外なる神 — YIDHRA

イドラー

ダーレス以降

1970年代にウォルター・C・デビル・ジュニアが創造した「夢見る魔女」。捕食した生物の特徴を取り込み分裂する、地球最古の存在とされる外なる神。

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イドラー

「若く美しい女性の姿を取ることが多いが、その正体は捕食した生物の性質を取り込みながら姿を変え続ける」

— ウォルター・C・デビル・ジュニア創造
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編集部注(層の区分と裏づけの範囲): イドラーは、H・P・ラヴクラフト本人の作品には登場しない。ラヴクラフト公式サイトが公開する作品一覧にも、この名は見当たらない[4]。当サイトの三層区分はラヴクラフトの死(1937年)より前の発表か後かで分けており、関連作の発表は1970年代なので、本記事は拡張神話(ダーレス以降)として扱う[1][2]。

裏づけの範囲を先に書く。デビル作品の本文を当サイトは照合していない。著作権の存続する作品で、公開されたスキャンも見つからなかった。誰がいつどこに発表したかという書誌事実は書誌データベースの記録で確認して断定的に記し[1][2][3]、姿・能力・信仰といった設定は「とされる」と断って区別する。原文からの引用は行わない。

概要

イドラーは、ウォルター・C・デビル・ジュニアが生み出した神格である。異名は「夢見る魔女(The Dream Witch)」。若く美しい女性の姿を取ることが多いが、それは幻影で、正体は地球創生期から生き続け、捕食した生物の性質を次々に取り込みながら姿を変えてきた存在だとされる[5]。

この神格の輪郭は、力の大きさではなく変わり続けることそのものにある。適応のために他者を取り込み、分身へ分かれ、信徒と融合する。姿が定まらないことが設定の中心に据えられている点で、神話の他の神格とは毛色が違う。

項目 内容
分類 外なる神とされることが多いが、旧支配者とする資料もあり一定しない[5]
欧文表記 YIDHRA
創造者 ウォルター・C・デビル・ジュニア(Walter C. DeBill, Jr.)[1]
名を冠する作品 「Where Yidhra Walks」(中編、1976年10月)[1]
三層区分 拡張神話(ダーレス以降)。基準は1937年より後の発表であること
異名 夢見る魔女(The Dream Witch)
モチーフ 捕食した生物の特徴を取り込む変容、分身への分割と意識の共有、信徒との融合による不死とその代償、豊穣と家畜の健康、幻影の奥の真の姿

初出作品

以前の版の本記事は、初出を「Predator」とする資料と「Where Yidhra Walks」とする資料が併存しているとして、どちらにも断定を避けていた。今回、書誌データベースで両者の実在と年を確認できたので、分かったところまでを整理する。

「Where Yidhra Walks」は、ウォルター・C・デビル・ジュニアの中編で、1976年10月刊のアンソロジー『The Disciples of Cthulhu』(編エドワード・P・バーグランド、DAW Books、DAW Collectors叢書第213番、ISBN 0-87997-258-0、定価1ドル50セント、288ページ)の101ページから収められている[1][3]。同書はカナダのNew American Library of Canada版も同月に出ており、のちケイオシアムから『The Disciples of Cthulhu: Second Revised Edition』(Cthulhu Cycle叢書第10番、1996年2月)として改訂版が出た[1]。翻訳も早く、フランス語版『Les adorateurs de Cthulhu』(1978年、Librairie des Champs-Élysées)、イタリア語版『Il richiamo di Cthulhu』(編Gianni Pilo、Fanucci Editore、1987年1月)に収録されている[1]。

「Predator」もデビルの実在する短編で、書誌データベースの著者記録では1972年の作品として登録されている[2]。つまり二つの題は取り違えではなく、どちらも実在し、しかも「Predator」の方が4年早い。

残る問いは、このどちらでイドラーの名が最初に使われたのかである。当サイトはいずれの本文も照合していないため、ここは確定できない。確実に言えるのは、神格名を題に掲げているのは1976年の「Where Yidhra Walks」であること、そして同じ作者が1972年に別の短編を発表していることの二点にとどまる[1][2]。

デビルは、ラヴクラフトの体系と並行する独自の神話系列「ムランドス・サイクル」を手がけたことでも知られる[5]。書誌データベースの著者記録には、「The Black Sutra」「The Horror from Yith」「In ‘Ygiroth」「The Lure of Leng」など45件ほどの作品が登録されている[2]。

ラヴクラフト公式サイトの作品一覧に、イドラーの名も上記の作品も含まれない[4]。

原典での描写

原典に、イドラーの記述は存在しない。ラヴクラフト本人の作品にこの名が登場したことはなく、姿・権能・系譜のいずれについても、ラヴクラフトが書き残したものはない[4]。現在流通しているイドラー像は、すべて1970年代以降にデビルが付け加えた層に属する。

ダーレス以降の変化

創造したのはオーガスト・ダーレスではなく、ウォルター・C・デビル・ジュニアである。以下の設定は、いずれも当サイトが本文を照合していない[5]。

  • 分類の揺れ。外なる神に置かれることが多いが、旧支配者とする資料もあり、一方に確定していない
  • 不死の性質。地球上に微生物が生まれた頃から存在し続けているとされる
  • 変容の能力。環境の変化に適応するため、捕食した生物の特徴を自らに取り込むとされる
  • 分身と意識の共有。長い時間をかけて自身を複数の分身に分け、それぞれが同じ意識を共有しているとされる
  • 信徒との融合。信徒は融合によって不死を得られるが、代償として自身もイドラーに似た性質を帯びていくとされる
  • 豊穣神としての側面。豊穣と家畜の健康を約束する神としても信仰されるという
  • 真の姿の隠蔽。通常は若く魅力的な女性という強力な幻影の奥に本当の姿を隠し、限られた信徒だけがそれを見ることを許されるとされる

収録先の性格にも触れておきたい。『The Disciples of Cthulhu』は、ラヴクラフト以後の書き手による神話作品を集めたアンソロジーで、同じ巻にはアイホートを生んだラムジー・キャンベルの中編も並んでいる[3]。1970年代半ばに、神話を書き継ぐ作家たちの作品がひとつの叢書にまとめて世へ出た——イドラーはその流れの中から現れた神格である。

TRPGでの扱い

クトゥルフ神話TRPGの公式資料におけるイドラー固有の扱いは、当サイトでは確認していない。上表の分類も、資料間の揺れをそのまま書いたものである。

登場作品一覧

作品 年 作者 確認の状態
Predator 1972 ウォルター・C・デビル・ジュニア 実在と年は確認済み。イドラーが登場するかは未照合[2]
Where Yidhra Walks 1976年10月 ウォルター・C・デビル・ジュニア 神格名を題に冠する中編。書誌は確認済み、本文は未照合[1][3]
ムランドス・サイクル(周辺作品群) 1970年代〜 ウォルター・C・デビル・ジュニア 独自の神話系列。個々の作品との関係は未照合[5]

関連神格・地域・書物

神格・種族

イドラーと他の神格との親和・対立関係を明確に述べた記述は、当サイトが確認した資料には見当たらない[5]。

地域

信徒集団は、ミャンマー・チャド・ラオス・シュメール・ニューメキシコ・テキサスなど世界各地に分散しているとされる[5]。いずれも現実の地名で、架空の地域として当サイトに単独記事があるものはない。

書物

  • 「ムランドス・サイクル」 — 創造者デビルによる独自の神話系列。イドラーとの関係は未照合[5]

分類の考え方

参考文献

  • [1] 書誌データベースISFDB「Where Yidhra Walks」Title Record #93796(該当ページ)。著者ウォルター・C・デビル・ジュニア、1976年10月、中編。同記録の収録一覧で、『The Disciples of Cthulhu』(編Edward P. Berglund、DAW Books、DAW Collectors #213、1976年10月)とそのNew American Library of Canada版、フランス語版『Les adorateurs de Cthulhu』(1978年、Librairie des Champs-Élysées)、イタリア語版『Il richiamo di Cthulhu』(編Gianni Pilo、Fanucci Editore、1987年1月)、および『The Disciples of Cthulhu: Second Revised Edition』(Chaosium、Cthulhu Cycle #10、1996年2月)への収録を確認した。ISFDBは利用者が編集する書誌データベースであり、当サイトでは刊行年・版元・掲載ページといった書誌事実に限って用いる。作中の描写の裏づけには使っていない。
  • [2] 書誌データベースISFDB、著者記録「Walter C. DeBill, Jr.」Author Record #16986(該当ページ)。短編「Predator」が1972年の作品として登録されていること、「Where Yidhra Walks」が1976年であること、および「The Black Sutra」「The Horror from Yith」「In ‘Ygiroth」「The Lure of Leng」を含む45件ほどの作品が登録されていることを確認した(2026年9月14日確認)。各作品にイドラーが登場するかどうかは、本文を照合していないため確認していない。
  • [3] 書誌データベースISFDB『The Disciples of Cthulhu』Publication Record #38483(該当ページ)。編者Edward P. Berglund、1976年10月、発行DAW Books、叢書DAW Collectors第213番、ISBN 0-87997-258-0、Catalog ID UW1258、定価1ドル50セント、288ページ。目次上、「Where Yidhra Walks」は101ページから始まり、直前にラムジー・キャンベルの中編が置かれている。
  • [4] ラヴクラフト公式サイト hplovecraft.com の作品一覧(該当ページ)。イドラーの名も、上記の各作品も含まれないことを確認した(2026年9月14日確認)。
  • [5] 姿・能力・信仰・分類の揺れ・ムランドス・サイクルとの関係についての記述は、当サイトが収集した二次的な要約に基づく。デビル作品の本文は照合していない。著作権の存続する作品で、公開されたスキャンは見つからなかった。本文を照合できる資料が得られた時点で書き直す。

FAQ

Q. イドラーはH・P・ラヴクラフトが創造した神格ですか。 A. いいえ。ウォルター・C・デビル・ジュニアが生み出した存在です[1]。ラヴクラフト公式サイトの作品一覧にも、神格名・作品名とも含まれていません[4]。

Q. 初出作品は「Predator」と「Where Yidhra Walks」のどちらですか。 A. 確定できていません。ただし以前より分かったことがあります。両方ともデビルの実在する作品で、書誌上「Predator」は1972年、「Where Yidhra Walks」は1976年10月です[1][2]。神格名を題に掲げているのは後者ですが、名が最初に使われたのがどちらかは、本文を照合していないため当サイトでは判断できません。

Q. なぜsummaryや見出しでは1976年の作品を前に出しているのですか。 A. 書誌で確実に押さえられるのがそちらだからです。「Where Yidhra Walks」は掲載書・叢書番号・ISBN・掲載開始ページまで確認できました[1][3]。「Predator」は年(1972年)しか確認できておらず、イドラーが登場するかも分かりません[2]。確実な方を前に出し、不確実な方は不確実なまま併記する、という書き分けにしています。

Q. イドラーは外なる神ですか、旧支配者ですか。 A. 資料によって一定しません[5]。外なる神に置く説明が多い一方、旧支配者とする資料もあります。分類用語そのものの整理は旧支配者・外なる神・旧神——神格の分類用語を整理するをご覧ください。

Q. 信徒が不死を得るというのは、得だけの話なのですか。 A. 代償があるとされます。融合によって不死を得る一方、その信徒自身もイドラーに似た性質を帯びていくと伝えられます[5]。当サイトは本文でこれを確認していません。

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