概要
2018年の『Call of Cthulhu』は、卓上ゲームを原作とする 公式のビデオゲーム である。Steam公式ストアページによれば、開発は Cyanide Studio、発売元は Focus Entertainment、発売日は 2018年10月29日[1]。
公式の紹介文は、出自をはっきり書いている[1]。
Call of Cthulhu, the official videogame inspired by Chaosium’s classic pen and paper RPG, brings you deep into a world of creeping madness and shrouded Old Gods within Lovecraft’s iconic universe. (『Call of Cthulhu』は、ケイオシアムの古典的なペン&ペーパーRPGに着想を得た公式ビデオゲームであり、ラヴクラフトの象徴的な世界の中の、忍び寄る狂気と隠された旧き神々の世界へ深く連れてゆく)
「official videogame」——公式であると明記されている点が、ほかの神話ゲームとの決定的な違いになる。『クトゥルフの呼び声』TRPGのライセンスを受けた作品である。
基本情報
Steam公式ストアページの記載による[1]。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 開発 | Cyanide Studio |
| 発売元 | Focus Entertainment |
| 発売日 | 2018年10月29日 |
| ジャンル | アドベンチャー / RPG |
| 対応プラットフォーム | Windows |
| 対応言語 | 英語(フル音声)、フランス語、イタリア語、ドイツ語、スペイン語、チェコ語、ポルトガル語(ブラジル)、ロシア語、日本語、韓国語(フル音声)、中国語(簡体字)、ポーランド語 |
| Steam実績 | 49 |
| 価格(Steam日本) | 3,200円 |
| 公式サイト | focus-home.com |
日本語に対応している。神話系のPCゲームでは、これは当たり前ではない。『Conarium』も『Moons of Madness』も『Stygian』も日本語がない[2]。
ストーリーの枠組み
Steam公式の紹介文が語る導入は、次のとおりである[1]。
1924年。私立探偵ピアースが、孤立した ダークウォーター島 で起きたホーキンス一家の悲劇的な死を調べるために送り込まれる。やがてピアースは、陰謀とカルト、そして宇宙的恐怖の世界へ引き込まれていく[1]。
公式は続けてこう書く[1]。
Nothing is as it seems. Sanity is an irregular bedfellow, all too often replaced by whisperings in the dark. (何ひとつ見かけどおりではない。正気はあてにならない同居人で、闇の中のささやきにあっさり取って代わられる)
私立探偵が島へ渡り、一家の死を調べる——枠組みは探偵小説のそれである。TRPGのシナリオが長年採ってきた形と同じで、原作の遊び方をそのまま一人用に翻案した構造になっている。
クトゥルフ神話との関係
TRPGを原作にする、という立ち位置
神話を題材にしたゲームの多くは、小説のほうを参照する。『Conarium』は「狂気の山脈にて」の後日を名乗り、『Stygian』は原典の概念を土台にすると書く[2]。
本作はそうではない。公式が名指ししているのは ケイオシアムの卓上RPG である[1]。
小説→TRPG→ビデオゲーム、という二段階を経た翻案になっている。だから本作に出てくる語彙——調査、正気度、カルト——は、原典の小説よりもTRPGの用語体系に近い。
「正気度」をどう扱ったか
公式紹介文の「Sanity is an irregular bedfellow」という一文が示すとおり、正気度は本作の主題のひとつである[1]。
TRPG『クトゥルフの呼び声』は1981年の初版から、戦って勝つのではなく、知ってしまうことで壊れるという設計を取ってきた。その考え方を一人用のアドベンチャーへ移すことが、本作の課題だった。詳しくは『クトゥルフの呼び声』TRPGと正気度(SAN)を参照してほしい。
層としてはどこか
当サイトの神話の三層でいえば、本作は第3層——TRPGによる拡張——のさらに先にある。第3層を原作とする作品という、珍しい位置づけになる。
遊びの設計
Steam公式のカテゴリ表示によれば、シングルプレイヤー専用で、Steam実績49、フルコントローラサポート、Steamクラウドに対応する[1]。
会話と調査を軸に進む一人称のアドベンチャーで、選択が分岐に影響する構造を持つ。ジャンル表記が「アドベンチャー / RPG」の2つになっているのは、能力の割り振りが遊びに関わることを示している[1]。
動作環境の最低要件は、Windows 7/8/10 64bit、Intel Core i5-3450(3.1GHz)または AMD FX-6300(3.5GHz)相当、メモリ8GB、VRAM 2GBのGeForce GTX 660 / Radeon HD 7870相当[1]。2018年の大手パブリッシャー作品としては標準的で、同時期のインディー作品(『Stygian』はメモリ2GB)よりは重い[2]。
「公式のCall of Cthulhu」は3本ある
Steamで配信されている「Call of Cthulhu」を冠したゲームは、2018年の本作だけではない。1990年代にInfogramesが作った2本が、Atari名義で現在も配信されている[4]。
| 作品 | 開発 / 発売元 | Steam配信 | 舞台 | 日本語 |
|---|---|---|---|---|
| Call of Cthulhu: Shadow of the Comet | Infogrames / Atari | 2015年11月4日 | 1910年、ニューイングランドの漁港イルスマウス | なし |
| Call of Cthulhu: Prisoner of Ice | Infogrames / Atari | 2015年11月4日 | 第二次大戦前夜の南極、英海軍潜水艦H.M.S.ヴィクトリア | なし |
| Call of Cthulhu(本作) | Cyanide Studio / Focus | 2018年10月29日 | 1924年、ダークウォーター島 | あり |
『Shadow of the Comet』の紹介文は、ハレー彗星の回帰と、かつて地上を支配した「大いなる古き者たち」の再来が結びついているのではないか、という問いを立てる[4]。『Prisoner of Ice』では、プレイヤーは米海軍情報部の工作員として南極でナチスの計画を阻止し、世界の力の均衡を変えうる怪物と対峙する[4]。
三本とも「調査する話」だが、作中の時代も場所も違う。本作が1924年の島、『Shadow of the Comet』が1910年の漁港、『Prisoner of Ice』が第二次大戦前夜の南極である[1][4]。旧作2本はもともと1990年代にInfogramesが出したもので、上の表に挙げた日付は現在Steamで配信されている版の配信開始日である[4]。
Steamのレビュー総数は、旧作2本がそれぞれ148件・114件と小さい[4]。本作の13,917件と比べると、届いた規模が二桁違う[3][4]。TRPGを原作とする公式ゲームの系譜としては古いほうが先だが、多くの人が触れたのは2018年版のほうである。
評価
数字は Steam公式のレビュー集計 による[3]。ここに書く以外の点数は当サイトでは扱わない。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| Steamのレビュー評価 | やや好評(Mostly Positive) |
| レビュー総数 | 13,917件 |
| 肯定的 | 11,029件 |
| 否定的 | 2,888件 |
肯定率は約79%である。レビュー総数の多さが、この作品の性格を示している。
| 作品 | Steam評価 | レビュー総数 | 肯定率 |
|---|---|---|---|
| Call of Cthulhu (2018) | やや好評 | 13,917 | 79% |
| 恐怖の世界 | 非常に好評 | 9,850 | 90% |
| Moons of Madness | やや好評 | 2,938 | 77% |
| Conarium | やや好評 | 2,275 | 77% |
| Stygian | 賛否両論 | 2,524 | 66% |
インディー作品の4〜6倍の人数が触れている。大手パブリッシャーが流通させた公式タイトルであることが、この数字に出ている。肯定率79%は、インディーの一人称ホラー勢(77%前後)と同じ帯である[2]。
なお本作のストアページにはMetacriticスコアの表示がない[1]。当サイトはSteam公式が提示している数値以外を扱わないため、批評媒体側の点数はここでは示さない。
どんな人に向くか
- 日本語で神話ゲームを遊びたい人。対応言語に日本語が入っている[1]
- TRPG『クトゥルフの呼び声』を知っていて、その世界を一人で味わいたい人
- 1920年代の調査もの——島、一家の死、カルト——という型が好きな人
- 逆に、アクションとしての手応えを求めるなら向かない。調査と会話が主体である
神話ゲーム全体の見取り図はクトゥルフ神話ゲーム総覧にある。日本語で遊べるものとしては『恐怖の世界』も挙げられる。
関連記事
- クトゥルフの呼び声(TRPG) — 本作が公式に原作とする卓上ゲーム
- 正気度(SAN) — 公式紹介文が主題に据える概念
- Conarium / Stygian — 小説側を参照した神話ゲーム
- クトゥルフ神話ゲーム総覧
出典
- [1] Steam公式ストアページ『Call of Cthulhu』(appid 399810、該当ページ)。Steam公式のappdetails API(
store.steampowered.com/api/appdetails?appids=399810&l=japanese&cc=jp)で取得した内容を確認した。開発 Cyanide Studio、発売元 Focus Entertainment、発売日2018年10月29日、ジャンル「アドベンチャー/RPG」、対応プラットフォーム Windows、対応言語に日本語を含む、Steam実績49、Steam日本価格3,200円、公式サイト focus-home.com。紹介文の「Call of Cthulhu, the official videogame inspired by Chaosium’s classic pen and paper RPG」「1924. Private Investigator Pierce is sent to look into the tragic death of the Hawkins family on the isolated Darkwater Island.」「Nothing is as it seems. Sanity is an irregular bedfellow, all too often replaced by whisperings in the dark.」、および最低動作環境。ストアページにMetacriticスコアの表示はない(2026年9月16日確認)。 ↩ - [2] Steam公式ストアページおよびレビュー集計。『恐怖の世界/WORLD OF HORROR』(appid 913740、Very Positive、9,850件・肯定8,822件)、『Moons of Madness』(appid 1012840、Mostly Positive、2,938件・肯定2,277件、日本語非対応)、『Conarium』(appid 313780、Mostly Positive、2,275件・肯定1,750件、日本語非対応)、『Stygian: Reign of the Old Ones』(appid 779290、Mixed、2,524件・肯定1,675件、日本語非対応、最低メモリ2GB)。肯定率は当サイトが肯定件数÷総数で算出した(2026年9月16日確認)。 ↩
- [3] Steam公式のレビュー集計API(
store.steampowered.com/appreviews/399810?json=1&language=all&purchase_type=all)。レビュー評価「Mostly Positive」、総数13,917件(肯定11,029件/否定2,888件)(2026年9月16日確認)。 ↩ - [4] Steam公式ストアページおよびレビュー集計。『Call of Cthulhu: Shadow of the Comet』(appid 389470、開発 Infogrames、発売元 Atari、Steam配信2015年11月4日、日本語非対応、Mostly Positive、114件・肯定88件/否定26件。紹介文「The year is 1910. Bathed in pale Spring sunlight, the small fishing port of Illsmouth is a sleepy New England town…Is there a link between the return of Halley’s comet and the resurgence of the Great Ancients who once dominat[ed]…」)、『Call of Cthulhu: Prisoner of Ice』(appid 359620、開発 Infogrames、発売元 Atari、Steam配信2015年11月4日、日本語非対応、Mostly Positive、148件・肯定109件/否定39件。紹介文「…the icy cold wastelands of the Antarctic aboard a Royal Navy submarine – the H.M.S. Victoria. As an American agent of the Office of Naval Intelligence, your mission is to thwart a Nazi plot…」)(2026年9月16日確認)。 ↩




