地名(夢の国の国土と、同名の首邑) — INGANOK

インガノク

原典

夢の国の北方、日射しの絶えた薄暮の国。国名と同じ名を負う首邑は建物も街路もすべて縞瑪瑙で造られ、住民はンガラネク山に顔を刻んだ神々の血を引く。東は越えられぬ峰々でレン高原と隔てられ、北へ進むと人ならぬ手が掘った巨大な採石場と、彫られた山々の半円が現れる。

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誤りの指摘・訂正依頼と編集方針は運営者情報へ。

インガノク

「正午に近づくと暗い海岸線が現れ、三時にならぬうちに、北の空を背にして縞瑪瑙の都の球根状の円蓋と幻想的な尖塔が立ち現れた。その古雅な都市は、壁と波止場の上に、繊細な黒一色に渦巻き文様と溝彫りと金象嵌の唐草をまとって、稀有で不思議な姿を聳え立たせていた。」

— H・P・ラヴクラフト「未知なるカダスを夢に求めて」(1926-1927年執筆)、カーターを乗せた黒い船がインガノクの港へ近づく場面
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概要(2〜3行)

夢の国の北方、セレネリア海を二十日以上北へ進んだ先にある、日射しの絶えた薄暮の国。国土と同じ名を負う首邑は建物も街路もすべて縞瑪瑙で造られ、黒一色の壁面に金象嵌の唐草をまとって海から立ち上がる[1]。この国の男たちはンガラネク山に自らの面影を刻んだ神々の血を引く者たちで、黒い船で縞瑪瑙をセレファイスへ運ぶ[2][3]。ランドルフ・カーターは未知なるカダスへ至る足がかりとしてこの国に入り、都・神殿・宮殿を見たのち、北の採石場道をたどって国の果てを越える[4]。

基本プロフィール(表で可)

項目内容
分類地名(夢の国の国土と、同名の首邑)
欧文表記INGANOK
初出「未知なるカダスを夢に求めて」(1926年秋?〜1927年1月22日執筆[5]/1943年、アーカム・ハウスの作品集『Beyond the Wall of Sleep』で刊行[6])
位置セレネリア海の北の果て。東に越えられぬ灰色の峰々が連なり、その向こうにレン高原があるとされる[3]。それ以外の境界を知る者は原典に出てこない[7]
気候日射しが届かず、昼は永遠の雲を透かす灰色の薄明、夜は雲の裏側からの冷たい燐光[8]
首邑国名と同じ名を負う町。玄武岩の波止場を持つ[9]
建材・産業縞瑪瑙。都全体がこの石で建てられ、磨いた大塊がリナル、オグロタン、セレファイスへ輸出される[10]
統治覆面の王(the Veiled King)。神殿に入ることを許された唯一の存在[11]
住民神々に似た顔立ちの種族と、レンの彼方から流れ着いたとされる細目の奴隷[12]
猫一匹も居着かない。喉鳴らしも鳴き声もない[13]
原典での言及回数本文中 “Inganok” 37回(当サイトが hplovecraft.com の本文を数えた実測)

原典での描写

セレファイスでの伝聞 ── 縞瑪瑙を運んでくる北の国

カーターがこの国名を最初に聞くのは、セレファイスへ向かう途中の船上である。細く長い目、長い耳たぶ、薄い鼻、尖った顎を持つ男たちが北から黒い船で来て、縞瑪瑙をセレファイスの翡翠細工や紡ぎ金や赤い小鳥と交換していく。その男たちの故国がインガノクで、寒く薄暮の国であり、忌まわしいレンに近いという理由で、進んで行こうとする者は多くない[3]。船乗りたちが知っているのはそこまでで、インガノクの他の境界も、冷たい荒野と未知なるカダスのことも、彼らは漠然とした噂としてしか聞いていなかった[7]。

カーターにとってこの国が重要なのは、交易の相手としてではない。インガノクの男たちは、ンガラネク山の岩壁に自らの面影を刻んだ神々の血を引く者たちなのである[2]。神々の血筋をたどればその住処に近づけるという見込みが、彼をこの国へ向かわせた。

セレファイスの波止場で、カーターはインガノクの採石場で働いた経験のあるトラボン人の船乗りを見つける。この男は、人の住む地域の北に、誰もが恐れて避ける砂漠が確かにあると語った[14]。その砂漠は越えられぬ峰々の外縁を回ってレン高原へ通じているのではないか、というのがこの船乗りの見立てで、それとは別に、邪悪な存在と名もなき番人がいるという曖昧な話も伝わっていた[15]。

もう一つ、猫が伝えた話がある。ウルタールの老猫将軍から託された合言葉を使ってカーターが会ったセレファイスの猫の長は、インガノクには猫が耐えられない影が潜んでおり、あの寒く薄暮の国には喉を鳴らす音も人懐こい鳴き声も一切ないと告げた[13]。原因がレンから峰を越えて漂ってくる何かなのか、北の冷たい砂漠から滲み出てくる何かなのかは誰にも分からない。ただ、あの地には外宇宙の気配が漂っていて、猫は人間よりもそれに敏感であり、だから玄武岩の波止場を目指す黒い船には決して乗らない[16]。

黒い船の航海 ── 二十日かけて日射しが消える

カーターは自分を年季の入った縞瑪瑙採掘者だと偽り、採石場で働きたいと言ってインガノクの黒い船に乗り込む[4]。船上で少しずつ打ち解けた船乗りたちは、自分たちの国に猫が居着かないのはレンが近いせいだと考えていると話した。ただし北の岩だらけの砂漠についてだけは口をつぐみ、その存在を認めないでおくのが賢いとされていた[17]。

採石場の話になると、彼らはよく喋った。都はすべて縞瑪瑙で建てられており、磨いた大塊はリナル、オグロタン、セレファイスへ売られ、国内ではトラー、イラーネク、カダセロンの商人と交換される[10]。そして、あの認めたがらない北の砂漠のほとりには、他のどれよりも大きな、使われなくなった採石場がある。太古に切り出された塊の跡の巨大さは、見る者すべてを戦慄させるほどだった[18]。誰がその石を切り出し、どこへ運んだのかは誰も知らない。あの採石場には人ならぬ記憶がまとわりついているとされ、触れずにおくのが最善とされてきた。薄暮の中に取り残されたその広大な穴の上には、鴉と、噂に聞くシャンタク鳥だけがいる[19]。

この話を聞いたとき、カーターは深く考え込む。未知なるカダスの頂に立つ大いなるものたちの城が縞瑪瑙造りだと、彼は古い伝承で知っていたからである[20]。インガノクの採石場と、神々の城。この一点が、彼の旅路の残りを決めることになった。

航海が進むにつれ、太陽は日ごとに低くなり、頭上の霧は厚みを増す。二週間で日射しは完全に絶え、昼は永遠の雲を透かす灰色の薄明、夜は雲の裏側から降りてくる冷たい燐光だけになった[8]。二十日目には海に鋸歯状の大岩が見えたが、船長はその岩には名が無く、夜になるとそこから聞こえてくる音のせいでどの船も近づかないと答えている[21]。

到着 ── 縞瑪瑙の都

やがて東方に、頂を雲に呑まれた灰色の峰々の連なりが現れる。それを見た船乗りたちは喜びの歌を歌い、甲板にひざまずいて祈る者もいた。カーターは、自分たちがインガノクの地に着き、まもなく国名を負う大きな町の玄武岩の波止場に繋がれると知る[9]。

正午に近づくと暗い海岸線が現れ、三時にならぬうちに、北の空を背にして縞瑪瑙の都の球根状の円蓋と幻想的な尖塔が立ち現れた。その古雅な都市は、壁と波止場の上に、繊細な黒一色に渦巻き文様と溝彫りと金象嵌の唐草をまとって聳えていた[1]。市壁そのものは低く、門が数多く穿たれている。各門の高い大アーチの頂には神の頭部が刻まれており、その彫りは遠いンガラネク山の巨大な顔と同じ技によるものだった[22]。

市の中心の丘には、他のどれよりも高い十六角の塔が立つ。平たい円蓋の上に尖塔を戴く鐘楼を持つこの塔が古のものたちの神殿で、内なる秘密に沈む老いた大神官が司っていると船乗りたちは説明した[23]。都には時を告げて奇妙な鐘が鳴り渡り、そのたびに角笛とヴィオルと詠唱の楽が応える。神殿の高い円蓋を巡る回廊の三脚台からは、定められた時刻に炎が噴き上がった。この都の神官と民はプナコティック写本よりも古い巻物に記された大いなるものたちの律動を、正確に守り続けている[24]。

波止場で働く者たちを見たカーターは、住民が二層に分かれていることに気づく。船乗りと商人は神々に似た顔立ちの種族だが、奴隷はずんぐりした細目の者たちで、レンの彼方の谷から峰を越えるか回り込むかして流れ着いたと噂されていた[12]。市中に入れば、街路は縞瑪瑙で舗装され、水際の家々は他より低く、弧を描く戸口の上にそれぞれの家を庇護する小神への金の標を掲げている[25]。

その夜、酒場で遠い国の歌を歌っていた船乗りたちは、高い塔から鐘が鳴り渡った瞬間に歌も話も止め、最後の谺が消えるまで頭を垂れた。薄暮の都インガノクには驚異と異様さが宿っていて、人々は儀礼を怠れば破滅と復讐がすぐ近くに潜んでいると恐れている[26]。

神殿と覆面の王 ── 入ることを許されない二つの建物

翌朝、船長はカーターを神殿へ連れて行く。神殿は車輪の軸のように街路が放射する円形の広場の中に、塀で囲った庭とともに据えられていた。庭の七つのアーチ門は常に開かれ、人々は敬虔にタイル敷きの小径を歩く。庭には泉水盤があり、どれも縞瑪瑙造りで、海の底の花園から潜水夫が採ってきた発光する小魚が泳いでいた[27]。

鐘が鳴ると、神殿の七つの扉から黒衣に仮面と頭巾をまとった神官の列が現れる。彼らは湯気の立つ黄金の鉢を腕を伸ばして捧げ持ち、膝を曲げずに脚を前へ突き出す独特の歩き方で、七つの詰所へ入ってそのまま出てこない[28]。詰所と神殿は地下道で結ばれていて神官たちはそこから戻るのだとされ、語られることのない秘儀へ縞瑪瑙の階段が深く降りているとも囁かれる。そして、あの仮面と頭巾の列にいるのは人間の神官ではないと仄めかす者も、ごく少数ながらいた[29]。カーターが神殿の中へ入らなかったのは、そこに入ることを許されているのが覆面の王ただ一人だからである[11]。

神殿の次に船長が案内したのは、丘の上に多数の円蓋を戴いて聳える覆面の王の宮殿だった。宮殿へ通じる道はどれも急で狭く、広く湾曲した一本だけが例外で、そこを王とその一行がヤクやヤクの引く車で上る[30]。カーターが立ち入れたのは庭までで、宮殿そのものには誰も入れない。しかも中央の大円蓋は、噂のシャンタク鳥すべての太古の父を収めており、好奇心を抱く者へ奇怪な夢を送るとされるため、じっと見つめ続けるのはよくないとされていた[31]。

原典が「覆面の王」について書いているのはここまでである。姿も、素性も、なぜ覆われているのかも語られない。神殿と宮殿という都の二つの中心が、どちらも「入れない」場所として提示される点だけが確かな事実として残る。

細目の老商人 ── レンの影が都の中にある

その晩の酒場で、カーターは奥の暗がりにずんぐりした人影を見つけて嫌な気分になる。それは、はるか以前にディラス=リーンの酒場で見た、あの細目の老商人に間違いなかった。この男はレンの石造村と交易していると噂され、夜遠くからその邪悪な火が見えるその村々だけでなく、顔に黄色い絹の仮面をかぶり先史時代の石造修道院にただ一人住まう名状しがたい大神官とさえ取引していると言われていた[32]。この男はカーターが声をかける前に姿を消した。船乗りたちが後で語ったところでは、男はどこから来たとも知れぬヤクの隊商とともに現れ、噂のシャンタク鳥の巨大で風味豊かな卵を、イラーネクからもたらされる精巧な翡翠の杯と交換しに来たのだという[33]。

インガノクが「レンに近い国」であることは、ここで伝聞から具体的な人物の形を取る。峰は越えられないはずなのに、レンと通じている者が都の酒場に座っている。

北へ ── 採石場道と、国の終わり

船長は最後に、町の北区、隊商門の近くへカーターを連れて行った。そこはヤク商人と縞瑪瑙採掘者の酒場が集まる一角である[34]。カーターは採掘者に混じって北の話を聞き出そうとしたが、収穫は乏しかった。彼らは北の冷たい砂漠と、誰も訪れない採石場について臆して言葉を濁す。レンのある方角から来るという使者を恐れ、北の散らばった岩の間にいるという邪悪な存在と名もなき番人を恐れていた[35]。

翌日、カーターはヤクを一頭雇い、革の鞍袋を膨らませて北へ発つ。隊商門の外には耕地が続き、低い円蓋を戴く風変わりな農家が点々としていた。訪ねた家の一軒で、カーターは主人の寡黙さと厳格さ、そしてンガラネク山の巨顔と同じ得体の知れない威厳に触れ、この人物が大いなるものたち本人か、少なくともその血を十分の九引く者だと確信している[36]。

旅の二日目、十時頃に着いたのが、商人が休み採掘者が話をする小さな円蓋の村ウルグだった。大隊商路はここで西のセラルンへ折れるが、カーターは北の採石場道を選ぶ[37]。三日目の朝に最初の縞瑪瑙採石場が現れ、その日の夕方までに十一を過ぎた。その一帯には草木が一本もなく、黒い土の上に岩塊が散らばり、右手には常に灰色の越えられぬ峰々が険しく聳えている[38]。その夜を過ごした採石場の宿営で、カーターは男たちの歌と話に古い時代と神々の習いについての奇妙な知識を聞き取り、彼らが祖先である大いなるものたちの記憶を宿していると見た[39]。

さらに二つの採石場を過ぎると、インガノクの人が住む部分は終わる。道は険しい黒い崖の間を上るヤクの小径に狭まり、進むほど暗く寒くなった[40]。峠の頂で、カーターは左手に開けたものを見て息を呑む。太古の力が縞瑪瑙の崖を引き裂いて作った、数エーカーに及ぶ巨人の採石場だった。それは人の手による採石場ではなく、凹んだ側面には幅数ヤードの方形の傷が刻まれていて、名も無き手と鑿がかつて切り出した塊の大きさを物語っていた[41]。裂けた縁の上では大きな鴉が羽ばたいて鳴き、見えない深みからは蝙蝠か、ウルハグか、それとも口にすべきでない何かの羽音が上がってくる[42]。

そこから先はもうインガノクではない。北の荒野でカーターが見たのは、灰色の峰々から西の未知の空間まで数千フィートの高さで弧を描く、彫られた山々の半円だった。かつては縞瑪瑙の丘だったそれらは人ならぬ手に触れられて狼か食屍鬼のように蹲り、双頭に冠を戴き、右手を人類へ向けて振り上げていた[43]。

外から見たインガノク ── 峰の向こうと、物語の結び

インガノクの記述は、カーターが国を出たあとにも続く。シャンタク鳥に攫われて峰を越えたとき、彼は眼下に、インガノクの民が一度も見たことのない、常に輝く霧の渦に包まれた峰の頂を見た[44]。峰の向こう側に降りたとき、石造村から上がる甲高い笛の音と胸の悪くなるクロタルの響きが、インガノクの人々の地理についての噂が正しかったことを即座に証明する[45]。越えられない山の向こうに、彼らが言っていたとおりのものがあった。

レンの石造修道院へ連れて行かれる道中、カーターは、レンとインガノク北方の寒冷な荒野は「他の神々」に近いに違いなく、だからこそカダスへの道が厳重に見張られているのだと思い至る[51]。そして修道院の壁画のひとつには、怪物じみた月の獣たちが海上の切り立った小島に野営地を築く様が描かれていた。カーターはその壁画から、それが自分がインガノクへ渡る船上で目にしたあの名もなき岩――インガノクの船乗りが忌み嫌って避け、夜通し忌まわしい遠吠えが反響してくるという、あの灰色の岩――に他ならないと知る[52]。

レンの修道院の迷路に残された太古の壁画にも、レンとインガノクを分かつ灰色の峰々と、その中腹の岩棚に巣を作る怪物的なシャンタク鳥が描かれていた[46]。後にカーターが食屍鬼と夜鬼の軍勢を率いてカダスを目指すとき、峰の洞窟の住人との協議の末に選ばれた経路も、レンの北部ではなくインガノクの北の冷たい荒野だった[47]。レンの北には夜鬼すら嫌う見えざる落とし穴があるからである。

そして未知なるカダスの城を見上げたとき、カーターはその石が、インガノク北の山道に穿たれたあの恐ろしい大穴で切り出されたものかもしれないと考える[48]。船上で聞いた採石場の噂と、旅の果てに見た城とが、ここで一つにつながる。物語の最後の一文でも、ニャルラトホテプが戻っていく先は「セレネリア海とインガノクの薄暮の果て」の彼方にある縞瑪瑙の城として描かれた[49]。

由来・モデル

この地名がどこから来たのかを説明する記述は、原典本文には無い。当サイトが確認した一次資料(hplovecraft.com の本文と作品年譜)の範囲では、ラヴクラフト自身が語源やモデルに触れた箇所は見当たらない。未確認のまま残しておく。

綴りについては一点、実測した事実がある。The H. P. Lovecraft Archive が公開する「未知なるカダスを夢に求めて」本文において、“Inganok” は37回使われ、”Inquanok” は一度も使われていない。日本語圏・英語圏の資料ではしばしば「インクアノク(Inquanok)」の綴りが用いられるが、その表記がどの版・どの資料に由来するのかは、本記事では確認していない。1943年の初刊行本『Beyond the Wall of Sleep』(アーカム・ハウス)も、その後の校訂版も本記事では取得していないため、他版の綴りについては未確認とする。当サイトの見出し語は、確認した本文の綴りに合わせて「インガノク」とした。

原典が示す地名の系統だけは読み取れる。インガノクの縞瑪瑙は、リナル、オグロタン、セレファイスへ輸出され、国内ではトラー、イラーネク、カダセロンの商人と取引される[10]。このうちトラー、イラーネク、カダセロンの三都市は、ラヴクラフトが1919年に書いた「サルナスに到りし禍」で、ムナールの地のアイ川沿いに建てられた都市として既に登場している[50]。インガノクは、こうした既存の交易網の北の端として本作で導入された、と読むことはできる。なお、リナルとオグロタンは「サルナスに到りし禍」の本文には出てこない(当サイトが hplovecraft.com の本文を数えた実測)。

歴史・年表

原典はインガノクの建国史や王朝の年表を与えない。年代を伴って語られるのは、カーターの旅程と、それをはるかに遡る採石場の痕跡だけである。以下は本文から読み取れる順序を整理したものであり、暦の上の年を示すものではない。

  • 人間以前(年代不詳): 北の果ての巨大な採石場から、人ならぬ手が途方もない大きさの塊を切り出す。誰が切り出し、どこへ運んだかは伝わっていない[18][19]。切り出されたものは、未知なるカダスの城の石材ではないかとカーターは推測する[48]。
  • 年代不詳: 縞瑪瑙の丘だった一帯が、人ならぬ手で双頭の彫像に変えられる[43]。
  • カーターの訪問より前: プナコティック写本より古い巻物に記された大いなるものたちの律動が、都の神官と民によって守られてきた[24]。
  • カーターの訪問より前: トラボン人の船乗りがインガノクの採石場で働き、北の砂漠の噂を持ち帰る[14]。
  • カーターの訪問時(第1日): 黒い船が玄武岩の波止場に着く[9][1]。夜、酒場で細目の老商人を見かける[32]。
  • 第2日: 船長の案内で神殿の庭と覆面の王の宮殿の庭を見る[27][30]。そのあと隊商門近くの採掘者の酒場で北の話を聞く[34][35]。
  • 第3日(北への旅1日目): ヤクを雇って北へ発つ。耕地と農家の間を進む[36]。
  • 第4日(旅2日目): 村ウルグを経て採石場道へ入る[37]。
  • 第5日(旅3日目): 最初の採石場から十一の採石場を過ぎ、採石場の宿営に泊まる[38][39]。
  • 第6日(旅4日目): 人の住む部分が終わり、巨人の採石場を見る[40][41]。その先の荒野で彫られた山々に出会い、シャンタク鳥に攫われてレンへ運ばれる[43][44]。

性質・特徴

  • 光: 日射しが無い。昼は永遠の雲を透かす灰色の薄明、夜は雲の裏側からの冷たい燐光[8]。原典がこの国を指して繰り返す語は “twilight”(薄暮)である。
  • 石: 国土の性格を決めているのは縞瑪瑙である。都の建物も街路もこの石で、磨いた大塊は輸出品として国外へ出ていく[10][25]。町の構造物だけでなく、神殿の泉水盤[27]も、神殿の地下へ降りるとされる階段[29]も同じ石で語られる。
  • 都市: 球根状の円蓋、幻想的な尖塔、高く窓の多い家並み、黒地に金象嵌の唐草[1]。市壁は低く、門は多い[22]。中心には十六角の神殿塔[23]、丘の上には覆面の王の宮殿[30]。
  • 音: 鐘と、それに応える角笛・ヴィオル・詠唱[24]。この音が鳴るあいだ、市民は歌も話も止める[26]。逆に、猫の声だけが存在しない[13]。
  • 統治と信仰: 神殿には覆面の王しか入れず[11]、宮殿には誰も入れない[31]。神官は黒衣・仮面・頭巾で顔を見せず、膝を曲げない歩き方で往復する[28]。原典は、彼らが人間かどうかを断定せず、疑う者がいるとだけ書く[29]。
  • 住民の二層: 神々に似た顔立ちの種族と、レンの彼方から来たとされる細目の奴隷[12]。前者については、農村に大いなるものたちの血を十分の九引く者が暮らしているとカーターが見なす場面[36]や、採石場の男たちが祖先の記憶を歌に残しているとする記述[39]がある。
  • 経済: 縞瑪瑙の採掘と輸出[10]。北の採石場群[38]、隊商門、ヤク商人の酒場[34]、村ウルグと西のセラルンへ向かう大隊商路[37]という形で、産業と流通が具体的に書かれている。
  • 国境の性格: 東の峰は越えられない[3]。それ以外の境界を語れる者は原典に出てこない[7]。北は人が住まなくなる地帯を経て荒野へ溶けていく[40]。つまりこの国は、三方が「知られていない」ことで囲まれている。
  • 恐れられ方: 住民自身が北の砂漠の存在を認めたがらない[17]。採掘者は口をつぐむ[35]。恐怖の対象は外からの評判ではなく、国の内側にある。

関連する人物・存在(関係図)

  • ランドルフ・カーター: 縞瑪瑙採掘者を騙って入国した旅人[4]。都から北へ抜け、国の果てで彫られた山々に出会う[43]。
  • レン高原: 越えられぬ峰々を挟んで隣接するとされる地[3]。壁画はこの峰々がレンとインガノクを分けていることを示す[46]。インガノク側から見れば、レンは「あると噂されるが誰も確かめられない場所」であり、峰を越えて初めてその噂が正しかったと分かる[45]。
  • レンの男: 峰の向こうの住人。インガノクの奴隷が「レンの彼方の谷から流れ着いた」とされる細目の者たちである[12]という記述はあるが、原典はこの奴隷とレンの住人を同一だと断定していない。レンの住人そのものの描写は当サイトの該当記事で扱う。
  • シャンタク鳥: 北の採石場の上にいるとされ[19]、覆面の王の宮殿の中央円蓋にはその太古の父が収められているという[31]。実物を見た者はいないほうがよいとされる[35]。カーターを国外へ攫ったのもこの鳥である[44]。
  • ンガラネク山: インガノクの男たちの顔の由来[2]。市門の神の頭部も同じ技で刻まれている[22]。
  • 未知なるカダス: 北の荒野の先にあるとされる場所。カダスの城が縞瑪瑙造りだという伝承[20]と、北の巨大採石場[18]が、カーターの推理のなかで結びつく[48]。
  • セレファイス: 縞瑪瑙の輸出先であり、カーターがインガノクの船を待った港[10]。
  • ディラス=リーン: 細目の老商人が最初に現れた港[32]。
  • 食屍鬼・夜鬼: カダスへ向かう軍勢の経路としてインガノク北の荒野を選ぶ[47]。
  • ニャルラトホテプ: 物語の結びで、インガノクの薄暮の果ての彼方にある縞瑪瑙の城へ戻る[49]。
  • 覆面の王: 神殿に入れる唯一の存在[11]。姿・素性の描写は原典に無く、当サイトにも記事が無い。
  • 細目の老商人: レンおよび黄色い絹の仮面の大神官と通じているとされる人物[32][33]。当サイトに記事が無い。
  • 月の獣: 海上の名もなき岩を拠点とする怪物。カーターがインガノクへ渡る船上で見かけた名も無い岩が、レンの修道院の壁画から月の獣の野営地だと判明する[52]。

主要登場作と読みどころ

  • 「未知なるカダスを夢に求めて」(1926年秋?〜1927年1月22日執筆[5]/1943年刊行[6]): インガノクが登場する唯一の原典であり、本文に “Inganok” が37回現れる。読みどころは、この国が三つの段階で別々の顔を見せる点にある。セレファイスでは「縞瑪瑙を運んでくる遠い国」という交易上の情報として現れ[3]、入国後は神殿・宮殿・採石場を備えた具体的な都市として描かれ[1][23][30]、そしてカーターが国を離れたあとは、レン側やカダス側から振り返って参照される座標になる[46][47][48]。同じ地名が、伝聞・実地・外部からの参照という三つの距離で語り直される。
  • とりわけ効いているのが、船上で聞いた「北の使われていない採石場」の噂[18]と、カダスの城が縞瑪瑙造りだというカーターの記憶[20]が、旅の最後で城を見上げる場面[48]へ回収される構造である。作品の前半で交易の世間話として置かれた情報が、終盤で神々の住処の建材の話に変わる。
  • あわせて読む記事として、隣接するとされるレン高原、その住人を扱うレンの男、旅の目的地である未知なるカダス、作品全体を扱う「未知なるカダスを夢に求めて」がある。

よくある誤解(Q&A)

Q. 「インクアノク(Inquanok)」という綴りを見かけますが、どちらが正しいのですか? A. 当サイトが確認した一次資料(The H. P. Lovecraft Archive が公開する本文)では、”Inganok” が37回使われ、”Inquanok” は一度も出てきません。ただし1943年の初刊行本や後年の校訂版の本文は本記事では取得しておらず、”Inquanok” 表記の出所は未確認です。どちらが誤りだと断定することはしません。

Q. インガノクはレン高原の一部ですか? A. 別の土地です。原典では、レンがあるとされる側に越えられぬ高い峰々が聳えており、その峰があるためにレンが本当にそこにあるのか誰にも言えない、と書かれています[3]。後にレンの修道院の壁画も、この峰々がレンとインガノクを分けるものとして描いています[46]。

Q. 覆面の王とは何者ですか? A. 原典が書いているのは、神殿に入ることを許された唯一の存在であること[11]、丘の上の多数の円蓋を持つ宮殿に住み、広い道をヤク車で上ること[30]、そして宮殿には誰も入れないこと[31]だけです。姿・素性・なぜ覆われているのかについては、原典に記述がありません。

Q. インガノクの神殿の神官は人間ですか? A. 原典は断定していません。黒衣に仮面と頭巾をまとい、膝を曲げずに歩き、七つの詰所へ入って出てこないと書かれ[28]、彼らが人間の神官ではないと仄めかす者がごく少数いる、という形で提示されます[29]。

Q. インガノクの奴隷は「レンの男」と同じ種族ですか? A. 原典が書いているのは、奴隷がずんぐりした細目の者たちで、レンの彼方の谷から峰を越えるか回り込むかして流れ着いたと噂されている、という点までです[12]。同一種族だと断定する記述はありません。

Q. なぜインガノクには猫がいないのですか? A. 猫の長の説明では、インガノクには猫が耐えられない影が潜んでいるためです[13]。それがレンから峰を越えて漂ってくるものなのか、北の冷たい砂漠から滲み出てくるものなのかは、原典でも「誰にも言えない」とされます[16]。

Q. ダーレス以降の作品やTRPGでは、どう扱われていますか? A. 本記事は一次資料(hplovecraft.com の本文と作品年譜)に限って調べており、後世の作品や供給元の公式資料は確認していません。確認できる資料が無いため、ここには書きません。

出典

  • [1] “Toward noon a dark coast-line appeared, and before three o’clock there stood out against the north the bulbous domes and fantastic spires of the onyx city. Rare and curious did that archaic city rise above its walls and quays, all of delicate black with scrolls, flutings, and arabesques of inlaid gold.” (訳: 正午に近づくと暗い海岸線が現れ、三時にならぬうちに、北の空を背にして縞瑪瑙の都の球根状の円蓋と幻想的な尖塔が立ち現れた。その古雅な都市は、壁と波止場の上に、繊細な黒一色に渦巻き文様と溝彫りと金象嵌の唐草をまとって、稀有で不思議な姿を聳え立たせていた。) — 「未知なるカダスを夢に求めて」(1943年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [2] “those strange men from cold and twilight Inganok who are the seed of such gods as carved their features on Ngranek.” (訳: ンガラネク山に自らの面影を刻んだような神々の血を引く、あの寒く薄暮のインガノクから来る異形の男たち) — 「未知なるカダスを夢に求めて」(1943年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [3] “Their land, very far away, was called Inganok, and not many people cared to go thither because it was a cold twilight land, and said to be close to unpleasant Leng; although high impassable mountains towered on the side where Leng was thought to lie, so that none might say whether this evil plateau with its horrible stone villages and unmentionable monastery were really there, or whether the rumour were only a fear that timid people felt in the night” (訳: 彼らの国ははるか遠くにあってインガノクと呼ばれ、そこは寒く薄暮の国で、しかも忌まわしいレンに近いとされていたため、進んで行こうとする者は多くなかった。もっともレンがあると思われている側には高く越えられない山々が聳えていたので、あの恐ろしい石造の村々と口にすべきでない修道院を持つ邪悪な高原が本当にそこにあるのか、それとも昇る月を背に黒々と立ちはだかるあの峻険な障壁を夜に見た臆病者たちが抱いた恐れにすぎないのかは、誰にも言えなかった。) — 「未知なるカダスを夢に求めて」(1943年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [4] “Carter had taken passage on their dark ship, telling them that he was an old onyx-miner and wishful to work in their quarries.” (訳: カーターは彼らの黒い船に乗船の手続きを取り、自分は年季の入った縞瑪瑙採掘者で、彼らの採石場で働きたいのだと告げていた。) — 「未知なるカダスを夢に求めて」(1943年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [5] “The Dream-Quest of Unknown Kadath (Autumn? 1926–22 January 1927)” (訳: 「未知なるカダスを夢に求めて」(1926年秋?〜1927年1月22日)) — H. P. Lovecraft’s Fiction, Alphabetical Order, The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [6] “1943: The Dream-Quest of Unknown Kadath ( Beyond the Wall of Sleep , Arkham House)” (訳: 1943年:「未知なるカダスを夢に求めて」(作品集『Beyond the Wall of Sleep』、アーカム・ハウス)) — H. P. Lovecraft’s Fiction, Publication Order, The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [7] “Of other boundaries of Inganok those sailors had no notion, nor had they heard of the cold waste and unknown Kadath save from vague unplaced report. And of the marvellous sunset city which Carter sought they knew nothing at all.” (訳: インガノクのそれ以外の境界について、その船乗りたちは何の見当も持たず、冷たい荒野と未知なるカダスについても漠然として場所の定まらない噂で聞いたきりだった。そしてカーターが探し求めていたあの驚異の夕映えの都については、彼らは何ひとつ知らなかった。) — 「未知なるカダスを夢に求めて」(1943年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [8] “Each day the sun wheeled lower and lower in the sky, and the mists overhead grew thicker and thicker. And in two weeks there was not any sunlight at all, but only a weird grey twilight shining through a dome of eternal cloud by day, and a cold starless phosphorescence from the under side of that cloud by night.” (訳: 日ごとに太陽は空を低く低く巡り、頭上の霧はいよいよ厚くなった。そして二週間のうちに日射しはまったく無くなり、昼は永遠の雲の丸天井を透かして射す奇妙な灰色の薄明だけ、夜はその雲の裏側から降りてくる冷たく星の無い燐光だけになった。) — 「未知なるカダスを夢に求めて」(1943年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [9] “And at the sight of them the sailors sang glad songs, and some knelt down on the deck to pray; so that Carter knew they were come to the land of Inganok and would soon be moored to the basalt quays of the great town bearing that land’s name.” (訳: それを見た船乗りたちは喜びの歌を歌い、甲板にひざまずいて祈る者もいた。こうしてカーターは、自分たちがインガノクの地に着き、まもなくその国名を負う大きな町の玄武岩の波止場に繋がれるのだと知った。) — 「未知なるカダスを夢に求めて」(1943年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [10] “There were many of them, for all the city of Inganok was builded of onyx, whilst great polished blocks of it were traded in Rinar, Ogrothan, and Celephaïs, and at home with the merchants of Thraa, Ilarnek, and Kadatheron, for the beautiful wares of those fabulous ports.” (訳: 採石場は数多くあった。インガノクの都はすべて縞瑪瑙で建てられており、その磨き上げた大塊はリナル、オグロタン、セレファイスで取引され、国内ではトラー、イラーネク、カダセロンの商人たちと、かの伝説の港々の美しい品々と交換されていたからである。) — 「未知なるカダスを夢に求めて」(1943年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [11] “Carter did not enter the temple, because none but the Veiled King is permitted to do that.” (訳: カーターは神殿の中へは入らなかった。そうすることを許されているのは覆面の王ただ一人だからである。) — 「未知なるカダスを夢に求めて」(1943年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [12] “The sailors and merchants were of the strange-faced race of the gods, but the slaves were squat, slant-eyed folk said by rumour to have drifted somehow across or around the impassable peaks from valleys beyond Leng.” (訳: 船乗りと商人は神々に似た異形の顔立ちを持つ種族だったが、奴隷たちはずんぐりした細目の者たちで、噂ではレンの彼方の谷から峰々を越えるか回り込むかして、どうにか流れ着いた者たちだとされていた。) — 「未知なるカダスを夢に求めて」(1943年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [13] “The reason for this is that Inganok holds shadows which no cat can endure, so that in all that cold twilight realm there is never a cheering purr or a homely mew.” (訳: その理由は、インガノクにはどんな猫も耐えられない影が潜んでいることにある。だからあの寒く薄暮の領国のどこにも、心和ませる喉鳴らしも人懐こい鳴き声も存在しない。) — 「未知なるカダスを夢に求めて」(1943年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [14] “He found, however, one Thorabonian sailor who had been to Inganok and had worked in the onyx quarries of that twilight place; and this sailor said there was certainly a desert to the north of the peopled region, which everybody seemed to fear and shun.” (訳: だが彼は、インガノクへ行ったことがあり、あの薄暮の地の縞瑪瑙の採石場で働いた経験のあるトラボン人の船乗りを一人見つけた。この船乗りは、人の住む地域の北には確かに砂漠があり、誰もがそれを恐れて避けているようだと言った。) — 「未知なるカダスを夢に求めて」(1943年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [15] “The Thorabonian opined that this desert led around the utmost rim of impassable peaks into Leng’s horrible plateau, and that this was why men feared it; though he admitted there were other vague tales of evil presences and nameless sentinels.” (訳: そのトラボン人は、この砂漠が越えられぬ峰々の最も外側の縁を回ってレンの恐ろしい高原へ通じており、だから人々はそこを恐れるのだという見方を示した。もっとも、邪悪な存在と名もなき番人についての漠然とした別の話もあることは認めていた。) — 「未知なるカダスを夢に求めて」(1943年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [16] “but it remains a fact that in that far land there broods a hint of outer space which cats do not like, and to which they are more sensitive than men. Therefore they will not go on the dark ships that seek the basalt quays of Inganok.” (訳: だが、あの遠い国には外宇宙の気配が垂れこめており、猫はそれを好まず、人間より鋭くそれを感じ取る、というのは動かしがたい事実である。ゆえに猫たちは、インガノクの玄武岩の波止場を目指すあの黒い船には乗ろうとしない。) — 「未知なるカダスを夢に求めて」(1943年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [17] “They told him how sorry they were that no cats would stay in the land of Inganok, and how they thought the hidden nearness of Leng was to blame for it. Only of the stony desert to the north they would not talk. There was something disquieting about that desert, and it was thought expedient not to admit its existence.” (訳: 彼らはカーターに、インガノクの地に猫が一匹も居着かないのが残念だと語り、レンが人知れず近いのがその原因だと考えていると言った。ただ北の岩だらけの砂漠のことだけは話そうとしなかった。あの砂漠には落ち着かないものがあり、その存在を認めないでおくのが賢明とされていたのである。) — 「未知なるカダスを夢に求めて」(1943年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [18] “And far to the north, almost in that cold desert whose existence the men of Inganok did not care to admit, there was an unused quarry greater than all the rest; from which had been hewn in forgotten times such prodigious lumps and blocks that the sight of their chiselled vacancies struck terror to all who beheld.” (訳: そしてはるか北、インガノクの男たちが存在を認めたがらないあの冷たい砂漠のほとりには、他のどれよりも大きな使われなくなった採石場があった。太古にそこから切り出された塊と大石はあまりに巨大で、鑿の跡が残した空虚を見た者はみな戦慄した。) — 「未知なるカダスを夢に求めて」(1943年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [19] “Who had mined those incredible blocks, and whither they had been transported, no man might say; but it was thought best not to trouble that quarry, around which such inhuman memories might conceivably cling. So it was left all alone in the twilight, with only the raven and the rumoured shantak-bird to brood on its immensities.” (訳: あの信じがたい大石を誰が掘り出し、どこへ運んだのかは誰にも言えない。ただ、あの採石場にはそうした人ならぬ記憶がまとわりついていてもおかしくないので、触れずにおくのが最善とされていた。こうしてそこは薄暮のなかにただ一つ取り残され、鴉と噂に聞くシャンタク鳥だけがその広大さの上に思いをめぐらせている。) — 「未知なるカダスを夢に求めて」(1943年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [20] “When Carter heard of this quarry he was moved to deep thought, for he knew from old tales that the Great Ones’ castle atop unknown Kadath is of onyx.” (訳: この採石場のことを聞いたとき、カーターは深い考えに沈んだ。未知なるカダスの頂に立つ大いなるものたちの城が縞瑪瑙造りだと、古い伝承から知っていたからである。) — 「未知なるカダスを夢に求めて」(1943年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [21] “Carter asked the captain the name of that rock, but was told that it had no name and had never been sought by any vessel because of the sounds that came from it at night.” (訳: カーターは船長にあの岩の名を尋ねたが、あれには名が無く、夜になるとそこから聞こえてくる音のために、どの船もこれまで近づこうとしなかったのだと告げられた。) — 「未知なるカダスを夢に求めて」(1943年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [22] “The walls were low, and pierced by frequent gates, each under a great arch rising high above the general level and capped by the head of a god chiselled with that same skill displayed in the monstrous face on distant Ngranek.” (訳: 市壁は低く、門が数多く穿たれており、各門は全体の高さをはるかに超えて立ち上がる大アーチの下にあって、その頂は、遠いンガラネク山の巨大な顔に見られるのと同じ技で刻まれた神の頭部を戴いていた。) — 「未知なるカダスを夢に求めて」(1943年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [23] “On a hill in the centre rose a sixteen-angled tower greater than all the rest and bearing a high pinnacled belfry resting on a flattened dome. This, the seamen said, was the Temple of the Elder Ones, and was ruled by an old high-priest sad with inner secrets.” (訳: 中心の丘には、他のどれよりも大きな十六角の塔が聳え、平たい円蓋の上に載る高い尖塔付きの鐘楼を戴いていた。これが古のものたちの神殿であり、内なる秘密を抱えて沈んだ老いた大神官が司っているのだと船乗りたちは言った。) — 「未知なるカダスを夢に求めて」(1943年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [24] “At intervals the clang of a strange bell shivered over the onyx city, answered each time by a peal of mystic music made up of horns, viols, and chanting voices.” (訳: ときおり奇妙な鐘の音が縞瑪瑙の都の上に響き渡り、そのたびに角笛とヴィオルと詠唱の声からなる神秘的な楽の斉鳴がそれに応えた。) — 「未知なるカダスを夢に求めて」(1943年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [25] “The streets of that city were paved with onyx, and some of them were wide and straight whilst others were crooked and narrow.” (訳: その都の街路は縞瑪瑙で舗装されており、広く真っ直ぐなものもあれば、曲がりくねって狭いものもあった。) — 「未知なるカダスを夢に求めて」(1943年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [26] “For there is a wonder and a strangeness on the twilight city of Inganok, and men fear to be lax in its rites lest a doom and a vengeance lurk unsuspectedly close.” (訳: というのも、薄暮の都インガノクには驚異と異様さが宿っており、人々は儀礼を怠れば、破滅と復讐が思いもよらぬ近さに潜んでいるのではないかと恐れるからである。) — 「未知なるカダスを夢に求めて」(1943年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [27] “The seven arched gates of that garden, each having over it a carven face like those on the city’s gates, are always open; and the people roam reverently at will down the tiled paths and through the little lanes lined with grotesque termini and the shrines of modest gods.” (訳: その庭の七つのアーチ門は、それぞれ市門のものと同じ彫られた顔を戴いて、常に開かれている。人々は敬虔に、思い思いにタイル敷きの小径を歩き、奇怪な境界柱と慎ましい神々の祠が並ぶ小路を通り抜ける。) — 「未知なるカダスを夢に求めて」(1943年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [28] “there issue from the seven doors of the temple long columns of masked and hooded priests in black, bearing at arm’s length before them great golden bowls from which a curious steam rises” (訳: 神殿の七つの扉からは、黒衣に仮面と頭巾をまとった神官たちの長い列が現れ、奇妙な湯気の立ちのぼる大きな黄金の鉢を、腕を伸ばして体の前に捧げ持っている。) — 「未知なるカダスを夢に求めて」(1943年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [29] “But only a few are those who hint that the priests in the masked and hooded columns are not human priests.” (訳: だが、仮面と頭巾をまとった列の神官たちが人間の神官ではないと仄めかす者は、ごく少数である。) — 「未知なるカダスを夢に求めて」(1943年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [30] “the hill whereon the Veiled King’s palace rises many-domed and marvellous. The ways to the onyx palace are steep and narrow, all but that broad curving one where the king and his companions ride on yaks or in yak-drawn chariots.” (訳: 覆面の王の宮殿が多数の円蓋を戴いて壮麗に聳える丘。その縞瑪瑙の宮殿へ通じる道はどれも急で狭く、例外は王とその一行がヤクに乗り、あるいはヤクの引く車で上る、あの広く湾曲した一本だけである。) — 「未知なるカダスを夢に求めて」(1943年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [31] “for the palace itself no visitor may enter; and it is not well to look too long and steadily at the great central dome, since it is said to house the archaic father of all the rumoured shantak-birds, and to send out queer dreams to the curious.” (訳: 宮殿そのものには訪問者は誰も入ることができない。また中央の大円蓋は、噂のシャンタク鳥すべての太古の父を収めており、好奇心を抱く者へ奇怪な夢を送るとされているので、じっと長く見つめ続けるのはよくない。) — 「未知なるカダスを夢に求めて」(1943年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [32] “Far in the shadows of that tavern Carter saw a squat form he did not like, for it was unmistakably that of the old slant-eyed merchant he had seen so long before in the taverns of Dylath-Leen” (訳: その酒場の奥の暗がりに、カーターは気に入らないずんぐりした人影を見た。それはまぎれもなく、はるか以前にディラス=リーンの酒場で見たあの細目の老商人だったからである。) — 「未知なるカダスを夢に求めて」(1943年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [33] “sailors later said that he had come with a yak caravan from some point not well determined, bearing the colossal and rich-flavoured eggs of the rumoured shantak-bird to trade for the dexterous jade goblets that merchants brought from Ilarnek.” (訳: 船乗りたちは後に、あの男はどことも定かでない場所からヤクの隊商とともに来て、噂のシャンタク鳥の巨大で風味豊かな卵を、商人たちがイラーネクからもたらす精巧な翡翠の杯と交換しに来たのだと語った。) — 「未知なるカダスを夢に求めて」(1943年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [34] “After that the captain took Carter to the north quarter of the town, near the Gate of the Caravans, where are the taverns of the yak-merchants and the onyx-miners.” (訳: そのあと船長はカーターを町の北区、隊商門の近くへ連れて行った。そこにはヤク商人と縞瑪瑙採掘者の酒場がある。) — 「未知なるカダスを夢に求めて」(1943年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [35] “for the miners were timid and evasive about the cold desert to the north and the quarry that no man visits. They had fears of fabled emissaries from around the mountains where Leng is said to lie, and of evil presences and nameless sentinels far north among the scattered rocks.” (訳: というのも採掘者たちは、北の冷たい砂漠と、誰も訪れない採石場について臆して言葉を濁したからである。彼らはレンがあると言われる山々の向こうから来る伝説の使者を恐れ、はるか北の散らばった岩の間にいる邪悪な存在と名もなき番人を恐れていた。) — 「未知なるカダスを夢に求めて」(1943年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [36] “Beyond the Gate of the Caravans the road lay straight betwixt tilled fields, with many odd farmhouses crowned by low domes.” (訳: 隊商門の外では、道は耕された畑の間を真っ直ぐに延び、低い円蓋を戴いた風変わりな農家が数多く点在していた。) — 「未知なるカダスを夢に求めて」(1943年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [37] “At about ten o’clock he reached the small-domed village of Urg, where traders rest and miners tell their tales, and paused in its taverns till noon. It is here that the great caravan road turns west toward Selarn, but Carter kept on north by the quarry road.” (訳: 十時頃、彼は円蓋の小さな村ウルグに着いた。ここは商人が休み、採掘者が話を語る場所である。そして正午まで村の酒場で過ごした。大隊商路はここで西のセラルンへ折れるが、カーターは採石場の道を北へ進み続けた。) — 「未知なるカダスを夢に求めて」(1943年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [38] “And on the third morning he came in sight of the first onyx quarry, and greeted the men who there laboured with picks and chisels. Before evening he had passed eleven quarries” (訳: そして三日目の朝、彼は最初の縞瑪瑙採石場を目にし、そこで鶴嘴と鑿をふるって働く男たちに挨拶した。夕方までに彼は十一の採石場を通り過ぎていた。) — 「未知なるカダスを夢に求めて」(1943年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [39] “And they sang many songs and told many tales, shewing such strange knowledge of the olden days and the habits of gods that Carter could see they held many latent memories of their sires the Great Ones.” (訳: そして彼らは多くの歌を歌い、多くの話を語り、古い時代のことと神々の習いについてあまりに奇妙な知識を示したので、カーターは彼らが祖先である大いなるものたちの記憶を数多く宿しているのだと見て取った。) — 「未知なるカダスを夢に求めて」(1943年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [40] “After two more quarries the inhabited part of Inganok seemed to end, and the road narrowed to a steeply rising yak-path among forbidding black cliffs. Always on the right towered the gaunt and distant peaks, and as Carter climbed farther and farther into this untraversed realm he found it grew darker and colder.” (訳: さらに二つの採石場を過ぎると、インガノクの人が住む部分は終わるように思われ、道は威圧するような黒い崖の間を険しく上るヤクの小径に狭まった。右手には常に痩せた遠い峰々が聳え、カーターがこの人跡未踏の領域へ分け入るほどに、あたりは暗く、寒くなっていった。) — 「未知なるカダスを夢に求めて」(1943年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [41] “but on the left hand there opened out a monstrous space, vast acres in extent, where some archaic power had riven and rent the native cliffs of onyx in the form of a giants’ quarry” (訳: だが左手には、太古の何らかの力が土地本来の縞瑪瑙の崖を引き裂き、巨人の採石場の形に裂いた、数エーカーに及ぶ途方もない空間が開けていた。) — 「未知なるカダスを夢に求めて」(1943年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [42] “High over its jagged rim huge ravens flapped and croaked, and vague whirrings in the unseen depths told of bats or urhags or less mentionable presences haunting the endless blackness.” (訳: 裂けた縁のはるか上では大きな鴉たちが羽ばたいて鳴き、見えない深みから漠然と響く羽音は、蝙蝠かウルハグか、あるいはそれ以下の口にすべきでないものたちが、その果てしない闇に巣くっていることを告げていた。) — 「未知なるカダスを夢に求めて」(1943年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [43] “All in a great half circle they squatted, those dog-like mountains carven into monstrous watching statues, and their right hands were raised in menace against mankind.” (訳: 犬に似たそれらの山々は、怪物めいた見張りの像へと彫り上げられて、ことごとく大きな半円をなして蹲り、その右手は人類へ向けて威嚇するように振り上げられていた。) — 「未知なるカダスを夢に求めて」(1943年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [44] “till at last there lay beneath them those fabled summits which the folk of Inganok have never seen, and which lie always in high vortices of gleaming mist.” (訳: そしてついに、常に輝く霧の高い渦のなかに横たわる、インガノクの民が一度も見たことのないあの伝説の頂が、彼らの眼下に広がった。) — 「未知なるカダスを夢に求めて」(1943年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [45] “And there came from those huts and villages a shrill droning of pipes and a nauseous rattle of crotala which proved at once that Inganok’s people are right in their geographick rumours.” (訳: そしてそれらの小屋と村々からは、甲高く鳴り響く笛の音と胸の悪くなるクロタルの震え音が届き、インガノクの人々の地理についての噂が正しかったことを即座に証明した。) — 「未知なるカダスを夢に求めて」(1943年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [46] “Other views shewed the gaunt grey peaks dividing Leng from Inganok, and the monstrous shantak-birds that build nests on the ledges half way up.” (訳: 別の画面は、レンとインガノクを分かつ痩せた灰色の峰々と、その中腹の岩棚に巣を作る怪物的なシャンタク鳥を描いていた。) — 「未知なるカダスを夢に求めて」(1943年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [47] “It soon became clear that the best course would be that over the cold waste north of Inganok, for Leng’s northward reaches are full of unseen pitfalls that even the night-gaunts dislike” (訳: まもなく、最善の経路はインガノクの北の冷たい荒野を越えるものだということが明らかになった。レンの北部には夜鬼ですら嫌う見えざる落とし穴が満ちているからである。) — 「未知なるカダスを夢に求めて」(1943年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [48] “Well might its stones have been quarried by nameless workmen in that horrible gulf rent out of the rock in the hill pass north of Inganok, for such was its size that a man on its threshold stood even as an ant on the steps of earth’s loftiest fortress.” (訳: その城の石は、インガノクの北の山道に穿たれたあの恐ろしい大穴で、名も無き工人たちが切り出したものであってもおかしくなかった。それほどの大きさだったので、その敷居に立つ人間は、地上で最も高い城砦の階段に取りついた蟻ほどにしか見えなかった。) — 「未知なるカダスを夢に求めて」(1943年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [49] “past the Gate of Deeper Slumber and the enchanted wood and the garden lands and the Cerenerian Sea and the twilight reaches of Inganok, the crawling chaos Nyarlathotep strode brooding into the onyx castle atop unknown Kadath in the cold waste” (訳: 深き眠りの門と魔法の森と庭の国々とセレネリア海とインガノクの薄暮の果てを越えたはるか彼方で、這い寄る混沌ナイアルラトホテプは思案しながら、冷たい荒野の未知なるカダスの頂に立つ縞瑪瑙の城へと歩み入っていった。) — 「未知なるカダスを夢に求めて」(1943年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [50] “After many aeons men came to the land of Mnar; dark shepherd folk with their fleecy flocks, who built Thraa, Ilarnek, and Kadatheron on the winding river Ai.” (訳: 幾星霜ののち、人間たちがムナールの地へやって来た。毛深い群れを連れた浅黒い牧人の民で、彼らは蛇行するアイ川のほとりにトラー、イラーネク、カダセロンを建てた。) — 「サルナスに到りし禍」(1920年), The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [51] “Leng and the cold waste north of Inganok must be close to the Other Gods, and there the passes to Kadath are well guarded.”(訳: レンとインガノク北方の寒冷な荒野は「他の神々」に近いに違いなく、そこではカダスへの道が厳重に見張られているのだ。) — 「未知なるカダスを夢に求めて」, The H. P. Lovecraft Archive ↩
  • [52] “The monstrous moon-beasts made their camp on a jagged isle in the sea, and Carter could tell from the frescoes that this was none other than the lone nameless rock he had seen when sailing to Inganok; that grey accursed rock which Inganok’s seamen shun, and from which vile howlings reverberate all through the night.”(訳: 怪物じみた月の獣たちは、海上の切り立った小島に野営地を築いていた。カーターは壁画から、それが自分がインガノクへ渡る船上で目にしたあの名もなき岩――インガノクの船乗りが忌み嫌って避け、夜通し忌まわしい遠吠えが反響してくるという、あの灰色の忌まわしい岩――に他ならないと分かった。) — 同上, The H. P. Lovecraft Archive ↩
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