旧支配者 — YTHOGTHA

イソグタ

ダーレス以降

リン・カーターが「ゾス神話群」で創造した「魔王三神」の第二子。ラヴクラフト作品には一度も登場しない、完全な後世創作の神格。

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イソグタ

「巨大な人型または深きものどもに似た蛙状の姿とされ、額の中央にキュクロプスのような単眼を持ち、うごめく触手のたてがみを蓄えている」

— リン・カーター「ゾス神話群」
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編集部注(層の区分と裏づけの範囲): イソグタは、H・P・ラヴクラフト本人の作品には登場しない。ラヴクラフト公式サイトが公開する作品一覧にも、この名は見当たらない[6]。当サイトの三層区分はラヴクラフトの死(1937年)より前の発表か後かで分けており、初出は1971年なので、本記事は拡張神話(ダーレス以降)として扱う[1]。

裏づけの範囲を先に書く。カーター作品の本文を当サイトは照合していない。著作権の存続する作品で、公開されたスキャンも見つからなかった。誰がいつどこに発表したかという書誌事実は書誌データベースの記録で確認して断定的に記し[1][2][3][4][5]、姿・系譜・封印といった設定は「とされる」と断って区別する。原文からの引用は行わない。

概要

イソグタは、リン・カーターが書き継いだ連作「ゾス神話群(The Xothic Legend Cycle)」に属する旧支配者である。カーターの設定では、クトゥルフと准女性的存在イダ=ヤーとの間に生まれた三兄弟の次子とされ、兄にガタノトーア、弟にゾス=オムモグを持つ[7]。

日本語圏の資料では「イソグタ」「イソグダ」「ユトグタ」など表記に揺れがある。三兄弟を「ゾス三神」と呼ぶ整理も見かけるが、これはファン側の呼び方で、公式の統一名称ではない[7]。

項目 内容
分類 旧支配者(カーターの体系化による。当サイトの神格分類で整理した)
欧文表記 YTHOGTHA
初出 「The Dweller in the Tomb」(リン・カーター、短編集『Dark Things』所収、1971年)[1]
三層区分 拡張神話(ダーレス以降)。基準は1937年より後の発表であること
連作 ゾス神話群(1971〜1981年の5編)[1][2][3][4]
封じられた場所 イェーの深淵(Abyss of Yhe)とされる[7]
作中の典拠 ザンスゥ石板にその伝説が記されるとされる(カーター作品内の架空資料)[7]

初出作品

初出は短編「The Dweller in the Tomb」で、発表は1971年。収録されたのは短編集『Dark Things』、編者はオーガスト・ダーレス、版元はアーカム・ハウスである[1]。ラヴクラフトの作品を世に残すために作られた版元が、その神話を書き継ぐ次の世代の作品を、ダーレス自身の編集で送り出した——イソグタという神格は、その枠の中から生まれている。

連作は5編で構成される。当サイトが書誌データベースで確認できた範囲では、発表順は次のとおりである。

原題 発表 初出書
The Dweller in the Tomb(墓に潜みしもの) 1971年 『Dark Things』(August Derleth編、Arkham House)[1]
Out of the Ages(時代よりの光) 1975年 ——[3]
Zoth-Ommog(ゾス=オムモグ) 1976年 後年『The Xothic Legend Cycle』へ「The Horror in the Gallery」の題で収録[4]
The Thing in the Pit(坑の中のもの) 1980年8月 『Lost Worlds』(DAW Books、DAW Collectors #398)[2]
The Winfield Heritance(ウィンフィールドの遺産) 1981年 ——[4]

3番目の作品については注意が要る。1976年の題は「Zoth-Ommog」で、「The Horror in the Gallery」はそれを後年収録した際の題である。書誌データベース上は両者が別のタイトルレコードとして登録されており、後者の記録は1997年付になっている[4]。「回廊の恐怖(1976年)が後にゾス=オムモグへ改題された」という順序の説明は、この記録とは逆である。

連作全体は、ロバート・M・プライスが編んだ決定版『The Xothic Legend Cycle: The Complete Mythos Fiction of Lin Carter』(Chaosium、Cthulhu Cycle叢書第13番、1997年、ISBN 1-56882-078-X、本文xiv+272ページ、定価10ドル95セント)にまとめられている[5]。同書はドイツ語版『Die Xothic-Legenden』(Festa、2004年10月)、および『The Xothic Cycle』(Gateway / Orion、2021年)としても出ている[1][2]。

ラヴクラフト公式サイトの作品一覧に、イソグタの名も上記の各作品も含まれない[6]。

原典での描写

原典に、イソグタの記述は存在しない。ラヴクラフト本人の作品にこの名が登場したことはなく、姿・権能・系譜のいずれについても、ラヴクラフトが書き残したものはない[6]。現在流通しているイソグタ像は、すべてラヴクラフトの死後にリン・カーターが付け加えた層に属する。

カーターはこの神格を、ラヴクラフトの「クトゥルフの呼び声」や、ガタノトーアの初出作である「永劫より」(ヘイゼル・ヒールドの代作)を下敷きに組み立てたとされる[7]。ただしイソグタ自身がこれらの作品に登場するわけではない。

ダーレス以降の変化

創造したのはオーガスト・ダーレスではなく、リン・カーターである。ダーレスの関わりは、初出書『Dark Things』の編者として、またアーカム・ハウスの主宰としてのものである[1]。以下の設定は、いずれも当サイトが本文を照合していない[7]。

  • 系譜。クトゥルフとイダ=ヤーの間に、二重星ゾス付近の惑星で生まれた三兄弟の次子とされる。なお兄とされるガタノトーアについて、ラヴクラフト自身はクトゥルフの別名として書いた可能性があるという指摘があり、これが正しければ「クトゥルフの息子たち」という体系そのものがカーターの拡張ということになる
  • 姿。明確な容姿描写は行われていないとされるが、巨大な人型あるいは深きものどもに似た蛙状の姿で、額の中央に単眼を持ち、うごめく触手のたてがみを蓄えているとされる。その巨大さは、封印を解こうとした魔術僧ザンスゥが、神の粘液質の指先を山のような頭部と見間違えたという逸話で示唆されるという
  • 封印。イェーの深淵(Abyss of Yhe)に封じられているとされる
  • 眷属。蠕虫状の眷属ユッグ(yuggs)と、その長ウッブ(「蠕虫の父」)に仕えられているとされる

連作の舞台装置も押さえておきたい。ザンスゥ石板、ポナペ経典、ウッブとユッグ族、そしてラヴクラフトのミスカトニック大学に対するカーター版の答えというべき架空の「サンボーン太平洋古代遺物研究所」が、5編を通じて繰り返し現れるとされる[7]。

なお、クトゥルフがルルイエで夢を見るのと同じようにイソグタもイェーの深淵から夢を投影する、という説明を見かけることがあるが、これはカーターの作品を超えた読者側の補完で、裏づけとなる記述を当サイトは確認していない[7]。

TRPGでの扱い

クトゥルフ神話TRPGの公式資料におけるイソグタ個別の扱いは、当サイトでは確認していない。上表の「旧支配者」という区分も、当サイトの神格分類による整理である。

登場作品一覧

作品 年 作者 確認の状態
The Dweller in the Tomb 1971 リン・カーター 初出。書誌は確認済み、本文は未照合[1]
Out of the Ages 1975 リン・カーター 書誌のみ確認[3]
Zoth-Ommog 1976 リン・カーター 後年「The Horror in the Gallery」の題で収録[4]
The Thing in the Pit 1980 リン・カーター 書誌のみ確認[2]
The Winfield Heritance 1981 リン・カーター 書誌のみ確認[4]
The Xothic Legend Cycle(決定版作品集) 1997 リン・カーター著/ロバート・M・プライス編 連作をまとめた1冊。書誌は確認済み[5]

関連神格・地域・書物

神格・種族

書物

  • ザンスゥ石板 — 伝説を記すとされる、カーター作品内の架空資料

人物

参考文献

  • [1] 書誌データベースISFDB「The Dweller in the Tomb」Title Record #94365(該当ページ)。著者リン・カーター、1971年、短編。同記録の収録一覧で、初出書が『Dark Things』(編August Derleth、Arkham House、1971年)であること、および『The Xothic Legend Cycle』(Chaosium、1997年)・『Die Xothic-Legenden』(Festa、2004年10月)・『The Xothic Cycle』(Gateway / Orion、2021年)への収録を確認した。同記録には利用者が書き込む梗概欄があるが、作中の描写にあたるため本記事の根拠には用いていない。ISFDBは利用者が編集する書誌データベースであり、当サイトでは刊行年・版元といった書誌事実に限って用いる。
  • [2] 書誌データベースISFDB「The Thing in the Pit」Title Record #274391(該当ページ)。著者リン・カーター、1980年8月、短編。初出書は『Lost Worlds』(DAW Books、DAW Collectors #398、1980年8月)。『The Xothic Legend Cycle』(1997年)ほかへの収録も同記録で確認した。
  • [3] 書誌データベースISFDB「Out of the Ages」Title Record #79226(該当ページ)。著者リン・カーター、1975年、短編。
  • [4] 書誌データベースISFDB「The Horror in the Gallery」Title Record #555061(該当ページ)は著者リン・カーター、1997年、中編で、収録は『The Xothic Legend Cycle』(1997年)以降のみ。一方「The Winfield Heritance」は1981年の作品として登録されており、2016年の異題「The Winfield Heritence」(『The Second Cthulhu Mythos Megapack』Wildside Press)がその異版として紐づけられている(該当ページ)。1976年発表の「Zoth-Ommog」と「The Horror in the Gallery」が別レコードとして登録されている点は、ゾス=オムモグの記事でも確認している。
  • [5] 書誌データベースISFDB『The Xothic Legend Cycle: The Complete Mythos Fiction of Lin Carter』Publication Record #55648(該当ページ)。著者リン・カーター、1997年、発行Chaosium、叢書Cthulhu Cycle第13番、ISBN 1-56882-078-X、定価10ドル95セント、本文xiv+272ページ。
  • [6] ラヴクラフト公式サイト hplovecraft.com の作品一覧(該当ページ)。イソグタの名も、上記の各作品も含まれないことを確認した(2026年9月14日確認)。
  • [7] 姿・系譜・封印・眷属・作中の舞台装置についての記述は、当サイトが収集した二次的な要約に基づく。カーター作品の本文は照合していない。著作権の存続する作品で、公開されたスキャンは見つからなかった。本文を照合できる資料が得られた時点で書き直す。

FAQ

Q. イソグタはラヴクラフトが創造した神格ですか。 A. いいえ。1971年にリン・カーターが「The Dweller in the Tomb」で登場させた存在です[1]。ラヴクラフト公式サイトの作品一覧にも、神格名・作品名とも含まれていません[6]。

Q. 「クトゥルフの息子」という設定は原典に基づいていますか。 A. カーターの独自設定です。兄とされるガタノトーアについて、ラヴクラフトの原典では単なるクトゥルフの別名だった可能性を指摘する見方があり[7]、その場合「複数の息子たち」という体系そのものがカーターによる後付けの拡張ということになります。

Q. 「回廊の恐怖」は1976年の作品ですか。 A. いいえ。1976年に発表されたときの題は「Zoth-Ommog」で、「The Horror in the Gallery」は後年の収録時の題です。書誌データベース上、後者の記録は1997年付になっています[4]。

Q. ダーレスはイソグタに関わっているのですか。 A. 神格を作ったのはカーターですが、初出書『Dark Things』を編んだのはダーレスで、版元も自身が興したアーカム・ハウスです[1]。設定の作者ではなく、世に出した側として関わっています。

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