地名(教育機関) — MISKATONIC UNIVERSITY

ミスカトニック大学

原典

マサチューセッツ州アーカムに所在する架空の大学。禁書コレクションと数々の学術探検隊で知られる、クトゥルフ神話における知の中枢。

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ミスカトニック大学

概要

ラヴクラフト「死体蘇生者ハーバート・ウェスト」(1921–1922年執筆/1922年発表)に初めて登場した、マサチューセッツ州アーカムに所在する架空の大学。町を流れるミスカトニック川に由来する名を持ち、稀覯書コレクションと数々の神話的事件をめぐる調査・探検隊派遣で知られる、クトゥルフ神話における知の中枢である。

基本プロフィール

  • 分類: 地名(教育機関)
  • 欧文表記: MISKATONIC UNIVERSITY
  • 初出・出典: 「死体蘇生者ハーバート・ウェスト」(1921–1922年執筆/1922年発表)
  • 所在地: マサチューセッツ州アーカム
  • 実在モデル: ブラウン大学(ロードアイランド州プロヴィデンス、1764年創立)

由来・モデル

実在のモデルは、ラヴクラフトの故郷プロヴィデンスにあるブラウン大学とされる。ラヴクラフト自身は十代の頃ブラウン大学への進学を熱望しながら、神経衰弱を理由とする健康問題によって叶わなかった経緯があり、この個人的な挫折が、作中で自らが果たせなかった学究生活を体現する架空の大学として結実したとも評される。附属図書館のモデルは、ブラウン大学のジョン・ヘイ図書館とされる。「ミスカトニック」という名称自体は、ラヴクラフトが好んで作品に用いたマサチューセッツ州の架空の川(ミスカトニック川)に由来し、この川がアーカムを貫流するという地理設定と一体になっている。

歴史・年表

作中設定では、名士ジェレマイア・オーン船長の遺言による蔵書寄贈を受けたカレッジを母体に発展したとされる。創立年については資料間で記述が食い違っており、1765年創立とする資料と、1861年(南北戦争後)に総合大学化したとする資料とが並立し、単一の確定した年代は定まっていない。

附属のオーン図書館(Orne Library)は、世界に数冊しかない『ネクロノミコン』ラテン語訳写本のほか、フリードリヒ・フォン・ユンツトの『無名祭祀書』、断片的な『エイボンの書』など、厳重に管理された禁書コレクションで知られる。大学は「ナサニエル・ダービイ・ピックマン財団」の資金援助を受け、地質学部主導の1930年南極探検(『狂気の山脈にて』の舞台。ウィリアム・ダイアー教授率いる)や、1935年オーストラリア砂漠探検(『時間からの影』の舞台。ナサニエル・ウィンゲート・ピースリー教授関与)など、複数の学術探検隊を組織した。1928年には、ダンウィッチ出身の学生ウィルバー・ウェイトリーが『ネクロノミコン』の閲覧・借用を求めてオーン図書館を訪れ、後の「ダンウィッチの怪」事件へとつながっていく。

性質・特徴

怪異を単なるオカルトとしてではなく、地質学・生物学・人類学など科学の言葉で調査・記録しようとする姿勢は、クトゥルフ神話に独特のリアリズムと知的な語り口を与えている。複数のラヴクラフト作品を横断して繰り返し舞台となることで、個々の物語をひとつの世界観へつなぐ結節点としても機能する。大学に所属する教授陣(ヘンリー・アーミテイジ博士、ウィリアム・ダイアー教授、ナサニエル・ウィンゲート・ピースリー教授、アルバート・N・ウィルマース教授など)が、それぞれ異なる神話的事件の調査主体として繰り返し登場する点も、この大学を「知の中枢」たらしめている特徴である。

関連する人物・存在・出来事

大学附属図書館の禁書コレクションを軸に、複数の神話的事件と結びつく。ヘンリー・アーミテイジ博士(図書館長)は「ダンウィッチの怪」でウィルバー・ウェイトリーの侵入未遂・死亡と、その後の怪物退治に関わる。ウィリアム・ダイアー教授(地質学)は1930年南極探検隊を率い、「狂気の山脈にて」で古のものの廃都市を発見する。ナサニエル・ウィンゲート・ピースリー教授は「時間からの影」でイースの大いなる種族による意識乗っ取りを経験する。ハーバート・ウェスト医師は在学中に死体蘇生の実験を行う。オーガスト・ダーレスの続編小説群に登場するラバン・シュリュズベリィ博士も、同大学に連なる研究者として位置づけられる。

主要登場作と読みどころ

  • 「死体蘇生者ハーバート・ウェスト」(1921–1922年執筆/1922年発表): この大学が初めて登場する作品。医学生ウェストが大学内で死体蘇生の秘密実験を行う。
  • 「ダンウィッチの怪」(1928年): アーミテイジ博士率いる図書館スタッフが、ウィルバー・ウェイトリーの禁書閲覧を巡る攻防、そして怪物退治の中心的役割を担う。
  • 「狂気の山脈にて」(1931年執筆/1936年発表): 大学地質学部主導の南極探検隊が、古のものの文明の痕跡を発見する。物語全体が大学への報告書という体裁を取る。
  • 「時間からの影」(1934–1935年執筆/1936年発表): ピースリー教授が大学を舞台に、5年間の記憶喪失の謎とイースの大いなる種族との接触を追う。

よくある誤解

Q. ミスカトニック大学の創立年は何年と決まっているのですか?

A. いいえ。1765年創立とする資料と、1861年に総合大学化したとする資料が並立しており、ラヴクラフト自身の作品内でも単一の確定した年代は示されていません。

Q. ミスカトニック大学は実在するのですか?

A. いいえ、完全な架空の大学です。ただしラヴクラフトの故郷プロヴィデンスにあるブラウン大学がモデルとされ、附属図書館もブラウン大学のジョン・ヘイ図書館がモデルと考えられています。

出典

  • [1] “…when we were in the third year of our course at the Miskatonic University Medical School in Arkham.”(訳: 「……われわれがアーカムのミスカトニック大学医学部で三年目の課程にあった頃のことだ」) — H. P. Lovecraft, “Herbert West—Reanimator”(1921–1922年執筆/1922年発表), 公式アーカイブ
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