概要
「闇」(Darkness)は、H・P・ラヴクラフトがJ・F・モートンへ宛てた私信に記した神々の系図の中にのみ名を残す存在である。この系図によれば、アザトースはナイアーラトテップ・無名の霧・闇という3子をもうけ、「闇」はさらにシュブ=ニグラスの親(先祖)にあたるとされる[1]。物語本文には一度も登場せず、資料の性質は書簡上の系図情報にほぼ限られる。
基本プロフィール
- 分類: 外なる神(書簡系譜にのみ現れる始原存在。原典の物語本文には登場しない)
- 欧文表記: DARKNESS(「無名の闇」The Unnamed Darknessとも)
- 初出: ジェイムズ・F・モートン宛書簡(『Selected Letters of H. P. Lovecraft IV』書簡617番、1933年)
- 系譜上の位置: アザトースの子、ナイアーラトテップ・無名の霧の兄弟、シュブ=ニグラスの親
別名/呼称
「無名の闇(The Unnamed Darkness)」とする資料がある[2]。これ以外の異名は、出典として十分な裏付けが取れる資料の範囲では確認されていない。
区分
ラヴクラフト自身はこの存在を明確な神格分類の中に位置づけていない。「外なる神」という区分は、系譜上アザトースの子であり、兄弟の「無名の霧」(vault記事「名なき霧」参照)と同様に日本語圏のファン事典などによる後世の整理に基づく。
象徴・モチーフ
系譜上の情報以外にモチーフと呼べる具体的な描写は資料上確認できない。名称そのものが示す「闇」「不可視・不可知」というイメージ以上のことは、確度のある資料からは読み取れない。
性質・権能
- 物語本文における具体的な姿・権能の描写は一切ない。書簡上の系図に名前が記される以外の一次情報は確認されていない
- 唯一の一次的な役割は、シュブ=ニグラスの親(先祖)として系図上に位置づけられていることである
- 兄弟とされる「無名の霧」からはヨグ=ソトースが生まれたとする対応関係が、複数の資料で説明されている
関係図
書簡の系図では、アザトースを頂点とし、その直下に「無名の霧」と「闇」が置かれる。「無名の霧」からヨグ=ソトースが、「闇」からシュブ=ニグラスが、それぞれ生まれたとされる。この系図は英語版Wikipediaのニャルラトホテプ項目でも家族構成として明記されており(出典:『Selected Letters of H. P. Lovecraft IV』書簡617番)[1]、日本語圏のファンWiki(pixiv百科事典のシュブ=ニグラス項目)でも同内容が要約・共有されている[3]。
主要登場作と読みどころ
「闇」が実際の物語本文に登場する作品は、収集された資料の範囲では確認されていない。唯一の資料は前述のモートン宛書簡そのものであり、これはラヴクラフトが私信の中で自らの創作神話の系図を書き記したものにすぎず、独立した「作品」として読める対象ではない。兄弟にあたる「無名の霧」の場合はその異名「マグヌム・インノミナンドゥム」が「闇に囁くもの」本文に登場する例があるが、「闇」自身についてはそれに相当する本文言及は資料上見当たらない。
よくある誤解
Q. 「闇」と「無名の霧」は同じ存在なのですか?
A. いいえ。書簡の系図では両者はともにアザトースの子とされる別々の兄弟であり、「無名の霧」からヨグ=ソトースが、「闇」からシュブ=ニグラスが生まれたとされています。名称や成立経緯(同じ1通の書簡にのみ記される、物語本文にほとんど登場しない)がよく似ているため混同されがちですが、系図上は別個の存在です。
出典
本項目は物語本文を持たず、唯一の一次資料であるモートン宛書簡(『Selected Letters of H. P. Lovecraft IV』書簡617番、1976年Arkham House刊)そのものは絶版の紙媒体書籍でありオンラインで原文を確認できなかったため、以下はいずれもその書簡内容を報告する資料からの引用であることを明記する。信頼性の低い出典(単発の個人ブログ・出典不明のQ&A投稿・動画の自動書き起こし)は今回除外し、比較的長く運営されている参照先のみに絞った。
- [1] “Family | Azathoth (father) | Nameless Mist (sibling) | Darkness (sibling)”(訳: 「家族: アザトース(父)、名もなき霧(きょうだい)、闇(きょうだい)」。出典として『Selected Letters of H. P. Lovecraft IV (1932-1934)』書簡617番を明記) — cthulhufiles.com「The Family Tree of the Gods」(クトゥルフ神話の書誌・設定を専門的に扱う継続運営サイト。英語版Wikipedia「Nyarlathotep」項目も同一の書簡内容を家族構成として明記している), 記事 ↩
- [2] “It is older than everything except Azathoth (its creator) and Unnamed Darkness as well as Nyarlathotep (its siblings)… Lovecraft mentioned the Nameless Mist in a family tree of Azathoth. (HPL: Selected Letters of H. P. Lovecraft 4.617)”(訳: 「それ(無名の霧)はアザトース(創造主)、無名の闇、ニャルラトホテプ(きょうだい)を除けば全てより古い……ラヴクラフトはアザトースの系図の中で無名の霧に言及した(出典: 書簡集第4巻617番)」) — ブログ”The Dark Forest: Literature, Philosophy, and Digital Arts”「Encyclopedia of the Old Ones: The Nameless Mist」(文学・哲学・デジタルアートを扱う継続運営のブログ), 記事 ↩
- [3] “闇 父。ニャルラトホテプ、名もなき霧と共にアザトースから生まれた。” — pixiv百科事典「シュブ=ニグラス」項目, pixiv百科事典 ↩






