編集部注(拡張神話): 本記事は「クトゥルフ神話」という呼称そのものの成立史を扱う、文学史・命名史に関する記事です。個々の作品からの引用ではなく、公知の文学史的経緯の要約で構成しています。
概要
私たちが日常的に使う「クトゥルフ神話(Cthulhu Mythos)」という呼称は、ラヴクラフト自身が自らの作品世界に付けた名前ではない。この名称は、ラヴクラフトの死後、彼の友人であり最初の単行本出版者でもあったオーガスト・ダーレスが命名したものである。
基本プロフィール
- 分類: 概念(呼称・文学史)
- 欧文表記: THE NAMING OF THE “CTHULHU MYTHOS”
- 初出・出典: オーガスト・ダーレスの1937年のエッセイ「H・P・ラヴクラフト、アウトサイダー」に端を発し、1969年の論考「クトゥルフ神話」で本人が「ラヴクラフトは一度もそう呼んだことはない」と明言している
由来と歴史 / 詳細設定
ラヴクラフト自身は、自らの作品群に登場する神々や禁断の書物群からなる緩やかな世界観を、諧謔を込めて「ヨグ=ソトーサリー(Yog-Sothothery)」と呼んでいた。彼はこの世界観を厳密な体系として構築するつもりはなく、あくまで物語に奥行きを与える背景装置として位置づけていたとされる。
「クトゥルフ神話」という呼称は、ダーレスが1937年に発表したエッセイの中で(受動態を用いて、自らが名付け親であることをぼかす形で)初めて登場したとされ、その後ダーレス自身が1969年の論考で「ラヴクラフトは一度もそう呼んだことはない」と認めている。
性質と影響
この名称および、ダーレスが体系化した「旧神対旧支配者」という善悪二元論的な世界観に対しては、ラヴクラフト研究者ダーク・W・モーシグ、S・T・ジョシ、リチャード・L・ティアニーらが「ラヴクラフト本来の、道徳を超越した宇宙観と相容れない」として批判的な立場を取ってきた。モーシグは代替案として「ヨグ=ソトース神話環(Yog-Sothoth Cycle of Myth)」という呼称を提案したこともある。一方でロバート・M・プライスのように、ダーレスの体系化の土台自体はラヴクラフト作品の中に見出せると、より穏健な評価を示す研究者もいる。
呼称や体系そのものの出自についてこうした論争があるとはいえ、「クトゥルフ神話」という呼び名は既に半世紀以上にわたって定着しており、本サイトを含む多くの媒体で慣用的に使われ続けている。






