編集部注(層の区分と裏づけの範囲): ズヴィルポググーアは、H・P・ラヴクラフト本人の作品には登場しない。ラヴクラフト公式サイトが公開する作品一覧にも、この名は見当たらない[2]。
層の区分には説明が要る。当サイトの基準は「ラヴクラフトの死(1937年)より前に発表されたか」である。この神格の出所とされるクラーク・アシュトン・スミスの書簡は1930年代に書かれたとされるが、私信であって発表された作品ではない。系譜を記した「From the Parchments of Pnom」が書誌データベースに現れるのは1997年、収録が確認できる書物は2005年刊で、いずれもスミスの没後(1961年)にあたる[1]。読者が読める形になったのが1937年より後であることを踏まえ、本記事は拡張神話(ダーレス以降)として扱う。
裏づけの範囲も先に書く。関連する書簡・遺稿の本文を当サイトは照合していない。著作権の存続する資料で、公開されたスキャンも見つからなかった。刊行年・版元といった書誌事実は書誌データベースの記録で確認して断定的に記し[1]、姿・系譜・異名といった設定は「とされる」と断って区別する。原文からの引用は行わない。
概要
ズヴィルポググーアは、ツァトゥグァの子とされる存在である。腕を持たず翼を備えた二足歩行の蟇蛙のような姿で、長くゴム質の首と、無数の触手に覆われた顔を持つと伝えられる[4]。異名は「星から来たる饗宴者(Feaster from the Stars)」。
この神格には、作品の中で活躍した記録がほとんどない。姿も系譜も、物語ではなく系譜資料の側から与えられている。ツァトゥグァの一族を整理した文書に一行として現れる存在——それがズヴィルポググーアの、資料上の実像に近い。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 分類 | 旧支配者(ツァトゥグァの子という系譜に基づく当サイトの整理。公式資料で明言した記述は確認していない) |
| 欧文表記 | ZVILPOGGHUA |
| 創造 | クラーク・アシュトン・スミス。R・H・バーロウ宛の書簡で生まれたと伝えられる[4] |
| 系譜を記した資料 | 「From the Parchments of Pnom」(スミスの遺稿。書誌データベースの作品記録は1997年付、収録確認は『The Tsathoggua Cycle』Chaosium、2005年)[1] |
| 三層区分 | 拡張神話(ダーレス以降)。読める形になったのが1937年より後であることによる |
| 主な異名 | 星から来たる饗宴者(Feaster from the Stars)、オサダゴワー(Ossadagowah)[4] |
| 出自 | 惑星ヤクシュ(海王星とされる)で受胎し、現在はアルゴル星系の惑星イラウトロムに住まうとされる[4] |
初出作品
この神格の出所として伝えられるのは、クラーク・アシュトン・スミスがR・H・バーロウへ宛てた書簡である[4]。系譜——親・配偶神・受胎地・現在の住処——を与えたのは、スミスの「From the Parchments of Pnom」とされる。
この文書の書誌は確認できた。書誌データベースISFDBは「From the Parchments of Pnom」を著者クラーク・アシュトン・スミスのエッセイとして登録し、作品の年を1997年としている[1]。収録が記録されている書物は、ロバート・M・プライスが編んだ『The Tsathoggua Cycle: Terror Tales of the Toad God』(Chaosium、Call of Cthulhu Fiction叢書第6029番、2005年、ISBN 1-56882-131-X)の1点である[1]。スミスは1961年に没しており、この文書はいずれにせよ遺稿として世に出たことになる。
収録先の性格も押さえておきたい。『The Tsathoggua Cycle』はケイオシアムの小説叢書「Call of Cthulhu Fiction」の第6029番として2005年に出た1冊で、本文xvi+220ページ、定価14ドル95セント[1]。編者ロバート・M・プライスが、蟇蛙の神ツァトゥグァにまつわる作品を集めたアンソロジーである。スミスのほか、ジェイムズ・アンビュール、ジョン・S・グラスビー、ゲイリー・マイヤーズ、スタンリー・C・サージェントら後続の書き手が名を連ねる[1]。つまりこの系譜文書は、単独の資料として刊行されたのではなく、ツァトゥグァ一族を主題にした現代の作品集の中に、種本として置かれている。
一方、書簡そのものの日付・所在・全文は、当サイトの出典基準を満たす資料では確認できていない[4]。つまりこの神格は、「誰が作ったか」は広く伝えられているのに、その最初の一文がどこにあるかを当サイトは示せない状態にある。
ラヴクラフト公式サイトhplovecraft.comが公開する作品一覧に、ズヴィルポググーアの名も「Parchments of Pnom」も含まれない[2]。
原典での描写
原典に、ズヴィルポググーアという名前は登場しない。ラヴクラフト本人の作品でこの名が使われたことはなく、姿・権能・系譜のいずれについても、ラヴクラフトが書き残したものはない[2]。
別名とされる「オサダゴワー(Ossadagowah)」については、ラヴクラフト作品との接点を当サイトでも調べた。ラヴクラフト公式サイトが全文を公開している「アロンゾ・タイパーの日記」(ウィリアム・ラムリーとの合作)の本文を検索したところ、Ossadagowah・Sadogowah のいずれの綴りも現れなかった(表記の揺れを考え、gowah・sadog の部分一致でも検索した。いずれも0件)[3]。この作品はラヴクラフト存命期の合作としてよく名の挙がる一篇だが、少なくともここにこの名はない。
後年の資料は、オサダゴワーの名がラヴクラフトとオーガスト・ダーレスの合作『The Lurker at the Threshold』に現れると伝える[4]。当サイトは同作の本文を照合していない。またこの名がズヴィルポググーアと最初から同一の構想だったのか、後から一本化されたのかも、資料の間で一致していない。
ダーレス以降の変化
創造したのはオーガスト・ダーレスではなく、クラーク・アシュトン・スミスである。以下はいずれも当サイトが本文を照合していない[4]。
- 系譜。「From the Parchments of Pnom」の設定では、ツァトゥグァはギスグスとザイストゥルゼムグニの落し子であり、シャタクを配偶神として、その間にズヴィルポググーアをもうけたとされる。ズヴィルポググーア自身も、スファトリクルプという子をもうけたと伝えられる
- オサダゴワーとの同一視。『The Lurker at the Threshold』に、オサダゴワーの名でツァトゥグァの子とされる存在が登場すると伝えられる。ズヴィルポググーアという名そのものが同作に現れるとする資料と、別名として登場したものが後に同一視されたと説明する資料とがあり、扱いは一致していない
系譜資料が果たしている役割は、フジウルクォイグムンズハーの場合と重なる。あちらも、作品本文にあるのは「ゾタクアの父方の伯父」という一行だけで、クサクスクルースを親とする血統は書簡由来とされる。スミスの一族図は、作品の外側で育った設定群である。
TRPGでの扱い
クトゥルフ神話TRPGの公式資料におけるズヴィルポググーア個別の扱い(能力値、シナリオでの言及など)は、当サイトでは確認していない。上表の「旧支配者」という区分も、系譜に基づく当サイトの整理であって、公式資料の裏づけを得たものではない。
登場作品一覧
| 作品 | 年 | 作者 | 確認の状態 |
|---|---|---|---|
| R・H・バーロウ宛書簡 | 不明 | クラーク・アシュトン・スミス | 創造の出所とされる。日付・所在とも未確認[4] |
| From the Parchments of Pnom | 1997(作品記録)/2005(収録確認) | クラーク・アシュトン・スミス | 系譜を与えた遺稿。書誌は確認済み、本文は未照合[1] |
| The Lurker at the Threshold | 不明 | H・P・ラヴクラフト&オーガスト・ダーレス | オサダゴワーとして言及されると伝わる。書誌・本文とも未照合[4] |
関連神格・地域・書物
神格・種族
- ツァトゥグァ — 父とされる
- フジウルクォイグムンズハー — ツァトゥグァの父方の伯父。同じスミスの一族図に属する
- シャタク — 配偶神とされる。当サイトに個別記事はない
- スファトリクルプ — 子とされる。当サイトに個別記事はない
- オサダゴワー(Ossadagowah) — 異名、あるいは別存在。関係は未照合
地域
- 惑星ヤクシュ(海王星とされる) — 受胎地とされる
- 惑星イラウトロム(アルゴル星系) — 現在の住処とされる
人物
- クラーク・アシュトン・スミス — 創造者
書物
- From the Parchments of Pnom — 系譜を記した遺稿[1]
参考文献
- [1] 書誌データベースISFDB「From the Parchments of Pnom」Title Record #963811(該当ページ)。著者クラーク・アシュトン・スミス、種別ESSAY、作品の年1997年。同記録に収録として挙がるのは『The Tsathoggua Cycle: Terror Tales of the Toad God』(編ロバート・M・プライス、Chaosium、Call of Cthulhu Fiction #6029、2005年、ISBN 1-56882-131-X)の1点。ISFDBは利用者が編集する書誌データベースであり、当サイトでは刊行年・版元といった書誌事実に限って用いる。作中の描写の裏づけには使っていない。
- [2] ラヴクラフト公式サイト hplovecraft.com の作品一覧(該当ページ)。ズヴィルポググーアの名も「Parchments of Pnom」も含まれないことを確認した(2026年9月14日確認)。
- [3] ラヴクラフト公式サイト hplovecraft.com が公開する「The Diary of Alonzo Typer」本文(該当ページ)。全文を検索し、Ossadagowah・Sadogowah・Tsathoggua・Zvilpogghua のいずれも現れないことを確認した。表記の揺れを考え「gowah」「sadog」の部分一致でも検索したが、こちらも0件だった(2026年9月14日確認)。
- [4] 姿・系譜・異名・書簡の存在についての記述は、当サイトが収集した二次的な要約に基づく。書簡および「From the Parchments of Pnom」の本文は照合していない。著作権の存続する資料で、公開されたスキャンは見つからなかった。本文を照合できる資料が得られた時点で書き直す。
FAQ
Q. ズヴィルポググーアはラヴクラフトが生み出した神格ですか。 A. いいえ。クラーク・アシュトン・スミスが書簡の中で生み出したと伝えられる存在です[4]。ラヴクラフト公式サイトの作品一覧にも、この名はありません[2]。
Q. スミスは1937年より前に書いているのに、なぜ「原典」ではないのですか。 A. 当サイトの区分は「1937年より前に発表されたか」で決まるためです。スミスの書簡は私信で、発表された作品ではありません。系譜を記した遺稿が書誌に現れるのは1997年、収録の確認できる書物は2005年刊です[1]。同じスミスでも、1932年に雑誌へ載った「土星への扉」に出るフジウルクォイグムンズハーは原典として扱っています。
Q. ズヴィルポググーアとオサダゴワーは同じ存在ですか。 A. 断定できません。オサダゴワーがラヴクラフトとダーレスの合作に登場すると伝える資料がありますが、両名が最初から一つの存在として構想されていたことを裏づける記述は確認できていません[4]。なお当サイトは、ラヴクラフト公式サイトが全文を公開している「アロンゾ・タイパーの日記」を検索しましたが、この名は現れませんでした[3]。
Q. 「星から来たる饗宴者」とは何を指す異名ですか。 A. 由来を説明した資料を当サイトは確認していません[4]。星の彼方から呼び寄せられ、供物を食らう存在という像が広く伝えられてはいますが、その像を裏づける本文を照合できていないため、本記事では異名そのものの紹介にとどめています。
Q. 作中での描写が引用されていないのはなぜですか。 A. 出所とされる書簡と遺稿がいずれも著作権の存続する資料で、当サイトが本文を照合できていないためです[4]。書誌事実だけを断定的に書き、設定の内容は二次的な要約として区別しています。



