短編小説 — THE DIARY OF ALONZO TYPER

アロンゾ・タイパーの日記

呪われた旧家ヴァン・デル・ヘイル邸を調査する好古家アロンゾ・タイパーが、自らの血に流れる一族の宿業と、屋敷の地下に眠る太古の守護者の存在に取り込まれていく過程を日記形式で綴る。

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アロンゾ・タイパーの日記

「午後六時頃、ここに到着した。アティカからここまで、迫り来る嵐に逆らって歩き通さねばならなかった。誰も馬や馬車を貸してくれなかったし、私は自動車を運転できないからだ」

— H・P・ラヴクラフト(ウィリアム・ラムリー名義の代作)「アロンゾ・タイパーの日記」(1938年発表)冒頭部

概要

ニューヨーク州の寒村コラジンに崩れ落ちた旧家ヴァン・デル・ヘイル邸に単身乗り込んだ好古家アロンゾ・タイパーの日記という体裁の一篇。屋敷とその一族にまつわる禁忌の知識を追ううちに、自らの出自に関わる恐るべき真実に呑み込まれていく過程が綴られる。

作品情報

  • 執筆・発表年: 1935年執筆(ウィリアム・ラムレーとの共著)/1938年2月号「ウィアード・テイルズ」誌発表
  • 主題タグ: 呪われた旧家、血脈にまつわる宿業、地下に眠る太古の守護者、日記形式の恐怖

登場神格・用語

あらすじ

好古家アロンゾ・タイパーは、ニューヨーク州コラジン村近郊に崩れ落ちた旧家ヴァン・デル・ヘイル邸の調査に単身乗り込む。18世紀にオランダから移住したヴァン・デル・ヘイル一族は黒ミサとの関わりを噂され、1872年に一家が忽然と姿を消して以来、屋敷は荒れ果てていた。タイパーは屋敷内で先祖代々の異形の肖像画や、ラテン語で記された古い手記、そして「ネクロノミコン」を含む禁書の数々を発見する。手記には、一族の祖クラースが太古の失われた都市イアン=ホーで得た知識と、地下の隠された納骨室に「呼び覚まされてはならぬもの」を封じたという記述があった。調査を進めるうちタイパーは、自分自身がヴァン・デル・ヘイル家の血を引いていること、そして一族の宿業が自分にも及んでいることに気づく。丘の上の環状列石から響く不気味な音、地下の鉄扉の奥から聞こえる蠢く気配に追い詰められながらも、タイパーは禁忌の詠唱を試み、ついに鍵を見つけ出す。日記の記述はやがて乱れ、「黒い爪が実体化し、地下室へ引きずり込まれる」という一文を最後に、書き手の運命を暗示したまま途絶える。

読みどころと注目テーマ

日記形式による段階的な恐怖の蓄積と、血脈という逃れられない宿業を絡めた構成が特徴。「ネクロノミコン」や「エイボンの書」(本文中では原題「Livre d’Eibon」として言及)など、既存の神話体系の書物が複数登場し、ラヴクラフトの神話大系との連続性を強く感じさせる一篇。

執筆背景と影響

アマチュア作家仲間で神秘主義に傾倒していたウィリアム・ラムレーの草稿を、ラヴクラフトがほぼ全面的に書き直したとされる代作的性格の強い作品。ラムレー自身の神秘思想への傾倒が色濃く反映された題材を、ラヴクラフトが自身の神話大系の語彙で再構成した点に特色がある。

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