種族(夢の国) — DHOLES

ドール

原典

夢の国の地底に棲む、姿を見た者のない巨大な蠕虫状の生物。骨の山を這う音と粘液質の感触だけで存在が語られ、続編ではヤディスの坑道にも同種が現れる。

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ドール
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概要

ドール(Dholes)は、H・P・ラヴクラフトの長編「未知なるカダスを夢に求めて」(1926–1927年執筆/1943年発表)に登場する、夢の国の地底に棲む巨大な蠕虫状の生物である。骨の山が積み重なる「プナースの谷」を這い、穴を掘って移動するが、暗闇の中でしか活動せず、その姿を見た者は誰もいないとされる[1]。

続編「銀の鍵の門を越えて」(E・ホフマン・プライスとの共作、1934年発表)では、ランドルフ・カーターが遍歴した先の惑星ヤディスの坑道網にも同種の生物が棲み、そこで初めて巨躯の一端(先端)が地面から持ち上がる様がわずかに描写される[6]。

原典に、ドールを神格体系の中に位置づける記述はない。神格ではなく、夢の国の地底に棲む生物種族として描かれ、他の神格との従属関係を示す記述もない。

項目内容
分類種族(夢の国)
欧文表記Dholes(bhole/Dholeの表記ゆれあり — 詳細は次節)
初出「未知なるカダスを夢に求めて」(1926–1927年執筆/1943年発表)
棲息地夢の国「プナースの谷」の地底/惑星ヤディスの坑道網
続編での再登場「銀の鍵の門を越えて」(1934年発表、E・ホフマン・プライスとの共作)

初出作品

ドールが最初に登場するのは、ランドルフ・カーターを主人公とする長編「未知なるカダスを夢に求めて」(1926–1927年執筆/1943年発表)である。夢の国の地底、骨の山が積み重なる「プナースの谷」を這う生物として言及される[1]。

ただし、この生物を指す綴りには論点がある。H・P・ラヴクラフト公式アーカイブ(hplovecraft.com)が公開する本文では、「未知なるカダスを夢に求めて」「銀の鍵の門を越えて」のいずれも一貫して「bhole/bholes」(語頭小文字のb)と表記され、地名も「プナース(Pnath)」と綴られる[1][2][3][4][5][6][7]。日本語圏で定着している「ドール」という訳語は「dhole」の音写に近いが、この綴りが公式アーカイブの本文に現れる箇所は今回の照合範囲では見つかっていない。表記の経緯(誤植・転記・版ごとの編集方針の違いなど)を裏付ける出典もなく、原因は判然としないままである。

原典での描写

原典に全身の外見を描く記述はない。むしろ「姿を見た者は誰もいない」こと自体が繰り返し強調される最大の特徴である[1][2]。「プナースの谷」の場面では、縄梯子を昇るカーターの脇腹に、伸縮しながらうねる巨大でぬめった体が触れる感触だけが記される[3]。

「プナースの谷」では、夢の国の地底に積み上げられた無数の骨の山の間を這い、穴を掘りながら移動する[1]。その存在は骨の間で立てる物音と、触れたときのぬめった感触によってのみ知られ、暗闇の中でしか動かないため姿を見ることはできないとされる[2]。

続編「銀の鍵の門を越えて」(E・ホフマン・プライスとの共作、1934年発表)では、惑星ヤディスの原始的な坑道網(“primal tunnels that honeycombed the planet”)の中に同種の生物が棲息すると語られる[4]。ヤディスの魔法使いザカウバの職務の一つに、ドールたちを穴の中に封じておくための呪文を織り続けることが含まれていたとされる[5]。カーター(ザカウバの肉体を分有していた時期)がヤディスから逃れようとした際には、地面いっぱいにドールが群れをなして現れ、その一体が数百フィートの高さまで身をもたげたため、カーターはより強力な呪文を用いて脱出したとされる[6][7]。これは原典中でほぼ唯一、ドールの巨躯の一部を視覚的に示す描写である。

ダーレス以降の変化

現行の材料には、オーガスト・ダーレスら後続作家によるドールへの言及や設定拡張は含まれていない。確認できる原典の記述は「未知なるカダスを夢に求めて」とその続編「銀の鍵の門を越えて」(いずれもラヴクラフト自身が執筆または共著)に限られる。

TRPGでの扱い

クトゥルフ神話TRPGの公式資料におけるドールの扱いは、今回の材料には含まれておらず確認できていない。

登場作品一覧

作品年作者この作品が足したもの
未知なるカダスを夢に求めて1926–27執筆/1943発表H・P・ラヴクラフト初出。プナースの谷を這う、姿を見せない蠕虫状生物として[1][2][3]
銀の鍵の門を越えて1934発表H・P・ラヴクラフト、E・ホフマン・プライス惑星ヤディスの坑道にも同種が棲息。巨躯の一端を原典中ほぼ唯一視覚的に描写[4][5][6][7]

ドールが登場する作品はこの2作のみである。前者の読みどころは、姿を見せないままカーターの脇腹をかすめる感触だけで恐怖を積み上げる語りの技巧にあり、後者では一転して、最後まで姿を見せなかった脅威が終盤で初めてわずかに輪郭を見せる対比が読みどころとなる。

関連神格・地域・書物

種族

  • 夜鬼(ナイトゴーント) — 「未知なるカダスを夢に求めて」でプナースの谷への到達に関わるが、原典本文でドールと直接接触する場面は描かれない
  • 食屍鬼 — 同作でプナースの谷からの脱出に関わる。ドールとの直接の接触は描かれない
  • グーグ族 / ガスト — 原典本文でドールとの直接の遭遇は描かれていないが、いずれも同作の地底世界を構成する種族として並置される

地域

  • ヤディス — 続編「銀の鍵の門を越えて」でドールが棲息する惑星。原始的な坑道網が広がる[4]
  • 夢の国 — 「プナースの谷」が属する舞台

人物

参考文献

  • [1] “Now Carter knew from a certain source that he was in the vale of Pnath, where crawl and burrow the enormous bholes; but he did not know what to expect, because no one has ever seen a bhole or even guessed what such a thing may be like.”(訳:「カーターはある筋からの知識により、自分がプナースの谷にいることを知っていた──そこには巨大なブホールが這い、穴を掘っている。だが何を予期すべきかはわからなかった。ブホールを見た者は誰もおらず、それがどんなものかを推測した者すらいなかったからである」) — H. P. Lovecraft, “The Dream-Quest of Unknown Kadath”(1926–1927年執筆/1943年発表), 公式アーカイブ
  • [2] “Bholes are known only by dim rumour, from the rustling they make amongst mountains of bones and the slimy touch they have when they wriggle past one. They cannot be seen because they creep only in the dark.”(訳:「ブホールは、骨の山の間で立てる物音と、擦れ違うときのぬめった感触という、おぼろげな噂によってのみ知られている。彼らは暗闇の中でしか這い進まないため、見ることはできない」) — H. P. Lovecraft, “The Dream-Quest of Unknown Kadath”(1926–1927年執筆/1943年発表), 公式アーカイブ
  • [3] “he felt his whole side brushed by a great slippery length which grew alternately convex and concave with wriggling, and thereafter he climbed desperately to escape the unendurable nuzzling of that loathsome and overfed bhole whose form no man might see.”(訳:「彼は自分の脇腹全体が、うねりながら凸凹に伸縮する巨大でぬめった体に擦られるのを感じた。それから彼は、その姿を人が見ることのない、忌まわしく肥え太ったブホールの、耐えがたい鼻面の接触から逃れようと必死によじ登った」) — H. P. Lovecraft, “The Dream-Quest of Unknown Kadath”(1926–1927年執筆/1943年発表), 公式アーカイブ
  • [4] “There were hideous struggles with the bleached, viscous bholes in the primal tunnels that honeycombed the planet.”(訳:「その星を蜂の巣のように貫く原始の坑道の中で、漂白されたような、粘液質のドールたちとの凄惨な死闘があった」) — H. P. Lovecraft & E. Hoffmann Price, “Through the Gates of the Silver Key”(1934年発表), 公式アーカイブ
  • [5] “his duties in weaving spells to keep the frightful bholes in their burrows”(訳:「恐ろしいドールたちを穴の中に封じておくための呪文を織り続けるという、彼の職務」) — H. P. Lovecraft & E. Hoffmann Price, “Through the Gates of the Silver Key”(1934年発表), 公式アーカイブ
  • [6] “Below him the ground was festering with gigantic bholes; and even as he looked, one reared up several hundred feet and levelled a bleached, viscous end at him.”(訳:「彼の眼下では、地面が巨大なドールでうごめいていた。見ている間にも、その一体が数百フィートの高さまで身をもたげ、漂白されたような粘液質の先端を彼に向けた」) — H. P. Lovecraft & E. Hoffmann Price, “Through the Gates of the Silver Key”(1934年発表), 公式アーカイブ
  • [7] “he devised a doubly potent spell with which to hold back the bholes at the moment of his starting from the black, dead Yaddith of the inconceivable future.”(訳:「彼は、想像を絶する未来の、黒く死せるヤディスを発つその瞬間にドールたちを食い止めるための、二重に強力な呪文を編み出した」) — H. P. Lovecraft & E. Hoffmann Price, “Through the Gates of the Silver Key”(1934年発表), 公式アーカイブ

FAQ

Q. ドールは巨大な芋虫のような姿として絵入りで紹介されることが多いが、原典にそういう描写があるのか。A. 原典に全身の姿を描いた記述はない。「姿を見た者はいない」こと自体がこの生物の核心的な特徴であり、視覚的な想像図はいずれも原典以降に補われたものである。原典で確認できる視覚情報は、「銀の鍵の門を越えて」で一瞬だけ描かれる「漂白されたような、粘液質の先端」のみである[6]。

Q. 「ブホール(bhole)」と「ドール(dhole)」、どちらが原典の正しい表記か。A. H・P・ラヴクラフト公式アーカイブ(hplovecraft.com)で確認できる限り、両作とも「bhole/bholes」である。「未知なるカダスを夢に求めて」「銀の鍵の門を越えて」のいずれの本文も一貫してこの綴りを用いており、「dhole」「Dhole」という表記は公式アーカイブの本文には見当たらない。日本語圏で定着している「ドール」表記がどの版に由来するかは、当サイトでは確認していない。

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