地名(異星) — YADDITH

ヤディス

原典

五重の太陽に照らされる遠い異星。金属の塔と浮遊する円柱が並ぶ都市を、蟲じみた姿の知的種族が築き、地下では巨大な蠕虫状生物ドールが穴を掘り続ける。ランドルフ・カーターが「銀の鍵の門を越えて」の終盤で、魔法使いザカウバと意識を分かち合うことになる先でもある。

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ヤディス
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概要

ヤディス(Yaddith)は、H・P・ラヴクラフトの作品に登場する遠い異星である。名称そのものの初出はソネット集「フォンガイ・フロム・ユゴス」第XXXII番「疎外」(1930年発表)だが、この時点では地名としての言及にとどまる[12]。惑星としての具体的な姿は、E・ホフマン・プライスとの共作「銀の鍵の門を越えて」(1934年発表)において、ランドルフ・カーターの意識が遍歴する先の一つとして詳述される[1][2][3]。

原典での描写

「[銀の鍵の門を越えて](/lovecraft/through-the-gates-of-the-silver-key/)」(H・P・ラヴクラフト&E・ホフマン・プライス共作、1932年10月-1933年4月執筆)――五つの太陽の星ヤディスとその住人

ヤディスの実情は、物語終盤、ニューオーリンズの一室でターバン姿のスワミ・チャンドラプトラが声を嗄らしながら語る形で明かされる。スワミは、ヤディスで過ごした時間の単位だけでも簡潔には語り尽くせない物語になると前置きしている[14]。ザカウバが金属の壁をよじ登って自室へ戻り、書字板の棚に近づいた場面([10]既出)の直後には、「七日分の日の断片」を経て、彼が畏怖と半ばの絶望のうちに己の「プリズム」の上にうずくまり、もはや単一の存在である平穏を二度と知ることはなかったと記される[15]。ヤディスの時間の単位も家具も、地球のそれとは異なる姿で描かれている。

「銀の鍵の門を越えて」――魔道士ズカウバとドール

ザカウバは、地下の原始的な坑道網に潜む恐ろしいドールを穴の中に閉じ込めておく呪文を織ることを職務としており、ランドルフ・カーターの記憶が執拗に入り込んでこの任務の妨げとなり、光線外殻で訪れた無数の実在する世界の記憶とも混ざり合ってしまったと語られる[16]。カーターの人格が入り込んで以降、彼は二つの存在に分かたれ、ヤディスの魔法使いザカウバとしては忌まわしい地球の哺乳動物カーターになるという発想に嫌悪を覚え、ボストンのランドルフ・カーターとしては爪を持ち鼻面の突き出た姿に怯えおののいた[3]。ザカウバの人格が優位に立つときには、自分を悩ませるカーターの記憶を消し去ろうと努めたとも記される[17]。物語の結末、正体を明かされぬまま柩形の異様な時計に歩み寄ったスワミの姿を見て、老フィリップスは連れを制し、「ヤディスの魔法使い、ザカウバだ……」と囁く。デ・マリニーが時計を開けたとき、中はもう空だった[18]。

「銀の鍵の門を越えて」――光の波の外被と地球への帰還

ザカウバは自分の人格に何が起きたかを誰にも語らなかったが、カーターの人格が優位に立つときは、地球へ、そして人間の姿へ戻るためのあらゆる手段を懸命に研究し、この用途にはおよそ不向きな異星の喉の器官を使って、必死に人間の言葉を練習したという[19]。銀の鍵は、彼が思い出したこと、夢に見たこと、そしてヤディスの知識から推し量ったことから、手遅れになってようやく突き止めたところによれば、地球のヒュペルボレオスの産物であった[20][8]。時が経つにつれ、彼はかの深淵と全能の《存在》へ戻る道を見つけるため、ヤディスの怪異な知識を用いようと、ますます懸命に努めるようになる[21]。その数値は気の遠くなるようなものだった――数えきれぬ光年の彼方の紀にわたる――が、ヤディスの太古からの知識が、カーターにそうした事柄を把握する力を与えていたとされる[22]。

そしてついに彼は、ヤディスからの向こう見ずな脱出計画を思いつく。それは、ザカウバの人格を常に眠らせておきながら、その知識と記憶を失わせない薬を見つけたことから始まった[23]。彼は蝋の仮面とゆったりした衣装を巧みに作り、どうにか人間として人々の間を通れるようにし、想像を絶する未来の、暗黒の死せるヤディスから出発するその瞬間にドールを食い止めるための、二重に強力な呪文を編み出す[24]。星間の深淵の冷気が外被の外側を噛み、彼は自分が宇宙に自由に浮かんでいるのを見た――出発したときの金属の建物は、幾星霜も前に朽ち果てていた[25]。幾千光年、幾千年の時、そして数えきれぬ億マイルもの道のりを、ランドルフ・カーターは名もなき異星の存在として、電子で活性化された金属の薄い外被に包まれて宇宙を疾走したのだと、ニューオーリンズでスワミは語る[26]。彼は圏外にユゴスを見、海王星の近くを通り過ぎてその星を斑に覆う地獄のような白い菌類を垣間見、間近に見た木星の霧から語ることのできない秘密を知ったという[27]。地球へたどり着いた後も、カーターの人格は肉体の中で優勢になりつつある一方、ザカウバが優位に立つ期間はますます短くなり、今では尋常でない興奮に呼び起こされたときに限られ、たいていは朦朧としていてカーターの仕事を覆すことができない。彼はヤディスへ連れ戻す金属の外被を見つけられずにいる――一度はほとんど見つけかけたが、カーターがそれを新たな場所に隠したからである[28]。

他作品での言及

「アロンゾ・タイパーの日記」(ウィリアム・ラムリーとの共作、1935年10月執筆)では、名前が挙がるのみである。作中に引用される謎めいた鍵の銘文の中で、「その鍵を然るべき場所に据え、あるいはそれを回さねばならぬ私――あるいは彼――を、ヤディスの主たちが救わんことを」と、祈りの文句として一度触れられるにとどまり、惑星としての描写はない[29]。

「暗闇の悪魔」(1935年11月執筆)でも、名前が挙がるのみである。ブレイクが記した最後の錯乱した日記の断片に、「すべては雷にかかっている。ヤディスよ、それが続いてくれるように!」という一節があり、恐慌の中で口をついて出た呼びかけとして「ヤディス」の名が使われるにとどまる[30]。

「アウト・オブ・ジ・イーアンズ」(ヘイゼル・ヒールドの代作、1933年執筆)では、地上の失われた国クナアに聳える「ヤディス=ゴー山」が繰り返し言及される[13]。ただしこれは惑星ヤディスとは別の地名であり、原文にも両者を結びつける記述は見当たらない(下記Q&A参照)。

基本プロフィール

  • 分類: 地名(異星)
  • 欧文表記: YADDITH
  • 初出: 「フォンガイ・フロム・ユゴス」第XXXII番「疎外」(1930年発表) — 名称のみの言及
  • 詳述: 「銀の鍵の門を越えて」(H・P・ラヴクラフト&E・ホフマン・プライス共作、1934年7月号「ウィアード・テイルズ」誌発表)
  • 位置づけ: 「見も知らぬ銀河の中にある見知らぬ五重の星」の周りを巡る惑星とされ、正確な座標は語られない[9]

由来・モデル

ヤディスは現実の天体をモデルとした設定ではなく、地球上のどこかをモデルとする地名でもない。名称が初めて世に出たのは1930年、ソネット集「フォンガイ・フロム・ユゴス」第XXXII番「疎外」においてであり、この詩の語り手は「ヤディスを見ながらも正気を保ち、ゴーリック領域から無事に戻ってきた」人物として描かれる[12]。この時点でヤディスがどのような場所かという具体的な説明は一切なく、遠い異界を示す固有名詞として提示されるにとどまる。

惑星としての詳しい姿が与えられるのは、それから4年後の1934年、E・ホフマン・プライスとの共作「銀の鍵の門を越えて」でのことである。同作では、主人公ランドルフ・カーターが以前から繰り返し見ていた夢の中の異星として、五重の太陽・黒い断崖・金属の塔・浮遊する円柱を持つ世界が改めて提示され、これがヤディスであることが明かされる[1]。

歴史・年表

原典本文にヤディスの明確な年表は示されないが、以下の時間軸が読み取れる。

  • カーター来訪時: ヤディスの住人(蟲じみた爪と鼻面を持つ種族)は、金属の街を築き、光線外殻(light-beam envelope)と呼ばれる技術で二十八の銀河にある他の惑星へ自在に赴くだけの文明を保っている[4]。一方でヤディスの魔法使いたちは、地下の原始的な坑道網に潜むドールを封じ込める呪文を織り続ける任務を負っており、この脅威との攻防が恒常的に続いている[4]。
  • カーターが脱出する未来: カーターが自らの惑星角度を調整し、地球へ帰還するための出発点として選んだ時点では、ヤディスは「ドールに支配された死せる世界」になっていると語られる[6]。実際にカーターが光波外殻でヤディスを発つ場面では、地面いっぱいにドールが群れをなして現れ、その一体が数百フィートの高さまで身をもたげる[7]。

なお、収集資料の一部(yaddith_006)は、ヤディスにドール以前の先住文明「ナグ=ソス」が存在し、ドールに滅ぼされたと伝えているが、この記述は「銀の鍵の門を越えて」本文中に該当箇所が見つからず、出典も編集体制の確認できない個人運営のwikiであったため、本記事では採用していない。

性質・特徴

ヤディスは五重の太陽に照らされ、大気は多彩な太陽光で満ちている。地表には黒い断崖・金属の塔・浮遊する円柱・正体不明の坑道が広がる[1]。住人は「爪を持ち、鼻面の突き出た」姿で、カーターが実際にその一体の身体に入った際の描写では、うろこ状で節足動物じみた体つきをしながらも、どこか人間の輪郭を戯画的に思わせるところがあるとされる[2]。

住人は金属造りの都市に暮らし、壁を伝って移動する集合住宅や、記録用の書字板(タブレット)を収めた棚を備えた個人の部屋を持つなど、独自の生活様式を営む[10]。ヤディスの住人は長命で、「幾多の周期を経てようやく死に至る」と語られる[5]。技術面では、電子活性化された金属で作られた「光線外殻(light-beam envelope)」/「光波外殻(light-wave envelope)」(本文中で二通りの表記が混在する)によって、二十八の銀河にある他の惑星へ渡ることができ、さらに「銀の鍵」など特定の象徴を併用すれば、悠久の時を超えて時間を移動することもできるとされる[4]。

ヤディスの脅威は地下の坑道網に棲むドール(bleached, viscous Dholes)である。ヤディスの魔法使いはドールを穴の中に封じ込める呪文を絶えず織り続けており、この均衡がいつか崩れることが、この星の運命そのものとして描かれる[4][6][7]。

「銀の鍵」そのものはヒュペルボレオス起源の地球の魔術品であり、人間の意識角度にしか働かないため、ザカウバの体に入ったカーターを人間の姿へ戻す力を持たない。この限界は、ヤディスの魔法使いたちがどれほど強力でも複製できない、地球由来の術という位置づけで語られる[8]。

関連する人物・存在

  • ランドルフ・カーター: 「窮極の存在」の許しを得て、以前から夢に現れていたヤディスへの訪問を果たし、その地の魔法使いザカウバの身体に意識を分有することになる主人公[1][3]。
  • ザカウバ: ヤディスの魔法使い。カーターの意識が自分の身体に入り込んで以降、二つの人格が一つの身体を分け合う状態になる[3]。ドールを穴の中に封じておく呪文を織ることが職務の一つとされる[4]。
  • アーチ=エインシェント・ブオ: カーターがヤディス在住時、他のヤディスの識者たちと共に意見を交わした相手の一人として名前のみ言及される[11]。
  • ドール: ヤディスの地下坑道に棲む巨大な蠕虫状生物。詳細はこちらを参照。夢の国「プナースの谷」に棲む同種の生物との綴りの食い違い(bhole/dhole/Dhole)についても同記事にまとめている。

主要登場作と読みどころ

  • 「フォンガイ・フロム・ユゴス」第XXXII番「疎外」(1930年): ヤディスという名が初めて世に出た作品。「ヤディスを見ながらも正気を保った」という一節のみで、詳細は語られない。地名としてのヤディスと、同じソネットにのみ登場する「ゴーリック領域」という謎めいた語の初出でもある[12]。
  • 「銀の鍵の門を越えて」(1934年): ヤディスの姿がまとまって描かれる唯一の作品。五重の太陽の下に広がる金属都市、ザカウバとの意識共有、ドールとの攻防、そして遠い未来の死せる世界からの脱出まで、この星をめぐる物語のほぼ全てがここに収められている[1]-[8]。

なお、後年になって複数の作家がヤディスを題材とした派生作品を書いたと伝えられているが、確認できた出典がいずれも編集体制の確認できない個人ブログ・個人運営サイトに限られたため、本記事では具体的な作品名・年代の掲載を見送っている。クトゥルフ神話TRPGの設定資料にもヤディスの住人が登場するとされるが、同様の理由で詳細は割愛する。

よくある誤解

Q. ラヴクラフトの別作品「アウト・オブ・ジ・イーアンズ」(ヘイゼル・ヒールドとの共作)に出てくる「ヤディス=ゴー山」は、この惑星ヤディスと同じ設定なのか?A. 「アウト・オブ・ジ・イーアンズ」には、地上の失われた文明「クナア」の地に聳え、太古の要塞と旧支配者ガタノトーアが眠るとされる「ヤディス=ゴー山(Mount Yaddith-Gho)」が登場する[13]。しかし原文には、この山と惑星ヤディスとを結びつける記述は見当たらない。語形が似ている点以外に両者の関係を裏づける一次資料が確認できていないため、本記事では別個の存在として扱っている。

Q. ヤディスにはドール以前の先住文明「ナグ=ソス」がいたという説を見かけるが、本当か?A. 「銀の鍵の門を越えて」全文を照合したが、該当する記述は見つからなかった。この説を伝える資料は編集体制の確認できない個人運営のwikiのみであり、裏付けが取れないため本記事では採用していない。

出典

  • [1] “a dim, fantastic world whose five multi-coloured suns, alien constellations, dizzily black crags, clawed, tapir-snouted denizens, bizarre metal towers, unexplained tunnels, and cryptical floating cylinders had intruded again and again upon his slumbers.”(訳:「五重の多彩な太陽、見知らぬ星座、目もくらむ黒い断崖、爪を持ち鼻面の突き出た住人たち、奇怪な金属の塔、正体不明の坑道、そして謎めいた浮遊する円柱を持つ、朧げで幻想的なその世界は、幾度となく彼の眠りに入り込んできていた」) — H. P. Lovecraft & E. Hoffmann Price, “Through the Gates of the Silver Key”(1934年発表), 公式アーカイブ ↩ ↩
  • [2] “he saw that his body was like those of the others – rugose, partly squamous, and curiously articulated in a fashion mainly insect-like yet not without a caricaturish resemblance to the human outline.”(訳:「彼は、自分の体が他の者たちと同じであることに気づいた——皺だらけで、部分的に鱗に覆われ、主として昆虫じみた奇妙な体節を持ちながらも、どこか人間の輪郭を戯画的に思わせるところがあった」) — 同上 ↩ ↩
  • [3] “For all time and space he was two: Zkauba the wizard of Yaddith, disgusted with the thought of the repellent earth-mammal Carter that he was to be and had been, and Randolph Carter, of Boston on the Earth, shivering with fright at the clawed, snouted thing which he had once been, and had become again.”(訳:「あらゆる時空を通じて、彼は二つの存在になっていた——ヤディスの魔法使いザカウバは、自分がかつてそうであり今後もそうなるという、忌まわしい地球の哺乳動物カーターという発想に嫌悪を覚え、一方ボストンのランドルフ・カーターは、自分がかつてそうであり再びそうなってしまった、爪を持ち鼻面の突き出たものに怯えおののいていた」) — 同上 ↩ ↩
  • [4] “There were trips to Shonhi and Mthura and Kath, and other worlds in the twenty-eight galaxies accessible to the light-beam envelopes of the creatures of Yaddith, and trips back and forth through eons of time with the aid of the silver key and various other symbols known to Yaddith’s wizards. There were hideous struggles with the bleached viscous Dholes in the primal tunnels that honeycombed the planet.”(訳:「ションヒ、ムスラ、カスなど、ヤディスの生物たちの光線外殻で行き来できる二十八の銀河にある他の世界への旅があった。銀の鍵とヤディスの魔法使いたちが知る様々な他の象徴を用いた、幾多の紀を隔てた時間の行き来もあった。その星を蜂の巣のように貫く原始の坑道の中では、漂白されたような粘液質のドールたちとの凄惨な死闘もあった」) — 同上 ↩ ↩
  • [5] “since the beings of Yaddith die only after prolonged cycles.”(訳:「ヤディスの生物は、長大な周期を経てようやく死に至るのだから」) — 同上 ↩ ↩
  • [6] “he knew that when he had brought the planet-angle to the right eon…Yaddith would be a dead world dominated by triumphant Dholes”(訳:「惑星角度を正しい紀へ合わせたとき、ヤディスは勝利したドールに支配された死せる世界になっているだろうことを、彼は知っていた」) — 同上 ↩ ↩
  • [7] “Below him the ground was festering with gigantic Dholes; and even as he looked, one reared up several hundred feet and leveled a bleached, viscous end at him. But his spells were effective, and in another moment he was falling away from Yaddith, unharmed.”(訳:「彼の眼下では、地面が巨大なドールでうごめいていた。見ている間にも、その一体が数百フィートの高さまで身をもたげ、漂白されたような粘液質の先端を彼に向けた。だが彼の呪文は効果を発揮し、次の瞬間には、彼は無傷のままヤディスから遠ざかりつつ落下していた」) — 同上 ↩ ↩
  • [8] “It was…a product of Hyperborea on Earth; with power over the personal consciousness-angles of human beings alone. It could, however, change the planetary angle and send the user at will through time in an unchanged body…not to be duplicated by the wizards of Yaddith.”(訳:「それ(銀の鍵)は……地球のヒュペルボレオスの産物であり、人間の個人的な意識角度にのみ力を及ぼすものだった。ただし、惑星角度を変え、姿を変えぬまま望むままに時間を移動させることはできた……それはヤディスの魔法使いたちにも複製できないものだった」) — 同上 ↩ ↩
  • [9] “the unknown quintuple star in an unsuspected galaxy around which the alien world revolved, and…the burrowing inner horrors against which the clawed, snouted race of that world perpetually fought.”(訳:「その異星が周回する、見も知らぬ銀河の中にある見知らぬ五重の星のこと、そして……その世界の爪を持ち鼻面の突き出た種族が絶えず戦い続けている、地中に潜む恐怖のことを」) — 同上 ↩ ↩
  • [10] “Climbing a metal wall in a lane off the main concourse, he entered his apartment and approached the rack of tablets.”(訳:「大通りから外れた小路で金属の壁をよじ登り、彼は自分の部屋に入り、書字板を収めた棚に近づいた」) — 同上 ↩ ↩
  • [11] “There were tense conferences with other minds of Yaddith, including that of the Arch-Ancient Buo.”(訳:「アーチ=エインシェント・ブオをはじめとする、ヤディスの他の識者たちとの緊迫した議論もあった」) — 同上 ↩ ↩
  • [12] “He had seen Yaddith, yet retained his mind, / And come back safely from the Ghooric zone”(訳:「彼はヤディスを見ながらも正気を保ち、ゴーリック領域から無事に戻ってきた」) — H. P. Lovecraft, “Fungi from Yuggoth” XXXII “Alienation”(1930年発表), 公式アーカイブ ↩ ↩
  • [13] “K’naa was a sacred place, since from its midst the bleak basalt cliffs of Mount Yaddith-Gho soared starkly into the sky, topped by a gigantic fortress of Cyclopean stone, infinitely older than mankind and built by the alien spawn of the dark planet Yuggoth, which had colonised the earth before the birth of terrestrial life.”(訳:「クナアは聖なる地であった。その只中から、ヤディス=ゴー山の荒涼たる玄武岩の断崖が空へと剥き出しにそびえ立ち、頂には人類よりも遥かに古い、地上生命の誕生以前に地球を植民地化した暗黒の惑星ユゴスの落とし子が築いた、巨大な太古の石造要塞が載っていたからである」) — H. P. Lovecraft for Hazel Heald, “Out of the Aeons”(1935年発表), 公式アーカイブ ↩ ↩
  • [14] “The time-units spent on Yaddith, croaked the Swami—whose laboured voice was beginning to shew signs of fatigue—made a tale in themselves which could not be related in brief compass.”(訳:「ヤディスで過ごした時間の単位だけでも、それ自体で一つの物語になってしまい、手短には語れない」——疲労の色を見せ始めた声でスワミはしわがれた声を出した) — H. P. Lovecraft & E. Hoffmann Price, “Through the Gates of the Silver Key”(1932年10月-1933年4月執筆), 公式アーカイブ ↩ ↩
  • [15] “Seven day-fractions later Zkauba squatted on his prism in awe and half-despair, for the truth had opened up a new and conflicting set of memories. Nevermore could he know the peace of being one entity.”(訳:「七日分の日の断片を経て、ザカウバは畏怖と半ばの絶望のうちに自らのプリズムの上にうずくまった。真実が、新たに相反する一連の記憶を開いてしまっていたからである。彼はもはや、単一の存在である平穏を二度と知ることはなかった」) — 同上 ↩ ↩
  • [16] “They were too persistent—they interfered with his duties in weaving spells to keep the frightful bholes in their burrows, and became mixed up with his recollections of the myriad real worlds he had visited in his light-beam envelope.”(訳:「それらの夢はあまりに執拗で、恐ろしいドールたちを穴の中に閉じ込めておく呪文を織るという彼の職務の妨げとなり、光線外殻で訪れた無数の実在する世界の記憶と混ざり合ってしまった」) — 同上 ↩ ↩
  • [17] “There were times, however, when the Zkauba-facet was uppermost, and when he strove to erase the conflicting Carter-memories which troubled him.”(訳:「だがザカウバの人格が優位に立つときもあり、そのときの彼は、自分を悩ませるカーターの記憶を消し去ろうと努めた」) — 同上 ↩ ↩
  • [18] “…that other facet, you know—Zkauba, the wizard of Yaddith. . . .” / “when he reached and opened the clock it was empty.”(訳:「もう一つの人格だ、いいか――ヤディスの魔法使いザカウバだ……」。デ・マリニーが時計を開けたとき、中はもう空だった) — H. P. Lovecraft & E. Hoffmann Price, “Through the Gates of the Silver Key”(1932年10月-1933年4月執筆), 公式アーカイブ ↩ ↩
  • [19] “Zkauba told no one of what had befallen his personality, but when the Randolph Carter facet was uppermost he would study furiously every possible means of returning to the earth and to human form, and would desperately practice human speech with the buzzing, alien throat-organs so ill adapted to it.”(訳:「ザカウバは自分の人格に何が起きたかを誰にも語らなかったが、ランドルフ・カーターの人格が優位に立つときは、地球へ、そして人間の姿へ戻るためのあらゆる手段を懸命に研究し、この用途にはおよそ不向きな、羽音のような音を立てる異星の喉の器官を使って、必死に人間の言葉を練習した」) — 同上 ↩ ↩
  • [20] “It was, as he deduced too late from things he remembered, things he dreamed, and things he inferred from the lore of Yaddith, a product of Hyperborea on earth.”(訳:「それ(銀の鍵)は、彼が思い出したこと、夢に見たこと、そしてヤディスの知識から推し量ったことから、手遅れになってようやく突き止めたところによれば、地球のヒュペルボレオスの産物であった」) — 同上 ↩ ↩
  • [21] “As time wore on he strove harder and harder to utilise the monstrous lore of Yaddith in finding a way back to the abyss and the omnipotent ENTITY.”(訳:「時が経つにつれ、彼はかの深淵と全能の《存在》へ戻る道を見つけるため、ヤディスの怪異な知識を用いようと、ますます懸命に努めるようになった」) — 同上 ↩ ↩
  • [22] “The figures were staggering—aeons of light-years beyond counting—but the immemorial lore of Yaddith fitted Carter to grasp such things.”(訳:「その数値は気の遠くなるようなものだった――数えきれぬ光年の彼方の紀にわたる――が、ヤディスの太古からの知識が、カーターにそうした事柄を把握する力を与えていた」) — 同上 ↩ ↩
  • [23] “Then at last he conceived a wild plan of escape from Yaddith—which began when he found a drug that would keep his Zkauba-facet always dormant, yet without dissolution of the knowledge and memories of Zkauba.”(訳:「そしてついに彼は、ヤディスからの向こう見ずな脱出計画を思いついた。それは、ザカウバの人格を常に眠らせておきながら、ザカウバの知識と記憶を失わせない薬を見つけたことから始まった」) — 同上 ↩ ↩
  • [24] “He artfully fashioned a waxen mask and loose costume enabling him to pass among men as a human being of a sort, and devised a doubly potent spell with which to hold back the bholes at the moment of his starting from the black, dead Yaddith of the inconceivable future.”(訳:「彼は蝋の仮面とゆったりした衣装を巧みに作り、どうにか人間として人々の間を通れるようにし、想像を絶する未来の、暗黒の死せるヤディスから出発するその瞬間にドールを食い止めるための、二重に強力な呪文を編み出した」) — 同上 ↩ ↩
  • [25] “The cold of interstellar gulfs gnawed at the outside of his envelope, and he could see that he floated free in space—the metal building from which he had started having decayed ages before.”(訳:「星間の深淵の冷気が外被の外側を噛み、彼は自分が宇宙に自由に浮かんでいるのが見えた――出発したときの金属の建物は、幾星霜も前に朽ち果てていた」) — 同上 ↩ ↩
  • [26] “…thousands of light-years—thousands of years of time, and uncounted billions of miles—that Randolph Carter hurtled through space as a nameless, alien entity in a thin envelope of electron-activated metal.”(訳:「幾千光年、幾千年の時、そして数えきれぬ億マイルもの道のりを、ランドルフ・カーターは名もなき異星の存在として、電子で活性化された金属の薄い外被に包まれて宇宙を疾走したのだ」) — 同上 ↩ ↩
  • [27] “He saw Kynarth and Yuggoth on the rim, passed close to Neptune and glimpsed the hellish white fungi that spot it, learned an untellable secret from the close-glimpsed mists of Jupiter.”(訳:「彼は圏外にキナースとユゴスを見、海王星の近くを通り過ぎてその星を斑に覆う地獄のような白い菌類を垣間見、間近に見た木星の霧から語ることのできない秘密を知った」) — 同上 ↩ ↩
  • [28] “Carter’s personality is gaining in the body, and when Zkauba comes uppermost—for shorter and shorter periods, and now only when evoked by some unusual excitement—he is generally too dazed to undo any of Carter’s work. He cannot find the metal envelope that would take him back to Yaddith, for although he almost did, once, Carter hid it anew.”(訳:「カーターの人格は肉体の中で優勢になりつつあり、ザカウバが優位に立つときも――その期間はますます短くなり、今では尋常でない興奮に呼び起こされたときに限られる――たいていは朦朧としていて、カーターの仕事を覆すことができない。彼はヤディスへ連れ戻してくれる金属の外被を見つけられない。一度はほとんど見つけかけたが、カーターがそれを新たな場所に隠したからである」) — 同上 ↩ ↩
  • [29] “And may the Lords of Yaddith succour me—or him—who must set that lock in place or turn the key thereof.”(訳:「その鍵を然るべき場所に据え、あるいはそれを回さねばならぬ私――あるいは彼――を、ヤディスの主たちが救わんことを」) — H. P. Lovecraft for William Lumley, “The Diary of Alonzo Typer”(1935年10月執筆), 公式アーカイブ ↩ ↩
  • [30] “Everything depends on lightning. Yaddith grant it will keep up!”(訳:「すべては雷にかかっている。ヤディスよ、それが続いてくれるように!」) — H. P. Lovecraft, “The Haunter of the Dark”(1935年11月執筆), 公式アーカイブ ↩ ↩
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