概要
『マンション・オブ・マッドネス 第2版』は、大邸宅の中を探索する協力型ボードゲームである。日本語版を出しているアークライトの公式商品ページによれば、メーカーは Fantasy Flight Games、デザイナーは Nikki Valens、原題は *Mansions of Madness: Second Edition*、日本語版の発売は2016年12月3日[1]。
公式の紹介文は、次のように始まる[1]。
大邸宅に潜む狂気に立ち向かうため、閉ざされた扉が今、開かれる…! アーカムの薄汚れた路地と、そこにそびえ立つ大邸宅は、異様な力、恐るべき秘密、そして 名状しがたき怪物 を隠している。これら古代の建物の中で、わめきたてる狂人とカルト信者が、エンシェントワン を呼び起こそうとしている。そして生けるものには知られていない獣が、半月を僅かに過ぎた月の下で蠢く。
基本情報
アークライト公式の「商品概要」による[1]。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| メーカー | Fantasy Flight Games |
| デザイナー | Nikki Valens |
| 原題 | Mansions of Madness: Second Edition |
| 日本語版の販売 | アークライト |
| 日本語版発売日 | 2016年12月3日 |
| 価格 | 14,850円(税込) |
| プレイ人数 | 1〜5人 |
| プレイ時間 | 120〜180分 |
| 対象年齢 | 14歳以上 |
14,850円。当サイトが扱う神話系ボードゲームの中で、もっとも高い[2][3]。フィギュアとマップタイルを多く含む製品であることが、この価格に表れている。
アプリがシナリオを回す
本作の最大の特徴は、無料アプリとの併用である。公式の説明を引く[1]。
このゲームは 無料のアプリ と、同梱されているマップタイルやモンスターフィギュア、各種トークンを使用して遊ぶ、恐怖と探索のゲームです。1人から5人までで遊べます。戦闘や各種の判定に使うダイスはプレイヤー自身が振りますが、シナリオの進行はアプリが行う、ハイブリッドなゲームになっています。アプリがランダム性を加味したシナリオを展開するため、プレイヤーにはシナリオの先が見えません。
進行役(ゲームマスター)をアプリが務める。これが本作の設計である。
TRPG『クトゥルフの呼び声』は、キーパーと呼ばれる進行役を必要とする。本作はその役をアプリに任せることで、全員が探索者側に回れるようにした。
公式は、プレイヤーがすることをこう説明する[1]。
プレイヤーは全員探索者として暗い部屋を探索し、異様な秘密を暴き、アプリ上で行う狡猾なパズルに挑んだり、そして異世界のモンスターと戦いながら、物語に秘められた秘密を、アプリで定められたラウンド内で解決しなければなりません!
時間制限もアプリが管理する。盤上の駒とアプリの指示が、それぞれ別の役割を持つ構造になっている。
クトゥルフ神話との関係
建物ひとつに絞る
アークライトが扱う同系列の3作を並べると、本作の位置がはっきりする[1][2][3]。
| 作品 | 舞台の広さ | 人数 | 価格 |
|---|---|---|---|
| エルドリッチホラー | 世界全体 | 1〜8人 | 7,480円 |
| アーカムホラー 第3版 | 街ひとつ(アーカム) | 1〜6人 | 8,580円 |
| マンション・オブ・マッドネス 第2版 | 建物の中(大邸宅) | 1〜5人 | 14,850円 |
3作すべてに Nikki Valens の名がある[1][2][3]。舞台が狭くなるほど人数の上限は下がり、価格は上がる。
「大邸宅に入る」という設定は、ラヴクラフト原典の定番のひとつである。人里離れた屋敷、閉ざされた扉、そこに住んでいた者の記録——調べれば調べるほど戻れなくなる、という構図が働く場所として使われてきた。
「名状しがたき怪物」
公式紹介文が使う 「名状しがたき」 という語は、ラヴクラフト作品の日本語訳で定着した表現である[1]。原語は unnamable / indescribable などにあたり、言葉にできないという性質そのものを恐怖の中身にするという原典の手法を指している。
当サイトの宇宙的恐怖の記事で扱う考え方と、同じところを指している。
進行役を誰が務めるか
本作がアプリに任せた「進行役」という役割は、神話ゲームの系譜の中で見ると位置づけがはっきりする。
| 形式 | 進行役 | 全員が探索者になれるか |
|---|---|---|
| TRPG『クトゥルフの呼び声』 | 人間(キーパー) | ならない。1人は進行側に回る |
| 『アーカムホラー 第3版』 | ルールとカード | なる[2] |
| 『エルドリッチホラー』 | ルールとカード | なる[3] |
| 本作 | 無料アプリ[1] | なる |
協力型ボードゲームは、もともと進行役を人間に置かない形式である。本作が変えたのは、そこに 「先が読めない」という性質を持ち込んだ 点にある。
公式が明記しているとおり、アプリがランダム性を加味したシナリオを展開するため、プレイヤーにはシナリオの先が見えない[1]。カードをめくる方式では、慣れると内容を覚えてしまう。アプリはそれを避けられる。
TRPGのキーパーが担っていた「プレイヤーの知らない情報を持つ」という機能を、アプリが引き受けた——そう整理できる。
ただし、これは製品がアプリの提供に依存することも意味する[1]。購入前に、手元の端末でアプリが動くかを確かめておくとよい。公式ページはアプリを「無料」と明記している[1]。
層としてはどこか
当サイトの神話の三層でいえば、本作は第3層——ゲームによる拡張——にあたる。アプリを使うという形式そのものが、2010年代以降でなければ成立しない設計である。
内容物と、旧版への配慮
公式が掲載しているコンポーネント一覧は次のとおり[1]。
| 種別 | 数量 |
|---|---|
| ビギナーズガイド / リファレンスガイド | 各1冊 |
| カード類 | 219枚 |
| コマ類 | 32個 |
| トークン類 | 148個 |
| ダイス | 5個 |
| マップタイル | 24枚 |
| カード類(コンバージョン・キット) | 16枚 |
| トークン類(コンバージョン・キット) | 37個 |
注目すべきは コンバージョン・キット である。公式はこう説明する[1]。
このゲームには 旧版に登場する探索者やモンスターなどを使用するための、コンバージョンキットも同梱 されていますので、旧版をお持ちの方は、更に楽しみが増えるでしょう。
第2版の箱に、第1版の資産を活かすための部品が入っている。版を新しくするときに古い版を切り捨てない、という判断がここに出ている。
マップタイル24枚を組み替えて邸宅を作るため、同じ箱でも毎回違う間取りになる[1]。アプリがシナリオを回す設計と合わせて、繰り返し遊ぶことを前提にした作りである。
日本語で手に入る神話系ボードゲームの中で
公式情報で並べると、本作の位置は次のようになる[1][2][3][4][5]。
| 作品 | 人数 | 時間 | 価格 | 日本語版発売 |
|---|---|---|---|---|
| クトゥルフの呼び声フラックス | 2〜6人 | 10〜40分 | 2,200円 | 2014年1月 |
| パンデミック:クトゥルフの呼び声 | 2〜4人 | 約40分 | 5,500円 | 2016年8月 |
| エルドリッチホラー | 1〜8人 | 120〜240分 | 7,480円 | 2014年4月 |
| アーカムホラー 第3版 | 1〜6人 | 120〜180分 | 8,580円 | 2019年4月25日 |
| クトゥルフ 〜死もまた死すべし〜 | 1〜5人 | 90〜120分 | 13,200円 | 2019年12月19日 |
| マンション・オブ・マッドネス 第2版 | 1〜5人 | 120〜180分 | 14,850円 | 2016年12月3日 |
価格帯は2,200円から14,850円まで、7倍近い開きがある[1][2][3][4][5]。本作は最上位にあたる。
同時に、この6本の中でアプリを使うのは本作だけである[1][2][3][4][5]。価格の高さは、フィギュアとマップタイルという物理的な物量に加えて、この仕組みの分でもある。
「半月を僅かに過ぎた月の下」
公式紹介文の締めくくりにある 「生けるものには知られていない獣が、半月を僅かに過ぎた月の下で蠢く」 という一句[1]は、ボードゲームの商品説明としてはかなり凝った書き方である。
月の満ち欠けを具体的に指定することで、いつの夜なのかが定まる。「ある夜」ではなく「半月を少し過ぎた夜」と書くことで、出来事が特定の一晩に固定される。
本作が1回のプレイで1つのシナリオを解決する構造を採っていること[1]と、この書きぶりは対応している。一晩の出来事を、一晩かけて遊ぶ。
どんな人に向くか
- 進行役を用意できない卓。アプリが務めるため、全員が探索者になれる[1]
- フィギュアとマップタイルのある、見た目の派手なゲームが好きな人
- 建物の中をじっくり調べる遊びが好きな人
- 逆に、価格が高い。14,850円は同系列で最も高い[1][2][3]
同じ系列でより安いものは『エルドリッチホラー』(7,480円)や『アーカムホラー 第3版』(8,580円)にある[2][3]。より短時間のものは『パンデミック:クトゥルフの呼び声』(約40分)である[4]。全体の見取り図はクトゥルフ神話ゲーム総覧にまとめてある。
なお、アークライト公式は本製品について表記訂正(エラッタ)を公開している[1]。遊ぶ前に確認しておくとよい。
関連記事
- アーカム — 公式紹介文が舞台に挙げる街
- アーカムホラー 第3版 / エルドリッチホラー — 同じ設計者による姉妹作
- クトゥルフの呼び声(TRPG) — 進行役を人間が務める卓上ゲーム
- クトゥルフ神話ゲーム総覧
出典
- [1] アークライト公式の商品ページ「マンション・オブ・マッドネス 第2版 完全日本語版」(該当ページ)。メーカー Fantasy Flight Games、デザイナー Nikki Valens、原題 Mansions of Madness: Second Edition、価格14,850円(税込)、プレイ人数1〜5人、プレイ時間120〜180分、対象年齢14歳以上、2016年12月3日発売。コンポーネント(ビギナーズガイド1冊/リファレンスガイド1冊/カード類219枚/コマ類32個/トークン類148個/ダイス5個/マップタイル24枚/コンバージョン・キットのカード類16枚・トークン類37個)。紹介文の「大邸宅に潜む狂気に立ち向かうため、閉ざされた扉が今、開かれる…!」「アーカムの薄汚れた路地と、そこにそびえ立つ大邸宅は、異様な力、恐るべき秘密、そして名状しがたき怪物を隠している」「このゲームは無料のアプリと、同梱されているマップタイルやモンスターフィギュア、各種トークンを使用して遊ぶ、恐怖と探索のゲームです」「戦闘や各種の判定に使うダイスはプレイヤー自身が振りますが、シナリオの進行はアプリが行う、ハイブリッドなゲームになっています」「アプリがランダム性を加味したシナリオを展開するため、プレイヤーにはシナリオの先が見えません」「アプリで定められたラウンド内で解決しなければなりません!」「このゲームには旧版に登場する探索者やモンスターなどを使用するための、コンバージョンキットも同梱されています」。同ページに表記訂正(エラッタ)の案内があること(2026年9月16日確認)。 ↩
- [2] アークライト公式の商品ページ「エルドリッチホラー 完全日本語版」(該当ページ)。メーカー Fantasy Flight Games、デザイナー Nikki Valens・Corey Konieczka、価格7,480円(税込)、プレイ人数1〜8人、プレイ時間120〜240分、2014年4月発売(2026年9月16日確認)。 ↩
- [3] アークライト公式の商品ページ「アーカムホラー 第3版 完全日本語版」(該当ページ)。メーカー Fantasy Flight Games、デザイナー Richard Launius・Nikki Valens・Kevin Wilson、価格8,580円(税込)、プレイ人数1〜6人、プレイ時間120〜180分、2019年4月25日発売(2026年9月16日確認)。 ↩
- [4] ホビージャパン公式の商品ページ「パンデミック:クトゥルフの呼び声」(該当ページ)。プレイ時間約40分、プレイ人数2〜4人、価格5,500円(税込)、2016年8月発売(2026年9月16日確認)。 ↩
- [5] ホビージャパン公式の商品ページ「クトゥルフの呼び声フラックス」(該当ページ)。デザイン Keith Baker、版元 Looney Labs、販売 ホビージャパン、プレイ時間約10〜40分、プレイ人数2〜6人、対象年齢13歳以上、価格2,200円(税込)、2014年1月発売。およびアークライト公式の商品ページ「クトゥルフ ~死もまた死すべし~ 完全日本語版」(該当ページ、1〜5人、90〜120分、13,200円、2019年12月19日発売)(2026年9月16日確認)。 ↩

