編集部注(拡張神話・同名注意): 本記事が扱うヒュドラは、H・P・ラヴクラフト「インスマスの影」に登場する深きものどもの女神「母なるヒュドラ」(`hydra.md`)とは同名だが無関係な、全くの別存在です。本記事のヒュドラはヘンリー・カットナーが自作の短編のために独自に創造した存在で、H・P・ラヴクラフト存命期のパブリックドメイン原典には登場しません。
概要
作家ヘンリー・カットナーが短編「ヒュドラ」(Weird Tales誌1939年4月号)のために創造した存在。H・P・ラヴクラフト存命期の原典には登場しない、拡張神話層の独自創造物である。作中では地球に由来しない「外側の深淵(“the gulfs Outside”)」に棲むとされ、見渡す限り無定形の灰色の粘液の海に無数の生首が浮かぶ姿で描かれる[1]。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 分類 | 当サイトでは外なる神・旧支配者いずれとも確認していない(作中に分類上の呼称は無い) |
| 欧文表記 | HYDRA |
| 創造者 | ヘンリー・カットナー |
| 作中の関連呪句 | 「ゴルゴ、モルモ、千の顔を持つ月」[4] |
| 初出 | 短編「ヒュドラ」 |
初出作品
ヘンリー・カットナーの短編「ヒュドラ」(Weird Tales誌1939年4月号)が初出。作中でヒュドラは、地球に生まれたものではなく「外側の深淵」から来た存在とされ[2]、灰色の粘液の大海として描かれる[1]。その表面には人間のものと異形のものが入り混じった無数の生首が浮かび、絶えず苦悶にすすり泣き、顔をゆがめているとされる[3]。作中では登場人物の一人が、古代ローマで大地母神を祀った際の呪句「ゴルゴ、モルモ、千の顔を持つ月」に触れ、ヒュドラの神話の起源をこの呪句に結びつけて語っている[4]。
原典での描写
H・P・ラヴクラフト存命期の原典に、このヒュドラは登場しない。原典での描写は無い。実際の描写はヘンリー・カットナーの短編「ヒュドラ」による独自創造であり、内容は「初出作品」の項を参照。
ダーレス以降の変化
現行の情報源には、ダーレス以降にこの存在の扱いが変化したという記述は無い。未確認のまま残す。
TRPGでの扱い
現行の情報源には、クトゥルフ神話TRPGでこの存在が公式に扱われているという記述は無い。未確認のまま残す。なお、外なる神と旧支配者のどちらに分類されるかは、当サイトでは一次資料で確認していない(「概要」を参照)。
登場作品一覧
| 作品 | 作者 | この作品が足したもの |
|---|---|---|
| 短編「ヒュドラ」 | ヘンリー・カットナー | 灰色の粘液の大海に無数の生首が浮かぶ設定、「魂の送り出しについて」を通じた幽体離脱と斬首の儀式 |
本記事の情報源では、この短編以外にヒュドラ(カットナー版)が登場する作品は確認されていない。他の登場作の有無については未確認のまま残す。
関連神格・地域・書物
神格
- 母なるヒュドラ — H・P・ラヴクラフト「インスマスの影」に登場する深きものどもの女神(父なるダゴンと対をなす)。本記事のヒュドラとは同名だが無関係の別存在で、両者の間に設定上のつながりを示す記述はない。
書物
- 「On the Sending Out of the Soul(魂の送り出しについて)」 — 1783年にセイラムで印刷されたとされる小冊子。表向きは幽体離脱(アストラル・プロジェクション)によって望んだ相手のもとへ無害に幽体を送り届ける実験を説くが、実際の目的はヒュドラのために扉を開き生贄を用意することにあるとされる[5]。この実験を通じてヒュドラは術者の幽体を宿主として地上に現れ、術者が思いを向けた相手を獲物として取り込むとされ、術者が思いを向けた者が首を刎ねられ行方知れずになる事件が実際に相次いだとも記される[6]。術者本人には、強い神経の衝撃を受ける可能性を除けば実害は無いとされる[7]。
出典
- [1] “It seemed merely a sea of gray slime, protoplasmic and featureless.”(訳: 「その正体は分からなかった。ただ無定形で特徴のない灰色の粘液の海としか思えなかった」) — Henry Kuttner, “Hydra”, Weird Tales v33 n4, 1939年4月, archive.org ↩
- [2] “This creature did not originate on earth, but in the gulfs Outside.”(訳: 「この存在は地球で生まれたものではなく、外側の深淵から来たものだった」) — 同上, archive.org ↩
- [3] “For the heads lived. Their eyes stared with awful agony; their lips writhed in soundless laments; tears coursed down the sunken cheeks of many.”(訳: 「首は生きていた。その目は凄まじい苦悶に見開かれ、唇は声にならない嘆きにゆがみ、多くの落ちくぼんだ頬には涙が伝っていた」) — 同上, archive.org ↩
- [4] “…why do you suppose they incorporated into their ritual the mystic adoration, ‘Gorgo, Mormo, thousand-faced moon’?”(訳: 「……なぜ彼らが儀式に『ゴルゴ、モルモ、千の顔を持つ月』という神秘の賛美句を取り入れたと思う?」) — 同上, archive.org ↩
- [5] “…the real purpose of the thing is to open a gateway and prepare a sacrifice for the Hydra.”(訳: 「……その真の目的は、扉を開きヒュドラのための生贄を用意することにあった」) — 同上, archive.org ↩
- [6] “Dozens of men and women were found headless, with no trace of any human murderer.”(訳: 「幾人もの男女が、人間の犯人の痕跡もないまま首を失った姿で見つかった」) — 同上, archive.org ↩
- [7] “There is no real danger to the experimenter himself, save, perhaps, for a possible severe nervous shock.”(訳: 「実験者本人に実害はないとされる。あるとすれば、強い神経の衝撃を受ける可能性くらいのものだった」) — 同上, archive.org ↩
FAQ
Q. このヒュドラは「インスマスの影」に登場する母なるヒュドラと同じ存在ですか?A. いいえ。本記事のヒュドラはヘンリー・カットナーが短編「ヒュドラ」のために独自に創造した存在で、H・P・ラヴクラフトの原典には登場しません。「インスマスの影」に登場する深きものどもの女神「母なるヒュドラ」とは同名なだけの、無関係な別存在です。
Q. このヒュドラは外なる神ですか、それとも旧支配者ですか?A. 初出の短編「ヒュドラ」の作中には、外なる神・旧支配者といった分類上の呼称は出てきません。当サイトでは一次資料からこの分類を確認していません。




