち、残されたのは静かな湖と岸の岩アクリオンだけだった。だが後年、灯心草の茂みのなかに、海藻に覆われた緑色の石像――ボクルグを象った、極めて古い像――が見つかる。その神像はイラーネクの高き神殿に安置され、以後ムナールの地全域で、欠けゆく月の下で崇拝されるようになったという[10]。
サルナスがイブから奪ったボクルグの神像は、サルナス自体の滅亡ののち、最終的にイラーネクへ行き着く。かつて隊商路の交易相手にすぎなかったこの都市は、物語の結末部で、ムナールの地の新しい信仰の中心地としての役割を与えられる。
「未知なるカダスを夢に求めて」――のちの時代の交易港
「サルナスに到りし禍」から七年ほどのちに書かれた「未知なるカダスを夢に求めて」では、イラーネクはまったく別の文脈で登場する。舞台はインガノク。この街は瑪瑙でできた都市で、そこで切り出された見事な瑪瑙の塊は、リナル、オグロタン、セレファイス、そして地元の商人――トラー、イラーネク、カダセロンの商人たち――に取引され、彼らの港が産する美しい品々と交換されたという[11]。
続く場面では、ある老人がインガノクの街角に現れ、伝説のシャンタク鳥の産む、色鮮やかで巨大な卵を、イラーネクの商人が持ち込む見事な翡翠の杯と交換するために売っていた、と語られる[12]。
「サルナスに到りし禍」ではボクルグ信仰の中心地として結ばれたイラーネクが、この作品では瑪瑙とシャンタク鳥の卵、翡翠の杯が行き交う交易港として現れる。二作のあいだに、時系列上の連続性を示す記述はない。ムナールの地とインガノクの位置関係、両作の出来事の前後関係についても、原典に明示する一節は見当たらない。原典が与えているのは、同じ地名が異なる作品のなかで、異なる役回りを演じているという事実だけである。
由来・モデル
イラーネクという地名の由来を説明する記述は、原典本文にも、当サイトが確認した hplovecraft.com の作品資料にも見当たらない。トラー・カダセロンとの語感の類似についても、それを意図した言及は原典に無い。
一つだけ言えるのは、原典がこの都市に「パピルスを持つ都市」という性格を与えている点である。イブの民が火を発見したという一エピソードの出典として「イラーネクのパピルス」が名指しされ[2]、隣のカダセロンには「煉瓦の円柱」という別の記録媒体が割り当てられている[3]。羊飼いの民が築いた三都市という括りのなかで、イラーネクとカダセロンにだけ、それぞれ異なる書字素材による記録の存在が与えられているのは、単なる偶然というより、原典が三都市を書き分けようとした跡と見ることができる。ただし、この書き分け以上の理由や、都市の性格づけの意図を明言する記述は無い。
歴史・年表
原典二作から読み取れる限りの順序を示す。暦の上の年を示すものではない。
- 年代不詳(イブの時代): イブの民が湖畔で火を発見し、儀式に用い始める。この出来事は、のちに「イラーネクのパピルス」に記されることになる[2]。
- 多くの永劫ののち: 羊の群れを連れた浅黒い羊飼いの民が、川アイのほとりにトラー、イラーネク、カダセロンを築く[1]。
- その後: より頑健な部族が湖の岸辺まで進み、貴金属の産する場所にサルナスを築く[1]。サルナスの若い戦士たちがイブを滅ぼし、ボクルグの神像を戦利品として持ち帰る(詳細はサルナス・イブの各記事を参照)。
- サルナス建国後、幾世紀を経て: サルナスとイラーネクのあいだに隊商路が通じ、貴金属と奢侈品の交換が始まる。サルナスはこの交易を通じて強大になっていく[4]。トラー・イラーネク・カダセロンの旅人たちがサルナスの輝くドームに驚嘆する[5]。
- イブ滅亡千周年の祭り: トラー、イラーネク、カダセロンをはじめムナール中の人々がサルナスへ集まる[7]。
- 祭りの夜: 高祭司が異変を目撃した直後、イラーネクと遠いロコルの王侯たちが、理由も分からぬまま天幕をたたんで川アイへ向かう[9]。同じ夜、サルナスは一夜にして消え去る。
- サルナス滅亡後: 湖畔の灯心草の茂みでボクルグの神像が発見され、イラーネクの高き神殿に安置される。以後、ムナールの地全域でこの神像が崇拝の対象になる[10]。
- 年代不詳・別作品: 「未知なるカダスを夢に求めて」の時点で、イラーネクはインガノクと瑪瑙を取引し、翡翠の杯を産する交易港として活動している[11][12]。この時点とサルナスの物語との時系列上の関係は、原典に記述が無い。
性質・特徴
- 立地: ムナールの地を流れる川アイのほとり。湖畔のサルナス・イブとは異なる水系に属し、トラー・カダセロンと並んで建てられた三都市の一つ[1]。
- サルナスとの経済関係: 両都市のあいだに隊商路が通じ、サルナスが産する貴金属と、川アイ沿岸の奢侈品(布・宝石・書物・道具)が交換された[4]。三都市のなかで、サルナスとの具体的な交易関係が語られるのはイラーネクだけである。
- 記録の都市: イブの民が火を発見した経緯を伝える「イラーネクのパピルス」の名で言及される[2]。隣のカダセロンが「煉瓦の円柱」という別の記録媒体を持つのに対し[3]、イラーネクはパピルスという書字素材で書き分けられている。
- 信仰の中心地(サルナス滅亡後): サルナスが持ち去ったボクルグの神像は、サルナス滅亡後に湖畔で発見され、最終的にイラーネクの高き神殿へ安置される。以後、この神殿がムナールの地全域におけるボクルグ崇拝の中心になったと原典は伝える[10]。
- のちの時代の交易港(「未知なるカダスを夢に求めて」): インガノクの瑪瑙を買い、翡翠の杯を売る港として言及される[11][12]。この場面のイラーネクに、ボクルグ崇拝や神殿についての言及は無い。
関連する人物・存在(関係図)
- サルナス: イラーネクの隊商路上の交易相手[4]。サルナス滅亡後、ボクルグの神像がイラーネクへ移る[10]。
- イブ: 「イラーネクのパピルス」が、その民の火の発見を記録していたとされる先住都市[2]。サルナスに滅ぼされ、神像だけが奪われる。
- ボクルグ: サルナス滅亡後、湖畔で発見された神像がイラーネクの高き神殿に安置され、ムナールの地全域で崇拝されるようになる[10]。
- ムナール: イラーネク・トラー・カダセロン・サルナス・イブがすべて属する広域の地名。
- インガノク: 「未知なるカダスを夢に求めて」で、イラーネクの商人が瑪瑙を買い、翡翠の杯を売る取引先として現れる[11][12]。
- トラー・カダセロン: イラーネクと同じ川アイのほとりに建てられた姉妹都市[1]。トラーには酢の名産という個別の記述が[8]、カダセロンには煉瓦の円柱という記録媒体の記述がある[3]。深淵書架にはまだ両都市単独の記事は無い。
- ディラス=リーン: 本記事の対象ではないが、同じムナールの地に属する港湾都市として、当サイトの他記事で扱っている。
主要登場作と読みどころ
- 「サルナスに到りし禍」(1919年執筆/1920年発表): イラーネクが登場する最初の作品で、本文に “Ilarnek” が8回現れる。読みどころは、イラーネクが物語の中で少しずつ役割を変えていく点にある。序盤ではイブの記録を伝える文書の出典(パピルス)として[2]、中盤ではサルナスの繁栄を支える交易相手・比較対象として[4][5][6]、祭りの場面では大勢の来訪者の一団として[7]、そして滅亡の夜には、理由の分からない不安から離脱していく側として[9]、最後にはボクルグ信仰の新しい中心地として[10]、と役回りが一貫して変化していく。
- 「未知なるカダスを夢に求めて」(1926年秋?〜1927年1月22日執筆/1943年刊行): イラーネクの二度目の登場で、本文に “Ilarnek” が2回現れる。舞台も時代も語り口もまったく異なり、ボクルグや神殿への言及は一切無い。同じ地名が二つの独立した物語で異なる役割を担っている点は、幻夢境という舞台が、単一の年表に沿って書かれた世界ではなく、作品ごとに地名だけを共有しながら再利用されていることを示す一例になっている。
- あわせて読む記事として、隊商路の相手先であるサルナス、神像の由来となったイブ、イラーネクの神殿に祀られることになるボクルグ、広域の地名であるムナールがある。
よくある誤解(Q&A)
Q. イラーネク・トラー・カダセロンは、原典でまったく同じように描かれているのですか? A. いいえ。三都市はしばしば「トラー、イラーネク、カダセロン」とひとまとめに名指しされますが[1][5][6][7]、個別の記述も与えられています。イラーネクには「パピルス」という記録媒体[2]とサルナスとの隊商路[4]、カダセロンには「煉瓦の円柱」という記録媒体[3]、トラーには酢という特産物[8]が、それぞれ一度だけ結びつけられています。
Q. イラーネクの高き神殿は、いつから存在したのですか? A. 原典に明記されていません。分かるのは、サルナス滅亡後にボクルグの神像がこの神殿へ安置され、以後ムナールの地全域で崇拝の対象になったということだけです[10]。神殿がそれ以前から存在していたのか、神像を機にはじめて建てられたのかは書かれていません。
Q. 「サルナスに到りし禍」と「未知なるカダスを夢に求めて」のイラーネクは、同じ時代の同じ都市なのですか? A. 地名は同じですが、原典はこの二つの場面を結びつける記述を与えていません。前者ではボクルグ信仰の中心地として、後者では瑪瑙と翡翠の杯が行き交う交易港として言及されるのみで、時系列上の前後関係やインガノクとムナールの位置関係を示す一節は見当たりません。
Q. イラーネクの人々は、サルナス滅亡の夜に何が起きたか知っていたのですか? A. 原典が書いているのは、恐れが漠然と、しかし急速に広がり、イラーネクと遠いロコルの王侯たちが、なぜそうするのか自分でもほとんど分からないまま天幕をたたんで川アイへ向かった、ということだけです[9]。原因を理解したうえでの行動だったのか、単なる予感によるものだったのかは書かれていません。
Q. ダーレス以降の作品やTRPGでは、どう扱われていますか? A. 本記事は一次資料(hplovecraft.com の本文と作品一覧)に限って調べており、後世の作家の作品や供給元の公式資料は確認していない。確認できる資料が無いため、ここには書かない。
出典
- [1] “After many aeons men came to the land of Mnar; dark shepherd folk with their fleecy flocks, who built Thraa, Ilarnek, and Kadatheron on the winding river Ai. And certain tribes, more hardy than the rest, pushed on to the border of the lake and built Sarnath at a spot where precious metals were found in the earth.”(訳: 「多くの永劫を経て、人類がムナールの地へ至った。羊の群れを連れた浅黒い羊飼いの民で、彼らは曲がりくねる川アイのほとりにトラー、イラーネク、カダセロンを築いた。そして、他よりも頑健なある部族が、さらに湖の岸辺まで進み、地中から貴金属の見つかる場所にサルナスを築いた」) — H. P. Lovecraft, “The Doom That Came to Sarnath”(1919年執筆/1920年発表), The H. P. Lovecraft Archive ↩
- [2] “And it is written in the papyrus of Ilarnek, that they one day discovered fire, and thereafter kindled flames on many ceremonial occasions.”(訳: 「そしてイラーネクのパピルスには、彼ら〔イブの民〕がある日火を発見し、以後さまざまな儀式の場で炎を焚くようになったと記されている」) — 同上 ↩
- [3] “It is written on the brick cylinders of Kadatheron that the beings of Ib were in hue as green as the lake and the mists that rise above it; that they had bulging eyes, pouting, flabby lips, and curious ears, and were without voice.”(訳: 「カダセロンの煉瓦の円柱には、イブの住人は湖やその上に立ちのぼる霧と同じ緑色をしており、突き出た目、たるんだ唇、奇妙な耳を持ち、声を持たなかったと記されている」) — 同上 ↩
- [4] “Betwixt Sarnath and the city of Ilarnek arose a caravan route, and the precious metals from the earth were exchanged for other metals and rare cloths and jewels and books and tools for artificers and all things of luxury that are known to the people who dwell along the winding river Ai and beyond. So Sarnath waxed mighty and learned and beautiful”(訳: 「サルナスとイラーネクの都市のあいだに隊商路が通じ、地中から採れる貴金属が、他の金属、希少な布、宝石、書物、職人の道具、そして曲がりくねる川アイの沿岸とその先に住む人々に知られるあらゆる奢侈品と交換された。こうしてサルナスは強大かつ学識高く、美しく育っていった」) — 同上 ↩
- [5] “With strange art were they builded, for no other city had houses like them; and travellers from Thraa and Ilarnek and Kadatheron marvelled at the shining domes wherewith they were surmounted.”(訳: 「奇妙な技巧で築かれており、他のどの都市にもこれに似た家は無かった。トラーとイラーネクとカダセロンから来た旅人たちは、それらを戴く輝くドームに驚嘆した」) — 同上 ↩
- [6] “There were many palaces, the least of which were mightier than any in Thraa or Ilarnek or Kadatheron.”(訳: 「宮殿は数多くあり、そのもっとも小さなものでさえ、トラーやイラーネクやカダセロンのどの宮殿よりも堂々としていた」) — 同上 ↩
- [7] “For a decade had it been talked of in the land of Mnar, and as it drew nigh there came to Sarnath on horses and camels and elephants men from Thraa, Ilarnek, and Kadatheron, and all the cities of Mnar and the lands beyond.”(訳: 「その祭りは十年前からムナールの地で語り草となっており、当日が近づくと、トラー、イラーネク、カダセロンをはじめムナールとその向こうのあらゆる都市から、馬や駱駝や象に乗った人々がサルナスへ押し寄せた」) — 同上 ↩
- [8] “pearls from wave-washed Mtal dissolved in the vinegar of Thraa.”(訳: 「波に洗われたムタルの真珠を、トラーの酢に溶かしたもの」) — 同上 ↩
- [9] “And fear grew vaguely yet swiftly, so that the princes of Ilarnek and of far Rokol took down and folded their tents and pavilions and departed for the river Ai, though they scarce knew the reason for their departing.”(訳: 「恐れは漠然と、しかし急速に広がっていった。そのため、イラーネクの、そして遠くロコルの王侯たちは、天幕と幔幕をたたんで川アイへ向けて出立した。もっとも、彼らはなぜそうするのか自分でもほとんど分からなかった」) — 同上 ↩
- [10] “half buried in the rushes was spied a curious green idol of stone; an exceedingly ancient idol coated with seaweed and chiselled in the likeness of Bokrug, the great water-lizard. That idol, enshrined in the high temple at Ilarnek, was subsequently worshipped beneath the gibbous moon throughout the land of Mnar.”(訳: 「灯心草の茂みに半ば埋もれて、奇妙な緑色の石像が見出された――それは海藻に覆われた、極めて古い、水蜥蜴ボクルグを象った像であった。その神像はイラーネクの高き神殿に安置され、以後ムナールの地全域で、欠けゆく月の下で崇拝された」) — 同上 ↩
- [11] “There were many of them, for all the city of Inganok was builded of onyx, whilst great polished blocks of it were traded in Rinar, Ogrothan, and Celephaïs, and at home with the merchants of Thraa, Ilarnek, and Kadatheron, for the beautiful wares of those fabulous ports.”(訳: 「その数は多かった。インガノクの街はすべて瑪瑙で築かれており、磨き上げた瑪瑙の大きな塊は、リナル、オグロタン、セレファイスで、また地元ではトラー、イラーネク、カダセロンの商人たちと取引され、彼らの伝説的な港が産する美しい品々と交換されていたからである」) — H. P. Lovecraft, “The Dream-Quest of Unknown Kadath”(1943年刊行), The H. P. Lovecraft Archive ↩
- [12] “sailors later said that he had come with a yak caravan from some point not well determined, bearing the colossal and rich-flavoured eggs of the rumoured shantak-bird to trade for the dexterous jade goblets that merchants brought from Ilarnek.”(訳: 「船乗りたちは後に、彼がヤクの隊商とともにどこからともなくやって来て、伝説のシャンタク鳥が産むという色鮮やかで巨大な卵を、イラーネクの商人が持ち込む見事な翡翠の杯と交換するために持参していたのだと語った」) — 同上 ↩
- [13] “The Doom That Came to Sarnath (3 December 1919)”(訳: 「サルナスに到りし禍」(1919年12月3日)) — H. P. Lovecraft’s Fiction, Alphabetical Order, The H. P. Lovecraft Archive ↩
- [14] “1920, June: The Doom That Came to Sarnath (The Scot, No. 44)”(訳: 「1920年6月:『サルナスに到りし禍』(アマチュア誌『The Scot』第44号)」) — H. P. Lovecraft’s Fiction, Publication Order, The H. P. Lovecraft Archive ↩
- [15] “The Dream-Quest of Unknown Kadath (Autumn? 1926–22 January 1927)”(訳: 「未知なるカダスを夢に求めて」(1926年秋?〜1927年1月22日)) — H. P. Lovecraft’s Fiction, Alphabetical Order, The H. P. Lovecraft Archive ↩
- [16] “1943: The Dream-Quest of Unknown Kadath ( Beyond the Wall of Sleep , Arkham House)”(訳: 「1943年:『未知なるカダスを夢に求めて』(作品集『Beyond the Wall of Sleep』、アーカム・ハウス)」) — H. P. Lovecraft’s Fiction, Publication Order, The H. P. Lovecraft Archive ↩





