外なる神 — YIBB-TSTLL

イブ=ツトル

ダーレス以降

「忍耐強きもの」「暗黒のもの」と呼ばれる、蝙蝠に似た黒い翼と無数の触手を持つ外なる神。バグ=シャッシュと縁戚関係にあるとされる。

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イブ=ツトル

「蝙蝠を思わせる巨大な黒い翼と、うごめく触手状の肢を持つ、どろりとした暗色の巨躯。頭部には見開いた眼球が浮かぶ」

— ブライアン・ラムレイ「The Horror at Oakdeene」
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編集部注(層の区分と裏づけの範囲): イブ=ツトルは、H・P・ラヴクラフト本人の作品には登場しない。ラヴクラフト公式サイトが公開する作品一覧にも、この名は見当たらない[3]。当サイトの三層区分はラヴクラフトの死(1937年)より前の発表か後かで分けており、初出は1977年なので、本記事は拡張神話(ダーレス以降)として扱う[1]。

裏づけの範囲を先に書く。ラムレイ作品の本文を当サイトは照合していない。著作権の存続する作品で、公開されたスキャンも見つからなかった。誰がいつどこに発表したかという書誌事実は書誌データベースの記録で確認して断定的に記し[1][2]、姿・分類・系譜といった設定は「とされる」と断って区別する。原文からの引用は行わない。

概要

イブ=ツトルは、ブライアン・ラムレイの中編「The Horror at Oakdeene」に現れる外なる神である。異名は「忍耐強きもの(The Patient One)」「暗黒のもの(The Dark One)」「大いなる黒きもの」[4]。

異名が示すとおり、動かないことがこの神格の性質である。蝙蝠を思わせる黒い翼とうごめく触手状の肢を持つ暗色の巨躯で、頭部には見開いた眼球が浮かび、それでいてじっと留まり続けるとされる[4]。襲いかかるのではなく、待つ——同じラムレイのシュド=メルが地殻を掘り進み続けるのと、ちょうど反対の造形にあたる。

項目 内容
分類 外なる神(後年の体系化による位置づけ)[4]
欧文表記 YIBB-TSTLL
初出 「The Horror at Oakdeene」(ブライアン・ラムレイ、中編、1977年)[1]
初出書 『The Horror at Oakdeene and Others』(Arkham House、1977年)[1]
三層区分 拡張神話(ダーレス以降)。基準は1937年より後の発表であること
異名 忍耐強きもの、暗黒のもの、大いなる黒きもの[4]
系譜 バグ=シャッシュと同じ「溺れさせるもの」の一群とされる[4]

初出作品

初出は中編「The Horror at Oakdeene」で、発表は1977年。以前の版の本記事は「1970年代発表」とだけ記していたが、書誌データベースの作品記録で年が確定した[1]。

収録は同名の短編集『The Horror at Oakdeene and Others』で、版元はアーカム・ハウスである[1]。ラムレイにとって、シュド=メルとクトーニアンを出した長編『The Burrowers Beneath』(DAW Books、1974年)から3年後の本にあたる。DAWのペーパーバックで連作を書き継ぐ一方、アーカム・ハウスからは短編集を出す——二つの版元を使い分けていたことが書誌から見て取れる[1]。

収録書の中身も確認できた。本文229ページのハードカバー、定価7ドル50セント、ISBNは0-87054-078-5[6]。目次は「The Viking’s Stone」(3ページから)、「Aunt Hester」(21)、「No Way Home」(45)、「The Horror at Oakdeene」(69)、「The Cleaner Woman」(109)、「The Statement of Henry Worthy」(120)、「Darghud’s Doll」(151)と続く[6]。巻頭とこの「Darghud’s Doll」はいずれもタイタス・クロウ連作の一編として登録されており[6]、同じ本の中に連作物と単発作が混ざっている。イブ=ツトルが現れる「The Horror at Oakdeene」は、連作の枠に属さない側の一編である[1][6]。

再録も追える。フランス語版『L’avant-poste des Grands Anciens』(Néo、Fantastique / Science-fiction / Aventures叢書第178番、1986年8月)、および中編集『The Taint and Other Novellas』(Subterranean Press、2007年10月)に収められている[1]。

ラヴクラフト公式サイトの作品一覧に、イブ=ツトルの名も本作も含まれない[3]。

原典での描写

原典に、イブ=ツトルの記述は存在しない。ラヴクラフト本人の作品にこの名が登場したことはなく、姿・分類・系譜のいずれについても、ラヴクラフトが書き残したものはない[3]。1977年の発表は、ラヴクラフトの没後40年にあたる[1]。

ダーレス以降の変化

創造したのはオーガスト・ダーレスではなく、ブライアン・ラムレイである。ダーレスの関わりは、自ら興したアーカム・ハウスがこの短編集を出した版元だという点にとどまる[1]。以下の設定は、いずれも当サイトが本文を照合していない[4]。

  • 姿。蝙蝠を思わせる巨大な黒い翼と、うごめく触手状の肢を持つ、どろりとした暗色の巨躯として描写されるとされる。頭部には見開いた眼球が浮かび、動くことなくじっと留まっているという
  • 系譜。架空の魔道書『エイボンの書』『クタート・アクアディンゲン』の中で、バグ=シャッシュと血縁関係にある「溺れさせるもの(the Drowners)」という一群に分類されるとされる
  • 旧支配者との関係。旧支配者たちにまとわりつく寄生的な存在として位置づけられるという

自作の神格どうしを結び直す。バグ=シャッシュとの縁戚設定に表れているとおり、ラムレイは自分が生み出した神格を互いに関連づけ、独自の系譜を築いていった[4]。シュド=メルとクトーニアンを王と種族の関係で結んだのも同じ手つきである。これはダーレスの「旧神対旧支配者」という二陣営の構図とは別の、血縁と系統で束ねるやり方だといえる。ただしこの整理は当サイトのもので、作者がそう述べた資料に基づくものではない[4]。

なお、バグ=シャッシュの命名作「The Kiss of Bugg-Shash」は書誌上1978年の作品で[5]、本作の翌年にあたる。二柱を「溺れさせるもの」で結ぶ設定がどちらの作品で先に示されたかは、当サイトでは確認できていない[4]。

TRPGでの扱い

後年のクトゥルフ神話TRPGやボードゲームに取り入れられているとされるが、具体的な収録タイトルや設定文言を当サイトは確認していない[4]。上表の「外なる神」という区分も、当サイトの神格分類による整理である。

登場作品一覧

作品 年 作者 確認の状態
The Horror at Oakdeene 1977 ブライアン・ラムレイ 初出。書誌は確認済み、本文は未照合[1]
The Horror at Oakdeene and Others 1977 ブライアン・ラムレイ 初出書。Arkham House刊[1]
L’avant-poste des Grands Anciens 1986年8月 ブライアン・ラムレイ フランス語版。Néo刊[1]
The Taint and Other Novellas 2007年10月 ブライアン・ラムレイ 再録。Subterranean Press刊[1]

魔道書『エイボンの書』『クタート・アクアディンゲン』の中での言及については、これらの魔道書自体の成立事情は本記事の範囲外とする。

関連神格・地域・書物

神格・種族

人物

書物

参考文献

  • [1] 書誌データベースISFDB「The Horror at Oakdeene」Title Record #569525(該当ページ)。著者ブライアン・ラムレイ、1977年、中編。同記録の収録一覧で、初出書『The Horror at Oakdeene and Others』(Arkham House、1977年)、フランス語版『L’avant-poste des Grands Anciens』(Néo、Fantastique / Science-fiction / Aventures #178、1986年8月)、『The Taint and Other Novellas』(Subterranean Press、2007年10月)を確認した。ISFDBは利用者が編集する書誌データベースであり、当サイトでは刊行年・版元といった書誌事実に限って用いる。作中の描写の裏づけには使っていない。
  • [2] 書誌データベースISFDB「The Burrowers Beneath」Title Record #10250(該当ページ)。著者ブライアン・ラムレイ、1974年2月、DAW Books(DAW Collectors #91)。本記事では、同じ作者が別の版元から連作を出していたことの裏づけとして参照した。
  • [3] ラヴクラフト公式サイト hplovecraft.com の作品一覧(該当ページ)。イブ=ツトルの名も本作も含まれないことを確認した(2026年9月15日確認)。
  • [4] 姿・異名・系譜・旧支配者との関係・TRPGでの採用についての記述は、当サイトが収集した二次的な要約に基づく。ラムレイ作品の本文は照合していない。著作権の存続する作品で、公開されたスキャンは見つからなかった。本文を照合できる資料が得られた時点で書き直す。
  • [5] 書誌データベースISFDB「The Kiss of Bugg-Shash」Title Record #509501(該当ページ)。著者ブライアン・ラムレイ、作品記録の年は1978年。本記事では、バグ=シャッシュの命名作が本作の翌年にあたることの確認に用いた。
  • [6] 書誌データベースISFDB『The Horror at Oakdeene and Others』Publication Record #187841(該当ページ)。著者ブライアン・ラムレイ、1977年、発行Arkham House、ISBN 0-87054-078-5、定価7ドル50セント、本文229ページ、ハードカバー。目次に The Viking’s Stone(3、Titus Crow連作)/Aunt Hester(21)/No Way Home(45)/The Horror at Oakdeene(69)/The Cleaner Woman(109)/The Statement of Henry Worthy(120)/Darghud’s Doll(151、Titus Crow連作)が並ぶことを確認した(2026年9月15日確認)。

FAQ

Q. イブ=ツトルはラヴクラフトが生み出した神格ですか。 A. いいえ。ブライアン・ラムレイが1977年の中編「The Horror at Oakdeene」で登場させた存在です[1]。ラヴクラフト公式サイトの作品一覧にも、神格名・作品名とも含まれていません[3]。

Q. 初出は「1970年代」としか書かれていませんでしたが。 A. 年が確定しました。書誌データベースの作品記録は1977年付で、収録書『The Horror at Oakdeene and Others』(アーカム・ハウス)も同年の刊行です[1]。

Q. どんな姿をしていますか。 A. 蝙蝠を思わせる黒い翼と、うごめく触手状の肢を持つ、どろりとした暗色の巨躯として描写されるとされます[4]。頭部には見開いた眼球が浮かび、動かずに留まっているといいます。異名の「忍耐強きもの」は、この動かない性質を指した呼び方だと受け取れます。ラヴクラフト原典の記述ではなく、当サイトも本文で確認していません。

Q. この作品はタイタス・クロウ連作の一編ですか。 A. 違います。収録書『The Horror at Oakdeene and Others』には連作物も入っていますが、書誌データベース上、連作「Titus Crow」として登録されているのは巻頭の「The Viking’s Stone」と「Darghud’s Doll」で、イブ=ツトルが現れる表題作はその枠に入っていません[1][6]。

Q. バグ=シャッシュとはどんな関係ですか。 A. 架空の魔道書の中で、同じ「溺れさせるもの」という系統に属する縁戚とされます[4]。なおバグ=シャッシュの命名作は書誌上1978年で、本作の翌年にあたります[5]。どちらの作品でこの系譜が先に示されたかは確認できていません。

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