概要
ノーデンスは、H・P・ラヴクラフトの「霧の高みの奇妙な家」と「未知なるカダスを夢に求めて」に登場する。人類に敵対的な旧支配者や外なる神々とは異なり、ランドルフ・カーターに対して中立的、あるいは保護的とも読める態度を示す点で、クトゥルフ神話の中では珍しい存在である。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 分類 | 古き神(エルダー・ゴッズ) |
| 欧文表記 | NODENS |
| 記録されている登場作品 | 「霧の高みの奇妙な家」「未知なるカダスを夢に求めて」(1926–1927年執筆/1943年発表) |
| 拠点 | 夢の国の深淵(アビス) |
| 眷属 | ナイトゴーント(夜鬼)、イルカ、海の怪物[1] |
初出作品
現行資料でノーデンスの初出として明記されているのは「未知なるカダスを夢に求めて」(1926–1927年執筆/1943年発表)である。この作品はラヴクラフトの生前には発表されず、没後の1943年に刊行された。
ノーデンスは短編「霧の高みの奇妙な家」にも登場するが、本稿にはその執筆・発表年や該当箇所の引用が無く、この二作のどちらが先にノーデンスを描いたかは判断できない(未照合)。
原典での描写
白髪と白髭を蓄えた老人の姿で描かれ、巨大な貝殻の戦車に乗り、イルカや海の怪物を従えて夢の国の空を駆ける。古代の王や神官を思わせる威厳を備えるが、同時に測り知れない古さと隔たりも感じさせる存在として書かれている。
夢の国最深部の深淵(アビス)に玉座を構え、ナイトゴーント(夜鬼)を眷属とする。原典には次の一節がある。
“…ghouls have no masters, and that night-gaunts own not Nyarlathotep but only archaick Nodens for their lord.”(訳: 「…グールに主人はおらず、夜鬼どもが主と仰ぐのはニャルラトホテプではなく、太古のノーデンスのみである」)[1]
夜鬼が仕える先はニャルラトホテプではなくノーデンスであると、原典に明記されている。
「未知なるカダスを夢に求めて」終盤、アザトースへの謁見を目指すランドルフ・カーターの前にニャルラトホテプが立ちはだかる場面で、次の一節が現れる。
“Out of the void S’ngac the violet gas had pointed the way, and archaic Nodens was bellowing his guidance from unhinted deeps.”(訳: 「虚空より紫の瓦斯なるスンガクが道を示し、太古のノーデンスが名も知れぬ深みより指針を轟かせていた」)[2]
原典に書かれているのは、名も知れぬ深みからカーターへ送られるこの示唆的な導きまでである。直接の命令や助言としては描かれておらず、物語の結末でもカーターの見た夢が現実なのか永遠の幻視なのかは明かされない。ノーデンスの意図がどこまでのものだったかは、原典の記述だけでは判然としない。
なお、旧稿には「ノーデンスは旧支配者が地球を支配していた太古を知る数少ない古き神で、その知識と力は旧支配者よりも古い」という記述があったが、これを直接裏づける原文の引用は本稿には無く、出典を確認できていない(未照合)。
ダーレス以降の変化
旧支配者に対抗する「古き神」(エルダー・ゴッズ)の代表格としてノーデンスを位置づけたのは、オーガスト・ダーレスをはじめとする後世の作家による体系化である。原典のノーデンスは、上記2作品に登場するのみの、気まぐれな夢の支配者として書かれているにとどまる。
ニャルラトホテプとの関係についても、原典にあるのは前節の場面での対比のみで、恒常的な敵対関係や直接対決の記述は無い。後世の整理でこの対比が「対立」として扱われるようになった経緯は、本稿の材料からは追えていない。
TRPGでの扱い
ケイオシアム社のクトゥルフ神話TRPGでは、ノーデンスは古き神に分類される。
旧稿には「プレイヤーが古き神の庇護下にあると仮定するシナリオが多数存在し、ノーデンスの助言を求める冒険者が多い」という記述があったが、具体的な資料名・版元の記載が無く、本稿ではこの裏付けを取れていない(未確認)。ゲーム上でノーデンスが庇護者として扱われるとしても、原典で意図が最後まで明かされないこととは踏み込み方が異なる点には注意が要る。
登場作品一覧
| 作品 | 年 | 作者 | この作品が足したもの |
|---|---|---|---|
| 霧の高みの奇妙な家 | 記載無し | H・P・ラヴクラフト | ノーデンスへの言及(該当箇所は本稿では未照合) |
| 未知なるカダスを夢に求めて | 1926–1927年執筆/1943年発表 | H・P・ラヴクラフト | 容姿・眷属・ランドルフ・カーターへの導きなど、原典描写のほぼすべて[1][2] |
原典での登場はこの2作にとどまり、旧支配者に対抗する古き神の代表格という位置づけは後世の体系化による。
関連神格・地域・書物
神格・種族
- ニャルラトホテプ — カーターの前に立ちはだかる場面で対比的に描かれる。ただし原典に直接対決や恒常的な敵対関係の記述は無い
- ナイトゴーント(夜鬼) — ノーデンスの眷属。仕える先はニャルラトホテプではなくノーデンスだと原典に明記される[1]
- グール — 同じ引用箇所で夜鬼と並び「主人を持たない」と書かれている[1]
地域
- 夢の国 — ノーデンスが深淵(アビス)に玉座を構える領域
分類の考え方
参考文献
- [1] “…ghouls have no masters, and that night-gaunts own not Nyarlathotep but only archaick Nodens for their lord.”(訳: 「…グールに主人はおらず、夜鬼どもが主と仰ぐのはニャルラトホテプではなく、太古のノーデンスのみである」) — H. P. Lovecraft, “The Dream-Quest of Unknown Kadath”(1926–1927年執筆/1943年発表), hplovecraft.com
- [2] “Out of the void S’ngac the violet gas had pointed the way, and archaic Nodens was bellowing his guidance from unhinted deeps.”(訳: 「虚空より紫の瓦斯なるスンガクが道を示し、太古のノーデンスが名も知れぬ深みより指針を轟かせていた」) — H. P. Lovecraft, “The Dream-Quest of Unknown Kadath”, hplovecraft.com
FAQ
Q. ノーデンスは人間の味方ですか。A. 原典で描かれるのは、ニャルラトホテプに追われるランドルフ・カーターへ、名も知れぬ深みから導きの声を送る場面[2]までである。恒常的な守護や戦闘的な救援としては書かれておらず、その意図がどこまでのものかは物語の結末でも明かされない。
Q. ノーデンスとニャルラトホテプは敵対関係ですか。A. 「未知なるカダスを夢に求めて」ではニャルラトホテプが道を阻む一方でノーデンスが導きを送るという対比が描かれるが、原典に両者の直接対決や恒常的な敵対関係の記述は無い。
Q. 夜鬼(ナイトゴーント)はノーデンスの眷属ですか。A. 原典に明記されている。「グールに主人はおらず、夜鬼どもが主と仰ぐのはニャルラトホテプではなく、太古のノーデンスのみである」とある[1]。
Q. ノーデンスは最初から「古き神」の代表格として位置づけられていましたか。A. いいえ。原典での登場は「未知なるカダスを夢に求めて」と「霧の高みの奇妙な家」のみで、旧支配者に対抗する古き神の代表格として体系化したのは、オーガスト・ダーレスをはじめとする後世の作家である。




