旧支配者 — BUGG-SHASH

バグ=シャッシュ

ダーレス以降

無数の目と口に覆われた黒く粘つく塊。死者に口づけて蘇生させ、その肉体を支配する。

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バグ=シャッシュ

「ショゴスにも似た、無数の目と口に覆われた黒く粘つく巨大な塊」

— デイヴィッド・サットン/ブライアン・ラムレイ「The Kiss of Bugg-Shash」
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編集部注(層の区分と裏づけの範囲): バグ=シャッシュは、H・P・ラヴクラフト本人の作品には登場しない。ラヴクラフト公式サイトが公開する作品一覧にも、この名は見当たらない[4]。当サイトの三層区分はラヴクラフトの死(1937年)より前の発表か後かで分けており、関連作は1972年以降なので、本記事は拡張神話(ダーレス以降)として扱う[1][2]。

裏づけの範囲を先に書く。関連作の本文を当サイトは照合していない。著作権の存続する作品で、公開されたスキャンも見つからなかった。誰がいつどこに発表したかという書誌事実は書誌データベースの記録で確認して断定的に記し[1][2][3]、姿・権能・系譜といった設定は「とされる」と断って区別する。原文からの引用は行わない。

概要

バグ=シャッシュは、二人の作家の手を順に経て出来上がった神格である。イギリスの作家デイヴィッド・サットンが1972年の短編「Demoniacal」で名を持たない怪物として描き、のちにブライアン・ラムレイが「The Kiss of Bugg-Shash」で名を与え、旧支配者として位置づけたと伝えられる[1][2][5]。

名づけの前と後がはっきり分かれている点で、この神格は拡張神話の作られ方をよく示している。先行作にある「まだ名のない何か」を、後から来た書き手が体系へ組み入れる——トゥルネンブラがTRPG側で名づけられたのと似た筋道が、ここでは作家どうしの間で起きている。

項目 内容
分類 旧支配者(当サイトの神格分類による整理)[5]
欧文表記 BUGG-SHASH
名の無い段階の初出 デイヴィッド・サットン「Demoniacal」(1972年)[1]
命名された作品 ブライアン・ラムレイ「The Kiss of Bugg-Shash」(書誌上の年は1978年)[2]
三層区分 拡張神話(ダーレス以降)。基準は1937年より後の発表であること
異称 黒きもの、空間を満たすもの、闇より来たるもの[5]

初出作品

「Demoniacal」は、デイヴィッド・A・サットンの短編で、書誌データベースの登録は1972年。収録は『New Writings in Horror and the Supernatural, Vol. 2』(Sphere Books、1972年)で、編者はサットン自身である[1]。同作はのちに『Horror! Under the Tombstone: Stories from the Deathly Realm』(Shadow Publishing、2013年3月25日)にも収められた[1]。

「The Kiss of Bugg-Shash」については、年に注意が要る。以前の版の本記事はこれを1976年の作品としていたが、書誌データベースの作品記録は1978年付で、収録が確認できる最も古い書物も1978年刊である[2]。当サイトは1976年という年を裏づける資料を確認できなかったため、本記事では書誌の記録に従って1978年と記す。

その1978年の収録書が興味深い。『Cthulhu 3: Tales of the Cthulhu Mythos』(編ジョン・M・ハーヴェイ、Spectre Press、ISBN 0-905416-04-X、定価50ペンス)は、わずか24ページの小冊子である[3]。そしてこの1冊に、サットンの「Demoniacal」(1972年)とラムレイの「The Kiss of Bugg-Shash」が並んで収められている[3]。名の無い怪物と、それに名を与えた作品とが、同じ薄い冊子の中で背中合わせに置かれたことになる。

しかも同書の中身は、この2編だけである。目次に載るのは「Demoniacal」と「The Kiss of Bugg-Shash」、それにジム・ピッツによる挿絵のみで、他の作品は入っていない[3]。編者が意図してこの2編を組んだ冊子だったことになる。名の無い怪物を描いた先行作と、それに名を与えた後続作を並べて読ませる——成立の経緯そのものを見せる作りである。

その後「The Kiss of Bugg-Shash」は、『Crypt of Cthulhu』1984年2月号、ロバート・M・プライス編『The New Lovecraft Circle』(Fedogan & Bremer、1996年/Del Rey、2004年)、ラムレイ自身の短編集『Haggopian and Other Stories』(Subterranean Press、2008年ほか)へと版を重ねている[2]。

ラヴクラフト公式サイトの作品一覧に、バグ=シャッシュの名も上記の各作品も含まれない[4]。

原典での描写

原典に、バグ=シャッシュの記述は存在しない。ラヴクラフト本人の作品にこの名が登場したことはなく、姿・権能・系譜のいずれについても、ラヴクラフトが書き残したものはない[4]。名の無い段階の初出でさえ1972年で、ラヴクラフトの没後35年にあたる[1]。

ダーレス以降の変化

創造に関わったのはオーガスト・ダーレスではなく、デイヴィッド・サットンとブライアン・ラムレイである。以下の設定は、いずれも当サイトが本文を照合していない[5]。

  • 姿。ショゴスにも似た、無数の目と口に覆われた黒く粘つく巨大な塊として描写されるとされる
  • 権能。死者の唇に口づけることで蘇生させ、粘液で包み込んで肉体を支配してしまうという
  • 関連する魔導書。禁書『Cthaat Aquadingen』に、この旧支配者を召喚する呪文が記されているとされる
  • 系譜。外なる神イブ=ツトゥルと血縁関係にあり、両者は「水没させるもの(the Drowners)」と呼ばれる系譜に属する、という設定がラムレイによって加えられたとされる

書き手の顔ぶれにも触れておきたい。ラムレイは同じ時期にクトーニアンを生み、アイホートのラムジー・キャンベルとともに1970年代のイギリス勢として神話を書き継いだ。バグ=シャッシュの成立は、そのやりとりの中で起きた出来事の一つである。

引き継ぎ方の特徴。神話の拡張には、既存の神格に設定を足す型と、他人の作品にある名の無い存在を引き取って名づける型とがある。バグ=シャッシュは後者にあたる。先行作の書き手が体系化を意図していたかどうかに関わらず、後から来た書き手が名前と系譜を与えれば、その存在は神話の一員として流通しはじめる。誰が作ったかを一人に絞れないのは、この作られ方の当然の帰結である[5]。

TRPGでの扱い

クトゥルフ神話TRPGの公式資料における化身・崇拝組織・シナリオでの扱いは、当サイトでは確認していない。上表の「旧支配者」という区分も、当サイトの神格分類による整理である。

登場作品一覧

作品 年 作者 確認の状態
Demoniacal 1972 デイヴィッド・A・サットン 名を持たない怪物としての初登場とされる。書誌は確認済み、本文は未照合[1]
The Kiss of Bugg-Shash 1978(書誌上) ブライアン・ラムレイ 命名・体系化の作品とされる。書誌は確認済み、本文は未照合[2]
Cthulhu 3: Tales of the Cthulhu Mythos 1978 ジョン・M・ハーヴェイ編 上記2編を同時に収める24ページの小冊子[3]
The New Lovecraft Circle 1996/2004 ロバート・M・プライス編 「The Kiss of Bugg-Shash」を再録[2]

関連神格・地域・書物

神格・種族

  • クトゥルフ — バグ=シャッシュが置かれた旧支配者という分類の代表格
  • イブ=ツトゥル — 外なる神。血縁があり「水没させるもの」の系譜を共有するとされる。当サイトに個別記事はない
  • ショゴス — 姿の描写が似ているとされる
  • クトーニアン — 同じくラムレイが生んだ種族

人物

書物

参考文献

  • [1] 書誌データベースISFDB「Demoniacal」Title Record #96087(該当ページ)。著者David A. Sutton、1972年、短編。収録は『New Writings in Horror and the Supernatural, Vol. 2』(編David Sutton、Sphere Books、1972年)および『Horror! Under the Tombstone: Stories from the Deathly Realm』(編David A. Sutton、Shadow Publishing、2013年3月25日)。ISFDBは利用者が編集する書誌データベースであり、当サイトでは刊行年・版元といった書誌事実に限って用いる。作中の描写の裏づけには使っていない。
  • [2] 書誌データベースISFDB「The Kiss of Bugg-Shash」Title Record #509501(該当ページ)。著者ブライアン・ラムレイ、作品記録の年は1978年、短編。収録一覧で『Cthulhu 3: Tales of the Cthulhu Mythos』(1978年)、『Crypt of Cthulhu, Candlemas 1984』(1984年2月)、『The New Lovecraft Circle』(Fedogan & Bremer、1996年/Del Rey / Ballantine、2004年4月)、『Haggopian and Other Stories』(Subterranean Press 2008年5月26日ほか、Solaris版・Crossroad Press版あり)を確認した。当サイトは1976年発表とする説の裏づけを確認できていない。
  • [3] 書誌データベースISFDB『Cthulhu 3: Tales of the Cthulhu Mythos』Publication Record #281904(該当ページ)。編者Jon M. Harvey、1978年、発行Spectre Press、ISBN 0-905416-04-X、定価0.50ポンド、24ページ。目次に「Demoniacal」(1972年、David Sutton)と「The Kiss of Bugg-Shash」(Brian Lumley)が並んで載ることを確認した。
  • [4] ラヴクラフト公式サイト hplovecraft.com の作品一覧(該当ページ)。バグ=シャッシュの名も、上記の各作品も含まれないことを確認した(2026年9月15日確認)。
  • [5] 姿・権能・系譜・異称・成立の経緯についての記述は、当サイトが収集した二次的な要約に基づく。関連作の本文は照合していない。著作権の存続する作品で、公開されたスキャンは見つからなかった。本文を照合できる資料が得られた時点で書き直す。

FAQ

Q. バグ=シャッシュはラヴクラフトが生み出した神格ですか。 A. いいえ。名の無い段階の初出でさえ1972年で、ラヴクラフトの没後35年にあたります[1]。公式サイトの作品一覧にも、この名も関連作も含まれていません[4]。

Q. 命名作は1976年ではないのですか。 A. 書誌データベースの作品記録は1978年付で、収録の確認できる最も古い書物も1978年刊です[2]。当サイトは1976年という年を裏づける資料に行き着けなかったため、記録に従って1978年としています。

Q. サットンとラムレイのどちらが作者なのですか。 A. 役割が分かれています。名を持たない怪物として描いたのがサットン(1972年)、その存在に名を与えて旧支配者として位置づけたのがラムレイだと伝えられます[1][2][5]。両作は1978年の24ページの小冊子『Cthulhu 3』に並んで収められています[3]。

Q. 『Cthulhu 3』はどんな本ですか。 A. 1978年にSpectre Pressから出た24ページの小冊子で、定価は50ペンスです[3]。中身はサットンとラムレイの2編とジム・ピッツの挿絵だけで、他の作品は入っていません。バグ=シャッシュの成立に関わる2編をまとめて読める、もっとも短い1冊といえます。

Q. ショゴスとの違いは何ですか。 A. 姿の描写が似ているとされますが[5]、ショゴスはラヴクラフト自身の作品に由来する存在で、層が違います。バグ=シャッシュは1972年以降に後続の作家が作った側です[1][4]。

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