実在の人物・TRPGデザイナー(PELGRANE PRESS ラインデベロッパー) — KENNETH HITE

ケネス・ハイト

英国の版元Pelgrane Pressでライターおよびラインデベロッパーを務めるゲームデザイナー。GUMSHOEシステムを用いてクトゥルフ神話を1930年代の調査ホラーとして描いた『トレイル・オブ・クトゥルー』、スパイスリラーに転用した『Night's Black Agents』、Arc Dream Publishingの『Delta Green』をGUMSHOE化した『The Fall of DELTA GREEN』を手がけた。GURPSの複数のサプリメントやWeird Tales誌・Pyramid誌のコラム、Robin D. Lawsとの共同ポッドキャストなど、TRPG周辺の執筆活動も幅広い。

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概要

ケネス・ハイト(Kenneth Hite)は、英国のテーブルトークRPG出版社Pelgrane Pressでライターおよびラインデベロッパーを務めるアメリカのゲームデザイナーです。公式サイトの著者紹介ページは、彼を次のように紹介しています。

“Kenneth Hite is a line developer and writer for Pelgrane Press, creator of Trail of Cthulhu, Night’s Black Agents and Ken Writes About Stuff.”(訳:ケネス・ハイトはPelgrane Pressのラインデベロッパー兼ライターであり、『トレイル・オブ・クトゥルー』『Night’s Black Agents』『Ken Writes About Stuff』の生みの親である)[1]

当サイトが扱う神話の三層のうち、ハイトの仕事は主に第3層——TRPGによる拡張——に属します。ラヴクラフトの原典を、GUMSHOEという独自の判定システムを通じて1930年代の調査ホラーへ作り替えた設計者、というのが最も基本的な立ち位置です。

Pelgrane Pressでの経歴

公式サイトの自己紹介文には、次のような一節があります。

“He claims to have bought the first copy of Call of Cthulhu sold in Oklahoma City, in August of 1981. Since then, he has moved to dread and night-haunted Chicago, written all or part of seventy or so roleplaying game books (including Nightmares of Mine, Dubious Shards, and Adventures Into Darkness), and acquired the requisite Lovecraftian cat.”(訳:彼は1981年8月、オクラホマシティで売られた『Call of Cthulhu』の1冊目を自分が買ったと主張している。それ以来、恐怖と夜が支配するシカゴへ移り住み、70冊ほどのロールプレイングゲーム本の全部または一部を執筆し(『Nightmares of Mine』『Dubious Shards』『Adventures Into Darkness』を含む)、ラヴクラフト風の猫を1匹飼うに至った)[1]

これは公式サイトが公表している自己紹介文であり、当サイトが独自に裏付けたエピソードではない点を明記しておきます。「70冊ほどの執筆」という数字も、あくまで本人・所属先の自己申告です。

『トレイル・オブ・クトゥルー』のデザイナーとして

Pelgrane Pressの製品ページは、ハイトの代表作『トレイル・オブ・クトゥルー』の著者を「Kenneth Hite, Robin D. Laws」の2名と表記しています[2]。GUMSHOEシステムの詳しい設計思想については、当サイトの「GUMSHOEシステムとは」を参照してください。製品ページはハイト自身について、次のように紹介しています。

“Acclaimed expert on the eldritch Kenneth Hite weds his encylopaedic knowledge of vivid historical detail to his mastery of H. P. Lovecraft’s classic horror tales”(訳:名状しがたきものについての高名な専門家であるケネス・ハイトが、鮮やかな史実の細部にまでおよぶ百科事典的な知識と、H・P・ラヴクラフトの古典的恐怖物語への精通とを結びつけた)[2]

『トレイル・オブ・クトゥルー』は1930年代を舞台に、「Pulp(パルプ)」と「Purist(純正主義)」という2つのプレイモードを備えた調査ホラーTRPGです[2]。日本語版は「暗黒神話TRPG トレイル・オブ・クトゥルー」としてグループSNE・新紀元社から刊行されており、公式製品ページの著者クレジットは「著:ケネス・ハイト」と表記しています[4]。この日本語版は、もともと2020年12月に書苑新社から刊行され、2023年8月29日に発売元を新紀元社へ変更したうえで改訂版として刊行し直されたものです[4]。

2023年9月には、初版から15年以上を経た第2版の制作が公式発表されました。発表記事は次のように記しています。

“Original edition creator Kenneth Hite and superstar writer-designer Gareth Ryder-Hanrahan are collaborating on the revision process under the keen eye of Pelgrane publisher Cathriona Tobin, with the goal of being ready for a Kickstarter launch this November.”(訳:初版の生みの親であるケネス・ハイトと、花形ライター兼デザイナーのガレス・ライダー=ハンラハンが、Pelgrane社の発行人キャスリオーナ・トビンの目の行き届いた監督のもと改訂作業を進めており、今年11月のKickstarter開始を目標としている)[3]

当サイトが2026年9月に確認した公式サイトでは、この第2版は「COMING SOON」の予約受付段階にとどまっており、当初想定されていた2023年11月のKickstarter開始からは数年単位の遅れが生じていると見られます(詳しい経緯は「ペルグレイン・プレス」の記事を参照)。

スパイスリラーへの転用――『Night’s Black Agents』

ハイトはGUMSHOEシステムを、クトゥルフ神話以外のジャンルにも応用しています。『Night’s Black Agents』は、Pelgrane Pressの製品ページで「legendary designer Kenneth Hite (Trail of Cthulhu)」の単独著作として紹介されており[5]、GUMSHOEエンジンをスパイスリラーというジャンルへ持ち込んだ作品です。プレイヤーは秘密工作員となり、ヨーロッパに張り巡らされた吸血鬼のネットワークと対峙します[5]。本作は2013年のENnie Awards公式の受賞一覧ページによれば、Best Game部門・Best Writing部門の両方で銀賞(Silver Winner)を受賞しています[6]。

なお同作の拡張として、ブラム・ストーカーの小説『吸血鬼ドラキュラ』を素材にした大型キャンペーン『The Dracula Dossier』シリーズも刊行されており、その一冊『Thrill of Dracula』では、ハイトが「ドラキュラを構成要素——キャラクター・トロープ・象徴・物語のビート・効果——へと解体し、スリラー向け・宇宙的恐怖向け・personal dramaに調整した新たな神話的物語をどう組み立てるかを示す」内容を執筆したと紹介されています。

Arc Dream Publishingの『Delta Green』を移植する

ハイトはPelgrane Press以外の版元の設定を、GUMSHOEシステムへ移植する仕事も手がけています。その代表が、Arc Dream Publishingの現代版TRPG『Delta Green』を1960年代の物語として翻案した『The Fall of DELTA GREEN』です。デルタグリーンという設定そのものについては、当サイトの「デルタグリーン入門」にまとめています。Pelgrane Pressの製品ページは、この作品を次のように説明しています。

“Written by ENnie Award-winning designer Kenneth Hite, The Fall of DELTA GREEN corebook adapts DELTA GREEN: THE ROLE-PLAYING GAME from Arc Dream Publishing to the award-winning GUMSHOE system. It opens the files on a lost decade of anti-Mythos operations both foreign and domestic, the last days of DELTA GREEN before the Joint Chiefs shut the program down in 1970.”(訳:ENnie賞受賞デザイナーのケネス・ハイトが執筆した『The Fall of DELTA GREEN』基本ルールブックは、Arc Dream Publishingの『Delta Green: The Role-Playing Game』を、受賞歴のあるGUMSHOEシステムに翻案したものである。国内外での対神話工作が繰り広げられた失われた10年間、そして1970年に統合参謀本部がプログラムを閉鎖するまでの「デルタグリーン」最後の日々を描く)[7]

本作は2019年のENnie Awardsで、Best Setting部門の金賞(Gold Winner)を受賞しています[8]。またハイトは、Arc Dream Publishing自身が刊行する『Delta Green: The Role-Playing Game』(2016-2018年)の共著者の一人にも名を連ねています。同作は2018年のENnie Awardsで、Dennis Detwiller・Adam Scott Glancy・Christopher Gunning・Shane Ivey・Greg Stolzeらとの共著としてBest Rules部門の金賞、Best Production Values部門の銀賞、Product of the Year部門の銀賞を受賞し、Best Game部門にもノミネートされました[9]。

単独著作『Bookhounds of London』ほか

『トレイル・オブ・クトゥルー』の関連サプリメントとして、ハイトは単独著者として『Bookhounds of London』も執筆しています。Pelgrane Pressの製品ページによれば、これは1930年代ロンドンを舞台に、稀覯本の収集を通じて神話の恐怖に巻き込まれていく調査員たちを描くキャンペーン設定で、200か所以上の地図付きロケーション、独自の書物鑑定・オークション・偽造といったゲームメカニクスを備えています。本作はENnie AwardとGolden Geek Awardを受賞し、収録された地図(カートグラフィー)はENnie Awardsのカートグラフィー部門で銀賞を受けています[10]。

GURPSサプリメントとオスプレイ社の一般書

ハイトはPelgrane Press以外でも、Steve Jackson Gamesの汎用ルールシステム「GURPS」向けに複数のサプリメントを執筆しています。書誌データベースの記録によれば、『GURPS Infinite Worlds』(2005年、Steve Jackson Games刊)はケネス・ハイト、スティーブ・ジャクソン、ジョン・M・フォードの3名を著者とする第4版サプリメントです[11]。業界誌ICv2の報道によれば、本作は2005年のOrigins Awardsで「Role-Playing Game Supplement of the Year」部門を受賞しています[12]。また『GURPS Horror』第4版(2011年、Steve Jackson Games刊、176ページ)も、書誌データベース上でケネス・ハイトを著者とする記録が確認できます[13]。

TRPGの枠を離れた仕事としては、2016年に大手出版社Bloomsburyの「Dark Osprey」シリーズから、ケナン・バウマン(Kennon Bauman)との共著で『The Cthulhu Wars: The United States’ Battles Against the Mythos』を刊行しています。書誌データベースの紹介文は、この本の内容を次のように説明しています。

“From the Patriots’ raid on the necromancer Joseph Curwen to the Special Forces’ assault on Leng in 2007, this unique document reveals the secret and terrible struggle between the United States and the supernatural forces of Cthulhu.”(訳:降霊術師ジョゼフ・カーウィンへの愛国者たちの急襲から、2007年のレン高原への特殊部隊による強襲まで――この特異な文書は、アメリカ合衆国とクトゥルフの超自然的な勢力との間で繰り広げられてきた秘密の、そして凄惨な闘争を明らかにする)[14]

架空の合衆国軍事史という体裁で神話を語り直す、軍事史専門の版元ならではの一冊です。

コラムニスト・批評家としての顔

ゲームデザイン以外にも、ハイトは執筆家・コラムニストとしての顔を持っています。Pelgrane Press公式の紹介文は、次のように述べています。

“His ‘Tour de Lovecraft: The Settings’ column appears in Weird Tales magazine; his Suppressed Transmission column explores the Higher Strangeness in Pyramid.”(訳:彼の「Tour de Lovecraft: The Settings」というコラムはWeird Tales誌に掲載されており、Suppressed Transmissionというコラムは、Pyramid誌で「より高次の奇妙さ(Higher Strangeness)」を探求している)[1]

ラヴクラフト論としては、Atomic Overmind Pressから刊行された書籍シリーズ『Tour de Lovecraft』も手がけています。第1弾『The Tales』はラヴクラフトの恐怖小説全51編を「The Tomb」から「The Haunter of the Dark」まで時系列順に解説する案内書で、2008年8月に刊行されました。H. P. Lovecraft Archive(hplovecraft.com)の紹介文は、次のように述べています。

ゲームデザイナーとしての「構造と連結性に対する眼」を用いて、ラヴクラフト作品全体に流れるテーマを明らかにしている(H. P. Lovecraft Archiveの紹介文の趣旨)[15]

続く『The Destinations』は、ラヴクラフト作品の舞台設定を巡るガイドブックで、Atomic Overmind Pressの紹介文によれば、Weird Tales誌に連載していた「Lost in Lovecraft」というエッセイシリーズを拡張したものだとされています[16]。この「Lost in Lovecraft」という連載名は、上記のPelgrane公式サイトが記す「Tour de Lovecraft: The Settings」という表記と一致しておらず、どちらが正式名称か、あるいは連載時期によって名称が変わったのかは、当サイトが参照した範囲では確認できませんでした。

Robin D. Lawsとのポッドキャスト

ハイトはPelgrane Pressのクリエイティブディレクターでもあるロビン・D・ロウズ(Robin D. Laws)と共同で、ポッドキャスト番組も配信しています。公式サイトの紹介文は次のように述べています。

“He and Robin Laws are the cohosts of the award-winning podcast Ken and Robin Talk About Stuff.”(訳:彼とロビン・ロウズは、受賞歴のあるポッドキャスト番組『Ken and Robin Talk About Stuff』の共同ホストである)[1]

番組名のとおり、TRPGに限らずさまざまな話題を扱う雑談形式の番組で、公式サイトの記載によれば2012年から続いています。どのような賞をいつ受賞したのかという具体的な内訳については、当サイトが参照したPelgrane公式サイトの範囲では確認できませんでした。

まとめ

ケネス・ハイトの仕事を一望すると、GUMSHOEというひとつの判定システムを軸に、クトゥルフ神話(『トレイル・オブ・クトゥルー』)、スパイスリラー(『Night’s Black Agents』)、他版元の現代ホラー設定(『The Fall of DELTA GREEN』)という異なるジャンルへ、同じ設計思想を繰り返し持ち込んできたデザイナーだと分かります。同時に、GURPSサプリメントの執筆、Weird Tales誌・Pyramid誌でのコラム連載、Bloomsburyという一般書版元での仕事、そしてポッドキャストの配信と、TRPGのルールブック執筆にとどまらない幅広い活動を続けています。当サイトが扱う神話の三層のうち、原典そのものへの言及よりも、原典をどう「遊べるシステム」へ組み替えるかという第3層の設計者としての側面が、彼の仕事の中心にあると言えます。

出典

  • [1] Pelgrane Press Ltd「About Us」(著者紹介ページ) — 公式サイト(取得日 2026-09-19) ↩
  • [2] Pelgrane Press Ltd「Trail of Cthulhu」商品ページ — 公式サイト(取得日 2026-09-19) ↩
  • [3] Pelgrane Press Ltd「Announcing: Trail of Cthulhu 2nd Edition!」(2023年9月6日) — 公式サイト(取得日 2026-09-19) ↩
  • [4] 株式会社グループSNE「暗黒神話TRPG トレイル・オブ・クトゥルー改訂版」商品ページ — 公式サイト(取得日 2026-09-19) ↩
  • [5] Pelgrane Press Ltd「Night’s Black Agents」商品ページ — 公式サイト(取得日 2026-09-19) ↩
  • [6] ENNIE Awards「2013 Nominees and Winners」 — 公式サイト(取得日 2026-09-19) ↩
  • [7] Pelgrane Press Ltd「The Fall of DELTA GREEN」商品ページ — 公式サイト(取得日 2026-09-19) ↩
  • [8] ENNIE Awards「2019 Nominees and Winners」 — 公式サイト(取得日 2026-09-19) ↩
  • [9] ENNIE Awards「2018 Nominees and Winners」 — 公式サイト(取得日 2026-09-19) ↩
  • [10] Pelgrane Press Ltd「Bookhounds of London」商品ページ — 公式サイト(取得日 2026-09-19) ↩
  • [11] Google Books「Gurps Infinite Worlds」書誌情報 — Google Books(取得日 2026-09-19) ↩
  • [12] ICv2「2005 Origins Awards Announced」 — 記事(取得日 2026-09-19)。編集体制を持つゲーム・コミック業界の専門メディア。 ↩
  • [13] Google Books「Gurps Horror 4/E」書誌情報 — Google Books(取得日 2026-09-19) ↩
  • [14] Google Books「The Cthulhu Wars」書誌情報 — Google Books(取得日 2026-09-19) ↩
  • [15] H. P. Lovecraft Archive「Tour de Lovecraft: The Tales」紹介ページ — 公式サイト(取得日 2026-09-19) ↩
  • [16] Atomic Overmind Press「Tour de Lovecraft: The Destinations」商品ページ — 公式サイト(取得日 2026-09-19) ↩
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