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チョー・チョー人

ダーレス以降

ダーレスとショーラーが1932年『ウィアード・テイルズ』に生み出した、ビルマの秘境に潜むとされる矮人の部族。双子の旧支配者ロイガーとザーの落とし子として描かれる。

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概要(2〜3行)

チョー・チョー人は、オーガスト・ダーレスとマーク・ショーラーの合作「羅睺星魔洞」(『ウィアード・テイルズ』1932年8月号)で初めて描かれた、クトゥルフ神話の架空の部族です[1]。人類に近い姿を持ちながら背が低く、ビルマ奥地に潜んで双子の旧支配者ザーとロイガーを崇めます[1]。ラヴクラフトの創造物ではありません。 名前だけはラヴクラフト自身も「博物館の恐怖」で借用しましたが[2]、種族としての設定を組み立てたのはダーレスとショーラーの側です[1]。

原典での描写

初出作でのチョー・チョー人の住処と姿

舞台はビルマ奥地、スン高原にある「恐怖の湖」に浮かぶ孤島「星の島」です。主人公エリック・マーシュが加わったホークス探検隊はビルマの秘境で正体不明の一団に襲われ全滅し、虫の息で発見された現地の道案内人は「チョー・チョー……小さな男たち……恐怖の湖から……城壁の街」とだけ言い残して息を引き取りました[1]。マーシュ自身、遠征に出る前からホー・ナン地方で「チョー・チョー」という奇妙な名の小柄な種族の伝説を聞かされており、現地の人々はスン高原そのものを邪悪の地として恐れていたと振り返っています[1]。

襲撃者の姿は「一番背の高い者でも四フィートを超えない小男の群れで、丸くはげた頭の奥に小さな目が並んでいた」と描かれ、鋭い剣で探検隊員と動物を瞬く間に斬り殺します[1]。彼らの根城アラオザルは緑黒い石造りの廃都で、これを囲む湖の水面も同じ緑黒色に染まっています[1]。チョー・チョー人に仕えるフォー・ラン博士(かつて高名だった哲学者・科学者)は、彼らについて「数は多くないが、それぞれに力を持っている」「根は単純な民だが、悪意に満ちている」と語り、銃という武器そのものを彼らが思い描けないことも明かしています[1]。

長老エ=ポオと彼らが仕える存在(ロイガーとツァール)

アラオザル地下の大穴でマーシュが目にしたのは、平伏す一群の中でただ一人体を起こした老人でした。フォー・ランは「あれがチョー・チョー人の長エ=ポオだ。齢七千歳になる」と囁きます[1]。エ=ポオは黒い杖に支えられて歩く猫背の老人で、玉座めいた高い台に座っていながら、しわだらけの顔と痩せた手、周りの者たちの卑屈な態度を除けば支配者らしい威厳は見当たらない人物として描かれます[1]。

フォー・ランがマーシュに明かす由来はこうです。太古、リゲルとベテルギウスから来た「祖なる者たち」がこの地に住み着きましたが、かつて彼らに仕えていた者たち——クトゥルフ、名状しがたきハスター、双子の「醜悪なるもの」ロイガーとザー——が反旗を翻し、長い戦いの末に祖なる者たちが勝利しました。ハスターは宇宙へ逃れ、クトゥルフはルルイエの海底へ封じられ、ロイガーとザーは「アジアの奥深く、忌まわしきスン高原の下に生きたまま埋められた」といいます[1]。祖なる者たちが去ったのち悪しき者たちが高原に残した種から、「太古の悪の落とし子」であるチョー・チョー人が生まれ、双子神が再び蘇る日を待ち続けているとフォー・ランは語ります[1]。「ロイガーとザー自身が私の心に語りかけた」という彼の言葉にエ=ポオは動揺しており、二柱への取り次ぎをめぐって両者の間に序列があることもうかがえます[1]。

探検隊との対決と結末

ロイガーとザーを呼び覚ます夜、フォー・ランはマーシュに拳銃を託し、同行させられた四人のチョー・チョー人を撃たせます。最初の二発で二人が即死しますが、残る二人は両刃の小剣を抜いて斬りかかり、拳銃が三発目で詰まると、フォー・ランは落ちた剣を奪って最後の一人を刺し貫きました[1]。組み付いたマーシュ自身も、小柄な体格に似合わぬ力で五フィートも投げ飛ばされています[1]。

直後、オリオンから来た「星の戦士たち」がアラオザルを包囲し、光線で城壁を打ち崩して地下の大穴へ突入します。続いて紫と白に輝く「巨大な光の柱」——祖なる者たち自身——が舞い降り、地中深くへ光線を撃ち込みました。フォー・ランは「祖なる者たちがついに来た」と叫び、マーシュはその直後に触手めいたものに包まれて意識を失います[1]。物語は二人が遠く離れたバンカーの街で無事に目覚めるところで終わり、以後は新聞記事という体裁で、スン高原一帯の地面が掘り返され「巨大で骨のない、正体不明の生物の死骸」が見つかったこと、それが「敵と戦って死んだとしか思えない」状態だったことが伝えられます[1]。ロイガーとザー、そしてチョー・チョー人自身のその後の消息は、本文中では明かされません。

ラヴクラフト作品での言及2箇所

ラヴクラフト自身の作品では、チョー・チョー人は名前だけが二度登場します。ヘイゼル・ヒールド名義の「博物館の恐怖」では、蝋人形師ロジャーズが自らの展示物の由来を語る場面で「インドシナの、チョー・チョーたちが住んでいた廃都」と口にするのみで、種族そのものの描写はありません[2]。「時間からの影」では、〈大いなる種族〉が過去から集めた知性の一体として「まったく忌まわしいチョー・チョーたち」からの一体が挙げられますが、こちらも名前と一言の形容以上の説明はありません[3]。いずれもダーレスとショーラーが生み出した名を借りただけの言及です。

基本プロフィール

  • 欧文表記: Tcho-Tcho(Tcho-Tcho people / Tcho Tcho とも)
  • 初出: 「羅睺星魔洞」(オーガスト・ダーレス&マーク・ショーラー、1932年8月)[1]
  • 層: 拡張神話(ダーレス以降)。原典(1917-1937)に設定の出所はない
  • 体格: 矮人。一番背の高い者でも四フィート(約120cm)を超えないとされる[1]
  • 居住地: 初出作品ではビルマ奥地[1]。ラヴクラフト自身は「博物館の恐怖」でインドシナ半島に置きました[2]。T・E・D・クラインの作品での舞台設定は当サイトでは未確認です
  • 崇拝対象: ザーとロイガー(初出作品における崇拝対象)[1]。以後の展開で他の存在が加わったともされますが、当サイトでは未確認です
  • 聖地: スン高原の「恐怖の湖(Lake of Dread)」に浮かぶ「星の島(Isle of the Stars)」にある廃都アラオザル[1]

別名/呼称

固有名詞の日本語表記は媒体によって割れており、チョー・チョー人/チョー=チョー人/トウチョ=トウチョ人などの表記が見られます。当サイトは検索での通りが最もよい「チョー・チョー人」を見出しに採っていますが、表記のゆれそのものの典拠までは確認していません。

初出作品の日本語題も一定していません。「羅睺星魔洞」と「潜伏するもの」はいずれも同じ作品で、原題は The Lair of the Star-Spawn(『ウィアード・テイルズ』1932年8月号)です[1]。

区分

種族であって神格ではありません。当サイトの分類では用語・種族に置いています。三層で見ると位置づけがはっきりします。

層 チョー・チョー人の扱い
原典(1917-1937) 設定なし。名前が「博物館の恐怖」「時間からの影」で言及されるのみ[2][3]
拡張神話(1939-) ダーレス&ショーラーが創造。旧支配者の落とし子として造形される[1]
TRPG(1981-) 来歴や崇拝対象の再編があるとされますが、当サイトでは未確認です

「チョー・チョー人はラヴクラフトが書いた種族だ」という説明を見かけたら、この表を思い出してください。名前の借用と、種族としての創造は別のできごとです。神話がどう膨らんだのかを追う手がかりとして、この一族はよくできた標本になっています。

性質・生態

初出作品では、祖なる者たちに敗れて封じられた邪神ロイガーとザーが、「自分たちを復活させるために残した種」から生まれた眷属として描かれます[1]。指導者は七千歳の長老エ=ポオです[1]。探検隊を剣で殲滅する荒々しい一団として描かれ、周辺の住民も遠征前からスン高原の伝説を恐れていました[1]。当サイトでは、彼らが生贄の儀式を行うという記述は原文に確認できていません。

作中のチョー・チョー人は、神性を持たない人間に近い存在として描かれます。探検隊が彼らを銃で射殺できてしまうとおり、不死でも不可視でもありません。ロイガーとザーが「人には滅ぼせない」存在として語られる一方、チョー・チョー人は殺せる相手として扱われます。銃という武器そのものを思い描けないほど文明の外にいる一方、素手の膂力は人間を凌ぎます[1]。

T・E・D・クラインの「角笛をもつ影」(1980年)にもチョー・チョー人が登場するとされますが、当サイトでは原文を確認していないため、作中でどう描かれているかは確認できていません。

関係図

  • ザーとロイガー — 初出における崇拝対象。スン高原の地底に生きたまま埋められた双子の「醜悪なるもの」です[1]。チョー・チョー人は彼らが残した種から生まれた落とし子とされ、両者が再び蘇る日を待ち続けています[1]。それ以外の細かな設定(教団名や星との結び付きなど)は当サイトでは未確認です。
  • ハスター — 原典では、クトゥルフ・ロイガー・ザーとともに「祖なる者たちに敗れた側」として名だけが並びます[1]。それを超えるダーレスの体系上の位置づけは、当サイトでは未確認です。
  • アラオザル — 崇拝の中心となる緑黒い石造りの廃都です[1]。誰が築いたかは本文に明記されていません。

主要登場作と読みどころ

「羅睺星魔洞/潜伏するもの」(1932年) — 初出にして、実質的に唯一の本格登場作です。オーガスト・ダーレスとマーク・ショーラーの連名で発表され、語り手エリック・マーシュが残した手記という体裁を採ります[1]。作中で名が挙がる旧支配者はクトゥルフ、ハスター、ロイガー、ザーの4柱です[1]。祖なる者たちが彼らを打ち破って封じたという枠組みがここで示されており、この一作だけでチョー・チョー人の由来から結末までがほぼ語り尽くされています[1]。

「博物館の恐怖」(ラヴクラフト、1932年) — 名前だけの言及です。ダーレスの新語をラヴクラフトが拾った例で、神話の共有がどう起きたかを示す資料になります[2]。

「時間からの影」(ラヴクラフト) — こちらも名前だけの言及です[3]。

「角笛をもつ影」(T・E・D・クライン、1980年) — チョー・チョー人が登場するとされる後年の作品ですが、当サイトでは原文を確認していないため、舞台設定や内容の詳細には触れません。

TRPGでの扱いと、日本語で読む方法

『クトゥルフ神話TRPG』系のサプリメントでは、チョー・チョー人の来歴や崇拝対象に独自の設定が加えられているとされます。当サイトでは原文(サプリメント本体)を未確認のため、具体的な内容には触れません。

日本語で初出作品を読むには、翻訳アンソロジーを探すことになります。訳題が「羅睺星魔洞」と「潜伏するもの」に分かれるため、目次では両方の題を確認してください。

なお、チョー・チョー人が単独で主役を張る作品はありません。この一族を読むということは、実質的にダーレスとショーラーが書いた一編を読むことと同じです。 旧神・星の戦士・封印といった、ラヴクラフト原典には無かった枠組みが同じ短編の中で一度に導入されており、チョー・チョー人はその枠組みを説明するために配置された駒でもあります。

この項目から辿れるもの

よくある誤解(Q&A)

Q. ラヴクラフトが創造した種族ですか。 A. いいえ。ダーレスとショーラーの創造です。ラヴクラフトは名前を借りて言及しただけで、種族の設定は書いていません[1]。

Q. ダーレス作品に何度も登場しますか。 A. 名前への言及は他にもあるかもしれませんが、実際に登場するのは「羅睺星魔洞」1作だけです[1]。名前の露出が多いことと、設定が厚いことは別の話です。

Q. 作中で滅びたのではありませんか。 A. 祖なる者たちと星の戦士たちの攻撃でアラオザルは破壊され、地下に埋まっていたものたちも攻撃を受けますが、その後どうなったかは本文に明記されていません[1]。ロイガーが後年の別作品で再登場するかどうかは、当サイトでは未確認です。

Q. 「スンガ高原」ではないのですか。 A. スン高原(Plateau of Sung)が正しい表記です[1]。

Q. 「ザー」と「ツァール」は別の存在ですか。 A. 同じ Zhar の表記ゆれです。当サイトは「ザー」を採っていますが、「ツァール」と表記する資料もあります。双子神を指すときは「ロイガーとツァール」の形で呼ばれることもあり、検索で見かけたら同一と考えて構いません。

Q. ロイガーという名の種族を見たことがあります。 A. 旧支配者ロイガーとは別に、同じ「ロイガー」という名を持つ存在が後年の作品に登場するとされます。両者の関係は当サイトでは未確認です。チョー・チョー人が仕えるのは、この初出作品に登場する旧支配者のほうです。

Q. 実在の民族がモデルですか。 A. 架空の種族です。ただし初出作品の描写が当時の人種表象を色濃く含むことは、今日では作品の欠点として指摘されます。読むときは1932年のパルプ雑誌という文脈を踏まえてください。

出典

  1. August W. Derleth and Mark Schorer, “The Lair of the Star-Spawn,” Weird Tales, vol. 20, no. 2 (August 1932), pp. 184-197. archive.org: Weird_Tales_v20n02_1932-08_sas(OCRテキストを当サイトで判読し、明白な誤読のみ訂正のうえ引用)。 https://archive.org/details/Weird_Tales_v20n02_1932-08_sas
  2. H. P. Lovecraft, “The Horror in the Museum” (for Hazel Heald). The H. P. Lovecraft Archive. https://www.hplovecraft.com/writings/texts/fiction/hm.aspx
  3. H. P. Lovecraft, “The Shadow out of Time”. The H. P. Lovecraft Archive. https://www.hplovecraft.com/writings/texts/fiction/sot.aspx
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