編集部注(層の区分と裏づけの範囲): ダオロスは、H・P・ラヴクラフト本人の作品には登場しない。ラヴクラフト公式サイトが公開する作品一覧にも、この名は見当たらない[3]。当サイトの三層区分はラヴクラフトの死(1937年)より前の発表か後かで分けており、初出は1964年なので、本記事は拡張神話(ダーレス以降)として扱う[1]。
裏づけの範囲を先に書く。キャンベル作品の本文を当サイトは照合していない。著作権の存続する作品で、公開されたスキャンも見つからなかった。誰がいつどこに発表したかという書誌事実は書誌データベースの記録で確認して断定的に記し[1][2][5]、姿・権能といった設定は「とされる」と断って区別する。原文からの引用は行わない。
概要
ダオロスは、ラムジー・キャンベルが短編「The Render of the Veils(帳を切り裂くもの)」で生み出した外なる神である。異名は「帳を切り裂くもの」「覆いを砕くもの」[4]。
この神格は、見せることで害をなす。幾何学的な形と金属質の部品が絶えず組み替わる姿を持ち、召喚した者には現実の裏側にある本当のかたちが知覚されてしまう——そして正気を失う、とされる[4]。襲うのではなく、隠されていたものを露わにするだけで人を壊す点が、この存在の設計である。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 分類 | 外なる神(当サイトの神格分類による整理)[4] |
| 欧文表記 | DAOLOTH |
| 初出 | 「The Render of the Veils」(ラムジー・キャンベル、短編、1964年)[1] |
| 初出書 | 『The Inhabitant of the Lake and Less Welcome Tenants』(Arkham House、1964年)[2] |
| 三層区分 | 拡張神話(ダーレス以降)。基準は1937年より後の発表であること |
| 連作 | セヴァーン・ヴァレー連作[1] |
| 主な異名 | 帳を切り裂くもの、覆いを砕くもの |
| 半世紀後の再登板 | 長編三部作「The Three Births of Daoloth」(2016年〜)[5] |
初出作品
初出は短編「The Render of the Veils」で、発表は1964年。収録は『The Inhabitant of the Lake and Less Welcome Tenants』(アーカム・ハウス、著者名義はJ. Ramsey Campbell)で、これはキャンベルのデビュー作品集にあたる[1][2]。本文xii+207ページのハードカバー、定価4ドル[2]。同書の表題作はグラーキの初出「The Inhabitant of the Lake」で、ダオロスとグラーキは同じ一冊から世に出ている[1][2]。
以前の版の本記事は、この作品を「短編集『クトゥルフ神話の弟子たち』の系譜に連なる作品」としたうえで収録経緯を未照合としていた。これは誤りだった。『The Disciples of Cthulhu(クトゥルフ神話の弟子たち)』はDAW Booksが1976年に出したアンソロジーで[1]、1964年の本作とは別物である。収録経緯は上記のとおり確認できた。
その後の再録も追える。フランスの雑誌『Planète』第27号(1966年3-4月、Denoël)に訳載され、作品集『Cold Print』(Scream/Press、1985年3月)にも収められている[1]。
ラヴクラフト公式サイトの作品一覧に、ダオロスの名も本作も含まれない[3]。
原典での描写
原典に、ダオロスの記述は存在しない。ラヴクラフト本人の作品にこの名が登場したことはなく、姿・権能のいずれについても、ラヴクラフトが書き残したものはない[3]。1964年の発表は、ラヴクラフトの没後27年にあたる[1]。
ダーレス以降の変化
創造したのはオーガスト・ダーレスではなく、ラムジー・キャンベルである。ダーレスの関わりは、アーカム・ハウスからこのデビュー作品集を出した版元としてのものである[2]。以下の設定は、当サイトが本文を照合していない[4]。
- 姿。幾何学的な形状と金属質の部品が絶えず組み替わり続ける、捉えどころのない姿とされる
- 権能。目撃した者に現実の裏側にある真の姿を知覚させ、正気を失わせるという
- 召喚の性質。自ら襲いかかるのではなく、呼び出されて「見せる」ことで害をなす存在として描かれる
半世紀を経た再登板。キャンベルは2016年以降、この神格を長編三部作の中心に据え直した。書誌データベースは「The Three Births of Daoloth(ダオロスの三度の誕生)」という連作を登録しており、第1作『The Searching Dead』はPS Publishingから2016年9月に刊行、ISBNは978-1-78636-030-4である[5]。同作は翌2017年の英国幻想文学大賞(British Fantasy Awards)で、最優秀ホラー長編に贈られるオーガスト・ダーレス賞の候補に挙がっている[5]。
三部作の構成は次のとおりである[6]。
| # | 原題 | 発表 |
|---|---|---|
| 1 | The Searching Dead | 2016年 |
| 2 | Born to the Dark | 2017年 |
| 3 | The Way of the Worm | 2018年 |
題名の並びを見ると、「探す」「闇に生まれる」「蟲の道」と段階が進んでいく。連作名の「三度の誕生」が示すとおり、ダオロスが繰り返し現れる構えで書かれているとみられるが、当サイトは3作とも本文を読んでいないため、作中でこの神格がどう扱われるかは確認していない[4]。
この符合は書いておく価値がある。18歳の作者がアーカム・ハウス——ダーレスが興した版元——から世に出した神格が、半世紀後、ダーレスの名を冠した賞の候補作で中心に据え直された。初出から第1作まで52年が経っている[1][5]。
キャンベルの他の神格と並べると、この存在の位置も見えてくる。グラーキ(1964年)は隷属させ、イゴロナク(1969年)は堕落へ誘い、アイホート(1973年)は選択を迫る。ダオロスだけは何も要求しない——ただ見せる。いずれも同じセヴァーン・ヴァレー連作に属する神格である[1]。
TRPGでの扱い
クトゥルフ神話TRPGの公式資料におけるダオロスの扱いは、当サイトでは確認していない。上表の「外なる神」という区分も、当サイトの神格分類による整理である。
登場作品一覧
| 作品 | 年 | 作者 | 確認の状態 |
|---|---|---|---|
| The Render of the Veils | 1964 | ラムジー・キャンベル | 初出。書誌は確認済み、本文は未照合[1] |
| The Inhabitant of the Lake and Less Welcome Tenants | 1964 | ラムジー・キャンベル | 初出書。デビュー作品集、Arkham House刊[2] |
| Planète 第27号 | 1966年3-4月 | ラムジー・キャンベル | フランス語訳の掲載誌[1] |
| Cold Print(作品集) | 1985年3月 | ラムジー・キャンベル | 再録。Scream/Press刊[1] |
| The Searching Dead(三部作第1作) | 2016年9月 | ラムジー・キャンベル | 連作「The Three Births of Daoloth」第1作。PS Publishing刊[5] |
関連神格・地域・書物
神格・種族
- グラーキ — 同じ1964年の作品集から出た神格。同書の表題作に登場する[2]
- イゴロナク — 同じキャンベル、同じセヴァーン・ヴァレー連作[1]
- アイホート — 同上。1973年の「The Franklyn Paragraphs」が初出
地域
- セヴァーン谷 — キャンベルが神話作品の舞台として書き継いだイングランドの架空地域[1]
人物
- ラムジー・キャンベル — 創造者
- オーガスト・ダーレス — 初出書の版元アーカム・ハウスの創設者[2]
分類の考え方
参考文献
- [1] 書誌データベースISFDB「The Render of the Veils」Title Record #65118(該当ページ)。著者ラムジー・キャンベル、1964年、短編、連作「Severn Valley」。同記録の収録一覧で、初出書『The Inhabitant of the Lake and Less Welcome Tenants』(J. Ramsey Campbell名義、Arkham House、1964年)、フランスの雑誌『Planète』第27号(1966年3-4月、Denoël)、『Cold Print』(Scream/Press、1985年3月)を確認した。『The Disciples of Cthulhu』はDAW Booksが1976年に出した別のアンソロジーである。ISFDBは利用者が編集する書誌データベースであり、当サイトでは刊行年・版元といった書誌事実に限って用いる。作中の描写の裏づけには使っていない。
- [2] 書誌データベースISFDB『The Inhabitant of the Lake and Less Welcome Tenants』Publication Record #266156(該当ページ)。著者J. Ramsey Campbell、1964年、発行Arkham House、定価4ドル、本文xii+207ページ、ハードカバー、種別COLLECTION。
- [3] ラヴクラフト公式サイト hplovecraft.com の作品一覧(該当ページ)。ダオロスの名も本作も含まれないことを確認した(2026年9月15日確認)。
- [4] 姿・権能・召喚の性質についての記述は、当サイトが収集した二次的な要約に基づく。キャンベル作品の本文は照合していない。著作権の存続する作品で、公開されたスキャンは見つからなかった。本文を照合できる資料が得られた時点で書き直す。
- [5] 書誌データベースISFDB「The Searching Dead」Title Record #2055989(該当ページ)。著者ラムジー・キャンベル、2016年9月、種別NOVEL、連作「The Three Births of Daoloth」第1作。発行PS Publishing、ISBN 978-1-78636-030-4。同記録に2017年British Fantasy Awards「August Derleth Award for Best Horror Novel」の候補(Nomination)が記載されていることを確認した(2026年9月15日確認)。
- [6] 書誌データベースISFDB、シリーズ記録「The Three Births of Daoloth」Series Record #43092(該当ページ)。The Searching Dead(2016年)/Born to the Dark(2017年)/The Way of the Worm(2018年)の3作からなることを確認した(2026年9月15日確認)。
FAQ
Q. ダオロスはラヴクラフトが生み出した神格ですか。 A. いいえ。ラムジー・キャンベルが1964年の短編「The Render of the Veils」で登場させた存在です[1]。ラヴクラフト公式サイトの作品一覧にも、神格名・作品名とも含まれていません[3]。
Q. 初出作の収録先は結局どこですか。 A. アーカム・ハウスの『The Inhabitant of the Lake and Less Welcome Tenants』(1964年)です[1][2]。以前の版の本記事は『クトゥルフ神話の弟子たち』の系譜としたうえで未照合としていましたが、後者はDAW Booksが1976年に出した別のアンソロジーで、誤りでした。
Q. ダオロスは何をしてくるのですか。 A. 襲うというより、見せるとされます[4]。召喚した者に現実の裏側の姿を知覚させ、それによって正気を失わせるという設定です。当サイトは本文でこれを確認していません。
Q. グラーキやイゴロナクとは、どう違う神格ですか。 A. 人間への関わり方が違うとされます。グラーキは棘で貫いて隷属させ、イゴロナクは堕落へ誘い、アイホートは死か雛かを迫ります。ダオロスはそのどれでもなく、見せるだけです[4]。4柱はいずれも同じセヴァーン・ヴァレー連作に属します[1]。
Q. 最近の作品にも出ているのですか。 A. 出ています。キャンベル自身が2016年から長編三部作「The Three Births of Daoloth」を書いており、第1作『The Searching Dead』はPS Publishingから2016年9月に出ました[5]。初出から52年後の再登板です。



